世論の曲解 なぜ自民党は大敗したのか、菅原琢

この前ちょっと紹介した本だけど、とても面白かったので改めて紹介する。
著者はさまざまな統計データを非常に詳細に分析して、小泉純一郎が惜しまれながらも引退してから、なぜ自民党が負け続けたのかを論じる。

マスコミは「小泉・竹中の構造改革によって格差が広がり、また地方経済が疲弊した結果、国民が反発した」というような小泉・竹中バッシングを、2009年の衆院選で民主党が政権交代を成し遂げるまで執拗に行なったわけだが、著者の分析によると、いかなるデータも自民党の敗因は小泉・竹中路線への反発ではないということ示している。
むしろ逆で、国民は構造改革を支持し続けたのだが、安倍首相になってから急速に既得権益を守る古い自民党に回帰してしまい、これが自民党の敗因だと結論づける。

僕もこれには全く同感で、マスコミの構造改革バッシングには大きな違和感を持っていた。
そんなマスコミのバッシングの最中にも、マスコミ自らが行った「次の首相にふさわしい人物は誰か?」という世論調査で、ダントツ1位で小泉純一郎が選ばれていたのだが、これは新聞の片隅に小さく載ってさりげなくスルーされていたりした。

民主党の支持率がどんどん下がったのも、改革をするという意気込みが十分ではない、もしくは既得権益層に媚びるような政治を行っていたからだし、逆にみんなの党が前回の参院選で躍進したのも、明確に小泉・竹中路線を引き継ぐ構造改革の推進をかかげたからだと、僕も思っている。

だから、この本の著者の主張はまさにそのとおりだと思うのだが、だからこそ僕にはひとつの大きな疑問が沸き上がってくる。
「なぜマスコミはあれほど小泉・竹中の構造改革をバッシングしたのか?」という疑問だ。
これは今でも僕にはよくわからないことだ。
小泉純一郎が首相をしていたときは、マスコミは構造改革バッシングをしていなかったのに、小泉首相が退任してしばらくたってから、なぜあれほどの根拠のないバッシングがはじまったのだろうか。

ところで、この本の著者は統計データを客観的に分析するのが持ち味のようで、ネットの影響力にも冷静な分析をしている。
結論はネットなんてほとんど影響力がないという悲しいがかなり的確なものだ。

僕のブログはけっこうアクセス数があり、もはや零細メディアといってもいいと自負しているのだが、それでもテレビや新聞などに比べると全くもって何の影響力もないといわざるをえない。
テレビの1%の視聴率が100万人だとすると、もっとも人気のない深夜放送の番組と比べてみても、アルファ・ブロガーの影響力なんてゼロの数がふたつかみっつほど少ないのが現実だ。
ニコニコ動画の人気番組も、せいぜい数万人がやっとの世界で、やはり全く人気がないテレビの深夜番組よりゼロの数がふたつかみっつ少ない。

ネット・メディアというのは一部で盛り上がっているが、まだまだ極めて小さいものなのだ。
この本の著者は、なかなか冷静にネット言論の現状を語ってくれたものだ。

しかし逆にいうと、ネット・メディアというのは、まだまだ大きな成長の余地を残しているということだ。
僕はそこにネットの大きな可能性を感じている。