正直いうと前回のエントリーはいつもよりかなり適当に書いたんですけど、500近いはてなブックマークがついて大変驚きました。
しかし、このことは実は今の日本社会の大きな歪みを浮き彫りにしたように思います。
僕のブログの読者層でいちばん多いのは20代から40代ぐらいのちょっとばかり優秀でちょっとばかりがんばっているサラリーマンではないでしょうか。
そして、その人たちの多くが実は会社を辞めて自分でビジネスを持ちたいとかなり切実に思っているのではないかということです。

考えてみれば彼ら(日本の大企業に勤めている働き盛りのサラリーマン)の閉塞感は相当のものでしょう。
自分たちより上の世代では全然働いていないのに高給取りのノンワーキング・リッチがどっさりいますし、気前のよすぎた退職者への企業年金の支払いが会社の収益に重くのしかかってきます。
かといって経営者は調整型の人ばかりで抜本的な改革をできるとは思えません。
働き盛りのサラリーマンにとってみたら、ノンワーキング・リッチとすでに退職した人たちの生活のために朝から晩まで働いているようなものでしょう。
こういった下が上を支えるようなネズミ講的な仕組みは人口がどんどん増えて会社が成長している限りは成り立ちます。
今は苦しくても自分が中高年になったときは下の人が支えてくれるからです。
ところが人口の増加が止まればネズミ講的な仕組みはかならず破綻するわけで、それが5年後か10年後かはわかりませんが、今の40代以下のサラリーマンはまず逃げ切れないでしょう。
50代以上なら逃げ切れる可能性はまだ残されていますけれど。
これでは働き盛りの若手が逃げ出したいと思うのも無理はありません。
(もちろん外資系企業は外資系企業で別の問題をたっぷりと抱えていますけど)

さて、前置きは長くなりましたが、そこで今日はさらに独立とか起業にとても役だつちょっと技術的な本をもう5冊紹介したいと思います。

1.仕事するのにオフィスはいらない、佐々木俊尚

一昔前に独立したり起業しようと思えばコピー機とかFAXとかちょっとしたITシステムとかいろいろと出費が大変でした。
ところが今はGoogleのような大変便利なクラウドがありますし、iPhoneのようなすごいスマートフォンがあります。
こういったほとんどただのシステムをうまく使えば、今では会社をつくるのに物理的なオフィスさえいらないかもしれません。
この本は毎日新聞社、アスキーなどを経てフリージャーナリストになった佐々木俊尚さんがそんな洗練された働き方をとてもわかりやすく解説しています。
未来の労働形態を考える上でとても刺激的な一冊です。

2.フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。きたみ りゅうじ

僕は確定申告しているのですけれど、税金のことを勉強するためにいろいろと税理士の書いた本を読んでみました。
とこらがこれらの税金の本がものすごくつまらないわけです。
センター試験のための世界史の教科書とかよりももっとつまらないような本ばっかりでした。
そこで出会ったのがこの本です。
きたみりゅうじさんもSEを経てライター&イラストレーターとして独立しました。
この本はぶっちゃけ必要経費はどこまでOKなのかとか、白色申告と青色申告どっちが得なのかとか、あとから税務署に調査されたらどうなるのかとか、そういう細かい税法よりもはるかに重要なことが非常にわかりやすく解説されています。
僕はこの本のおかげで個人や小規模の法人の税金が体系的に理解できました。
税金初心者はぜひ最初に読むといいでしょう。

昔の書評

3.六法で身につける 荘司雅彦の法律力養成講座、荘司雅彦

世の中、法律を知らないと高くつくことが結構あります。
僕も理系人間で、法律なんてぜんぜん興味がなかったのですけれど、大きなお金が動くビジネスをやっていたり、結構な高給取りになったり、高い買い物をしたりすると、トラぶった時の最後の拠り所は法律なので、法律を勉強せざるを得なくなってしまいます。
自分でビジネスを起ち上げたいなら、英語やITやファイナンスのような知識よりも、実は法律力がとても大切なのです。
この本は法律初心者に非常に平易に日本の法体系を教えてくれます。
法律というのはけっこう論理的にできているもので、意外と理系人間と相性がよかったりします。
世界の先進国の法律はすべて「個人の権利は最大限尊重されるべきものであり、各個人は他者の権利を害さない限りいかなることをも行う自由を有する」という大原則の上に成り立っていて、そこをしっかり理解すればいろいろ法律がわかってきます。

昔の書評

4.なぜ投資のプロはサルに負けるのか?― あるいは、お金持ちになれるたったひとつのクールなやり方、藤沢数希

みなさんが会社をつくるとしたらおそらく株式会社をつくることになると思います。
そうするとそもそも「株」ってなんだということがわからないととても困るでしょう。
(ところで日本の大企業の経営者でも、銀行からの借金より株主資本の方がコストが安いと思っている人がいるのはちょっと困ったものだと思います。)
本屋に行けば「株式会社の作り方」というような本は五万とあるので、株式会社をつくる手続き自体はそれこそ誰でも2、3日でできてしまうでしょう。
しかし、ここはちょっと立ち止まってそもそも株式会社とはどういうものなのかをじっくり考えてみてはいかがでしょうか。
拙著で申し訳ありませんが広範なファイナンスの勘所をこれほどコンパクトにわかりやすく解説している本は他に見当たりません。

5.EQリーダーシップ 成功する人の「こころの知能指数」の活かし方、ダニエル・ゴールマン、リチャード・ボヤツィス、アニー・マッキー、土屋京子(翻訳)

すぐれた技術やビジネスモデル、それに高度な専門知識。
こういったものはとても重要ですけれど人間というのは結局のところ最後は「感情」で動きます。
リーダーは部下の情熱に火をつけて溢れんばかりのやる気を起こさせることも、逆に愛想を尽かされて首にならない程度に最低限の仕事だけやればいいやと思わせることもできます。
同じ能力の人間が働いていても前者のチームと後者のチームでは業績に圧倒的な差ができるでしょう。
結局のところ両者の違いはリーダーの感情コンピテンスなのです。
この本はそんなとらえどころのない感情を科学的に様々な角度から豊富な実証研究の結果をもとに教えてくれます。
著者は科学の基礎研究のようなもっとも高いIQを必要とされるような分野でさえも、専門知識や知的能力はその分野に参加する必要条件であって、実際の業績を決める大きな部分は感情コンピテンスだといいます。
僕は社会で成功するために感情がとても大切だということをこの本から学びました。


ところで日本は起業というとITとかメディアとか外食産業のような分野が多いのですが、科学技術立国らしくもっとハイテク分野で卓越したベンチャー企業は現れないものでしょうか?
電気自動車とかいろいろベンチャーがでてきてもよさそうですけどね。
この前のスーパーコンピュータの仕分け問題でもエンジニアが「こんな政治が口出ししてきたらいいものもでけへん。俺は自分で会社作ったるで」みたいなことにならないのでしょうか?
その辺が少々残念ですね。

ちょっと長くなりましたが最後にみなさんにいいたいのは独立とか起業って勉強したり準備したりももちろん大切ですけど、そんな頭でっかちになってもしょうがないということです。
もっと簡単に考えて「これで社会を変えてやる」みたいなアイデアひとつで飛び出してほしいですね。
勇気を出して目をつぶってとりあえず飛んでみることが大切ですよ。
必要な知識や経営ノウハウなんて走りながら身につけていくものです。
結局最後はパッションです。