2022- 5- 1  Vol.4639A2BC29A-DDD8-4537-A854-8FF3C400EAF1

【概要】

 GW期間中ということで、今週は気軽に読める1冊をご紹介させていただきます。
 人気経営コンサルタント小宮一慶氏の手による本書は、著者初の経営エッセー集。経営の現場で数多くの成功や失敗を目にしてきた著者が、折に触れ感じたことや、心に残ったことを平易な文書でまとめています。

 実は以前、個人的に直接、講演をお聞きし名刺交換をさせていただいたことがあります。その講演の際、いくつか話の出た中で、「経営者は公私の区別を徹底しなくてはならない、」とのことで、社用車を引き合いに「経営者は1円たりとも、会社のお金を私的に使ってはならない。」と強く戒めていたことを思い出しました。
 
 ソフトな語り口ながら、経営の要諦は「経営者が正しい考え方をもつこと」にあることを、強く訴えていた姿が印象に残っており、本書もその思いを強く反映した内容となっています。
 
【構成】

 全6章、56本のエピソードで構成された本書。
前半3章では、経営や経営者に関するものが並び、第4章では、ビジネスパーソンの働く姿勢について触れています。第5章から第6章は、小宮氏の人生やビジネスに大きな影響をもたらした三人の人物との出会いや教えが紹介されています。

【所感】

 経営コンサルタントでありながら、経営学の知識や経営ノウハウを教えることは少ないという小宮氏。大切にしているのは、その前提になる「何を学べば良いか」を伝えることだそうです。

 小宮氏が考える「経営者の役割」は ①会社の方向付け ②資源の最適配分 ②人を動かす の3点。そのため経営者の方へは、次の3つの勉強を実践してほしいと説いています。
 ①新聞を読むこと ②経営の原理原則を学ぶこと ③「何千年もの間、人が正しいと言ってきたこと」を学ぶこと。

 特に③に重きを置いており、結局大切なことは「生き方」であり、正しい生き方を知れば、必然的に正しいビジネスのあり方が分かると記しています。
 経営者にとって、会社経営は人生のかなりの割合を占めます。その割合が高ければ高いほど「生き方」の重要性が高くなります。では経営者にとって「生き方」とはなんでしょうか。

 たとえ私欲ではじまった事業だとしても、世の中の役に立ちたいという高い使命感をもって経営に臨むこと。それこそが経営者の「生き方」そのものなのかもしれません。
「そんなきれいごとを」という声も上がりそうですが、この「きれいごと」を追求した人の方が、間違いなく成功をしていると小宮氏は記し、本書でもいくつかの事例が紹介されています。

 個人的に本書を読んで一番印象に残った部分は、宗教団体の話でした。

「世の中で、もっとも長く続く組織は宗教団体であり、世界の三大宗教は創始から何千年経っても、滅びる気配はない。会社とは比べ物にならないほどの規模や持続性を持つ理由は、人に生きる意味を教え、生き方の指針になっているから。考え方を求心力にしているから持続できるのだ。」と。

 一般企業と宗教団体を比較するのは、無理があるのかもしれませんが、なるほど「考え方」への共感が求心力を生むとの指摘は、もっともであり、これはあらゆる組織において不可欠なことと、非常に腹落ちをした次第です。

 実名を挙げた成功事例のみならず、自身の失敗事例も記すことで、小宮氏がなぜ「考え方」を大切にするに至ったのかが、よく分かった1冊でした。通読せず、気になった箇所を読むだけでも、感じる点は多いのではないでしょうか。
 
                         PHP研究所 2022年3月7日 第1版第1刷発行