日本経済のウソ、高橋洋一

為替政策や金融政策など、今が旬のネタが満載の本です。
著書は前回の参院選で大躍進したみんなの党のブレインである高橋洋一です。
実際の日本の経済政策に影響力を持ちうる立場の人の考え方が書いてある本なので、そういう意味でも読んでおくべきでしょう。

為替政策や金融政策というのは、経済学者の間でもかなり意見がばらついている分野で、高橋氏は日銀は短期金利がゼロになった後も、さらにアグレッシブに量的緩和などで金融緩和を試みよ、というスタンスを首尾一貫して取っています。
財務省の管轄の為替介入にしても、日銀は非不胎化介入を完全に行うことによって、もっと効果的に円安誘導できたし、そうするべきだったと主張しています。

これまで高橋氏の本を読んでいれば、この本の主張はなんら新しいものではありませんが、為替政策や金融政策に関するかなり詳細な分析が書かれており、そのへんはとても勉強になるのではないかと思います。

最近は円高、円高と騒がれていますが、実際のところ技術的には簡単に円安にすることはできます。
それは無限に為替介入していけばいいだけです。

1. 財務省が短期国債を発行して(短期国債を民間の銀行に売って)円を調達する。
2. 日銀はひたすら短期国債を民間の銀行から買い取る。(量的緩和)
3. 財務省は(調達した)円を売ってドルを買う。

1〜3を円が目標のレベルに達するまで繰り返します。
これでいくらでも円安にできます。
しかし、財務省が短期国債をどんどん発行するので、いわゆる国の借金はどんどん増えていきます。
日銀のバランスシートは膨張していきます。
その結果、国民は巨大なドルのポジションを取るという大きなリスクを背負い込むことになります。

世界の先進国は、社会全体を豊かにする自由貿易、自由な資本移動を推進するためにさまざまな合意をしています。
日本だけが勝手な為替操作をしていては、国際社会のなかでの信頼を失ってしまうでしょう。

また、デフレからインフレにすることもやろうと思えば極めて簡単です。
財務省が国債を発行して資金調達して、それで自動車やトマトケチャップなどをどんどん買えばいいのです。

1. 政治家が国会で、政府がデフレがなおるまで自動車やトマトケチャップを買いとる法案を成立させ、そのための赤字国債の発行を決議する。
2. 財務省が国債を発行して(国債を民間の銀行に売って)資金を調達する。
3. 日銀は民間の銀行からどんどん国債を買い取る。
4. 政府が自動車とトマトケチャップを買い続ける。

1〜4をインフレになるまで繰り返す。
おそらく繰り返すまでもなく、自動車やトマトケチャップの買い取り法案が成立しそうな状況になれば、瞬く間に国債が暴落して、円が投げ売りされ、かなりはげしいインフレーションに見舞われるでしょう。
要するに本当に通貨の信用をなくしてインフレーションにしたければ、それは日銀の仕事ではなく、国民に選ばれた政治家が決めることなのです。
(国民が借金してトマトケチャップを買ってはげしいインフレにしたいといえばの話ですが)

中央銀行というのは、物価の安定を目指して経済の状態に受動的に対応していくだけの消極的な機関であって、また、そうであるべきなのです。
なぜならば物価が安定していることが経済の長期的な成長においてとても大切だからです。
物価が不安定だと国民にさまざまなコストが発生して、経済成長が阻害されるのです。
そのため世界の先進国で、中央銀行が政治家のおもちゃにならないように独立性が保証されています。

僕は現在の状況では、金融政策でできることはそれほど多くはないという考えですが、この本の為替政策や金融政策の議論はとても面白かったです。