地球温暖化問題は、近年、さまざまなメディアでさかんに取り上げられています。しかし、正しい知識を持っている人はおどろくほど少ないようです。地球温暖化のメカニズムはどのようなもので、それがなぜ問題なのでしょうか。最近の原発事故ですっかり忘れられてしまいましたが、ここで要点を再確認したと思います。まずは、現在わかっているファクトを整理しましょう。
ファクト１ 過去１００年間、確かに地球は温暖化している
過去の１００年間に地球の平均気温は上昇しました。これは各地の気温計のデータをみれば一目瞭然なので、この事実はどの研究者も異論はありません。しかし過去１００年間で上昇した気温は0.74度Cです。１００年間で1度C弱というのは、普通に考えればまったく大したことがないように思えます。問題は、この上昇速度が近年加速してきていることです。
過去１０００年程度の地球の気温も、樹木の年輪や氷河の厚さ、化石などの注意深い研究によって概ねわかっています。過去１０００年程度の期間、地球の平均気温の変動幅はせいぜい１００年で0.1度C程度でした。20世紀の１００年間で１度C弱の上昇、というのは確かに異例の変動幅なのです。
ファクト２ 温暖化の原因は化石燃料起源のCO2
それでは地球温暖化の原因な何なのでしょうか？ これはほぼ間違いなくCO2濃度の上昇です。それでは地球温暖化のメカニズムを簡単に説明しましょう。
地球がこれほど温かく、また生物の適した温度になっているのは、大気のおかげです。大気が地球に熱を留める役割をしているのです。地球の熱エネルギーのほぼ全ては、太陽の核融合により発せられる光のエネルギーとしてやってきます。太陽から来る可視光線は大気を通過し、地表に降り注ぎます。そしてこれらの光のエネルギーが地表を温め熱エネルギーに変わります。熱せられた地表がまた光を発するのです。ここで熱せられた鉄や炭がオレンジ色に光り、手をかざすと温かくなる現象を思い浮かべてもらうとわかると思いますが、熱せられた物体は熱放射によって、赤外線というまた違った光を発するのです。ここである種類の気体分子は、可視光線は透過するけれども、温められた地表から発せれる赤外線は吸収する性質があるのです。CO2はまさに、そういった気体分子で、過去の地球の大気中のCO2濃度の上昇と地球の温暖化は、非常によく一致します。この分野では世界中で膨大な数の研究が行われ、温暖化の原因は化石燃料起源のCO2であるということが、ほぼ間違いないと結論づけられています。
それではなぜ、地球上のCO2濃度が上昇しているのでしょうか？ いうまでもなく自動車や火力発電所による化石燃料の消費です。石油や石炭を燃やせば、酸素と結びつき、二酸化炭素となって大気に放出されます。日本だけで１年間に14億トン、一人当たり12トンのCO2を放出しています。なかなかすさまじい量ですね。東京の町を見渡すと、ガソリンを燃やして走る自動車が所せましと走り回っています。一人当たり年間12トンも温暖化ガスをまき散らしているわけです。ちなみにアメリカ人は一人で毎年20トン以上放出します。
ファクト３ ２１世紀末までに地球の気温は平均２度C〜３度C上昇すると予測されている
今後もCO2増加は止まることはありません。なぜならば世界中で経済成長しているからです。そこで様々な研究機関が地球の気温上昇をシミュレーションで研究しているわけですが、今世紀末には地球の平均気温は２度C〜３度C上昇すると予測されています。また、各国がCO2削減努力を怠り、今のペースで化石燃料の使用を増やし続けるとさらに数度C上昇すると予測されています。京都やコペンハーゲンの会議は、世界各国がどうやってCO2削減を達成するか話し合われ、各国にさまざまな義務を課すことになっています。今のところの目標は気温上昇を２度C以下に抑えることです。
日本は地球温暖化の研究では世界最先端で、民主党の仕分けで随分と話題になったスーパー・コンピューターはこの分野で非常によく使われています。スーパー・コンピューターは核兵器開発のために発展してきましたが、日本では地球温暖化の研究のために多額の国家予算が振り分けられてきました。また前首相の鳩山由紀夫は、非常にアグレッシブなCO2削減目標を国際公約し、削減できな分は他国から排出権を買うと気前よく世界中で約束してきました。そのために民主党は新たに14基の原子力発電所を建設し、2020年までに日本の発電に占める原子力の比率を50％以上に引き上げる、という原子力推進政策にアクセルを踏み込んだのです。
しかし、これらの気温上昇が、人間の生活にどれだけの悪影響があるかは、それほど明らかになっているわけではありません。地球温暖化を回避するための莫大なコストが、地球温暖化によるコストを大幅に上回っては本末転倒でしょう。たしかに砂漠との境界地域や、アフリカ諸国などで、間伐など、多少の被害が実際にではじめてはいるようです。また気温が上昇すると、台風などの頻度が上がるといわれており、日本にも被害があるかもしれません。熱膨張と氷河などが溶けることにより、海面が数十cm上昇すると予測されています。数十cmというと大したことはなさそうですが、世界には海抜とほとんど変わらないところに多数の人が住んでいるので、かなり大きい影響があるかもしれません。しかしそうやって被害を受ける地域がある一方で、シベリアやアラスカなどは今よりもずっと住みやすくなるかもしれません。
残念ながら、地球温暖化問題は、反原発運動のように、狂信的な環境保護団体が、科学ではなく政治の道具にしてしまっていることも事実です。あくまで科学的に議論し、そして経済的な部分ではコストと利益のバランスを慎重に考えて政策を決定していくべきだと、僕は考えています。温暖化を避けるために、温暖化により犠牲になる人よりも、経済の困窮により多くの人が犠牲になる、というのでは本末転倒です。反原発運動家が、放射能による死者を一人守るために、化石燃料による死者を千人増やしても、まるで気にかけない、というような態度ではいけません。
僕は個人的には、CO2削減目標にある程度の義務を課して世界各国が取り組むことは非常に大切だと思っています。CO2削減というのは、一粒で三度はおいしいと思っているからです。
もちろん温暖化を防ぐ意味で大切ですが、現在世界で毎年３００万人が犠牲になっているといわれる大気汚染も化石燃料を燃やすことにより起こっています。CO2を減らすということは、化石燃料の消費を減らすということと、ほぼ同じ意味なので、とうぜん大気汚染も減ります。それにより多くの方が救われるでしょう。また石油をめぐり世界で戦争が絶えません。石油依存を各国が減らすことは、世界をより平和にするのです。とりわけ化石燃料のほぼすべてを輸入に頼る日本で、化石燃料依存を減らすことは日本の安全保障にとって極めて重要でしょう。
それではCO2削減のコストとは何でしょうか？ 化石燃料の使用を税金などをかけて抑える、ということは当然、経済活動も抑えられます。その結果、経済が低迷する可能性があります。自動車などの輸送費、電気代などが「炭素税」で跳ね上がれば、経済が困窮してしまうでしょう。
しかしCO2削減と経済を両立させる唯一のエネルギーがあります。原子力です。原発で安い電気を大量に生み出し、ガソリン自動車をじょじょに電気自動車に変えていけばいいのです。そういう意味で、僕は民主党の原子力政策は間違いではなかったと思います。確かに、原発は事故も起こり、福島のように、最悪の場合、長年ある程度の土地が失われてしまうこともありえます。しかしそういったリスクを考えても、化石燃料依存のあらゆるリスクよりも、まだ原子力のほうがすぐれている、と僕は考えています。
ところが菅首相は、福島の事故以来、急に「脱原発で自然エネルギー」とか、わけのわからないことをいいだしました。国の防衛や外交、エネルギー安全保障を、こんな気楽に政局に利用する人たちに国家の運営を任せておいて大丈夫なのでしょうか？ 地球温暖化よりも、我々日本人は、そっちの方がはるかに心配ですね。
地球温暖化を正しく知るための本
この真実を知るために地球温暖化―何が起きるのか?どう克服するのか? (Newton別冊サイエンステキストシリーズ)
この本は圧倒的にわかりやすくて、専門家以外の人が知っておくといいことが網羅されています。カラー・イラストがいっぱいで読みやすいです。
地球温暖化を考える、宇沢弘文
経済学者の温暖化本です。面白いです。
正しく知る地球温暖化―誤った地球温暖化論に惑わされないために、赤祖父俊一
地球温暖化に懐疑的な研究者の本です。IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)に批判的な学者の理屈を勉強すると、IPCCの予測のどれがほぼ100%のもので、どれがまだよくわかっていない部分なのかがよくわかります。
ファクト１ 過去１００年間、確かに地球は温暖化している
過去の１００年間に地球の平均気温は上昇しました。これは各地の気温計のデータをみれば一目瞭然なので、この事実はどの研究者も異論はありません。しかし過去１００年間で上昇した気温は0.74度Cです。１００年間で1度C弱というのは、普通に考えればまったく大したことがないように思えます。問題は、この上昇速度が近年加速してきていることです。
過去１０００年程度の地球の気温も、樹木の年輪や氷河の厚さ、化石などの注意深い研究によって概ねわかっています。過去１０００年程度の期間、地球の平均気温の変動幅はせいぜい１００年で0.1度C程度でした。20世紀の１００年間で１度C弱の上昇、というのは確かに異例の変動幅なのです。
ファクト２ 温暖化の原因は化石燃料起源のCO2
それでは地球温暖化の原因な何なのでしょうか？ これはほぼ間違いなくCO2濃度の上昇です。それでは地球温暖化のメカニズムを簡単に説明しましょう。
地球がこれほど温かく、また生物の適した温度になっているのは、大気のおかげです。大気が地球に熱を留める役割をしているのです。地球の熱エネルギーのほぼ全ては、太陽の核融合により発せられる光のエネルギーとしてやってきます。太陽から来る可視光線は大気を通過し、地表に降り注ぎます。そしてこれらの光のエネルギーが地表を温め熱エネルギーに変わります。熱せられた地表がまた光を発するのです。ここで熱せられた鉄や炭がオレンジ色に光り、手をかざすと温かくなる現象を思い浮かべてもらうとわかると思いますが、熱せられた物体は熱放射によって、赤外線というまた違った光を発するのです。ここである種類の気体分子は、可視光線は透過するけれども、温められた地表から発せれる赤外線は吸収する性質があるのです。CO2はまさに、そういった気体分子で、過去の地球の大気中のCO2濃度の上昇と地球の温暖化は、非常によく一致します。この分野では世界中で膨大な数の研究が行われ、温暖化の原因は化石燃料起源のCO2であるということが、ほぼ間違いないと結論づけられています。
それではなぜ、地球上のCO2濃度が上昇しているのでしょうか？ いうまでもなく自動車や火力発電所による化石燃料の消費です。石油や石炭を燃やせば、酸素と結びつき、二酸化炭素となって大気に放出されます。日本だけで１年間に14億トン、一人当たり12トンのCO2を放出しています。なかなかすさまじい量ですね。東京の町を見渡すと、ガソリンを燃やして走る自動車が所せましと走り回っています。一人当たり年間12トンも温暖化ガスをまき散らしているわけです。ちなみにアメリカ人は一人で毎年20トン以上放出します。
ファクト３ ２１世紀末までに地球の気温は平均２度C〜３度C上昇すると予測されている
今後もCO2増加は止まることはありません。なぜならば世界中で経済成長しているからです。そこで様々な研究機関が地球の気温上昇をシミュレーションで研究しているわけですが、今世紀末には地球の平均気温は２度C〜３度C上昇すると予測されています。また、各国がCO2削減努力を怠り、今のペースで化石燃料の使用を増やし続けるとさらに数度C上昇すると予測されています。京都やコペンハーゲンの会議は、世界各国がどうやってCO2削減を達成するか話し合われ、各国にさまざまな義務を課すことになっています。今のところの目標は気温上昇を２度C以下に抑えることです。
日本は地球温暖化の研究では世界最先端で、民主党の仕分けで随分と話題になったスーパー・コンピューターはこの分野で非常によく使われています。スーパー・コンピューターは核兵器開発のために発展してきましたが、日本では地球温暖化の研究のために多額の国家予算が振り分けられてきました。また前首相の鳩山由紀夫は、非常にアグレッシブなCO2削減目標を国際公約し、削減できな分は他国から排出権を買うと気前よく世界中で約束してきました。そのために民主党は新たに14基の原子力発電所を建設し、2020年までに日本の発電に占める原子力の比率を50％以上に引き上げる、という原子力推進政策にアクセルを踏み込んだのです。
しかし、これらの気温上昇が、人間の生活にどれだけの悪影響があるかは、それほど明らかになっているわけではありません。地球温暖化を回避するための莫大なコストが、地球温暖化によるコストを大幅に上回っては本末転倒でしょう。たしかに砂漠との境界地域や、アフリカ諸国などで、間伐など、多少の被害が実際にではじめてはいるようです。また気温が上昇すると、台風などの頻度が上がるといわれており、日本にも被害があるかもしれません。熱膨張と氷河などが溶けることにより、海面が数十cm上昇すると予測されています。数十cmというと大したことはなさそうですが、世界には海抜とほとんど変わらないところに多数の人が住んでいるので、かなり大きい影響があるかもしれません。しかしそうやって被害を受ける地域がある一方で、シベリアやアラスカなどは今よりもずっと住みやすくなるかもしれません。
残念ながら、地球温暖化問題は、反原発運動のように、狂信的な環境保護団体が、科学ではなく政治の道具にしてしまっていることも事実です。あくまで科学的に議論し、そして経済的な部分ではコストと利益のバランスを慎重に考えて政策を決定していくべきだと、僕は考えています。温暖化を避けるために、温暖化により犠牲になる人よりも、経済の困窮により多くの人が犠牲になる、というのでは本末転倒です。反原発運動家が、放射能による死者を一人守るために、化石燃料による死者を千人増やしても、まるで気にかけない、というような態度ではいけません。
僕は個人的には、CO2削減目標にある程度の義務を課して世界各国が取り組むことは非常に大切だと思っています。CO2削減というのは、一粒で三度はおいしいと思っているからです。
もちろん温暖化を防ぐ意味で大切ですが、現在世界で毎年３００万人が犠牲になっているといわれる大気汚染も化石燃料を燃やすことにより起こっています。CO2を減らすということは、化石燃料の消費を減らすということと、ほぼ同じ意味なので、とうぜん大気汚染も減ります。それにより多くの方が救われるでしょう。また石油をめぐり世界で戦争が絶えません。石油依存を各国が減らすことは、世界をより平和にするのです。とりわけ化石燃料のほぼすべてを輸入に頼る日本で、化石燃料依存を減らすことは日本の安全保障にとって極めて重要でしょう。
それではCO2削減のコストとは何でしょうか？ 化石燃料の使用を税金などをかけて抑える、ということは当然、経済活動も抑えられます。その結果、経済が低迷する可能性があります。自動車などの輸送費、電気代などが「炭素税」で跳ね上がれば、経済が困窮してしまうでしょう。
しかしCO2削減と経済を両立させる唯一のエネルギーがあります。原子力です。原発で安い電気を大量に生み出し、ガソリン自動車をじょじょに電気自動車に変えていけばいいのです。そういう意味で、僕は民主党の原子力政策は間違いではなかったと思います。確かに、原発は事故も起こり、福島のように、最悪の場合、長年ある程度の土地が失われてしまうこともありえます。しかしそういったリスクを考えても、化石燃料依存のあらゆるリスクよりも、まだ原子力のほうがすぐれている、と僕は考えています。
ところが菅首相は、福島の事故以来、急に「脱原発で自然エネルギー」とか、わけのわからないことをいいだしました。国の防衛や外交、エネルギー安全保障を、こんな気楽に政局に利用する人たちに国家の運営を任せておいて大丈夫なのでしょうか？ 地球温暖化よりも、我々日本人は、そっちの方がはるかに心配ですね。
地球温暖化を正しく知るための本
この真実を知るために地球温暖化―何が起きるのか?どう克服するのか? (Newton別冊サイエンステキストシリーズ)
この本は圧倒的にわかりやすくて、専門家以外の人が知っておくといいことが網羅されています。カラー・イラストがいっぱいで読みやすいです。
地球温暖化を考える、宇沢弘文
経済学者の温暖化本です。面白いです。
正しく知る地球温暖化―誤った地球温暖化論に惑わされないために、赤祖父俊一
地球温暖化に懐疑的な研究者の本です。IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)に批判的な学者の理屈を勉強すると、IPCCの予測のどれがほぼ100%のもので、どれがまだよくわかっていない部分なのかがよくわかります。
