さて、今週も生命科学の授業の時間がやってまいりました。前回までに、STAP細胞に至るまでの多能性幹細胞開発の歴史と、オボちゃんのNature論文では何を証明しようとしてT細胞に注目したのか、などを勉強しましたね。

いまさら人に聞けないSTAP細胞と細胞生物学の基礎
いまさら人に聞けない小保方晴子のSTAP細胞Nature論文と捏造問題の詳細 その1 TCR再構成と電気泳動実験

さて、最初に国内外の研究者がおかしいと騒ぎはじめたのが、電気泳動実験で、T細胞のサンプルからES細胞と同じラインが消えていて、そのレーンが明らかに切り貼りの痕跡が見えていたことでした。そもそも何を証明しようとしているのかわけのわからない実験だったので、TCR再構成で体細胞を初期化しているということをどうやって証明しているのか、みんな疑問に思ったわけです。前回の講義で説明したように、オボちゃんがTCR再構成などの概念をよく理解しておらず、また電気泳動実験で何が見えるのかもよく知らなかったため、データを捏造して、間違っているストーリーを証明するために、かなりアクロバティックな切り貼りが披露されました(笑)。オボちゃんのキャラとか、学力などが垣間見れる、大変に興味深い捏造プレイですね。ナイス!

まあ、しかし、オボちゃんは、元々頭脳派ではなく、ガンガン実験をやりまくって、万が一にもSTAP細胞作製に成功したら超ラッキー!みたいな感じで、ダメ元で一発当てよう的なプロジェクトとして、上司の笹井さんなんかは彼女を見ていたと思います。もちろん、あっちの下心もあっての採用だとは思いますが。それで、こうしたT細胞のアイディアとか電気泳動実験なんかは、オボちゃんが考えたとは言い難く、僕は笹井さんたちのアイディアだと思います。そして、Natureの論文はかなり熟れた英語で書かれており、大事なところはほとんど全て笹井さんが書いたと思います。なので笹井さんが電気泳動実験の不備をチェックし切れなかったのは、一流の研究者としてはけっこう恥ずかしいです(なぜ、これが笹井さんのチェックをすり抜けたのかについては、僕なりの解釈があるので、また別の機会に書きます。ひとつは当然ですが笹井さんは免疫の専門家ではなく、万能細胞の分化などの研究の専門家だということです)。

細かい実験方法の説明の部分は、(笹井さんは実験には直接タッチしていないので)オボちゃんが書いたと思われます。そのオボちゃんが書いた部分は形式的な実験方法の説明のところで、彼女は思いっきりコピペするわけです。しかし、誰が書いても同じコンセプトが伝わるようにしなければいけない理系の論文は、ある種のテクニカル・ライティング的な要素があるので、ぶっちゃけた話、こうしたコピペ自体はそこまで悪いことではありません。適正な引用などをして、英語が不得意な研究者は、どんどんコピペすればいいと思います。

しかし、ここは我らのオボちゃんです。本当に期待を裏切りません。こうやってコピペしたら、当たり前ですが、実際に使った実験装置の名前や試薬などに、自分の実験に合わせて書き換えないといけません。ところが、彼女はコピペ元のそうしたものまで、全部丸コピペで、自分がやったことに合わせることもしていません。なので、もう売ってない昔の試薬の名前とかが、コピペしたままなので、そのまま登場します(爆笑)。ちなみに、このコピペはどうやってバレたかというと、国内外の2チャンネラーみたいな人たちが、なんでもう売ってない大昔の試薬の名前が出てくるんだ、おかしいぞ、と言いながらみんなで色々探したら、丸ごとコピペした元の論文が見つかった次第です(笑)。

他研究者の論文からの文章剽窃(盗用)1件目

彼女、本当に研究が嫌いなんだな、ってわかります(笑)。私は銀行に就職することが決まったのに、ただ単位を取るためになんでこんな実験レポート書かないといけないのよ!みたいな大学4年生のリケジョのノリそのままです(笑)。大変、可愛いらしいですね。

ということで、2月上旬ぐらいは、STAP細胞のTCR再構成を確認することにより、確かに体細胞であるT細胞が初期化されているんだ、という今回の論文の主張の根幹部分が、電気泳動実験のおかしなデータで揺らぎ始めていました。

そして、3月5日に理研が衝撃的な告白をしました。これは世界中でSTAP細胞をNature論文の通りに作ろうとしたけど、全く作れない、ということで疑念の目が向けられていたときに、じゃあ、我らのオボちゃんがSTAP細胞を作るためのコツを教えてあげるわ、と理研自らが発表したものです。

Haruko Obokata, Yoshiki Sasai and Hitoshi Niwa, "Essential technical tips for STAP cell conversion culture from somatic cells," RIKEN Center for Developmental Biology.
We have established multiple STAP stem cell lines from STAP cells derived from CD45+ haematopoietic cells. Of eight clones examined, none contained the rearranged TCR allele, suggesting the possibility of negative cell-type-dependent bias (including maturation of the cell of origin) for STAP cells to give rise to STAP stem cells in the conversion process. This may be relevant to the fact that STAP cell conversion was less efficient when non-neonatal cells were used as somatic cells of origin in the current protocol.

ドサクサに紛れて、理研がSTAP幹細胞にはTCR再構成が確認できなかった、とすげーさり気なく告白します(笑)。細かいことですけど、STAP細胞とは、体細胞に刺激を与えて初期化し、多能性を獲得した細胞のことです。しかし、STAP細胞は自己増殖せずに、これを特殊な培養液に浸して増殖できるようにしたのがSTAP幹細胞です。オボちゃんたちは、Nature論文の根幹を覆す事実をいきなりしれっと発表したわけです。これでこの論文は相当怪しい、ということが国内外の研究者にははっきりとしたわけです。少なくとも、論文としての体は成していない。

このSTAP細胞を作るコツのリリースはオボちゃんと笹井さんと丹羽さんの名前で書いていますが、この時点で笹井さんと丹羽さんは電気泳動実験がおかしいことに気がついていて、オボちゃんをちょっと詰めているはずなので、オボちゃんがあの写真の切り貼りの部分をゲロって、あ〜、こりゃちょっとまずいなー、ぐらいは思っていたはずです。だから、ここでドサクサに紛れて、正直にみんなに気づかれないように告白しておこう、と考えたはずです。英語を見ると、やっぱりNature論文と同じような熟れた英語なので、これもオボちゃんにインタビューして、オボちゃんのことが大好きな笹井さんが書いてあげたと思いますね。なんせ「ケビン・コスナー」ですから(笑)。

「T細胞はSTAP幹細胞になれない」慶応大学医学部吉村研究室
"Key Initial Reactions to RIKEN’s detailed STAP stem cell protocol," Knoepfler Lab Stem Cell Blog, March 5, 2014

それでも理研もハーバード大も、論文の根幹部分=STAP細胞が作れた!ということは揺るぎない、と繰り返します。つまり、それがT細胞から作られている、というすごくエレガントな証明をすることには確かに色々不備があって失敗しているけど、STAP細胞自体はやっぱりできてるんだ、とオボちゃん以外の共同研究者はみんな信じていたわけです。ひとりを除いて。そのひとりとは山梨大学に移っていた若山さんです。若山さんはこの時点で、オボちゃんという黒髪で一見清純そうな女がじつはすげービッチなんじゃないか、という疑念を持ち始めたと思います。なぜならば、若山さんはキメラマウスの実験を担当するのですが、TCR再構成が確認できたSTAP幹細胞だとオボちゃんに言われて、それを使って手間暇のかかる実験をしていたのであり、その部分がいきなり覆ったからです。逆に言えば、いままでは若山さんという、世界的に尊敬されている研究者がオボちゃんのSTAP細胞を本物だと言い続けてきたから、他の共同研究者も世界の研究者もSTAP細胞の存在を信じざるを得なかったわけです。

"Interview with Dr. Teru Wakayama on STAP stem cells," Knoepfler Lab Stem Cell Blog, February 27, 2014

案の定、平穏な日々は長くは続きませんでした…。我らの2チャンネラーたちがNature論文で決定的な捏造写真を発見してしまったのです。これに関しては次回に解説しましょう。

まぐまぐブロゴス夜間飛行ブロマガ