2010年02月

2010年02月25日

スマトラ展−ランプンの手仕事

5bb7dd1b.jpg いよいよ『スマトラ展』の展示品紹介も最後になりました。あと残り2日、なんとか間に合いました

 スマトラ島の旅の最後は南端の都市・ランプン。ここではインドの古更紗の他に現地で制作されている織物や手工芸を蒐集するのも目的でした。

 ランプンの代表的な布工芸は刺繍布のタピス(左写真上)と織物のタンパン(左写真下)。金糸刺繍のタピスは結婚式などの礼装に使用されるもの。一方のタンパンは「霊船布」と呼ばれる祖霊神と船のモチーフによってランプン人の宗教観が表現された織物。かつて儀式の際に使用されていたそうです。







lampun2タピスはランプン郊外の農家の女性による家内工業で制作されていました。30センチ幅の布に刺繍したものを接ぎ合せて一枚の巻スカートに仕立て上げます。おそらく何十年もタピスの刺繍に携わってこられた方なのでしょう。緻密な仕事ながら、針を通すスピードがすごい。









lampun3竹で編んだ籠にビーズを使って文様を刺繍した「マニックマニック」と呼ばれる工芸品もランプンの隠れたご当地名産。以前からバリの骨董品店などで見かける度に「どこで作っているんだろう」と思っておりましたが、村巡りをしている最中、偶然その出所が判明いたしました。


lampun4それがこちら。ビーズに糸を通す人、籠に刺す人、仕上げをする人の三人がかりで大作に挑んでおられます。ビーズ工芸は世界に数あれど、これはつくづく手間のかかる作業だと思いました。デザインのモチーフはタンパンに出てくる「霊船布」に共通しております。


lampun5残念なことに現代の織物では見るべきものがほとんどありませんでした。ランプンにはタンパンをはじめ北西のパセマ地方にも絣布(左写真)を織る文化がかつてありましたが、今はアンティークとして残されているものを集めるのが精いっぱいでした。現在『スマトラ展』で展示している布や工芸品もそのほとんどが50年以上前のものです。かつて生みだされた美術工芸に感銘することもさることながら、失われた手仕事の文化をもう一度再興させることはできないものかと考えさせられた旅でした。

kazukuti at 18:47|Permalink イベント | 

2010年02月23日

スマトラ展−ジャンビのバティック

530039b8.jpg パレンバンの次に向かったジャンビはスマトラ島最長の川、バタン・ハリ川の両側に発展した町。ここではバティックと呼ばれるロウケツ染めの更紗が制作される村があるというので行ってみました。

 バティックは日本では「ジャワ更紗」という名前で知られている通り、インドネシアでもジャワ島に古くから伝わる染色文化ですが、例外としてここスマトラ島・ジャンビでも生産されてきました。バティックには地域によってそれぞれ特色のある文様や色彩があり、ジャンビのバティックは茶や濃紺色の地色にインドやイスラムの影響をうけたデザインが特徴です。


jambi2大きく分けてバティックには蝋を手描きする「トゥリス」と銅板で蝋を型押しする「チャップ」、そして両方を合わせた「コンビナシ」の3技法がありますが、ここで行われているのは「トゥリス」。これまでジャワ島各地で見てきたバティック工房と比べるとその規模は格段に小さく、多いところでも3人程度の家内工業で制作されておりました。



jambi3職人さんの中でも年配のお婆さんには「さすがの腕前」と思わせる方もいらして、丁寧に染められたバティックを購入しました。その方が言うには、かつてこの辺りの職人さんは皆ジャワ島北岸のプカロンガンに修行に出ていたのだそうです。そのせいなのか、ジャワ島の手描きバティックを所有されている家があり、そのうちの何点かも譲っていただきました→詳しくはたそがれスマトラ編で。



jambi4バティックの村はバタン・ハリ川沿いにあり、雨期になると水位が上昇するためなのか総じて高床式の住宅です。床下にはボートを用意している家も数多くありました。パレンバンもそうでしたが、古い町ほどギリギリ川に沿って家が建てられている傾向があり、これは農業ではなく水上交易によって発展したスリウィジャヤ王国時代からの文化なのかと想像してみたり。




jambi5突然現れた異邦人(ご隠居と私)に最初は驚かれましたが、そのうち打ち解けて温かく家の中にも迎えていただきました。古い家でもきちんと整えられて環境の良さが印象的なバティックの村でした。

kazukuti at 14:50|Permalink イベント | 

2010年02月22日

スマトラ展−パレンバンの手仕事

9544cbeb.jpg すっかり間を置いてしまいました、『俺のスマトラ展』の工芸品紹介。とりあえず今週末まで期間がありますので、書けるだけ書いておきます。

 さてバタック族の住む北スマトラ州から次に向かった先が南スマトラ州のパレンバン。ここでは主に古いインド更紗と現地の伝統織物・ソンケットの古布を蒐集するのが目的でした。

 ソンケットはこの地域に住むマライ人の正装や婚礼の時にサロン(腰巻)やショールとして使用される織物。金糸と絹糸を使い緻密で色鮮やかな文様が織り込まれております。20世紀初頭まではリマールという茜色の緯絣(よこがすり)が入ったソンケットが作られていました。左写真は現在出品中のリマール。この絣の柄はインドのグジャラート周辺の織物に共通するもので、古くからインドとの交流があったことがうかがわれます。



son5インドとパレンバンとを結ぶ線は、この場所からインド更紗の古布が時々見つかることからも想定できます。今回は18世紀後半〜19世紀頃と思われる更紗を集めてまいりましたが、現地のコレクターの中には「これはインドから伝わったものではなくて、当時インド人がパレンバンに来て染めたものだ」という人もいて、かつて染色の過程で使われたという木版を見せてくれました。本格的に調べてみないと分かりませんが、もしかしたらスマトラに輸入されたと思われている更紗の中には、そうしたものも含まれているのかもしれません。



son2現在ソンケットが織られている工房(機屋さん)はパレンバンの旧市街地に数箇所あります。昔のものに比べると質の低下は否めませんが、こんな簡素な機織具でソンケットが織られていると思うと、その技と根気に頭が下がります。それと同時に絣入りのソンケットを織っていた、かつての職人の技術力にも驚かされました。


son3パレンバンの結婚式では新郎新婦とその親族はソンケットを纏います。機屋さんの結婚式にお邪魔しましたが、さすがは本職!皆さん豪華なソンケットで着飾っておられました。両脇の男性が被っている頭巾もソンケットです。




son4ソンケットの機屋さんのあるパレンバンの旧市街はオランダ統治時代からの街並みが残っております。この通りの先にはかつてこの地に栄えたスリウィジャヤ王国の宮廷があったとされる遺跡がありました。伝統織物と街並みが残る古都という点で、どこか日本の京都にイメージが重ねられるスマトラ・パレンバンです。

kazukuti at 15:01|Permalink イベント | 

2010年02月16日

結婚式でダイエット

0a41c10f.jpg 先週末、高校時代からの親友の結婚式が東京でありました。友人とは家族ぐるみの付き合いがあるので、うちの両親もご招待いただいたのですが、『俺のスマトラ展』の最中に「俺(ご隠居)」が店を抜け出す事は叶わず、母親と2人で参列してきました。感情を滅多に面に出すことのない新郎が何度も号泣するほど素晴らしい結婚式でした。

 その日着用するスーツは大学入学時に仕立てたもの。日頃スーツを着る仕事をしていないので一張羅のダブルです。ところが、出発3日前に試し着してみたところ、ズボンのボタンが締まらない。急遽買い換えるのも屈辱なので、ボクサー式の減量法をトライすることに。空腹でろくに眠れぬ夜を過ごした甲斐があって、なんとか当日は無事に着ることが出来ました。ここで気が緩むとまた服が着られなくなる事態になるので、今後も継続してダイエットしなければ!

 日曜日は帰りの便までの間、東京散策を楽しみました。

tokyo2まずは恩師・田中忠三郎さんのコレクションを観にアミューズミュージアムへ。浅草・浅草寺の脇に入ると、田中先生の姿が描かれた看板を発見!ここの2、3階で田中コレクションの特別展が開催されております。



tokyo3会場にずらりと並べられた「ボロ」。昨年当店でのイベントの際に出品していただいた資料も展示されておりましたが、これだけ本格的に飾られるとボロの持つ力に圧倒されます。あらためてこれらのコレクションがテキスタイルアートとして評価されたことに感慨深いものを感じました。他にも縄文から近代の古道具まで、まさに田中ワールド全開のアミューズミュージアムです。


他にも新装したばかりの根津美術館、サントリー美術館などを観て、最後は一度来てみたかったリッツカールトンホテルへ。

tokyo4
こちらのロビーには店でも何度か個展を開催させていただいている寄神宗美さんの彫刻作品が飾られており、是非拝見したいと思っておりました。噂には聞いていましたが43階(?)にあるロビー、久々に東京に出てきた私には別次元の世界。写真右側にあるのが寄神さんの作品。思っていた以上の大作で驚きでした。


tokyo5
クラシックの生演奏にも惹かれ、「せっかく来たから記念に」というお上りさんならではの理由でビールを一杯。1500円(!)というハイプライスもあまり高いと感じさせない優雅な雰囲気がそこには流れておりました。

kazukuti at 13:46|Permalink 店主の日常 

2010年02月09日

スマトラ展−閑話休題

 前回から『スマトラ展』の工芸品にまつわる連載がスタートしましたが、今日は早速の閑話休題。

 いつもお世話になっている秋田経済新聞さんに今回の『俺のスマトラ展』を掲載していただきました→こちら。アキケイさん、ありがとうございます!

 ちょうど秋田経済新聞さんの『スマトラ展』の記事の前に、11日までココラボラトリーさんで開催されている『めまいとやすらぎ―大高亨、金澤一水・二人展』についての記事が掲載されております。

 染織作家の大高亨さんには常日頃お世話になっており、今回の二人展は染織と彫刻のコラボということでとても楽しみにしておりました。先週の土曜日に伺いましたが、アートと工芸の枠を超えた素晴らしい内容で、こちらもぜひ多くの方々に見ていただきたい展示会です。

kazukuti at 11:48|Permalink イベント 

2010年02月08日

スマトラ展−バタック族

6240802f.jpg 吹雪の中5日からスタートした『俺のスマトラ展』。寒い中、多く方に来場していただきありがとうございました。会期はまだ2週間以上ありますので、少しでも多くの皆さまにご覧いただければと思っております。

 これから何回かに分けて『スマトラ展』で出展している工芸品を、現地で出会った順にご紹介したいと思います。まずは北スマトラのバタック族の工芸品から。

 バタック族は北スマトラ州に居住する民族で、地域によって6つのグループに分けられます。そのうちトバ湖とその周辺に居住するトバ・バタック族はウロスという木綿の絣布を織ることでも知られております。

 現地で蒐集したのは50年以上前のトバ・バタック族のウロス(上写真)や木彫品(下写真)など。草木で染めた糸を使い、腰機を使って緻密な文様が織られたこれらの布は、結婚式の贈答品や儀礼での衣装として使用されていました。木彫も彼らの代表的な工芸品。力強い造形でありながら、細部には丁寧な仕上げが目を引きます。




batak2

 トバ湖にはサモシール島という島があり、バタックの人々が暮らしております。一つの村では織物が細々と続けられており、若い女性たちが機織りや糸紡ぎに携わっておりました(左写真)。50年前に作られたウロスに比べるとその質は格段に落ちており、用途としても土産物屋で販売するのが主で、ウロスの伝統織物としての役割は残念ながら終わろうとしているのかもしれません。本当に消えてしまう前に、かつて作られていたような素晴らしい染織技術をもう一度復活させる事はできないものかと、考えさせられました。





batak3

 サモシール島の見所として有名なのが、かつてのバタックの王族が眠る石棺と石像群。素朴でユーモラスな表情が楽しい石造遺跡です。なんとなく奈良の飛鳥にある猿石石人像を思い起こさせます。

kazukuti at 14:21|Permalink イベント | 

2010年02月05日

『俺のスマトラ展』始まりました

3c1b078e.jpg 今日から『俺のスマトラ展』スタートいたしました。ご隠居が執念で手に入れた「古渡り更紗」の衣装をはじめ、スマトラ島各地の布や木工品、現地に伝わる古陶磁などの美術工芸品が一堂に揃いました。もちろんこの展示に合わせ集めたインドネシアの雑貨も出品しております。

 あらためて展示している工芸品をみていると、スマトラはまさにアジア文化の"るつぼ"なのだなと思わされました。インドから伝わった更紗やインドの影響で作られるようになった絣織りの古布。ジャワからのロウケツ染め・バティック。中国をはじめ東南アジア各地から伝えられた陶磁器。バタック族のプリミティヴな布や木工品。かつて「海のシルクロード」によって栄えたスマトラは、古くから多種多様なモノが行き交う島であったことを、私たちが集めてきた品々を見ても感じていただけると思います。

 この冬一番の寒さとなったここ数日の秋田ですが、ぜひご隠居の『スマトラ展』ご覧にいらしていただければ幸いです。

kazukuti at 12:35|Permalink イベント