また選挙です。
次の民主党の代表選挙で、また日本の首相が変わるかもしれません。
今のところ現首相の菅直人と、キングメーカーこと小沢一郎の一騎打ちとなるようです。

ところで、僕は最近この多数決という極めて簡単な選挙の仕組みが、どうしてここまでカオスに振る舞い、予測不可能なのかということについてとても驚かされています。
(政権交代から1年もたたないうちに鳩山さんが辞め、菅さんが首相になり、そして小沢さんがこのような形で代表選挙にでてくるなんていったい誰が予想できたのでしょうか?)

つい最近は、ほんの少ない議席しか持っていなかった国民新党と社民党が、民主党と連立することにより、極めて大きな影響力を行使しました。
今回の民主党の代表選挙でも、菅直人も小沢一郎も必ずしも国民から支持されている人物ではないようです。
それにもかかわらず日本のトップになるわけです。
多数決の選挙でも、このように実際に影響力を握るのは人気がある政党でもなく、また人気がある人物でもないようです。

このへんの選挙の数理科学的な研究は大変興味深いですね。
いかにして単純明快な多数決という仕組みがここまでカオスになるのかというのは研究するととても面白いと思います。

そこで今日は、ちょっとアカデミックな選挙に関する本をいろいろ紹介したいと思います。

1. 選挙の経済学 投票者はなぜ愚策を選ぶのか、ブライアン・カプラン、奥井克美(翻訳)、長峯純一(翻訳)
(The Myth of the Rational Voter: Why Democracies Choose Bad Policies, Bryan Caplan)

日本の消費税の議論や、派遣村がかわいそうだから派遣は禁止しようという最近のまことにおかしな議論を聞いていると、多くの国民がいかに非合理的なのかということを思い知らされます。
自分で自分の首を締めるような政策を国民はよく選択しようとするのです。
この本はアメリカの事例ですけど、そういうおかしなバイアスや、その分析がいろいろ書いてあり面白かったです。

また、逆に国民の多くが無知でも、多数決で意外と正しい選択ができるという例も紹介されています。
たとえば50万人が二択の投票をするとして、どちらの政策がより国民の利益になるか正しく評価できる人がたったの1%、つまり5千人しかいないとします。
残りの99%の人はランダムにコインを投げて投票するとします。
おどろくことに、このときこの集団が間違った政策を選ぶ確率はほぼゼロになります。
(計算してみてください)

2. 選挙のパラドクス―なぜあの人が選ばれるのか? ウィリアム・パウンドストーン、篠儀直子(翻訳)
(Gaming the Vote: Why Elections Aren't Fair (And What We Can Do About It) William Poundstone)

著者は物理学を勉強した後、情報理論やゲーム理論を研究して、物書きになった人です。
選挙の不可思議な振る舞いについて、とても面白い話がたくさん書いてあります。
たとえば、ある選挙区でひとりの議員を選ぶ場合、一番人気の候補者が当選するでしょうか?
話はそう単純ではありません。
3番目に人気の候補者を支持している人々が、一番人気の候補者とは反対の政策を支持していたとしたら、なんとしても一番人気の候補者の当選を阻止しようとするでしょう。
しかし、3番人気の候補者に投票しても当選する確率はほとんどありません。
だとしたら好きでも嫌いでもない2番人気に投票して、一番人気の候補者を落とそうと考えます。
結果的に・・・などということが起こります。
選挙結果の予測も非常に複雑ですが、当選者がいったい何を支持されたのかを解釈するのはさらに複雑でむずかしいことなのです。

たとえば前回の衆院選で民主党は圧勝しましたが、民主党に投票した多くの人は民主党のマニュフェストなんてほとんど読んでいませんでした。
あれは自民党への反対票だったのです。
だから民主党の政治家が「マニュフェストで国民に約束したことを・・・」なんていっているのを聞くと、僕は思わず吹き出してしまいます。

3. 世論の曲解 なぜ自民党は大敗したのか、菅原琢

自民党は去年の衆院選で大敗を喫するわけですが、「小泉・竹中の構造改革で格差が広がり世論はそれに反発した」というマスコミの言説がどれほど間違っているのかを、さまざまな統計データから証明します。
実際のところ2005年以降、国民は小泉・竹中の構造改革を首尾一貫して支持してきたのです。
この本の分析は、前回の参院選でバラマキ政党の民主党が大敗し、郵政民営化を巻き戻そうとした国民新党が一議席も取れず、小泉・竹中の構造改革を引き継いだみんなの党が躍進したことから、さらにその正しさが証明されました。
日本の政治を理解するためにはぜひとも読んでおきたい一冊です。

以上。