2022- 7- 3  Vol.472
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【概要】

 
 今週は異色の1冊をご紹介させていただきます。一応ビジネス書のカテゴリーに属するのですが、少々毛色が違います。

 出版不況と言われて久しい昨今。書籍は元より、販売額の減少が著しいと言われるのが雑誌。月刊誌、週刊誌ともに1997年をピークに年々減少。コミックスは比較的堅調も、休刊が創刊を上回る状態が続いており、その販売金額は800億円台とピーク時の5分の1程度まで減少しています。
 
 そんな中にあって、創刊から40年以上続き、本年7月号で500号の大台(月刊誌)に到達したのが、雑誌「ムー」。
 本書表紙にあるロゴのついた雑誌を、書店で見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。ジャンル(といっても類する雑誌はないそうですが)はオカルト。
その内容は、UFOや異星人、超能力、怪奇現象、超古代文明などを扱った非常にマニアックなものとなっています。

 なぜこのように特異な雑誌が生まれ、40年以上にわたり読者から支持されてきたのか。
同誌で30年以上にわたり編集長を務める三上丈晴氏が、そんな同誌の沿革を振り返りつつ記した雑記とも言えるのが本書です。

【構成】

 全6章で構成された本書。第1章から第4章では、出版元である㈱学習研究社(当時)への入社から「ムー」編集部への配属に始まり、同誌誕生の経緯や、企画、編集の様子を明かしています。
第5章、第6章では、三上氏の出会ってきた特異な人物や事象について記しています。

【所感】

 小学生向けの「科学」と「学習」。中高生向けの「中学コース」や「高校コース」など、学習誌出版の印象の強かった㈱学習研究社。雑誌「ムー」の誕生は、「高校コース」などの特集記事で人気を博していたオカルトものの記事を独立させたものでした。
 隔月刊誌として誕生した同誌ですが、創刊当初はまったく売れず、あわや1年で休刊の危機に。
その危機を救ったのは、大幅な内容の刷新。出自が学習誌ゆえ、内容にどこか甘さ、中途半端さのあった誌面を改めます。判型はA5からB5へ。ビジュアル中心の一般紙ではなく専門誌の体裁を意識します。
 意図的に文字数を増やしタイトルは渋めに。かつ毎号「総力特集」など、より内容を深堀りした特集記事を設けたことで、徐々に人気雑誌に。ほどなく月刊誌となり現在に至ります。

 オカルト関連という、マニアックな内容ゆえ、よく毎号ネタがつきないものとの疑問が生じますが、ネタはとっくに尽きていると三上氏は語ります。そこで問われるのは企画力。既に広く周知されているものであっても、いかに新たな切り口を見出すかが肝であると語ります。

 本誌は学術誌ではなく、あくまでエンターテインメント雑誌であり、しかも扱う領域は、噓か真か判断のつかないジャンル。こういっては失礼かもしれませんが、いかに大胆で斬新な仮説を立て、紙面を組み立てることが出来るか。かつマニアックな読者を飽きさせずに、どうやって引き付けることが出来るか。毎号がその戦いなのかもしれません。

 またマニアックな読者がいるゆえ、時に編集者たち以上に深い知識や造詣をもつ人も少なくありません。そこでどんな特集を組んでも、結論は決めつけないことが重要であるとも説きます。
 読者の興味を惹き付けるも、結論は断言せず、それは読者に委ねる。そんな姿勢が「ムー民」とも呼ばれるコアな読者層を構成し、長らく支持を得てきた秘訣なのではないでしょうか。

 本誌自体を、あたかも一つの小規模事業者と仮定してみると、ニッチな世界を扱いつつ、コアなファンを作り、長きにわたり刊行を継続してきた様は、意外と通常のビジネスの場でも、ヒントになる点が多いのではないかと考え、今回本書を取り上げた次第です。

 個人的には、面白かったのは、心霊写真、パワースポット、UMAとトリック、ミステリーサークルなど、オカルトに詳しくない方でも、見聞きしたことのあるであろう事件やニュースの背景に迫った第6章でしょうか。明らかにトリックと判別されたものもあれば、今だ真実は不明なものも数知れず。どれだけ科学が発達しようとも、人に想像力がある限り、この類の話は消えることはないのでしょうね。

 
                          学研プラス 2022年6月14日 第1刷発行