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2021- 3-28  Vol.405

【概要】
 

 駅の構内などに店舗を設けるいわゆる「エキナカ」。
この事業の先鞭をつけたのはJR東日本でした。本書はその事業推進を担当し、同事業「ecute」の運営会社代表を務めたのち、独立起業。
 現在は、地方でのものづくりや販売支援を行う企業 ONE・GLOCAL
株式会社 ONE・GLOCAL (one-glocal.co.jp) を主宰する鎌田由美子さんの手による1冊。

 
 地方創生が声高々に叫ばれつつも、その現状には厳しいものがあります。その一つの課題は経済、いわゆる産業基盤の脆弱さです。長らく続いた大量生産の時代を経て、小規模なものづくりは非効率と言われ、淘汰され続けてきました。特に地方においてはその傾向は顕著なのかもしれません。
 近年注目を集めるSDGs。これからの時代のものづくりや消費にはサステナビリティ(持続可能性)というキーワードを抜きには語れません。
 実は小さいからこそできるものづくりは、昔ながらの技術を使い環境負荷も小さいサステナビリティなものも少なくないと著者は語ります。そこで必要なことは発信であり、価値に見合う適正な価格での販売。そのために必要なことは、若い世代や異分野での経験をもつ「よそもの」の感性や考え方を吹き込むこと。多くの事例を交えつつ、そんな提言をしたのが本書です。

【構成】

 全7章で構成された本書。第1章~第4章までは、様々なキーワードを取り上げつつ、近年サステナビリティという考えがごく一般的になってきたこと。それに伴い消費者の意識や働き方なども変わりつつあることを考察。第5章では地域のものづくり、第6章では観光を取り上げ、第7章では著者自身の半生を振り返る内容となっています。

【所感】
 
 昨今のコロナウィルス感染症影響で、我々の生活環境は一変しました。しかしながらこれは来るべき未来を先取りした状況に他ならないと著者は説きます。
 
 それを象徴する3大要素は ①デジタル化 ②多様性 ③環境意識 
重要と言われつつも、後回しにしていたこれらの課題につき、向き合うことを余儀なくされた結果、我々の生活には様々な変化が起こり始めています。

 買い物のEC化率を高め、在宅勤務は容易になり、オンライン教育も一気に進展したデジタル化の影響。生き方、働き方のみならず、ものづくりや消費、住居など、様々な面で顕在化しはじめた多様な価値観。そしてSDGsにみられるような環境に配慮した持続可能な経済活動を重視する機運。
 
 実はこれらの変化こそ、地方が活路を見出すきっかけとなるのではないか。と著者は説きます。
そこで必要となるのは、変化を起こすための触媒。地方に根付く様々な産業や生産物。そこに何か違う刺激を与えることができれば、一気に可能性が花開くのではないか。その触媒の最たるものこそ「よそもの」。
「若者、バカ者、よそ者が世界を変える」とは昔から、よく言われる言葉ですが、余計な先入観やしがらみを持たない人々が、様々な変革を成し遂げる起爆剤となってきたことは間違いありません。
 
 さてそんな本書。たしかに様々なキーワードや事例は、豊富に掲載されており、興味深い内容なのですが、如何せん引用が多いこと。またご自身が関わった事業として比較的詳しく紹介されているのは、前職時代の青森のシードル工房の事例程度であり、あまり臨場感もありません。
  
 せっかく「よそもの」というタイトルを挙げながらも、人にフォーカスし踏み込んだ部分も少なく(インタビュー記事は2本掲載されていますが) 全編通じ、正直まとまりのなさも覚えました。
 事例の整理や共通項の見出し、また読み手を鼓舞するような内容を期待していただけに個人的には少々肩透かしの印象を受けました。

 とはいえ、著者の言う「地方にこそ、アフターコロナ後の新しい世界を開く可能性がある」との考えには、まったく異論はありません。そのヒントとなるキーワードを拾い、大きなトレンドを理解するにとを目するなら、本書は十二分な内容ではないでしょうか。

                          日経BP 2021年3月22日 第1版第1刷発行