民主党政権は「成長戦略」がないと様々な経済評論家から批判されていました。
それで民主党政権はそういった批判に答える形で「エコ」とか「海外インフラ」とか「介護」とかいろいろ成長戦略を出してきました。
しかし、僕にいわせてもらえば、これらの成長戦略は民主党の意図とは裏腹に日本経済の成長を阻むことになるでしょう。
なぜ政府が実施するこれらの成長戦略がダメなのでしょうか?
理由はみっつほどあります。

ひとつ目は政府が成長産業を見ぬくことはできないという単純な事実です。
金融市場では投資のプロが次の成長産業を見極めようとしのぎを削っています。
だから本当にこの産業は成長すると市場が思えば、わざわざ政府が投資しなくても民間の資金が自然と流れ込んでくるわけです。
よって市場のコンセンサスの裏をかいて、政府が成長産業を見ぬくことができなければ意味がないのですが、そんなことを政府に期待するのは無理でしょう。
だから、往々にして税金を使った政府の投資は下手な投資になり、国民の負担につながります。

ふたつ目は民間投資をクラウディング・アウトしてしまい資源配分を歪めることです。
政府が無理やりある特定の分野に重点的に投資をすると、他の分野への投資が減ります。
ある分野を優遇するということは、必然的に他の分野を冷遇するということです。
これはコインの裏と表の関係で、必ずそういうトレードオフが発生します。
国の労働力も資金も、ある分野に余分に投入したら、他の分野で減るのは当たり前でしょう。
本来、自由市場の中の競争原理により資源配分されるものが、政府による恣意的な配分に変わることによって、国民全体の利益が損なわれるのです。

みっつ目はレント・シーキングにより人々のインセンティブを歪めてしまうことです。
本来、企業は世界の消費者にどれだけいいモノやサービスをどれだけ安く提供できるかを競い合わなければいけません。
しかし、政府が恣意的に選んだ業界に重点的にお金を落とすならば、企業は消費者の方を向いて企業努力をするより、政治家や役人の方を向いて「成長産業」として認めてもらい補助金などをもらう方が得だということになってしまいます。
これは企業やそこで働く人々のインセンティブを大きく歪めます。
経済を成長させるのは民間企業の創意工夫なのですが、そのための労力が政府に陳情にいくということに費やされてしまうのです。

それでは本当の成長戦略はなんでしょうか?
それはリスクを取って成功した人に報いる税制と、大胆な規制緩和です。

高額所得者の所得の半分を税金として取り上げたり、もうかっている大企業の利益の40%を税金として奪い取ったりして、田舎の兼業コメ農家や特定郵便局長会にお金をばらまいて必死に集団票を買っても、国全体の経済がよくなるわけがありません。

福祉や再分配が必要なら税源を薄く公平に取れる消費税にするべきです。
それが成功している福祉国家のスウェーデンなどのモデルです。
北欧諸国は消費税が25%程度と非常に高いですが、企業は簡単に社員を首にできますし、法人税は安かったりと、非常に競争的な社会です。
消費税を上げるのが嫌だったら、社会保障費などの福祉をドラスティックにカットするべきです。
僕は割と日本人は再分配が嫌いなんじゃないかと思っているので、貧者のために増税するとなったら、多分みんなノーいうと思うんですよね。
みんな人のお金で福祉を充実させるのは大歓迎でも、自分のお金がどこかの他人に渡ると思うと許せないですから。
今のところ高額所得者と大企業から毟れるだけ毟って、それでも足りないのは全部将来世代へのつけ回しで、中福祉・低負担国家を維持していますが、これも早晩崩壊するでしょう。

今の時代の高額所得者は大体グローバル経済の中でうまく立ち回っている人たちなので、すぐとなりに香港やシンガポールなどの税金が安く成功者を優遇する姿勢を政府が強く打ち出しているような国があると、日本の政府のように優秀な人材を冷遇していては、そういった人材は簡単に移住してしまいます。
これは直接の税収減もそうですが、そういった人材が作り出していた雇用やイノベーションなどの喪失による間接的な経済への悪影響の方がより深刻でしょう。
また、多くのグローバル企業が無国籍化していますから、日本だけが突出した重税で、さらに解雇規制などのように企業側にとって不利な規制を残したままなら、簡単に拠点を香港やシンガポールなどに移してしまいます。
一言でいえば、これ以上、高額所得者の所得税や企業の法人税を上げれば、日本の税収はほぼ確実に減るということです。

競争に勝てる人材や勝てる企業にどんどん勝たせてあげましょう。
それで日本でひとり勝ちした企業やひとり勝ちした個人には、さらにもっともっと世界の中で勝ってもらって莫大な富を得てもらった方がいい。
そのために高額所得者や大企業の減税をして、大企業がもっと自由に動けるように大幅に規制緩和するべきです。
その上で消費税をある程度あげてセーフティーネットを整備して社会を安定させればいいのです。

国民の不合理な嫉妬心に阿るポピュリズム政治は国を滅ぼすだけです。
そして皮肉なことにそういった嫉妬心に駆られて、成功者の足を引っ張っていたような人たちをもっと惨めな境遇にするのです。