2022- 3-27  Vol.458 F0976212-0D32-4D6E-9DA7-1B767C57CE62

【概要】

 2020年の国勢調査によれば、北海道の人口は522万8885人。
5調査連続で減少し、同調査では減少率、減少幅とも過去最大となっており、その減少スピードは全国を上回っています。
 北海道に限らず、人口減少が、経済に与える影響は大きく、いかに地域経済の活性化を図るかは、多くの地方自治体の課題ともなっています。

 そんな北海道は十勝・帯広に本社を置く、㈱NKインターナショナル。https://nkinter.co.jp/ 
本書は同社代表、木田直樹氏の手による1冊です。
 お笑い芸人を志すも断念。生まれ故郷の北海道に戻った彼が、1件の携帯ショップを皮切りに、複数の事業を展開しながら、年商52億円を売り上げる企業グループ群を作り上げています。
 
 地域経済の担い手として期待される地域での起業。いわゆるローカル・ベンチャーですが、北海道の地にあり、自らそれを実践してきた著者が、自社の経営と、これからの地方企業のあり方について記したのが本書です。

【構成】

 全5章で構成された本書。第1章で著者が考える「新ローカルベンチャー」について記した後、自社グループのビジョンや、成長戦略、組織運営などが記されています。

【所感】

 各種イベント、道の駅、ゆるキャラの制定。全国で、様々な町おこしが行われていますが、果たして本当に地方経済を豊かにする効果を上げているのか。そんな疑問を呈することから、始まる本書。
 自身の経験も踏まえ、これからの地方企業(ローカルベンチャー)に求められる要件は以下の5点であると著者は語ります。

 ①地域の経済圏・コミュニティに依存しない
 ②地元の発展に貢献する
 ③他社資本に頼らない
 ④多角的な事業展開
 ⑤新しい経済圏を創り出す。

 仔細は本書に詳しいのですが、端的に言えば、その地域に本社を置き、事業税を納めること。そして何より雇用を増やすことが重要であり、リスクヘッジのためには、事業の幅を広げる、商圏を地域に限定しないということが肝要であると理解をしました。
 著者の事業スタートは携帯販売ショップだそうですが、現在携帯電話販売ショップを21店構える他、グループ会社を通じ、飲食店の経営、ネットでのオーダースーツ販売、会社説明会サイトの運営、ソフトウェア開発など多岐にわたっています。

 自社での事業展開以外にも、M&Aを通じて傘下に収めた事業も少なくありません。なるほど小売店や飲食店は、どうしても商圏の影響を大きく受けますが、ネット上でのサービスであれば商圏に限りはありません。
 同社には、特に明確なビジョンは無いと記している著者ですが、社員へは、有形から無形サービスへ事業内容を転換をしていこうと繰り返し語ってきたそうです。

 地域の商圏という狭い枠に縛られないビシネス展開には、ネットは欠かせません。かつサービスの発信は地方にあっても可能です。地方の雇用維持に貢献しつつ、利益を確保し税収として地方に還元する。その様な企業を多数集めることが、真の地域活性へと繋がっていく。
 あたかもシリコンバレーという片田舎に、多くの企業が集まり今日の繁栄に至ったかの様に、いつか十勝・帯広という地域を日本のシリコンバレーにしたい。そんな思いも本書では記されています。

 多角化経営というのは、実は地方都市には少なくありません。地元の名士という方々が地域の企業を複数経営し、地方コングロマリット的な様相を呈してるケースも、ままありますが、あくまで有形サービスがメインであり、同社の様なケースはあまりないのではないでしょうか。
 ましてや、さしたる資本力もない若者が、携帯ショップ1店舗からスタートしている訳ですから。
ゆえに本書では、資金調達方法、社員の処遇、組織運営など、既成の概念に縛られない独自の施策や考え方など、いくつか事例が紹介されており、興味を惹きました。

 まだまだ発展途上という著者ですが、同社の様に、行政などの主導ではなく、志ある私企業が、この様な事業展開を行う動きが各地で起こること、それが今後の日本経済にとって一つの大きな光明となるのではないでしょうか。
 
                  クロスメディア・パブリッシング 2022年3月21日 初版発行