2020-10-11  Vol.381B19B6197-F9CE-429C-AF67-3ACFFB88398F

【概要】

 2017年に上梓され、
人口減少がもたらす日本の将来の姿を、緻密なデータから導き出した「未来の年表」。その予測は大きな反響を呼び、同書は累計で88万部以上を売り上げるベストセラーとなりました。 
 本書は同書著者、河合雅司氏の手による1冊。今春以降、コロナ禍で街から人が消え、大きく消費が消失した様子は、今後人口減が進む日本の姿を予見させるものであり、本書はそんな「コロナ後」の日本で人口減少問題にどう取り組むべきなのか、そのために個々人は何をすべきなのかを考察した内容となっています。

【構成】

 全5章で構成された本書。第1章ではネット通販、大規模小売店を引き合いに、人口減少がもたらす具体的な影響を提示。それを踏まえ第2章では雇用、第3章ではマーケット、第4章では地域社会という観点から、今後の未来を考察しています。第5章では、主として個人に着目。これからの働き方や、老後に向けた備えのあり方を考察しつつ、各人がエンパシーを身に着ける必要性を説き締めくくられています。

【所感】

 もはや日本における少子高齢化や人口減少は避けられない未来であり、これまでの発想や手法が通じないパラダイムシフトが起きつつあることを、しっかり認識すべきだと著者は説きます。

 これからの日本に必要なのは「戦略的に縮む」こと。
「縮む」とは「衰退」であり、基本的に拡大路線で「成長」を続けたきた常識の中では、ありえない考えですが、人口減少社会では、これまで通り全てを実現、達成することは出来ません。その中で「何を捨て」「何を残すのか」その判別が極めて重要になるとしています。
 そしてそのような判別をするためには、どのような思考をすればよいのか。本書では様々なケーススタディを取り上げながら、著者の思考法を紹介しています。

 女性・高齢者・外国人活用、終身雇用崩壊、70歳定年の可否といった雇用に関する課題。高齢者マーケット、若者マーケットといった市場に関する課題。農業や工業(モノづくり)に関する課題。地方行政のあり方に関する課題など、本書では様々な事例が紹介されています。
 とてもじゃないが、著者のような思考、未来を予測する考察力を身につけることは出来ない。そんな印象を抱きがちですが、著者は2つのポイントを挙げ、決して難しく捉えることはないとしています。

 ①「常識」を疑うこと ②小さな変化を見つけ出し、それを少子高齢化や人口減少に当てはめ説明してみること その2点で発想することを積み重ねることで、自ずと思考法は身につくとしています。

 また今後我々には「エンパシー」という力も重要であると説いています。
「エンパシー」とは実は適切な日本語訳はないそうですが、しいて訳せば「自分も相手の立場にたってて気持ちを分かち合う」ことを意味するそうです。
 人口減少という大きな変化の中で、もはや過去の経験則や知識が役に立たなくなります。そこで今後は各人がおのおのの立場を超えて理解し合い、知恵を出さざるを得ないこと。また地域生活の中など「相互扶助」の局面が増えることも、その理由としています。 

 新書につき、手軽なサイズとボリューム感で読み易い本書ですが、示唆に富んだ1冊。
人口減少という未曽有の事態に対峙しても、やみくもな悲観、根拠のない楽観と感情に左右されることなく、小さな事実の積み重ねから、先を見据える客観性をもつ大切さを教えてくれる1冊でした。

                          PHP研究所 2020年9月29日 第1版第1刷