「有名人になる」ということ―あなたに愛して欲しかっただけ、勝間和代

勝間和代さんは、外資系企業のサラリーマンを経て、作家、テレビタレント、経済評論家などをしている、今や誰もが知る有名人だ。彼女のキャリアと、僕のキャリアは重なる部分も多いので、僕は彼女の本などは、たまに読んでいた。しかし、彼女の書く本は常に20万部、30万部以上を狙って書かれていて、あまりにも大衆向けで、ちょっとレベルの高い読者を想定している僕のブログ「金融日記」やメルマガ「週刊金融日記」ではほとんど紹介してこなかった。

しかし、本書は、勝間さんの一連の自己啓発本とは一線を画するもので、彼女のマスターピースといっても過言ではない作品に仕上がっている。外資系企業のサラリーマンを辞めて、今に至るまでの彼女の軌跡が、彼女のピュアで、まるで何も知らない少女のような言葉で綴れているのだ。そして、僕は彼女のことを誤解していた、と気付かされた。彼女が本当に心から求めていたものに気づいていなかった。あるいは、意図的に無視していたのかもしれない。

勝間和代は、自らの著書にも書いているが、400万部の自著を現在までに売り上げている。一冊1200円としても、印税だけで4億8000万円にもなる。また、あれほど有名な文化人になったおかげで、講演料は1回50万円〜100万円程度で、こういった活動で1年間に1億円程度の売上があったと書いている。本人は、これは売上であり、ここから経費が引かれるので、あれだけ有名になってもぜんぜん大したことがなかったと卑下しながら書いているが、経費なんてせいぜい年間1000万円〜2000万円程度だろう。つまり、ほとんど利益になるのだ。そうすると、サラリーマンの時の所得も足すと、ざっと計算するだけで彼女は今までに10億円ぐらいは稼いでいることになる。

税金で引かれるけど、これだけ稼げば普通の人なら使い切れない。男だったら、それこそ愛人を何人も囲って毎日飲み歩いて、がんばればそれなりに使えるけど、彼女はそんな趣味もなさそうだ。だから、てっきり僕は彼女はセミリタイヤして悠々自適の生活をしていると思っていた。

しかし、この本には、最近、本が売れなくなったことへの彼女の苦闘が書かれていた。様々な連載が打ち切られたことへの恨みも。そして売れなくなった女優がヌードになったりして、もう一度世間の注目を集めようとする、そういった感情についての素直な理解も示している。かつてのように、またベストセラーを書きたい、と毎日悩み苦しみながらも、勝間和代は今でも本を書き続けていたのだ。そう、彼女はぜんぜん幸せになれなかった。こんなにも、仕事で成功し、金を稼ぎ、有名になったのに。

そして、行間から滲み出る、女としての勝間和代。まるで、今にも腐り落ちそうな熟したパパイヤが発する甘い匂いのように、勝間和代という熟女の色香がこの本の行間から滲みでてきている。そう、彼女は気づかないふりを必死でしてきたけど、本当は気づいてしまっているのだ。今まで、がむしゃらに走ってきたけど、本当は、ただあなたに愛されたかっただけ、だということを。愛している男に、ただ抱かれたかった。それだけだったのに、また、こんな本を書いてしまった。だけど、本当に欲しいのは、あなただけ。そんな勝間和代の心の叫びが聞こえてきそうだ。

だから、僭越ながら、僕はこの本にこっそりとサブタイトルを付けておいた。誰にも気付かれないように、小さな字で、サブタイトルを書いておいた。

―あなたに愛して欲しかっただけー