最近、大手テレビ局各社が急激な広告料の落ち込みで立て続けに大きな赤字を計上している。
また、いくつかの調査で若者のネットの利用時間がテレビの視聴時間を上回っていることが示された。[1]
そこで一部の識者たちはテレビのビジネスモデルはいよいよ終焉を迎えた、これからはネットの時代だと書きたてている。[2,3]

本当にそうだろうか?
僕もテレビなんかよりもフラットで自由なカルチャーのインターネットが大好きなので、ネットがテレビを超えたと言うのが本当ならとても嬉しく思うことだろう。
しかし、冷静に数字を追っていけば、インターネットが、少なくともひとつのメディアとしてでは、テレビを追い越しつつあると言うのはただの幻想であると言うほかない。

まずテレビ局が赤字なのは単にまともに経営されてないのと利益を全部社員で山分けしちゃっているからである。
ふつうに経営して社員の給料をふつうの大企業と同じぐらいにしたらいくらでも利益がでる。
今時、終身雇用で社員の平均年収が1500万円以上と言うのはやり過ぎだろう。
外資系の金融機関の平均年収はこれよりも高いだろうがリスクが全然ちがう。
実際、外資系の金融機関の社員はこの1年ちょっとの間に30%ぐらいカットされたのだ。
この間、テレビ局の正社員がリストラされたなんて聞いたことがない。
(逆に言えば社員の3人のうち1人を首にしても、残った2人の給料を下げないように経営者ががんばるのが、僕が個人的にはとても好きな生き馬の目を抜く金融業界のカルチャーだ)

ふつうならこんな経営をしていたら株主に突き上げられて経営者はすぐに首になるのだが、テレビ局の経営者は外国人持ち株比率に制限があったり、仲良し企業と株の持合いをしたりして、資本主義の原理原則が適用されないように二重にも三重にも守られているのである。
それでも買収しようとしたホリエモンなどは、巧みな世論誘導で犯罪者にされてしまったのだからその影響力はすさまじい。

よく考えてみてほしい。
人気番組なら視聴率は10%から20%ぐらいである。
日本の人口を1億2000万人とすると10%でだいたい1200万人が見るということである。
20%でだいたい2400万人である。
インターネットのビジネスに詳しければ、1000万人とか2000万人が同時に見ると言うのがどれぐらいすごいことか分かるだろう。
全然人気のない深夜番組でも視聴率は1%以上はある。
つまり、そんな番組でも100万人以上が見るということだ。
本で100万部売れたら超ベストセラーで、そんな本は一年に2、3冊出るか出ないかだ。
ネット・ベンチャーの経営者なら、これほど恵まれた状況にありながら赤字を出すと言うことは半ば信じられないのではないだろうか?

また、テレビ局の政治力は本当にすごい。
今もテレビ局は完全に日本最大の権力である。
ふつうの政治家ならちょっとテレビにネガティブな印象を与える映像を流されただけで終わりだ。

そう言うわけでテレビ局が赤字なのはテレビ局のビジネスモデルが陳腐化したからではない。
社員と経営者で利益を取り過ぎているだけなのである。
潜在的な収益力、国民への影響力、政治力、どれを見てもテレビ局と言うのは今でもあまりにも強大なのだ。

それでは、ネットの世界を見てみよう。
YahooGoogleは多くの人のインターネットの入り口になっているので、テレビ局に匹敵するページビューがある。
しかし、逆に言えばYahooとGoogle以外にテレビと同等以上に露出があるものがインターネットには全くないのである。
それにYahooとGoogleはもちろんただのポータルサイトでありサーチエンジンなので、メディアと言うのとはちょっとちがう。

それではアルファ・ブロガーと言われている人たちはどうだろうか?
最近、アルファ・ブロガーは社会に影響力を持っていると言われている。
今、日本で最も読まれているであろうブログを思いうかべてみよう。
おそらくホリエモンのアメブロ池田信夫blog404 Blog Not Found小飼弾あたりがアクセス数等の観点からもっとも影響力を持っているブログと言えるだろう。

こう言ったブログ界のスーパースターがひとつエントリーをアップするとどれぐらいのアクセスがあるのだろうか?
せいぜい10万アクセスに届くか届かないかぐらいである。
ちなみに僕のブログは更新するとだいたいユニーク・ユーザー数で1万を少々超えるぐらいのアクセスがある。

日本に1000万以上あると言われるブログの中で頂点に君臨しているこの3人でもたったの10万ページビューなのである。
これはテレビで言えば視聴率0.1%だ。
もっとも人気のあるブロガーが記事を書いても、それはもっとも人気の無さそうな深夜番組の10分の1にすら届かないのだよ。

町に出てみて人々にホリエモン、池田信夫、小飼弾を知っているか聞いてみたらどう答えるだろうか?
ホリエモンは100人のうちの99人ぐらいは「知っている」と答えるだろう。
ところが池田信夫と小飼弾を知っている人は何人いるだろうか?
おそらく100人のうちの1人もいないだろう。
なぜホリエモンはみんな知っているのだろうか?
それはホリエモンがテレビにいっぱい出たからである。
結局、アルファ・ブロガーの影響力なんていうのは極めて小さいのである。

はてなブックマークがいくつつこうがLivedoorのトップページに掲載されようと、全く人気のない深夜番組の名も無きグラビアアイドルの影響力よりも小さいのが現状のネットなのである。
残念ながらYahooとGoogle以外のサイトなんて所詮テレビの足元にも及ばないと言うのが紛れもない事実なのだ。


[1] インターネットの利用時間、20代男性でテレビを抜く--博報堂DYメディア調査
[2] メディアの未来/民主党政権
[3] 僕が2ちゃんねるを捨てた理由、ひろゆき