2009年11月05日
サルでも分かる日銀の苦悩と流動性トラップ
日銀の白川方明総裁は3日都内で講演し、「国債という借金の実質的な価値を目減りさせるためインフレ的な政策を採れば、さまざまな問題が起こる」と指摘。その上で「そうしたことは中央銀行は決して行わない」と強調した。
時事ドットコム:インフレ的政策は採用せず=日銀の白川総裁
今日はネットではこの話で少しばかり盛り上がっているようですね。
日銀がインフレを絶対に起こさないというのであれば、政治家と官僚が田舎に誰も使わない空港をたくさん作ったり、さまざまな官僚の天下り企業にばら撒いたりするために、日本国政府が築き上げた途方もない借金を返していくのは、そんな政治に全く関わっていなかった若年層の労働者であり、これから働き始める子供達です。
確かにインフレを起こすのは中央銀行にとっては禁じ手で決して筋のいいものではありませんが、だからと言って全く政治に関わっていなかった若者や未来の子供たちに借金を押し付けるのはそれ以上に問題でしょう。
日銀は政府の失敗を自分たちに押し付けられてはたまらないと思っているのでしょう。
もちろんインフレは借金を消す魔法ではありません。
国債の発行は未来の徴税の何物でもなく、ふつうは所得税やら法人税やら消費税で未来の労働者が払うのですが、インフレというのは現金や国債をたくさん持っている人が資産課税という形でまったく民主主義的なプロセスを踏まずに無理やり払わされるだけです。
しかし、日本の莫大な借金は通常の徴税プロセスだけでは返せないしそうするべきでないのも明白で、ちょっとずつインフレ課税もかけていくのが実現できればベストだと僕も思っています。
とは言え、日銀がインフレを起こすのは一部の経済学者が思っているほど簡単ではないのも事実です。
なぜ日銀はこれほど日本経済を蝕んでいるデフレという病を治せないのでしょうか?
この前の貨幣数量理論を読めば、日銀がもっとお金を刷ればかんたんにデフレなど解決するじゃないかと思った人も多いことでしょう。
実際にそのように主張する経済学者もたくさんいます。
しかし、現在のような状況では日銀ができることは実はあまりないのです。
日本経済は10年以上も「流動性トラップ」というやっかいなものにはまりこんでいるからです。
通常の金融政策では景気が悪くなったり物価が下がって来たら金融緩和をします。
通常の金融緩和とは中央銀行が短期金利を下げることです。
中央銀行が金利を下げると市場に出回るお金の総量が増えるます。
この辺をもう少しくわしく書くと、中央銀行では定期的にえらい人が集まって経済状況を話し合って最後は鉛筆を舐めながら目標の短期金利を決めます。
日銀の場合、この会合を金融政策決定会合といいます。
そして具体的には「短期金融市場のオーバーナイト金利をX%にするように施す」というように決まります。
短期金融市場というのは非常に信用の高い大手金融機関が資金を貸し借りするところでオーバーナイト金利とは一日だけ貸したり借りたりするときの金利です。
大手金融機関というのはこのように毎日資金を融通し合っているのです。
ちなみにリーマンブラザーズが破たんした時は、世界的な大手金融機関といえどもつぶれることがあると分かり、他の金融機関が連鎖倒産するかもしれないとみんなビビったので、この短期金融市場まで凍りつきました。
このとき世界の中央銀行は各国の短期金融市場で事実上すべての取引に国の補償をつけることにより短期金融市場の崩壊を食い止めました。
まさに世界経済の血液が止まる直前までおい込まれたのでした。
さて話は戻りますが、日銀はこのオーバーナイト金利を目標になるまでさまざまな方法を使って誘導させていくのです。
たとえば満期の短い国債を金融機関から目標金利になるまで買います。
金利が決まれば債券の値段は決まるし逆に債券の値段が決まれば金利が決まります。
金利を低くしたかったら債券をより高い値段で買ってあげればいいのです。
すると金融機関は短期金融市場で借りるより、手元の短期国債を日銀に売って現金を確保した方が得だったらそうするでしょう。
やがてオーバーナイト金利も短期国債の金利もどっちが有利とも不利ともいえない金利に落ち着くでしょう。
逆に金利を上げたかったら短期国債を売ったりします。
結局、金融政策で金利を下げると、短期の国債を日銀が民間の銀行から買ってその見返りに現金を渡すことになるのでお金の供給量が増えます。
だからこのように金利を下げることを金融緩和というのです。
逆に金利を上げると、日銀は民間の銀行からお金を吸収することになるので、金融引き締めといいます。
ところで日銀や世界の中央銀行は、なぜ政策金利の誘導目標をこんな一日だけの大手金融機関同士の貸し借りのような極めて限られた市場の金利にしているのでしょうか?
それは市場原理を最大限に働かせるためです。
満期まで10年以上もある国債や、倒産してしまうリスクのある社債は、民間の金融機関のトレーダーが少しでもリスクを減らして少しでもたくさん儲けようと激しく競争して決まっていくべきなのです。
そのようにさまざまな経済情勢を織り込みながら金融商品の値段は決まっていかないといけません。
そこで他の参加者よりうまく分析して将来をより正確に予測できたトレーダーは大きな利益を得るのです。
日銀も世界の中央銀行も市場原理を極めて重視しています。
もちろん中長期的な経済の成長に合わせて日銀は長期国債を買っていますがこれは純粋に経済の規模に合わせて必要な貨幣を供給するという目的であり、長期金利を誘導しようという意図はないものです。
中央銀行が株式や社債などの短期金利以外の金融商品を売買するのはよほどの緊急事態で、非伝統的金融政策と呼ばれます。
こういう政策は市場原理を歪めるので本当に緊急の時以外はできるだけ避けたいのです。
さて、金利が低くなると、安く資金を調達できるので、銀行からお金を借りて新しく事業を始めようとする民間の企業もたくさんでてきますし、安くお金を調達して新しい事業を起こしたり、もっと利回りのよさそうな株や不動産に回ったり、モノやサービスを買ったりするのに使われて、景気もよくなって物価もじわじわと上がっていくことでしょう。
逆に景気が過熱しすぎて物価がどんどん上がってきたら、中央銀行は金利を上げてこの逆をすればいいいわけです。
日本経済はそんな状況をもう20年近く経験していないので、金利を上げるなんてことはすっかり忘れてしまってしまったかもしれませんが。
さて、この金融政策ですが金利はゼロより下げられないから、日本のように長い期間にわたって不況が続き、物価が下落し続ける状況では金利がゼロに張り付いてしまっています。
だから金利を上げ下げするふつうの金融政策はもう効かないのです。
しかも、このゼロ金利の世界というのは、現金を持っている機会コストがゼロになるという際立った現象が起こります。
このことによっていくらマネーサプライを増やしても物価が上がらないという非常に奇妙な罠にはまりこんでしまいます。
これが流動性トラップです。
現金を持つコストを思い出しましょう。
それは金利でした。
国債を買えば金利を得られるのに、現金で持っていたり、ほとんど金利のつかないいつでも引き出せる銀行貯金にしていたりすると金利を稼げません。
現金を持っているとこの金利の分をいつも損をするのです。
それでは現金を持つメリットは何でしょうか?
それは流動性です。
流動性というのはいつでも使いたいときにお金を使えることです。
現金を持っていたら何か欲しいモノがあればすぐに買えます。
割安な株や不動産を見つけたらすぐに投資することができます。
しかし、国債を買っていたら現金に換えるのがかなり面倒ですし、満期まで持たずに売ると何らかのペナルティーがついたりします。
つまり、現金やいつでも引き出せる貯金というのは、国債を買っていたらもらえるであろう金利をあきらめて、便利さという流動性を手にいれることなのです。
よって、中央銀行が金融政策で金利をどんどん下げていけば、現金を持つことの機会コストを下げますから、現金を持つことの便利さというメリットだけがでてくることになります。
個人も企業も国債なんて買わずに現金をたくさん持つことでしょう。
そして、この現金は様々な経済活動に使われることになります。
日銀は1990年の土地バブル崩壊以降の景気後退とデフレを止めるために金利をどんどん下げていったのですが2000年ごろには、とうとう金利がゼロになってしまいました。
その後も金利をゼロにしてなんとか不景気とデフレと闘っています。
これがゼロ金利政策です。
しかし、このゼロ金利政策もぜんぜん日本のデフレには打ち勝てずに日銀は次の手段にでます。
それが量的緩和政策です。
量的緩和政策では今度は金利はゼロでもう下げられないから貨幣供給そのものを直接増やすことを目標としました。
具体的には、国債や手形の毎月の購入額を増やしてお金を市中に供給したり、民間の銀行に無利子で大量のお金を貸し出したりしたのです。
民間の銀行は無利子の大量の現金を抱え込めば、それを住宅ローンなどで貸し出したり、企業に貸し出したりするので、世の中にお金がどんどん出回りデフレも克服できるだろうと考えたのです。
しかし、ゼロ金利だとどうなるでしょうか?
この場合、国債を買っても金利がほとんどゼロなので、現金をたくさん持っている機会コストもゼロになります。
だったら流動性があって便利な現金をそのままタンスの中や銀行に寝かしておいても何の問題もありません。
どうせ国債で運用しても金利がほとんどゼロですし、景気が悪くてデフレでは株や不動産で運用してもリスクの割にいい利回りは期待できそうもないからです。
また、デフレということはモノやサービスの値段がどんどん下がっていき、逆にお金の価値がどんどん上がるので、無理して投資したり事業を起こすよりも、現金をタンスにでも眠らせておいた方が得です。
つまり、中央銀行がいくらお金を刷ってお金の量をどんどん増やしても、それは銀行口座やタンスの中に積み上がっていくだけで、まったく世の中でぐるぐる回らず、物価を上げないし、景気もよくしないのです。
日本経済はこの流動性の罠に長年はまりこんでしまいなかなか抜け出せないのです。
また、金利がゼロでも実質的な金利は実はかなり高いということもいえます。
金利がゼロでもたとえば毎年物価が2%さがれば、それは実質2%の金利がついていることと同じだといえます。
物価の変動率、つまりインフレ率は日本ではずっとマイナスなので、ゼロ金利政策は金融緩和のようにみえて、実際には金融引き締めだといえます。
しかし、金利はゼロより下げられないので、日銀としてはなんともできないのです。
それでは次回はバーナンキの背理法でも勉強しましょう。
「もし、日銀が国債をいくら購入したとしてもインフレにはならない」と仮定する。
すると、市中の国債や政府発行の新規発行国債を日銀がすべて買い取ったとしてもインフレが起きないことになる。
そうなれば、政府は物価・金利の上昇を全く気にすることなく無限に国債発行を続けることが可能となり、財政支出をすべて国債発行でまかなうことができるようになる。
つまり、これは無税国家の誕生である。
しかし、現実にはそのような無税国家の存在はありえない。
ということは背理法により最初の仮定が間違っていたことになり、日銀が国債を購入し続ければいつかは必ずインフレを招来できるはずである。
バーナンキの背理法
追伸
ガジェット通信に寄稿しました。
日本国政府がどれだけ借金しても絶対に日本は倒産しないと言うことのサルでも分かる説明
時事ドットコム:インフレ的政策は採用せず=日銀の白川総裁
今日はネットではこの話で少しばかり盛り上がっているようですね。
日銀がインフレを絶対に起こさないというのであれば、政治家と官僚が田舎に誰も使わない空港をたくさん作ったり、さまざまな官僚の天下り企業にばら撒いたりするために、日本国政府が築き上げた途方もない借金を返していくのは、そんな政治に全く関わっていなかった若年層の労働者であり、これから働き始める子供達です。
確かにインフレを起こすのは中央銀行にとっては禁じ手で決して筋のいいものではありませんが、だからと言って全く政治に関わっていなかった若者や未来の子供たちに借金を押し付けるのはそれ以上に問題でしょう。
日銀は政府の失敗を自分たちに押し付けられてはたまらないと思っているのでしょう。
もちろんインフレは借金を消す魔法ではありません。
国債の発行は未来の徴税の何物でもなく、ふつうは所得税やら法人税やら消費税で未来の労働者が払うのですが、インフレというのは現金や国債をたくさん持っている人が資産課税という形でまったく民主主義的なプロセスを踏まずに無理やり払わされるだけです。
しかし、日本の莫大な借金は通常の徴税プロセスだけでは返せないしそうするべきでないのも明白で、ちょっとずつインフレ課税もかけていくのが実現できればベストだと僕も思っています。
とは言え、日銀がインフレを起こすのは一部の経済学者が思っているほど簡単ではないのも事実です。
なぜ日銀はこれほど日本経済を蝕んでいるデフレという病を治せないのでしょうか?
この前の貨幣数量理論を読めば、日銀がもっとお金を刷ればかんたんにデフレなど解決するじゃないかと思った人も多いことでしょう。
実際にそのように主張する経済学者もたくさんいます。
しかし、現在のような状況では日銀ができることは実はあまりないのです。
日本経済は10年以上も「流動性トラップ」というやっかいなものにはまりこんでいるからです。
通常の金融政策では景気が悪くなったり物価が下がって来たら金融緩和をします。
通常の金融緩和とは中央銀行が短期金利を下げることです。
中央銀行が金利を下げると市場に出回るお金の総量が増えるます。
この辺をもう少しくわしく書くと、中央銀行では定期的にえらい人が集まって経済状況を話し合って最後は鉛筆を舐めながら目標の短期金利を決めます。
日銀の場合、この会合を金融政策決定会合といいます。
そして具体的には「短期金融市場のオーバーナイト金利をX%にするように施す」というように決まります。
短期金融市場というのは非常に信用の高い大手金融機関が資金を貸し借りするところでオーバーナイト金利とは一日だけ貸したり借りたりするときの金利です。
大手金融機関というのはこのように毎日資金を融通し合っているのです。
ちなみにリーマンブラザーズが破たんした時は、世界的な大手金融機関といえどもつぶれることがあると分かり、他の金融機関が連鎖倒産するかもしれないとみんなビビったので、この短期金融市場まで凍りつきました。
このとき世界の中央銀行は各国の短期金融市場で事実上すべての取引に国の補償をつけることにより短期金融市場の崩壊を食い止めました。
まさに世界経済の血液が止まる直前までおい込まれたのでした。
さて話は戻りますが、日銀はこのオーバーナイト金利を目標になるまでさまざまな方法を使って誘導させていくのです。
たとえば満期の短い国債を金融機関から目標金利になるまで買います。
金利が決まれば債券の値段は決まるし逆に債券の値段が決まれば金利が決まります。
金利を低くしたかったら債券をより高い値段で買ってあげればいいのです。
すると金融機関は短期金融市場で借りるより、手元の短期国債を日銀に売って現金を確保した方が得だったらそうするでしょう。
やがてオーバーナイト金利も短期国債の金利もどっちが有利とも不利ともいえない金利に落ち着くでしょう。
逆に金利を上げたかったら短期国債を売ったりします。
結局、金融政策で金利を下げると、短期の国債を日銀が民間の銀行から買ってその見返りに現金を渡すことになるのでお金の供給量が増えます。
だからこのように金利を下げることを金融緩和というのです。
逆に金利を上げると、日銀は民間の銀行からお金を吸収することになるので、金融引き締めといいます。
ところで日銀や世界の中央銀行は、なぜ政策金利の誘導目標をこんな一日だけの大手金融機関同士の貸し借りのような極めて限られた市場の金利にしているのでしょうか?
それは市場原理を最大限に働かせるためです。
満期まで10年以上もある国債や、倒産してしまうリスクのある社債は、民間の金融機関のトレーダーが少しでもリスクを減らして少しでもたくさん儲けようと激しく競争して決まっていくべきなのです。
そのようにさまざまな経済情勢を織り込みながら金融商品の値段は決まっていかないといけません。
そこで他の参加者よりうまく分析して将来をより正確に予測できたトレーダーは大きな利益を得るのです。
日銀も世界の中央銀行も市場原理を極めて重視しています。
もちろん中長期的な経済の成長に合わせて日銀は長期国債を買っていますがこれは純粋に経済の規模に合わせて必要な貨幣を供給するという目的であり、長期金利を誘導しようという意図はないものです。
中央銀行が株式や社債などの短期金利以外の金融商品を売買するのはよほどの緊急事態で、非伝統的金融政策と呼ばれます。
こういう政策は市場原理を歪めるので本当に緊急の時以外はできるだけ避けたいのです。
さて、金利が低くなると、安く資金を調達できるので、銀行からお金を借りて新しく事業を始めようとする民間の企業もたくさんでてきますし、安くお金を調達して新しい事業を起こしたり、もっと利回りのよさそうな株や不動産に回ったり、モノやサービスを買ったりするのに使われて、景気もよくなって物価もじわじわと上がっていくことでしょう。
逆に景気が過熱しすぎて物価がどんどん上がってきたら、中央銀行は金利を上げてこの逆をすればいいいわけです。
日本経済はそんな状況をもう20年近く経験していないので、金利を上げるなんてことはすっかり忘れてしまってしまったかもしれませんが。
さて、この金融政策ですが金利はゼロより下げられないから、日本のように長い期間にわたって不況が続き、物価が下落し続ける状況では金利がゼロに張り付いてしまっています。
だから金利を上げ下げするふつうの金融政策はもう効かないのです。
しかも、このゼロ金利の世界というのは、現金を持っている機会コストがゼロになるという際立った現象が起こります。
このことによっていくらマネーサプライを増やしても物価が上がらないという非常に奇妙な罠にはまりこんでしまいます。
これが流動性トラップです。
現金を持つコストを思い出しましょう。
それは金利でした。
国債を買えば金利を得られるのに、現金で持っていたり、ほとんど金利のつかないいつでも引き出せる銀行貯金にしていたりすると金利を稼げません。
現金を持っているとこの金利の分をいつも損をするのです。
それでは現金を持つメリットは何でしょうか?
それは流動性です。
流動性というのはいつでも使いたいときにお金を使えることです。
現金を持っていたら何か欲しいモノがあればすぐに買えます。
割安な株や不動産を見つけたらすぐに投資することができます。
しかし、国債を買っていたら現金に換えるのがかなり面倒ですし、満期まで持たずに売ると何らかのペナルティーがついたりします。
つまり、現金やいつでも引き出せる貯金というのは、国債を買っていたらもらえるであろう金利をあきらめて、便利さという流動性を手にいれることなのです。
よって、中央銀行が金融政策で金利をどんどん下げていけば、現金を持つことの機会コストを下げますから、現金を持つことの便利さというメリットだけがでてくることになります。
個人も企業も国債なんて買わずに現金をたくさん持つことでしょう。
そして、この現金は様々な経済活動に使われることになります。
日銀は1990年の土地バブル崩壊以降の景気後退とデフレを止めるために金利をどんどん下げていったのですが2000年ごろには、とうとう金利がゼロになってしまいました。
その後も金利をゼロにしてなんとか不景気とデフレと闘っています。
これがゼロ金利政策です。
しかし、このゼロ金利政策もぜんぜん日本のデフレには打ち勝てずに日銀は次の手段にでます。
それが量的緩和政策です。
量的緩和政策では今度は金利はゼロでもう下げられないから貨幣供給そのものを直接増やすことを目標としました。
具体的には、国債や手形の毎月の購入額を増やしてお金を市中に供給したり、民間の銀行に無利子で大量のお金を貸し出したりしたのです。
民間の銀行は無利子の大量の現金を抱え込めば、それを住宅ローンなどで貸し出したり、企業に貸し出したりするので、世の中にお金がどんどん出回りデフレも克服できるだろうと考えたのです。
しかし、ゼロ金利だとどうなるでしょうか?
この場合、国債を買っても金利がほとんどゼロなので、現金をたくさん持っている機会コストもゼロになります。
だったら流動性があって便利な現金をそのままタンスの中や銀行に寝かしておいても何の問題もありません。
どうせ国債で運用しても金利がほとんどゼロですし、景気が悪くてデフレでは株や不動産で運用してもリスクの割にいい利回りは期待できそうもないからです。
また、デフレということはモノやサービスの値段がどんどん下がっていき、逆にお金の価値がどんどん上がるので、無理して投資したり事業を起こすよりも、現金をタンスにでも眠らせておいた方が得です。
つまり、中央銀行がいくらお金を刷ってお金の量をどんどん増やしても、それは銀行口座やタンスの中に積み上がっていくだけで、まったく世の中でぐるぐる回らず、物価を上げないし、景気もよくしないのです。
日本経済はこの流動性の罠に長年はまりこんでしまいなかなか抜け出せないのです。
また、金利がゼロでも実質的な金利は実はかなり高いということもいえます。
金利がゼロでもたとえば毎年物価が2%さがれば、それは実質2%の金利がついていることと同じだといえます。
物価の変動率、つまりインフレ率は日本ではずっとマイナスなので、ゼロ金利政策は金融緩和のようにみえて、実際には金融引き締めだといえます。
しかし、金利はゼロより下げられないので、日銀としてはなんともできないのです。
それでは次回はバーナンキの背理法でも勉強しましょう。
「もし、日銀が国債をいくら購入したとしてもインフレにはならない」と仮定する。
すると、市中の国債や政府発行の新規発行国債を日銀がすべて買い取ったとしてもインフレが起きないことになる。
そうなれば、政府は物価・金利の上昇を全く気にすることなく無限に国債発行を続けることが可能となり、財政支出をすべて国債発行でまかなうことができるようになる。
つまり、これは無税国家の誕生である。
しかし、現実にはそのような無税国家の存在はありえない。
ということは背理法により最初の仮定が間違っていたことになり、日銀が国債を購入し続ければいつかは必ずインフレを招来できるはずである。
バーナンキの背理法
追伸
ガジェット通信に寄稿しました。
日本国政府がどれだけ借金しても絶対に日本は倒産しないと言うことのサルでも分かる説明
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1. インフレで財政赤字を解消する過程 [ 統計学+ε: 米国留学・研究生活 ] 2009年11月05日 04:42
金融日記のKAZUさんが
また財政・マクロ関係の記事
「サルでも分かる日銀の苦悩」をアップした。
昔、「金融工学」をもじった「恋愛工学」を??.
2. 日銀がお金をたくさん刷れば問題が解決すると思っているサルでも分かる日銀の苦悩と流動性トラップ [ 会社員の株式投資日記 ] 2009年11月06日 20:27
最近、とても面白く読んでいる金融日記。
○サルでも分かる日銀の苦悩と流動性トラップ
○日銀がお金をたくさん刷れば問題が解決すると思っているオメデタイ人々を救済するエントリー
話がディープな方にいくとなかなか理解できないのですが(笑)
>当たり前で....
この記事へのコメント
1. Posted by ともい 2009年11月05日 00:40
KAZUさんの著書拝見しました。
いずれ書評させて頂きます

いずれ書評させて頂きます

2. Posted by 権兵衛 2009年11月05日 00:50
>日銀がインフレを起こすのは一部の経済学者が思っているほど簡単ではないのも事実です。
この点はもっと強調されてもいいと思う。
バーナンキもクルーグマンも最近は騒がなくなった。
それはともかく・・・
「バーナンキの背理法」なんか不用意に書いちゃっていいの?
またシャレのわからない連中が本気にして騒ぎだすかもよ。
猿になんとかを教えるとなんとやら、みたいな感じで・・・
この点はもっと強調されてもいいと思う。
バーナンキもクルーグマンも最近は騒がなくなった。
それはともかく・・・
「バーナンキの背理法」なんか不用意に書いちゃっていいの?
またシャレのわからない連中が本気にして騒ぎだすかもよ。
猿になんとかを教えるとなんとやら、みたいな感じで・・・
3. Posted by ななしくん 2009年11月05日 04:16
日銀券のコピーも日銀券として利用できる。と立法すればあっという間にインフレになるでしょ(笑
コントロールできないけど。
コントロールできないけど。
4. Posted by 石川 2009年11月05日 06:45
日銀は、国内に対しては面子を保ちたい、主導権を維持したい、海外に対しては、実は何の情報も持っていない、だから恐怖の存在。つまり競争すると負けることがわかっている。よって金融政策が膠着してしまう。
日本がやたら弱いのは、情報を入手する努力が足りないのですよ。古い情報ばかり活用する。本に書かれているだけで、古いんです。日本のネットもダメなのは、古い情報であれこれ妄想しているからですね。読書しましょうとか、大声をだしている人もいますけど、本になった時点で古いんです。アメリカがなんだかんだで強いのは、新しい情報を常に手に入れているし、手に入れていても知らないふりをしていたりすることです。
日銀がまずやるべきことは、国内にいる人材配置を1割にして、9割は海外に派遣することです。貧乏でも期待できる国ならぜひとも派遣する。国内については、1割でまわらないのなら、民間を活用すればいい。それに、既存の銀行から情報提供を受けるということでしょうね。独立性が保てないのは、システムではなくて、個人の能力の問題です。
日本がやたら弱いのは、情報を入手する努力が足りないのですよ。古い情報ばかり活用する。本に書かれているだけで、古いんです。日本のネットもダメなのは、古い情報であれこれ妄想しているからですね。読書しましょうとか、大声をだしている人もいますけど、本になった時点で古いんです。アメリカがなんだかんだで強いのは、新しい情報を常に手に入れているし、手に入れていても知らないふりをしていたりすることです。
日銀がまずやるべきことは、国内にいる人材配置を1割にして、9割は海外に派遣することです。貧乏でも期待できる国ならぜひとも派遣する。国内については、1割でまわらないのなら、民間を活用すればいい。それに、既存の銀行から情報提供を受けるということでしょうね。独立性が保てないのは、システムではなくて、個人の能力の問題です。
5. Posted by 肉 2009年11月05日 07:03
金を動かすには日銀の金融政策より政府の財政出動なんだよな。
インフレは機関車。
始めはジワジワ物価が上がるがドンドン加速して逝って最後には・・・
インフレは機関車。
始めはジワジワ物価が上がるがドンドン加速して逝って最後には・・・
6. Posted by え 2009年11月05日 09:20
長すぎ!
7. Posted by おっぱいがすき 2009年11月05日 13:02
『藤沢数希、金融を語る』とでも題して、金利を虚数にしてみることで起こる、社会的ブレークスルーを研究したKazuさんの新著を期待しています。
8. Posted by 権兵衛 2009年11月05日 13:42
>4
>日銀がまずやるべきことは、国内にいる人材配置を1割にして、9割は海外に派遣することです。貧乏でも期待できる国ならぜひとも派遣する。国内については、1割でまわらないのなら、民間を活用すればいい
なるほど・・
非常に考えさせられる提案であるように思います。
>日銀がまずやるべきことは、国内にいる人材配置を1割にして、9割は海外に派遣することです。貧乏でも期待できる国ならぜひとも派遣する。国内については、1割でまわらないのなら、民間を活用すればいい
なるほど・・
非常に考えさせられる提案であるように思います。
9. Posted by ぬ 2009年11月05日 17:19
要は需要がない。それだけ。
需要があればインフレになる。供給過多だからデフレ。
日銀は円の価値を守ればそれでいい。今のデフレは日銀の責任外。
何ら問題ない。贅沢するな。自殺するな。
こんな感じ。 自己破産すりゃいいよ。自己破産。問題ない。山一證券の時も社員は自己破産しまくっただろ?
それでいい。
需要があればインフレになる。供給過多だからデフレ。
日銀は円の価値を守ればそれでいい。今のデフレは日銀の責任外。
何ら問題ない。贅沢するな。自殺するな。
こんな感じ。 自己破産すりゃいいよ。自己破産。問題ない。山一證券の時も社員は自己破産しまくっただろ?
それでいい。
10. Posted by 通りすがり 2009年11月05日 18:14
為替が自由化される以前だったら、
理屈としては成り立つだろうが、
日本は90年代後半にビッグバーンという
為替と金融の自由化をしたので、
「マンデル・フレミングモデル」でも
わかるように、
金利の高い海外の債券・株を求めて、
資金流出が長期にわたって続いた。
その間、ドル建て資産は増え続けたが、
今回のサブプライム問題で、
日本が所有するドル建て資産は大きく減価した。
日本はドル減価の影響を最も受ける
国の一つである。
為替の自由化以前の状態に部分的にでも
回帰させれば、
袋小路の日銀の状況も改善する可能性はある。
ただし、トリレンマのうち犠牲になる
要素にどう対応するかが
ポイントだろう。
理屈としては成り立つだろうが、
日本は90年代後半にビッグバーンという
為替と金融の自由化をしたので、
「マンデル・フレミングモデル」でも
わかるように、
金利の高い海外の債券・株を求めて、
資金流出が長期にわたって続いた。
その間、ドル建て資産は増え続けたが、
今回のサブプライム問題で、
日本が所有するドル建て資産は大きく減価した。
日本はドル減価の影響を最も受ける
国の一つである。
為替の自由化以前の状態に部分的にでも
回帰させれば、
袋小路の日銀の状況も改善する可能性はある。
ただし、トリレンマのうち犠牲になる
要素にどう対応するかが
ポイントだろう。
11. Posted by sakyo 2009年11月06日 10:27
サルよりアホがコメントさせていただきます。直感的な理解しかしていませんが、日銀がお金の供給をコントロールしても経済をコントロールできるないきがします。新しい事業を興したいけれど資金が足りない、という企業が多ければコントロールできるとは思います。しかし、資金よりもアイディア、事業意欲が足りていないと思われる状況では空回りするだけではないですか?資金を有効に使うあてがないところに、お金を融通しても効果を発揮しないのは明らかだと思います。
12. Posted by zeek 2009年11月07日 02:56
>11
>しかし、資金よりもアイディア、事業意欲が足りていないと思われる状況では空回りするだけではないですか?資金を有効に使うあてがないところに、お金を融通しても効果を発揮しないのは明らかだと思います。
同感です。
結局はどこかへ行ってバブルなどを発生させるのが関の山。
円キャリートレードとか資源バブルとか。
>しかし、資金よりもアイディア、事業意欲が足りていないと思われる状況では空回りするだけではないですか?資金を有効に使うあてがないところに、お金を融通しても効果を発揮しないのは明らかだと思います。
同感です。
結局はどこかへ行ってバブルなどを発生させるのが関の山。
円キャリートレードとか資源バブルとか。
