2021- 4- 4  Vol.4064EEFE854-EF63-4474-BCDC-1D61632B02AB

【概要】
 

 コロナウィルス感染症の影響で、急速に取り組みの始まったリモートワーク。
 通勤時間からの解放。やってみたら意外と出来た、快適だったという声が上がる一方で、その期間が長引くにつれ、様々な課題が浮かび上がってきたのも事実です。
 とはいえリモートワークの可能な職種は全体の3割程度と言われており、今回も大企業のホワイトカラーを中心に導入が進んだ感もあり、あまりピンとこない方も多いのかもしれません。
 今後、コロナウィルス感染症の影響が落ち着いたとしても、このリモートワークの様な働き方は、一定の職種で定着していくことは間違いはありません。
 そこで生じるのは、異なった環境下で仕事をする社員の増加。これまでの様に、みなが出社することが前提であれば、職場環境の整備を最優先に考えていけばよかったのですが、リモートワーク下においては、住環境や家庭環境も社員の働き方に影響を及ぼしていきます。
 これからの管理職は、この様な状況下で今後、マネジメントを行っていかねばならず、その難易度は格段に上がってきていると著者は説きます。

 特に考慮すべきは「感情」の問題。「人は感情の生き物」と言われる通り、所属するメンバーが抱く感情は多様であり、その傾向次第で組織の風土は良くも悪くも影響を受けてしまいます。
 そんな職場の「感情」について改めて考えてみようというのが本書。人事・組織コンサルタントの相原孝夫氏の手によります。

【構成】

 序章、終章加え全8章で構成された本書。各章2~5のテーマで記されています。
序章~第2章までは、リモートワークの現状なども踏まえた問題提起。第3章~第4章では望ましい職場環境について考察をし、第5章~第6章では「感情」に影響を及ぼす項目を掘り下げ、終章へと向かいます。

【所感】

 実はリモートワークが、新たな職場の問題を引き起こしたのではなく、もともとその職場がもっていた問題を、浮かび上がらせたに過ぎないと著者は説きます。その問題は大別して3つあるそうです。

 ①信頼関係の欠如 
 同じ職場で顔を合わせていれば、上司や同僚間で信頼関係が薄くとも、なんとなく場の空気で進んでいた物事や、組織の運営が、これまで通りの考えや意識では難しくなりつつあること。
 ②レジリエンス(折れない心) 
 メンバー各人の心が折れないための配慮がこれまで以上に重要になっていること。
 ③エンゲージメント(帰属意識)
 組織への帰属意識を高め、貢献意欲を引き出すためのコミュニケーションがより重要になっていること。
 本書では具体的な事例をあげつつ、望ましい職場、望ましい職場像を浮かび上がらせていきます。
そこで明らかになってくるのは、いかに人の「感情」が組織に影響を及ぼすかということ。

 職場における「感情」に影響を及ぼす項目には 5つの要素があるそうです。
それは ①企業ブランド ②組織風土 ③仕事内容 ④リーダー ⑤同僚 

 中でも最も影響を及ぼすのは ④リーダーであり、リーダーが禁ずべき行為として ①否定的な言葉遣いをする ②いつもと違う行動や突飛な行動を取る ③感情が揺れ動く ④過度に悲観的な態度をとる ⑤人の感情を無視する が挙げられています。

 個人的にも、ここは正直耳の痛いところでした。「そんなこと言われてもなぁ」そんな感想も洩れましたが、腑に落ちる点が多く、自身の行動の戒めを強く感じた次第です。

 他にも、個々のメンバーの感情に配慮をし、職場環境を整えるために考慮すべき事項を様々な観点から記した1冊。一読いただければ、経営者、管理者の方のみならず、働く全ての方に立場にあった示唆を与えてくれるのではないでしょうか。

 さてそんな1冊を記した著者の説く、理想の職場とは、どういったものなのでしょうか。
 最悪なのは「頑張った者が馬鹿を見る」職場。理想は「一緒に働く仲間のために頑張る」職場と、
実はとてもシンプルなものでした。
「チームとして働く醍醐味は、働く喜びそのものだ。」 そのように本書を締めくくっています。 

                              日経BP 2021年3月24日 1版1刷