2022- 5-15  Vol.465DBDD2B99-FF51-4984-93EA-98411394CE8B

【概要】

 皆さまは、最近店頭でCDを買われたことありますか?
音楽配信の台頭などもあり、販売額の低迷が著しいCD。日本では1998年の約6000億円(年間生産実績)をピークに年々減少し、現在ではおよそ3分の1。2000億円ほどのボリュームになっているそうです。

 これに合わせ、販売店も減少。街の小さなショップは元より、国内チェーンのみならず、ヴァージン・メガストア、HMVなど海外発の大型チェーンも軒並み姿を消したり業態を大きく変えています。

 そんな渦中にありながら、雄一気を吐いているのが、TOWER RECORDS。いまだ日本国内で80店舗を誇っています。
 日本進出から約40年、本家である米国TOWER RECORDSはとうの昔に破綻をしてしまいましたが、MBOにより米国本社から独立していた日本のTOWER RECORDSはいまだ健在。
 多くのライバルチェーンが姿を消し、ましてや本家すら無くなってしまった日本のTOWER RECORDSは、なぜ生き延びることが出来たのでしょうか。

 元SME(ソニー・ミュージックエンタテインメント)社員から経営コンサルタントに転じた著者が、その理由を考察したのが本書です。

【構成】

 全3章で構成された本書。タイトルの「キセキ」には2つの意味が込められており、第1章はTOWER RECORDSの「軌跡」、第3章は生き残りを果たしたTOWER RECORDSの「奇跡」と銘打ち章立てをしています。
 間の第2章では、現存する全店舗につき各店長のメッセージも添えて紹介。過去に閉店した店舗についても一覧で紹介されて「います。

【所感】

 1979年日本進出。当初は輸入盤の卸売業としてスタート。日本国内での最初の店舗は、地域のレコード店と提携したフランチャイズ形式だったと言います。
 直営店舗第1号は、実は札幌だったそうですが、
TOWER RECORDSを一躍有名にしたのは渋谷店。
当時、米国ヒットチャートもの、AOR、ウェストコーストロックが流行っており、世相は米国志向でした。そこへ輸入盤が安く買え、品揃えも充実しているとのことで、大変な人気を博します。

 その後、CD市場の拡大もあり、全国へ店舗網を拡大していきます。店舗展開の一方で1997年には早くもネット通販を開始しており、その先見の明には驚かされます。

 日本の
TOWER RECORDSにとって最大のターニングポイントは、2002年の米国本社からの独立でした。音楽配信モデルの拡大や、大手スーパーでのCD廉価販売台頭で、急速に経営が悪化しつつあった米国本社と決別し、独立した運営が可能になったことで、米国本社の破綻に巻き込まれることもありませんでした。

 現在、同社の最大株主はNTTドコモとセブン&アイ・ホールディングスとなっています。
日本のTOWER RECORDSの強みは、そのブランド力、店頭でのアーティストライブの開催、独自レーベルの所有、自由闊達な社風などが本書でも挙げられていますが、やはり最大の強みは、その財務基盤にあると言っても過言ではないのかもしれません。

 
欧米に比し、比較的まだCD販売額の大きい日本ですが、やはり市場の縮小は否めません。同業他社の撤退が続く中、強い財務基盤に支えられ店舗数を維持してきたことで、結果として、市場内でのシェアが高まり同社の存在感が増した点は異論のないところではないでしょうか。  

 とはいえ、コロナウィルス感染症影響もあり、同社前年度(2021年2月)は17%の減収。12億円の営業損失と、赤字決算となっています。これは感染症影響による一過性のものなのか。それとも一層の市場規模縮小の予兆なのか。その行方が気になるところではあります。

 それでも、本書サブタイトルでもあり、同社のコーポレートボイスでもある「NO MUSIC, NO LIFE」にあるように、我々にとって「音楽のない人生なんて」考えられません。  
 配信など音楽享受の在り方が、大きく変わりゆく中、これからの
TOWER RECORDSは、どう展開され、どう我々消費者の心をつかんでいくのか。その動向には目が離せませんね。
 
                          スタートナウ合同会社 2022年4月27日発行