2022-11-20  Vol.492A3B44F0D-5D27-41B6-A912-2D8C6157DD5B

【概要】

 変化の激しい世界に対応していくためには、人も組織も、古い考え方やビジネスモデルを新しいものへと、アップデートしていかなければならない。

 アンラーン(脱学習)とは、学びを捨てさるということではなく、過去には役に立ったが、今や限界に達している行動や方法を手放し、新たな学びなおしをしていくこと。それこそが、今後最も重要な戦略であるというのが、本書のテーマです。

 その要諦となるのが「脱学習⇒再学習⇒ブレークスルー」という「アンラーン・サイクル」を何度も回すこと。

 誰もが、成功のために、絶えず新しいひらめきやアイデアを得ること(ブレークスルー)を求めています。しかし本当のブレークスルーを起こすためには、まずは一歩下がって自分たちの可能性や能力を封じ込めている、過去の古い考え方や習慣を捨て去る勇気をもたなければなりません。
 過去の成功体験を「アンラーン」することからが始まりだと。著者のそんな語りから始まる本書は、「アンラーン」の必要性や、向き合い方、実践法や構造。そして組織や個人の事例を踏まえつつ、丁寧に解説されています。
 
【構成】

 全12章で構成された本書。前半6章では、「アンラーン・サイクル」の各項目を詳しく解説、後半6章では、「マネジメント」「顧客」「人材と組織」「インセンティブ」といったテーマに1章ずつを充て、実企業での取り組み事例をあげつつ、解説を行っています。

【所感】

「アンラーン・サイクル」の3要素には、それぞれ主要な条件があります。

(脱学習)
 ①取り組みたい課題を特定する、 
 ②課題を解いたか、克服したかのように考えて成功を定義する。 
 ③安心を求めるより、勇気を集中させる 
 ④「アンラーンのサイクル」にコミットし、始め、計測する。

(再学習)
 ①大きく考えた後は、最初の小さなステップを踏み出す。
 ②目標を達成できる正しい行動を見出すために、たくさん試す。
 ③小さく始めること、あなたが考えるよりも、もっと小さく。

(ブレークスルー)
 ①内省する。
 ②フィードフォワードする。
 ③影響を調整し、段階的にブレークスルーするために、安全性を増す。
 ④脱学習の程度を増す。

 アンラーンに際し、まず大切なことは、自身の弱さを理解し、自らが障害を作り出してしまっていることを認識すること。その上で何を脱学習したいのかはっきりさせ、大きく考え、小さなステップを踏み続ける。達成した結果を検討し、不確実で分からないことを受入れ、安心、安全よりも勇気を選ぶことと。
 そう言われても具体的に、どう課題を設定するかは悩ましいところですが、本書内では「アンラーンへの問いかけ」と称し、いくつかの設問の用意もあり、課題設定の一助となっています。

 繰り返し、本書で説かれるのは、過去の成功体験を捨てさること。小さなことからでも、いいので、まずは脱学習に向けた行動を起こすこと。そして試行錯誤を繰り返してみること。
 ことチーム運営については、そういった行動を尊び、自由な発想やチャレンジを妨げない、心理的安全性の確保に配慮すること説かれています。

 アンラーンとは決して新しい方法ではなく、昔からあり、その効用も広く知られています。
また1980年代~1990年代にかけ、科学的見地からの研究も進んだそうですが、それが実践出来た企業や組織が限られていることは、いかに過去の体験(特に成功体験)を捨てることが困難かという証なのかもしれません。そしてその組織を構成する各人のマインドもまた然り。

 そんなこと言われなくても、分かっている。でも自分の属している組織では、無理なんだ。私自身も含め、そんな声が漏れてしまいそうです。
 それでも何か起こさなければ、自分がまず動き出さなければ、何も始まりません。それを取り組み易く、システムとして構築したのが「アンラーン・サイクル」。さて何を手放すことから、始めましょうか。

                        ダイヤモンド社 2022年11月8日 第1刷発行