将来、金融業界で働きたい学生や、すでに働いている真面目な人々もこのブログを読んでくれているようなので、今日はお勧めの教科書をいろいろ紹介したいと思います。

デリバティブ・プライシング理論 Derivatives Pricing Theory

Options, Futures, and Other Derivatives, JOHN C HULL

このハル本はこの分野のバイブルといわれており、デリバティブ関連の仕事をしている人やオプション理論を使っている人は、みんな一冊持っています。
デリバティブの分野では世界の標準テキストとしてNo.1の地位をゆるぎないものにしていますね。
確かに幅広い分野を網羅しているし、版を重ねるごとにクレジット・デリバティブやエネルギー・デリバティブなどの新しい話題を取り込み、どんどん洗練されていっています。
非常に丁寧な解説で間違いなくお勧めの一冊ですね。
しかし、この教授はこの本で一体いくら稼いだのでしょうか?
印税だけで億単位のお金を稼いでいることは間違いなさそうです。
うらやましいですね。

デリバティブの世界はもちろん英語なので、原著を読むことを強くお勧めしますが、日本語訳も出ています。

フィナンシャルエンジニアリング―デリバティブ取引とリスク管理の総体系、John C. Hull(原著)、三菱UFJ証券市場商品本部 (翻訳)

あと、日本語で軽く読める本として、次の本をお勧めしておきます。
多少エクイティにかたよっていますが、実際に現場ではどういう風に取引されているのかというのが背後の理論とともにわかりやすく解説されています。

デリバティブ・ビジネス入門―エクイティの現場ノウハウ、三田哉

以前の書評


現代ポートフォリオ理論 Modern Portfolio Theory

この分野でこれはって教科書は残念ながら知らないですね。
Modern Portfolio Theory and Investment Analysisなんかは標準的な教科書としていいとは思いますが、ポートフォリオ理論って教科書に載っているような形では実際にはまず使わないのですよね。
その辺の事情は拙著でも書いたのですが。

僕としては、この分野はBarraとかのモデル・ベンダーの営業用の資料の方が教科書よりだいぶ役に立ちました。

いい教科書をみつけたら報告しようと思います。


企業価値評価 Corporate Valuation

この分野をまじめにやろうと思うと会計に詳しくならないといけないと思われますが、そこまで専門じゃなくてもやっぱりある程度わかっていないと恥ずかしいです。
多国籍企業のM&Aから町の中小企業の診断まで、守備範囲は広いので非常にたくさんのいい教科書が日本語でも英語でもでています。
僕は次の二冊が一番わかりやすかったと思います。

MBAバリュエーション、森生明
実践 コーポレート・ファイナンス―企業価値を高める戦略的財務、高橋文郎

もっと詳しく勉強したい人はさらに専門的な教科書に進んだ方がいいかもしれませんが、普通の人はこの二冊ぐらい読んでおけば十分でしょう。


経済学 Economics

正直いうと、経済学というのは一部の業務を除き、金融業界で働くのに直接は役に立ちません。
しかし、世の中の政治や経済の動きを理解するためには、知っておくといろいろ役に立つのではないかと思います。

ミクロ経済学の教科書としてはこの本がベストだと思います。

ミクロ経済学〈1〉市場の失敗と政府の失敗への対策、八田達夫
ミクロ経済学〈2〉効率化と格差是正、八田達夫

日本では、国民全体を幸せにする政策が、一部の既得権団体の一時的な不利益と対立してしまい、効率化政策をとるのが容易ではありません。
農産物の高い関税、正社員の過剰な保護、無駄な公共投資などなど。
この本では、ミクロ経済学の理論を、そういった日本の現状に当てはめてわかりやすく解説しています。
日本の問題点を浮き彫りにしつつミクロ経済学の理論を解説するという点に関して本書は傑出しています。

Macroeconomics, N. Gregory Mankiw

以前の書評

マクロ経済学はGDPや失業率や金利などのマクロ変数の背後の深い関係を研究する学問です。
実際の仕事には直接には役に立たないのですが、ビジネスマンというのはとにかく床屋政談が大好きなので、マクロ経済学を知っていると床屋政談で一目置かれます。
またマクロ経済学を勉強すると、たとえば鳩山首相とかを上から目線で理路整然とdisることができます。
社会人として、GDPや貿易統計、国債金利のニュースが流れた時に、何か気のきいたことがいえないと、逆にみんなにdisられるので、社会的地位が低下してしまうかもしれません。
こういうことを考えればマクロ経済学を勉強しなければいけないことは明白でしょう。

僕の中ではマクロ経済学は今のところこのマンキューの最新版がベストですね。
金融危機の後に書かれた教科書というのはかなりポイント高いです。
日本語で読みたい人は以前紹介したクルーグマンの教科書でも読むのがいいでしょう。

それではみなさんもたくさん勉強して人生を少しでも豊かなものにしましょう。

以上。