2022- 1- 9  Vol.44700955FB0-E7F4-43E8-93C3-9B1296EBD228

【概要】

 近年、よく聞くようになった
DX(デジタル・トランスフォーメーション)。

 DXとは、端的に言えば「デジタル技術」の活用によって、企業や行政が事業や組織のあり方を変革し、人々の生活をより良い方向に導くこととされており、我が国でも
2021年9月には「デジタル庁」が設置されました。

 設置の狙いには、日本のデジタル社会形成の司令塔として、未来志向のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進し、デジタル時代の官民のインフラを今後5年で一気呵成に作り上げることを目指すとあります。

 
今後、我々の仕事や生活が大きく変わっていくことは想像に難くありません。そこで必要となるのはテクノロジーの理解です。本書は、そんなニーズにうってつけの1冊。グーグル、マイクロソフト、フェイスブックの現役プロダクトマネージャー3名による共作です。

 現在、世界のDXをけん引しつつあるのは、GAFAに代表されるテック企業。そんな企業の事例を紐解きながら、その背景にある各社の戦略や、ベースとなっているソフトウェア、ハードウェアの技術が、分かりやすく解説されています。


【構成】

 全12章で構成された本書。1章から4章までは、ソフトウェアの構造やインターネットの仕組みなど、テクノロジーの基礎を。5章から8章では、ビックデータ、クラウドコンピューティングなど、その要素技術を更に細分化して解説しています。9章以降は、前章までを踏まえたビジネス戦略や技術政策、次の技術進展などを紹介。巻末には用語集も掲載されています。

【所感】

 グーグル検索の仕組みはどうなっているのか? スポティファイはどのように、ユーザーの好みに合わせ曲をレコメンドするのか? ほとんどのアプリはなぜ、無料でダウンロードできるのか? ポケモンGoの仕組みはどうなっているのか? Amazon(米国で)どのように、1時間配送を実現しているのか?
 我々が素朴に感じる「なぜ?」を66の見出しとし、それを実現している技術の基礎を紹介。その上で各企業が、その技術を利用するビジネス上の理由を解説しています。
 
 専門用語も多数、登場しますが、具体的な事例から入っているため、さほど苦にせず読める点は編集の妙と言えるかもしれません。

 様々な事例紹介が続きますが、最頻度で登場するのはAmazon
 配当による株主還元を実施せず、全ての資金を再投資に向ける同社の技術革新のスピードは圧倒的であり、商品検索においてはグーグルを、また音声認識のAlexaや、Echoと言ったハードウェア製品では、アップルすら脅かす存在になっている点が記されています。

 また同社最大の強みは、その物流ネットワークであり、どんな業界に参入しようとも、既存の事業者を駆逐できるのは、圧倒的な品揃えと配送スピード。また同業者を破綻させるまで徹底できる低価格戦略。それにより更なる消費者層を取り込み獲得できる顧客情報のインパクトの大きさ。

 もはや盤石の構えであり、対抗可能な企業など登場しえないどころか、GAFAと呼ばれる企業群すら飲み込みかねない怖さを感じます。

 他社を駆逐する同社には、しばしば独占禁止法による企業解体の声も叫ばれますが、基本的に(米国の)独占禁止法の適用となるのは、水平方向の合併の制限。要は業界内の競争相手同志が手を結び市場の寡占化が進むことへの制限であり、Amazonのような垂直統合型では、その適用が難しいそうです。
 強いて言えば、クラウドサービスを提供するAWSくらいは、分割対象になるかもしれませんが、それを分割しても同社の強みが削がれることはないのではないかと著者達は記しています。

 すこしAmazonに偏った所感となってしまいましたが、他社の事例や戦略も興味深く、今後のビジネスを考える上で、業界を問わず理解しておく重要性を覚えた1冊。悲しむべきは、ポケモンGO(これすら米国本社の企業ですが)しか、日本企業の事例紹介が無い点でしょうか。

                          ソシム 20211225日 初版第1刷発行