鳩山総務大臣の日本郵政のかんぽの宿問題や東京駅の郵便局の建て替え問題は、ごく初歩的なファイナンスの知識や中の下ぐらいの芸術的センスがあればすぐに分るのだが、ただいちゃもんをつけて特定郵便局長会をはじめとする郵政ファミリーに、

「小泉・竹中の構造改革であなた方の利権を奪おうとしていましたが、私はそれをなんとか骨抜きにしてまたあなた方の利権を復活させますよ。郵政民営化の実行隊長であるにっくき西川社長を私が首にしてあげますよ。だから私に票を入れてください」

と言うメッセージを送っているにすぎない。

また大手テレビ局を使ってパフォーマンスすれば、ある一定数いるアンチ構造改革の人から賛同を得られるし、よく分かっていない人も票を入れてくれるかもしれないと期待しているのだ。

残念なことに広告料の激減で今や大手テレビ局が政府にどんどん規制してもらって、自分たちの既得権益にしがみつかなければいけない業界になってしまった。
だから、大手マスコミも総務省には頭が上がらない。

さらにもっと言うと、鳩山邦夫と郵政民営化を本丸にしていた小泉純一郎の背後には苛烈な自民党内の権力闘争の歴史がある。

さて、特定郵便局長と言うのをまず説明しよう。
その歴史は明治時代にまでさかのぼる。
欧米の郵便システムを導入しようとした政府が、日本全国の民間人の自宅を借りて郵便局を作ったことにはじまる。
当時は日本では官の地位が民よりもはるかに高かったので、民間人に役人にしてあげますと名誉欲を煽って日本全国に郵便局を張り巡らせたのだ。

そして、このように郵便局を運営している人が特定郵便局長で全国に2万人余りいたのである。
つまり、特定郵便局も全国に2万以上あったわけである。
彼らは公務員の身分を保障されながら、自宅を郵便局として貸し出しているのでかなり割高な賃貸料が国から支払われていた。
さらに、さまざまな経費としてノーチェックの渡切経費と呼ばれるものが数百万円国から振り込まれていた。
また、公務員であるにもかかわらず、形式的な任用試験を身内にだけ行い、ほぼ世襲でこの地位を継承し続けていたのである。

コンビニ店長が24時間営業して年収400万円ぐらいなのに、となりの特定郵便局長は4時に仕事が終わって、年収は実質1500万円ぐらいだった。
しかも、公務員なのでどんなに営業成績が悪くても給料が減ることはない。
これはとんでもない利権だったのである。

しかし、特定郵便局長とその家族は自民党の強大な集票マシーンとして機能していた。
もともと、地方の名士の出身が多かった特定郵便局長は、郵便局の営業を通して近所の住人に顔が利く。
さらに郵便事業には膨大な数の関連企業があり、それらの関連企業に天下っているのが郵政省(現総務省)の役人なのである。
これらの関連企業は郵便局に必要な機材やシステムを受注しているのである。

特定郵便局長会を中心とした郵政ファミリーは自民党の特定議員を当選させ、その見返りとして利権を確保していたのである。

このように競争のない、何をしてもつぶれない組織と言うのは必ず腐敗してくる。
実際、特定郵便局長からは選挙法違反や横領などの罪でかなりの逮捕者が出ているのである。

自民党の歴史の中でこの特定郵便局長会の集票力をもっとも積極的に利用していたのが、あの金権政治で有名な田中角栄だ。
実は小泉純一郎は、この田中派が主流となっている自民党内で冷や飯を食わされていた福田赳夫の福田派に属していたのだ。
小泉純一郎が郵政民営化にこだわったのも必然なのである。

しかし、自民党内にも時代の流れの中で利権団体に利益を誘導して票を集めると言う昔ながらのビジネス・モデルでは、今後やっていけないと言う危機感があった。
そう言った中で紆余曲折を経て突然変異的に誕生したのが小泉首相だったわけだ。

この小泉首相は念願の郵政民営化を実行しようとするのだが、そんなに簡単にいくわけがない。
郵政民営化とは自分たち自民党を当選させてくれいている集票マシーンの利権を奪うことに他ならないからである。

小泉首相が「自民党をぶっ壊す」とさかんに言っていたのは、田中派をルーツに持つ経世会と言う自民党の主流派閥のことだったのである。

こう言った自民党内の構造から郵政民営化など絶対に出来ないと誰もが考えていたのである。
ところが小泉純一郎は竹中平蔵と言う希有の経済学者とコンビを組み、圧倒的な国民の支持のもとこの偉業を成し遂げてしまったのである。
多くの政治記者が永田町の奇跡と呼んだ所以である。

自民党の中には当然、各選挙区の特定郵便局長会や郵政ファミリーから投票してもらっている議員もたくさんいるが、彼らは小泉内閣の圧倒的な支持を見て、こう言った既得権益を嫌悪している無党派層からの逆襲をおそれて、最後の最後に特定郵便局長会を裏切ったのである。

それでも郵政民営化法案に最後まで反対した自民党議員は、小泉総理の解散郵政選挙で自ずからの選挙区に刺客を送りこまれてぶち殺されたわけである。

知れば知るほど、小泉純一郎とはすごい男である。

さて、その鳩山邦夫だが、何を隠そう福田赳夫の宿敵だった田中角栄の元秘書なのである。

このように鳩山総務大臣の一連のおかしな行動の裏には、実はおそろしくどす黒い権力闘争の歴史があるのだ。

とは言え、僕のような名もないサラリーマンから見れば、国民の方をいつも向いているのは小泉さんや竹中さんだ。
一部の利権団体や天下り官僚の方を向いているのは鳩山邦夫だ。

税金を使ってそんな権力闘争を今更むし返しているなんて、納税者のひとりとして迷惑このうえないと思う。

国民が100%株主のかんぽの宿はいまだに赤字を垂れ流し続けている。
オリックス不動産以外の買い手はいっこうに現れない。



閑話休題。



さて、アジアの他の国々をみるとシンガポール政府や香港政府は、どうやって世界から才能を集めるのか。
どうやって世界からエクセレント・カンパニーを集めるのか。
どう言うインフラストラクチャーを整備すれば経済をさらに成長させることができるのか。
こう言ったことを真剣に考えて、自国の住民が自由に経済活動を出来るようにどんどん環境を整えているのである。

このように世界がどんどん前に進んで行っている時に、自民党内では大多数の国民の不利益に脇目もふらず、どうにもくだらない利権をめぐる権力闘争に(税金を使って)明け暮れているのである。
そんなことを考えると日本の政治にはやはり絶望せざるを得ない。
もしそれでもかすかな光があるとすれば、そう言った大きなハンディキャップを背負いながらなんの利権も持たない民間人がまだまだ沢山がんばっていると言うことぐらいだ。

鳩山総務相や原田議員はすぐにでも政治家を辞めて、全財産を投入し速やかにかんぽの宿を買い取り経営を立て直して貰えないだろうか。
彼らの言うように不当に安値で売られたならば、莫大な利益が手に入るはずである。

最後に、このブログを読んでいる若い人にひとつ言うと、一般論として、だいたい25歳以上の大人が「正義」とか「愛」とか言いだしたら、かなり胡散臭いことをしていると思っていただいて間違いない。


(参考文献)
特定郵便局長を斬る
特定郵便局
構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌、竹中平蔵
自民党政治の終わり、野中尚人
郵政攻防、山脇岳志