予約で発売日の入荷は全部売り切れ、それからどんどん入荷していたのですが、それも注文数の方が多くて、ずっと売り切れていたのですが、とうとう今日はじめてAmazonで「在庫あり」になりました。改めて紹介したいと思います。

本書は原子力に重点を置いた、極めて真っ当なエネルギー政策の教科書です。極めて真っ当なのに、反原発の人たちには不都合な真実がいっぱいなのです。エネルギーと国民の健康、エネルギーと経済、エネルギーと地球環境問題などの重要な問題が、この1冊でとてもよく理解できるようになると思います。


「反原発」の不都合な真実、藤沢数希

まえがき

3・11の福島第一原子力発電所での事故発生からというもの、テレビや新聞でおびただしい数の原発に関する報道がなされました。その多くが、原発を悪と決め付け、原発をなくすことが正義だという論調でした。この本は、そんな日本の反原発の風潮に一石を投じようという思いで書かれました。僕は金融機関に就職する前は、研究所で科学者をしていました。物理学やエンジニアリングの諸問題を、スーパーコンピューターによる大規模シミュレーションを利用して研究していました。金融機関に就職してからは、リスク分析や経済動向の予測などの仕事をしています。それでリスクや経済のことを深く考えるようになりました。

福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故は、物理学や経済学、そして医学の境界領域のむずかしい問題を、突如として僕たちにつきつけました。このような複雑な問題に対して、マスコミが流す情報の多くがあまりにも的はずれでした。さらに誤った理解にもとづく不毛な反原発運動などが起こってしまいました。そういった感情論に政治家が乗っかり、むしろ事を荒立てはじめたのです。そして、日本のエネルギー政策がひどく混乱しています。

こうした風潮を少しでも変えようと思い、僕は原子力技術や放射線と健康被害の関係、エネルギー政策やその経済への影響などをブログで書き続けてきました。幸いなことに、僕のブログは多くの人の関心を集めました。また、日本の原子力行政に関わっていた専門家の人たちが、まるで巨大な外敵が現れて頭を甲羅の中に隠す亀のように、誰もマスコミで発言しなくなってしまい、マスコミに登場する識者と呼ばれる方々は、原発の危険性や放射能の恐怖を煽るような人ばかりになりました。そのため、僕は原子力の専門家ではありませんが、原子力、エネルギー政策に関して様々な取材を受けることになったのです。

エネルギー政策というのは、電力会社や石油メジャー、そして、国家の安全保障問題など、さまざま利害関係が交錯し、建前と本音が全く違う世界です。また、このような社会の雰囲気の中で「原子力村」の中の人がいくら正論をいっても反感を買うだけでしょう。エネルギー政策というのは非常に広い範囲にまたがり、「エネルギー」の専門家というのは実はいません。原子力に関していうと、原子力工学の専門家や放射線医学の専門家は確かに有益な情報を提供してくれますが、彼らが原子力政策の全体を見渡しているわけではないのです。

そこで、僕のようにエネルギー産業と直接の利害関係がなく、科学者であり、また経済学やリスク分析の専門家が、わかりやすいエネルギーの本を書くことは大変意義深いことではないかと思うに至り、このような本を出版することを決心したのです。それからというもの、僕は休暇のほとんどの時間を使い、執筆作業に没頭しました。インターネットでの議論を通して知り合った原子炉のエンジニアや放射線医学の専門家、エネルギー政策担当者の方にもいろいろと教えてもらいました。一つひとつのデータを根気強く精査しました。データのソースに関しては、全て明記しました。おかげで誰にでも簡単に読めて、日本のエネルギー政策を真剣に考えるのに必要な知識がつまった、とても役立つ本になったと自負しています。

もちろん、この本の内容に異を唱える方もいるでしょう。そうした意見はどんどん寄せてほしいです。ただし感情論ではなく、実際のデータや科学的な考察をもとにした議論を望みます。僕がこの本を書いたのも、テレビや一部の新聞社による、ただ無闇に煽ったり、人々を怖がらせたりするといった、感情的な議論を非常に不毛だと感じたからです。そして、それは不毛なだけではありません。そういった感情論で、国家の根幹に関わるエネルギー政策が歪められれば、多くの日本国民が大変な不利益を被ってしまうのです。だからこそ、冷静に科学的に考えることが何よりも大切だと思います。

この本をきっかけに、日本の原子力政策に関して冷静に考えることができる人がひとりでも増えれば、僕にとって望外な喜びです。

目次

「反原発」の不都合な真実

第1章 原子力で命を守りたい

エネルギーなしでは生きられない
原子力は火力や水力よりも安全
太陽光や風力でも犠牲者は出る
1TWh当たりの死亡者数の推計
大気汚染で年間100万人以上が死亡
日本でも年間3〜5万人以上が死亡
火力発電では1TWh当たり平均21人が死亡
原子力発電では1TWh当たり0・03人
自然エネルギーも原子力より危険
脱原発で多くの人が犠牲に
原子力は不安だが安全
原発ゼロによる大気汚染
原発ゼロだと日本で毎年3000人以上死亡

第2章 放射線のリスクとは?

福島第一原発事故の死者はゼロ
メディアが煽る恐怖
メディア受けするリスクと本当のリスク
内部被曝も外部被曝もシーベルト
しきい値なし比例モデル
放射線医学の専門家の見解
放射線のリスクの比較
チェルノブイリ原発事故の真実
原発事故は最初が肝心
高放射線地域で健康被害なし

第3章 自然エネルギーの不都合な真実

注目される自然エネルギー
総エネルギー消費のわずか1%
日本はすでに自然エネルギー大国
欧米のソーラー・メーカーは破綻
自然エネルギーも環境破壊する
自然エネルギーは大量の土地を必要とする
天気まかせの不安定な発電
電気は貯められない
メガソーラーの発電量の実情
自然エネルギーは補助金ビジネス

第4章 化石燃料と地球環境問題

日本のエネルギーフローの全体像
地球温暖化問題
電気自動車は原発なしには普及しない
いつか枯渇する化石燃料
最新のコンバインドサイクル火力発電所
コージェネレーションと分散型電源
シェールガスの可能性

第5章 救える命の数は経済の豊かさに比例する

経済と命はトレードオフの関係にない
脱原発のコストは燃料費だけで年間4兆円
原発事故の損害賠償と原子力の発電単価
電気代とエネルギー源
スリーマイル、チェルノブイリ後のエネルギー政策

第6章 原子力を理解する

周期律表とウラン原子
放射性同位体と放射線
E=mc2でエネルギーが生まれる
原発は原爆にはならない
原子力発電の仕組みは火力発電と同じ
怖いのは地震や津波ではなく人為的ミス
核燃料サイクルの現状
貯めこまれる使用済み核燃料
放射性廃棄物について知っておきたい3つのこと
ガイア理論のラブロックの言葉

第7章 エネルギーの未来

世界の人口増加と経済成長
有望な省エネルギー技術LED
現代はシリコン時代
LEDと太陽電池は同じ仕組み
ビル・ゲイツは自然エネルギーに懐疑的
ダライ・ラマも脱原発に反対
電力自由化
自由化で日本の電気代は下がった
スマートグリッド
開発が進む次世代原子炉
日本は福島の原発事故の経験を生かせ

あとがき