楽天の三木谷CEOが社内の公用語を英語にすると発表してずいぶんと話題になりました。
以前は日産が英語を公用語化しましたが、カルロス・ゴーン社長が日本語ができないし、ルノー(フランスの会社ですが)が親会社なので日産の場合は当然といえば当然なのですが、日本で生まれて日本の市場でビジネスをしていて、社長が日本人の楽天が英語公用語化に踏み切ったというのはちょっとしたニュースになったようです。
そこで今日は日本企業の英語公用語化などについていろいろ書いてみたいと思います。

日本において英語は極めて費用対効果が高いスキル

日本というのはずいぶん落ちぶれてきましたが、それでも世界で2番目か3番目に大きい経済規模を持っています。
よって、日本でもビジネスをしている外資系企業はまだまだたくさんあります。
そして外資系企業の給料は、同業の日本企業よりもかなり高いことが多いです。
たとえばITなら、日本企業でそこそこ優秀で年収800万円ぐらいの人なら、英語ができて外資系企業で働けば、同じ仕事で年収1500万円ぐらいにはなります。
金融なんてそれこそ2倍、3倍ぐらいになります。
ところが日本では仕事ができて、さらに英語もできる人というのは非常に少ない。
仕事ができる人も、英語ができる人もたくさんいるのですが、そのふたつが両方共できる人というのはとても少ないわけです。
僕なんてそれでどれだけ得しているかわかりません。
僕は英語でビジネスをこなせるというだけで、市場価値、つまり僕の給料は2倍以上になっていると思います。
ということで、日本でサラリーマンをやるなら、英語ができると非常に得をするということです。

これがヨーロッパだとそうはいきません。
ヨーロッパだと、イタリア語だとかフランス語だとか、いろいろな言語を母国語とする人がいっしょに働いているのが普通なので、英語ができない学生はそもそも就職できないからです。
だからヨーロッパの国際的に活動している企業には最初から英語ができない人が全くいないので、英語ができるからといって市場価値が上がることはありません。
香港やシンガポールも状況は同じでしょう。

しかし日本でそんなことをやったら全然採用できないので、そのようなことは今のところありません。
だから日本においては英語の希少価値はそれだけ高いのです。

ビジネスや専門分野の英語はけっこう簡単

たとえば、僕は最近、会社が終わってからのほとんどの時間を使って村上春樹の1Q84を読んでいたのですが、これが英語だったら読むのにずいぶんと苦労したことだと思います。
よく理解できないのは、僕の英語力がないのか、そもそもそういう小説なのかの判断に大変苦慮するからです。
しかし、母語である日本語で読むと、よく理解できないのは僕が悪いのではなく、僕の文学的素養が足りないのでもなくて、そもそも村上春樹のストーリーがおかしいからだとすぐにわかります。
ひとつひとつの文章は大変美しく、比喩表現は幻想的ですらあるのだけれども。

僕は映画のスクリプトを使って英語のリスニングの勉強をすることにずいぶんとはまっていた時期があって、今でもそれはよかったのではないかと思うのですけど、やっぱり相性の悪い映画の英語はなかなか聞き取れません。
映画の英語は気の利いた言い回しや非日常的な単語をぼそっというので、実は大変むずかしいのです。

僕は文学作品を英語でスラスラ読めませんし、映画の英語もよく聞き取れないことが多いですが、それでも仕事をする上ではほとんど英語に困りません。
僕は会社では英語をしゃべっている時間の方が長いですし、トレーディングも公用語は英語なので、巨大な金額が動く取り引きを英語で毎日やっています。
そもそもいろいろな金融用語を英語で覚えているので、日本語でどうやってトレードするのかよくわからないぐらいです。

また、大学で研究をしていたときも、読む学術論文も全部英語だし、自分で書くときも全部英語(僕は日本語で論文を書いたことが一度もありません)なので、専門分野は日本語の方が逆にむずかしいし、日本語で論文を書くなんて想像もつきません。

そもそもビジネスで使う言葉というのは単純で、むしろ外国語として英語を使っている方が簡潔で、要領よくものごとを進めたりできるものです。
結局のところ、モノやサービスをいくらで買うか、いくらで売るか、納期はいつか、性能はどこまで妥協できるか、どこまで安くできるか、どこまで値切れるか、といったようなことしかありません。
逆にお互い母国語同士だと、変に婉曲表現や上下関係等に気を使った表現がでてくるのでうまくいかないぐらいです。
英語でストレートに言ったほうが話しが早いことも多いでしょう。

英語は主語と動詞が大切で、三人称の"s"を忘れたり、前置詞がちょっと間違うぐらいは何の問題もありません。
少々の文法の誤りなんか気にせず、どんどん英語を使いましょう。

世界共通語=英語は完全に確定している

たまに英語という言語は、英国とその旧植民地やアメリカなどの言語に過ぎず、それをあたかも世界共通語のように扱うのはおかしいなどと真面目にいい出す人もいますが、そういうのは全部無視してOKです。
現実にすでに英語は世界共通語で、この状況が変わる可能性はゼロなのですから、とにかく語学といったら最初は英語を勉強しましょう。
英語をある程度マスターした後に、中国語とかタイ語とかポルトガル語とか勉強するのはかまいませんが。

グローバル企業を目指すなら英語公用語化はあたり前

また、楽天の話しに戻りますが、本当にグローバル企業になりたいのならば、英語を公用語にすることはあたり前で、むしろそれ以外の選択肢は全くありません。
日本でほとんどのビジネスをして、ちょこっと海外もやるというのなら問題ないですが。
グローバル企業になるというのは、ある特定の国を特別扱いしないで、あらゆる収益機会を追求していくということです。
純粋にビジネスの観点からあらゆる国を見て、一番安いこところでモノを作って、一番高く売れるところで売らなければいけません。
そこでどこかの国に進出するのに、いちいちよくわかっていない日本人幹部を高給で送り込んでいたら、コストがかかってしょうがないのです。
現地の優秀な人材を採用しなければいけません。

そこで会社のマネジメントが日本人ばかりで、重要な会議や書類が日本語だったら、優秀な(日本語がしゃべれない)人材を採用してリテインできるでしょうか?

このように考えると、本当にグローバル企業になりたいのならば、英語公用語化、つまり重要な経営戦略の会議や文章は全て英語にするというのは当然すぎることなのです。
だから、楽天の三木谷社長の主張は全くもって自然なことです。

Let's stop discussing about our policy to convert our main language to Eng. We are going to do this to become strong global company.
Hiroshi Mikitani, Rakuten CEO (Twitter)
(もう我々が英語を公用語化したことについて関してウダウダ議論するのはやめましょう。我々は強いグローバル企業になるのです)

追伸:こういうことは最初に言わないと話題にもならないのですけど、そこでしっかり最初に言った三木谷さんは、無料でマスコミに楽天の宣伝をたくさんしてもらっておいしかったですね。
ツイッターでちゃっかり文法ミスを忍ばせてみんなのツッコミを誘う当たりも、なかなかウェブ・マーケティングを心得ているCEOのようです。

参考資料
藤沢数希の英語本セレクション
日本人が英語をしゃべるときに気をつけるべき7つのポイント その1