2021- 1- 3  Vol.393
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 新年あけましておめでとうございます。本年も毎週1冊の新刊ビジネス書をご紹介させていただきます。お付き合いのほど、よろしくお願いいたします。
さて新年1回目にご紹介させていただくのはこんな1冊から。

【概要】

 昨年12月6日 6年の歳月をかけ、
小惑星探査機「はやぶさ2」が、地球近傍小惑星リュウグウへの着陸とサンプル採取に成功し、回収カプセルが無事帰還したとのニュースが流れました。
 
初代「はやぶさ」は度重なるトラブルの果てに、2010年に帰還。世界で初めて小惑星の物質を持ち帰ることに成功しており、宇宙開発における日本のプレゼンスを大いに高めることとなりました。

 宇宙開発は、まさに究極の未知への挑戦であり、投下する資金や時間、リスクの大きさは計り知れないものがあります。とかく使用される機器や技術面に着目されがちな宇宙開発ですが、その中心となるのは人でありチーム。そこでは当然、プロジェクト管理やリスク管理といった様々なマネジメントが重要となります。
 本書は、長らくNASDA(宇宙開発事業団)やJAXA(宇宙航空研究開発機構)に在籍し、日本や世界の宇宙開発を見つめてきた著者が記した1冊。特に
日本における宇宙開発史と、あまり表立って語られることのなかった個々のプロジェクトの裏側やマネジメントの様子を明かしています。

【構成】

 全7部、31章で構成された本書。1980年代初頭のスペースシャトル誕生から現在に至るまでが、概ね時系列で記されています。第1部で記されるスペースシャトル利用、搭乗プロジェクト。第4部と5部で記される国際宇宙ステーションへの物資輸送機「こうのとり」と同打ち上げを実現したH-ⅡBロケット。第6部で記される「はやぶさ2」。この3つが本書の中心テーマとなっています。

【所感】

 個々のプロジェクトは興味深く、日本の宇宙開発史を俯瞰するには好適の1冊かと思いますが、NASDA(宇宙開発事業団)やJAXA(宇宙航空研究開発機構)がどのような組織で、どれほどの人員を擁しているのか。通常時そこではどのような意志決定がなされているのか、個々のプロジェクトの予算はどれほどで、具体的な管理手法はどのようなものか。民間企業との特異点はどこにあるのか。

 そんな内容を期待していたのですが、あまりそういった視点からは描かれていません。幅広い層に読んでもらうため、専門用語を極力排し、逸話や秘話の紹介に努めたと著者は語っていますので、著者としては狙い通りなのかもしれませんが、本書タイトルに惹かれ、宇宙開発におけるマネジメントの要諦やエッセンスを端的に知りたいと思う方には、読みにくさを感じるかもしれません。

 それでも、第1部や第3部で記されるスペースシャトル「チャレンジャー号」「コロンビア号」事故におけるNASAの対応や、第4部で記される日本のH-Ⅱロケット打ち上げ連続失敗時のNASDAの対応といった、有事の際のチームビルディングのあり方や原因究明のプロセスなど、読み応えのある部分も少なくありません。
 H-Ⅱロケット打ち上げ連続失敗では真因追及のため、太平洋上に落下し海底まで沈んだロケットエンジン回収に関する逸話が紹介されています。人命を含め一つの失敗がもたらす損失は甚大ゆえ、そこに怯むことなく、一つでも多くの学びを得ようとする執念。

 日本の宇宙開発を支え、先進国の中では後発ながらも欧米との協業をうまく実現してきた背景には、そんな地道な積み重ねがあってこそ。その妥協なき取組の大切さと、携わる人々へのリスペクト。
本書を通じ著者が一番伝えたかったことは、そこにあるのではないでしょうか。


                    日経BP/日本経済新聞出版局 2020年12月9日 1版1刷