日本経済「余命3年」 <徹底討論>財政危機をどう乗り越えるか、竹中 平蔵、池田信夫、土居丈朗、鈴木亘

経済学者の討論を本にしたものです。小泉政権のブレインとして多大な貢献をした竹中平蔵氏、日本の社会保障費の問題に鋭く切り込む鈴木亘氏、財政の話をいつもわかりやすく書いている土居丈朗氏、それにインターネットの世界ではお馴染みの池田信夫氏です。

良質な経済番組を見ているようで、面白い対談本でした。しかし僕はこれらの著者の本を結構たくさん読んでいるので、そういう点では新鮮味はなかったです。世間の人は経済学者は基本的な問題に関してぜんぜん意見が一致していないと思っているようですが、それは大きな間違いです。確かに景気刺激なのか財政規律なのか、量的緩和をさらに進めるべきかあるいはやめるべきか、増税はどのタイミングで実施するべきか、などの点で経済学者同士の意見が食い違うことはよくあります。現状をどう見るかという難しい問題があるからです。しかしそういった意見の違いは、経済学者が議論好きで、時に他人と自分が違うことを主張しないといけないし(意見が全部標準的な教科書と一緒だったら自分の価値は何?って話になっちゃう)、メディア的にもいいネタであることから、いささか強調されすぎているように思います。実に多くの部分で経済学者の意見は一致しています。この本はあらためてそのことを確認できました。というのもこの4人の意見は多くの部分でとても一致しているからです。以下にそのことを要約しておきます。

1.政府債務がGDP比で200%に達しつつある日本の財政は危機的な状況にあり、いつ長期金利が跳ね上がり政府が社会保障費などの莫大な歳出をファイナンスできなくなってもおかしくない。将来の年金や医療や介護の支払いを含めると、財政はさらに危機的なものになる。

2.財政を破綻させないためには社会保障費の削減と増税は不可欠で、企業の国際競争力を削がずに増税するには消費税を上げて法人税を下げる他ない。ただし消費税を上げるタイミングは竹中氏は政府の無駄の削減や成長戦略が実施された後と主張し、土居氏は今すぐにでも実施しないと間に合わないという。竹中氏は先に増税して延命してしまえば、官僚組織や既得権益層が痛みを伴う改革をやらなくなるという。

3.日本の社会保障制度はすでに多額の財産を持っている世代に貧しい労働者が所得を分配するという、富の再分配の機能を果たしていないものである。また極めて大きい世代間不公平が存在する。たとえば今の70歳と今年生まれた赤ちゃんでは年金の負担と給付で6000万円近い違いがある。ちなみに今後少子高齢化が急速に進み、経済が成長しないのだから、社会保障をさらに充実させるなんて問題外で、今後はどれだけカットできるかが重要。

4.成長戦略は、民間できることは民間にやらせる、いらない規制はなくして競争的な市場にする、そしてとりわけ解雇規制の緩和等で労働市場の流動性を高めることが必要。日本の官僚組織が日本のために働かないのも、一番の理由は年功序列・終身雇用を基本とする人事制度。官僚は自らの省益のためにとにかく天下りポジションを増やすような政策ばかりをやろうとする。日本全体の利益は二の次。


最近の日本の経済問題を勉強している人にとっては全てお馴染みのことでしょう。このようにこの本に限らず、日本がやるべき事というのは1000円ちょっとだせばどこの書店にもたくさん売っているのです。後は実行するだけなのです。

ちなみにちょっと面白かったのは、やっぱり小沢一郎の日本改造計画はゴーストの経済学者が全部書いたもので、小沢さんはなんにも書かなかったということです。そしてその経済学者のうちのひとりが竹中平蔵氏だったということが書いてありました。小沢一郎はキャラ的にネットでは人気なんだけど、この数年間の間に彼の口からまともな経済政策を一度も聞いたことがない僕としては、全く支持はしていなかったのですが。