こんにちは。藤沢数希です。今日は、デフレ経済の中、懐にやさしい珠玉の文庫本を紹介したいと思います。この前の記事でも書いたけど、なんだかんだいって、日本の紙の本は安くて、書店もたくさんあって、いいんですよね。

1.儲けにつながる「会計の公式」―借金を返すと儲かるのか? 岩谷誠治

この本は、僕のブログでもたびたび紹介していた会計の入門書です。今回、お手頃価格で文庫化されたようです。企業活動で日々積み上げられる売上や費用がどうやって損益計算書や賃借対照表に反映されていくのか、そのダイナミックな仕組みが非常にわかりやすく、超初心者向けに解説されています。PLとかBSとかキャッシュフロー計算書の意味をざっくりと理解したい人は、ぜひ買いましょう。かなり加筆修正されています。

2.スリッパの法則―プロの投資家が明かす「伸びる会社・ダメな会社」の見分け方、藤野英人

この本は5000社を訪問し、5500人の経営者に会ってきた、中小型株のファンドマネジャーの藤野氏が、やっぱりダメだった会社、そして伸びた会社の共通点をまとめている良書です。金ピカの高級時計をしている社長、高級外車を経費で買っている社長・・・などなど。面白いエピソードとともに、思わずハッとする発見が満載です。そして僕はこの本は株の本ではなく、人間性を磨くための本として読みました。現状に満足してしまったり、ちょっと物事がうまくいって浮ついて気持ちになっていないか、自分の心を再点検するために、ぜひ読みましょう。

3.負け犬の遠吠え、酒井順子

美人でキャリアがあっても、30過ぎて未婚で子なし女性は負け犬。キャリア女性を殺すに刃はいらぬ、「あなたは女として幸せじゃない」といえばいい、など、もし男性著者、あるいは酒井女氏のいう負け犬でない女性著者が書いていたら決して成立しえかったであろう、コミカルな作品に仕上がっています。若いころはチヤホヤされて、キャリアでもがんばった著者は「負け犬」なのです。豊かな先進国の女性の未婚化、そして少子化は世界中で進んでおり、また、そのような女性が活躍する、Sex and the Cityなどの作品が世界中で流行している背景が理解できるようになるかもしれません。春にぴったりな軽快なエッセイの数々は、現代の恋愛論のひとつの古典といっていいでしょう。

4. 銃・病原菌・鉄(上)1万3000年にわたる人類史の謎、ジャレド・ダイアモンド、倉骨彰 (翻訳) 銃・病原菌・鉄(下)1万3000年にわたる人類史の謎、ジャレド・ダイアモンド、倉骨彰 (翻訳)

分子生物学や言語学などを駆使して、長大な人類史を語る世界的な名著も、ついに文庫化。世界中で様々な賞を受賞した本書は、とりあえず読んでおかなければいけない古典です。著者は歴史学者ではなく、分子生物学者で、それゆえにユニークで、説得力のあるもうひとつの人類の長大な世界史を語っています。

5.1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉前編、村上春樹 1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉後編、村上春樹

今時、小説の発売日で、徹夜で書店に人を並ばせられるのは村上春樹ぐらいだろう。まったく実用性のない娯楽小説ではあるが、空想の世界と現実の世界が混乱しながら美しくも交錯していく村上ワールドを体験しよう。この本も文庫化して、お手頃価格になった。スポーツインストラクターの若い女性「青豆」は実は殺し屋。そして数学の予備校講師で、小説家を目指している「天吾」。このふたりの主人公のストーリーが、一章ずつ展開されていきます。やがて月がふたつある世界に彼らは迷い込んでいくのだが・・・