2023-11-12 Vol.543
【概要】
27歳で、先代の始めた電気工事業を引き継いだ著者。承継時には年商1億5千万ほどの売上を、10年ほどかけ、3億、5億と伸ばしていきますが、思ったほど利益が会社に残らない・・・・・。
そうこうするうち先代が急逝し、個人で連帯保証していた銀行借入10億円を背負う羽目になってしまいます。著者が36歳の時でした。
事業存続し、借入返済原資の確保をするため、著者が辿り着いたのは利益に重きを置いた経営。著者はそれを「付加価値額経営」と称し、その実践を経て、55歳で10億円の借入を完済しています。
そんな「付加価値額経営」の概要や実践方法を紹介したのが本書。著者は北九州市で、㈱九昭ホールディングス http://www.kyushodensetsu.co.jp/ の代表を務める池上秀一さん。
会計の専門家でもない彼が説く「付加価値額経営」はシンプルながらも、自身の実践に裏付けされた説得力のあるものとなっています。
【構成】
全5章で構成されています。1章~2章では「付加価値額経営」に辿り着いた経緯と、その概要を紹介。3章以降はその実践を踏まえ、「付加価値額経営」を生かすノウハウなどを紹介しています。
【所感】
「付加価値額経営」とは、付加価値の確保に重きを置いた経営。
その基礎となるのは、損益計算書です。建設業ゆえ、決算書には損益計算書に加え、工事原価報告書などが付随しますが、著者は、どうして自社社員の人件費を原価と販売管理費の二つに分けるのか、意味が分からなかったと言います。
そこで、材料費や外注費などを「会社から外に出ていく=社外の誰か、何かに対して支払うお金」人件費や事務所経費など支払は生じるが、会社を運営する費用なので、「会社の中に残るお金」と定義。
端的に言えば、工事原価報告書の作成をやめ、材料、外注費は売上原価、他経費は全て販売管理費に分類した損益計算書を作成。
そこで表示される売上から原価を引いた売上総利益こそ、会社が付加した価値であり、この付加価値を伸ばすことを経営の目標に定めます。
「付加価値額経営」実践には大きく5つのステップがあるそうです。
①(上記の様に)出ていくお金と残る雄お金を分類する ②がんばれば達成できそうな、翌期の付加価値額(粗利額)と売上を設定する ③担当者は案件ごとに目標付加価値に合った予算書を作成する ④会議で承認された担当者にのみ発注を許可する ⑤承認を受けたすべての案件一覧表をつくる
以降は、この管理を通じ、取引先や実施業務(工事)を見直しを図り選択と集中を進めること。利益率の高い業務(工事)を横展開していくこと。なにより社員に「付加価値額経営」を浸透させ、儲かる社風へ会社を変えていくための取り組みなどを紹介しています。
きちんと付加価値が取れる(採算が取れる)業務への集中は、結果として下請体質からの脱却へ繋がっていきます。反面、仕事は選別していきますから、売上の伸びには自ずと限度があります。そこで視野に入れ検討すべきはM&A。
今後、更に労働人口の減少が進むなか、中小零細企業の淘汰が始まり、現在400万社以上ある企業数は半減すると著者は説きます。存続のためには、規模の拡大を図らなければならずM&Aは重要な選択肢の一つとなります。しかしただ闇雲に手を伸ばすのではなく「付加価値額経営」実践による健全な体質の企業群を構成していくことが重要とし結んでいます。
なぜ一地方企業の経営者が、本書執筆に至ったか、その経緯などは明かされていない点が残念ですが、叩き上げ経営者の執筆だけに専門用語の多用もなく、平易な文書で読みやすい1冊でした。
イーストプレス 2023年10月16日 第1刷発行

【概要】
27歳で、先代の始めた電気工事業を引き継いだ著者。承継時には年商1億5千万ほどの売上を、10年ほどかけ、3億、5億と伸ばしていきますが、思ったほど利益が会社に残らない・・・・・。
そうこうするうち先代が急逝し、個人で連帯保証していた銀行借入10億円を背負う羽目になってしまいます。著者が36歳の時でした。
事業存続し、借入返済原資の確保をするため、著者が辿り着いたのは利益に重きを置いた経営。著者はそれを「付加価値額経営」と称し、その実践を経て、55歳で10億円の借入を完済しています。
そんな「付加価値額経営」の概要や実践方法を紹介したのが本書。著者は北九州市で、㈱九昭ホールディングス http://www.kyushodensetsu.co.jp/ の代表を務める池上秀一さん。
会計の専門家でもない彼が説く「付加価値額経営」はシンプルながらも、自身の実践に裏付けされた説得力のあるものとなっています。
【構成】
全5章で構成されています。1章~2章では「付加価値額経営」に辿り着いた経緯と、その概要を紹介。3章以降はその実践を踏まえ、「付加価値額経営」を生かすノウハウなどを紹介しています。
【所感】
「付加価値額経営」とは、付加価値の確保に重きを置いた経営。
その基礎となるのは、損益計算書です。建設業ゆえ、決算書には損益計算書に加え、工事原価報告書などが付随しますが、著者は、どうして自社社員の人件費を原価と販売管理費の二つに分けるのか、意味が分からなかったと言います。
そこで、材料費や外注費などを「会社から外に出ていく=社外の誰か、何かに対して支払うお金」人件費や事務所経費など支払は生じるが、会社を運営する費用なので、「会社の中に残るお金」と定義。
端的に言えば、工事原価報告書の作成をやめ、材料、外注費は売上原価、他経費は全て販売管理費に分類した損益計算書を作成。
そこで表示される売上から原価を引いた売上総利益こそ、会社が付加した価値であり、この付加価値を伸ばすことを経営の目標に定めます。
「付加価値額経営」実践には大きく5つのステップがあるそうです。
①(上記の様に)出ていくお金と残る雄お金を分類する ②がんばれば達成できそうな、翌期の付加価値額(粗利額)と売上を設定する ③担当者は案件ごとに目標付加価値に合った予算書を作成する ④会議で承認された担当者にのみ発注を許可する ⑤承認を受けたすべての案件一覧表をつくる
以降は、この管理を通じ、取引先や実施業務(工事)を見直しを図り選択と集中を進めること。利益率の高い業務(工事)を横展開していくこと。なにより社員に「付加価値額経営」を浸透させ、儲かる社風へ会社を変えていくための取り組みなどを紹介しています。
きちんと付加価値が取れる(採算が取れる)業務への集中は、結果として下請体質からの脱却へ繋がっていきます。反面、仕事は選別していきますから、売上の伸びには自ずと限度があります。そこで視野に入れ検討すべきはM&A。
今後、更に労働人口の減少が進むなか、中小零細企業の淘汰が始まり、現在400万社以上ある企業数は半減すると著者は説きます。存続のためには、規模の拡大を図らなければならずM&Aは重要な選択肢の一つとなります。しかしただ闇雲に手を伸ばすのではなく「付加価値額経営」実践による健全な体質の企業群を構成していくことが重要とし結んでいます。
なぜ一地方企業の経営者が、本書執筆に至ったか、その経緯などは明かされていない点が残念ですが、叩き上げ経営者の執筆だけに専門用語の多用もなく、平易な文書で読みやすい1冊でした。
イーストプレス 2023年10月16日 第1刷発行
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