風力発電の不都合な真実―風力発電は本当に環境に優しいのか?

地球規模の環境問題は市場原理だけでは解決できない問題です。外部性があるからです。地球はつながっていますから、CO2のような温暖化ガスや窒素酸化物のような大気汚染物質は一国にとどまりません。これらを低減するためにはコストがかかりますから、何の規制もなければ、市場原理の中では環境対策にコストをかけないほど儲かってしまいます。地球を汚したもの勝ちです。だからこそ国際的な規制が必要になってきます。

日本のエネルギー政策は"FUKUSHIMA"以前は原発を主軸に置いていました。もちろん原発は"FUKUSHIMA"以前でもイメージはよくないので、政策担当者は再生可能エネルギーの方を強調しながらCO2を減らすことをうたっていたかもしれませんが、本音では原発の方だったでしょう。再生可能エネルギーは高いので、電気代が上がってしまっては日本の産業の競争力を削いでしまうからです。

しかし"FUKUSHIMA"以降は日本で原発を主軸に置くことは難しくなりました。とはいえ、今ある原発は使い続けるでしょう。すでに3分の1の電力をまかなう原発を止めるのは現実的ではないからです。また、すでに原発を受け入れている地方自治体は雇用などの経済的なメリットと、万が一の時のリスクを天秤にかければ、やはり原発を止めるようなことには積極的にはならないと思います。週末の地方知事選を見ても、原発に関しては安全対策を万全にして現状維持をするといっていた現職知事がそろって当選しています。今後、日本は人口も減り、経済も縮小していくので、今ある原発を維持していくだけで長期的な電力は十分なのかもしれません。

また、世界的な地球環境問題やエネルギー安全保障の観点から火力発電所を積極的に増やしていくわけにもいきません。そうなると太陽光発電や風力発電などの新しい再生可能エネルギーに注目が集まるわけです。これらの新エネルギーはここ数年盛んに議論され、大まかな1kwh当たりのコストが見積もられています。そこで風力発電はかなりコストが安そうなので、僕は期待していました。

風力発電というと、ずっと昔、大前研一がどこかのテレビで「あれは近くで見ると切り刻まれた鳥の死骸が散乱しててひどい」とか言っていたのを思い出しますが、その時は特に深くは考えていませんでした。そこで最近は新エネルギーが流行りなので、僕もいろいろ勉強しているのですが、この本を読んで、風力ってかなりやばいんじゃないかと思うに至りました。くわしくは自分で読んでもらいたいのですが、野鳥愛好家の著者が10年間日本の風力発電の観察をしてわかったことをまとめています。以下に僕なりにポイントをまとめておきます。

1.風力発電はうるさいし、低周波やストロボ効果による健康被害がある

僕は体験したことがないのですけど、風力発電はけっこううるさいらしいです。また耳に聞こえづらい低周波の音波を発していて、これによる健康被害が相次いでいます。50mくらいの羽が回ると太陽がカチカチ遮られて点滅し(ストロボ効果)、これで気分が悪くなる人がいるようです。

2.大きな鳥がたくさん突っ込んで羽に真っ二つに切り刻まれる

鳥というのは、速く回転しているものが見えないらしくて、そこを遮るときにバサっと切り刻まれてしまいます。近くでは悲惨なバラバラ死体が落ちていたりするようです。また、僕は本当かどうかわかりませんが、著者は風力発電施設の周りで観察できる野鳥が著しく減ったといっています。かなり大規模な生態系の調査をした結果、そのことが確かめられたといっています。

3.そもそも全く電力にもCO2削減にも貢献していない

風力発電はもともと風まかせの発電なので電力が安定しません。日本は既存の電力網に風力発電所を組み込んでいますが、風向きによって激しく電力が変化してしまうため、その電力が非常に小さく(全体から見れば誤差の範囲)既存の電力網に何の影響も与えない時だけ風力発電所からの電力を受け入れています。風が強くなって発電量が大きくなると、既存の電力網を不安定にするので、その時は風力発電所からの電力は全てカットするそうです。ぶっちゃけた話、日本の風力発電所は全く意味がなく、地方自治体や業者が国からの補助金を貰えたりするので、発電しているフリをしているだけなのです。要するにただの補助金ゲームです。

また風力発電が成功しているといわれているヨーロッパにおいても、風まかせの風力発電はいつ止まるかわからないので、アイドリング状態の火力発電所を常にスタンバイさせておく必要があり、風力発電のための火力発電所をどんどん増設した結果、かえってCO2の排出量が増えたようです。

以上のトホホな問題を解決するには高性能で安価な蓄電池の開発が待たれますが、現実はなかなか難しいようです。ビル・ゲーツのプレゼンテーションによれば地球上の全ての電池を集めても、世界で必要な電気を10分間しか供給できないそうです。蓄電というのは思いのほか難しいのです。

もちろん、健康被害など議論の余地はあると思いますが、この本を読んで、僕は自分の家の裏に風力発電所と原発のどっちかを作れかといわれたら、間違いなく原発を作るだろうなと思いました。