2010年03月

2010年03月29日

未来に残す仕事

68cc6126.jpg 春が近づいてきたので衣替え(実際まだ肌寒いですが)というとで、今週から1Fの展示内容を模様替えしました。先日ミャンマーとタイで買い付けした商品の中からは、・漆製品(写真)・貝のカトラリー・少数民族の刺繍を使った小物・薄手のショールなどを出品しました。金曜日から始まる『群言堂展』では、インドのカットワークや新入荷したアクセサリーも同時に出品いたします。

 ミャンマーでの買い付けの中で、現地のものづくりや商売に対する姿勢にとても感銘を受けたことがありました。それをご紹介いたします。

 パガンにある一つの漆工房を訪れた際、制作に対するこだわりをご隠居も私も気に入って仕入れることになりました。ミャンマーの漆器は竹や馬毛で編んだ素地に漆を塗り重ね、その上に小刀で線彫りをして、色漆を塗り込める装飾を施す(日本ではキンマ呼ばれる技法)のが代表的な技法ですが、ここでは素材にこだわっている上、彫りの緻密さも秀逸でした。現在出回っている漆工芸の多くに使われている化学塗料を嫌い、高価でも質のいい天然漆を使用しています。

 作品を選んだ後、工房のオーナーに「今後漆の素材や装飾の技法を伝えていく中で不安はないのか?」と聞いてみました。その問いに彼は「古い技法や素材を伝えていくのはもちろんだが、昔のモノを質で越える作品づくりを目指していきたい。これからも漆は天然のものしか使わないし、量より質を重視して続けていく。」と答えられました。

 続けて、他の工房で日本の根来塗りを意識した作品を制作しているのを見ていたので「日本の漆についてはどう思うか?」と訪ねたところ、「日本の漆技術は素晴らしいと思う。しかしミャンマーの漆は全く別物だ。日本の漆の技法をマネしたいとは思わないし、これからもミャンマーのスタイルでやっていく。」と力強く答えました。

 それは私が思う理想のものづくりの姿勢でした。伝統を重視しながら決してそれを守るだけにとどまらない、数を多く作らなくていいからクオリティの高いものを生み出していく、芯にある文化の特性を守るため安易に他の真似はしない。こうした誇り高いオーナーの理想の上で、妥協をしないものづくりがされている事が、作品のどれをとっても感じられました。

 もう一つはヤンゴンにある少数民族の布屋さん。チン族のご夫婦が経営しているこのお店には私もご隠居もミャンマーに来る度に訪れているので、すっかり顔馴染みとなっております。ご夫婦ともヤンゴン大学を出られたエリートで、布や工芸品の商売をされながら、民族に伝わる手仕事を未来に残したいと頑張っておられます。

 店の奥さんが「今、この布を復元している最中なんですよ」とカミチン族の古布を取り出してきました。現在この布と同じ柄を織る技術はあるけれども、糸は皆市販のものを買ってきて織っている。このままでは糸作りの手仕事が民族の文化から消えてしまうので、かつて糸を作っていたお婆さんを見つけてはその技法を教えてもらっている、とのことです。他の様々な文化遺産と同様に、手仕事も一度消えてしまえば元には戻すことは至難の業です。民族の誇りである織物の技を、ご商売をされながら未来に伝えていこうとするこの店のオーナーご夫妻の考えに改めて敬意を深くしました。

 漆工房のオーナーさんと布屋のご夫妻がやっていらっしゃる仕事は、未来に自分たちの歴史ある手仕事の文化を少しでも良いカタチで伝えていこうとする事なのだと感じました。利益にとらわれた安易な姿勢ではない、崇高な志を持った人の商売です。私も日本や世界の手工芸を扱う仕事をしていく中で、少しでもこうした人たちの方向性にならった生き方をしていきたいと思いました。いろいろ教わることの多かったミャンマーの旅でした。 

kazukuti at 23:50|Permalinkイベント | 

2010年03月25日

パガン再訪

193ed7f5.jpg 帰国して早1週間が過ぎました。その間買い付け商品の値段付けと、私たちとほぼ同時に到着したインドからの荷物(昨年11月に発注していたもの)の整理などに追われ、それでも夜の晩酌は欠かさない日々を送っていたら、ついに胃が悲鳴を上げてダウンなんとかお昼過ぎまで寝ていたら治りましたが、さすがに今日は晩酌抜きです。

 さてこの旅の中でハイライトだったのが、ミャンマー中部のパガンで有名な仏教遺跡群と漆工房を訪ねることでした。パガンは2005年の11月にも訪ねており、(その時の模様はこちらに詳しく書かれております)。今回はその時に周り切れなかった部分にまで足を運ぶのが目的です。5年前に買い付けした漆製品はもうすべて売り切っていましたので、新たに筋のいい漆のプロダクツを見つけられればと探し歩きました。


bagan3パガンの漆工房は街の各地に点在しており、観光客用に工房を開放している店(左写真)から現地での注文をうけて生産している村の家内工房まで規模は様々です。元々仏教での儀式や婚礼用の祭器として発展したミャンマーの漆器。製品も売り子が観光客に1ドルで売っているものから、「本物」の技術を駆使した数万単位の高級品まで様々です。


bagan2ブログのトップの写真はパガンに二千以上存在するというパゴダ(仏塔)の一つから撮った朝焼けの風景。朝日が昇る6時前と夕日が沈む7時頃には、その美しい光景を見ようとパガンを訪れる観光客の多くがいずれかのパゴダに上ります。日中は40度を越えるパガンで文字通り日の入りから日没まで動いていたら、ご隠居は軽い熱中症に。それでも昼間の工房巡りを辞めようとしない非情な三代目によって、老体に鞭打ちながら頑張ったご隠居でした。隣の写真は名もないパゴダの内部に収められた仏様。重厚な建物の中には結構コミカルで可愛い仏像が祀られていたりします。


bagan4パガンの市場には今回初めて足を運びました。近隣から生鮮食品や生活雑貨などが集められ、賑やかな青空市が開かれておりました。パガンは遺跡と漆だけだという印象がガラリと変わるほど楽しいマーケットでした。私も布屋さんの粘り強い接客攻勢に負けて男性用のロンジー(巻きスカート)を自分用に買わされる羽目に。いずれ「ミャンマー展」を開催する機会があれば、それを身につけて店に出ようかと(笑)。

パガンは「ここはインドのラジャスターンか?」と思うほど砂漠地帯のような土地なので本当に暑いです。それというのもかつて二千を越えるパゴダを建設した折に煉瓦を焼くため周囲の森の木を切り倒したのが原因だとか。パガンの王朝が滅んで700年以上経つのに、当時の環境破壊の爪痕が砂漠という形で残っているという現象は、人間の業に対する自然の脆さというものを感じさせられました。

kazukuti at 23:04|Permalink 

2010年03月22日

まちづくりフォーラム

ff4c9aa1.jpg 明日(というより今日)22日開催される『まちづくりフォーラム』in アルヴェにスタッフとしてお手伝いしております。アルヴェ1Fでは「アートでお花見!さくらさく作品展」(11時よりライヴ演奏もあり)、2Fでは13時よりフォーラムのパネルディスカッションが開催されます。

 当店も休まず営業。2Fでは企画展『東南アジアの山の民と海の民』開催中です。祝日はぜひ秋田駅周辺で!

kazukuti at 02:27|Permalink店主の日常 

2010年03月20日

ミャンマー&タイから帰国しました

8d785b9b.jpg 昨日ミャンマー、タイから無事帰国いたしました。今回もご隠居との二人旅で、共にミャンマーを旅した後、ご隠居はラオス、私はタイのチェンマイに分かれて、最後はバンコクで合流するというスケジュールでした。バンコクでは目下赤シャツ軍団こと"タクシン派"によるデモが盛り上がっておりましたが、日常生活や仕事には全く支障はありませんでした。それにしても最近は海外出張先でよく事件や災害と隣り合わせになっております。。。

 私がミャンマーへ訪れるのは約5年ぶり(ご隠居は2年ぶり)。その間、首都移転→反政府デモの騒乱→大サイクロン被害と何かと大きな事件が起こっていたので、以前よりも何か危険な香りのする国となったミャンマー。渡航前には何人もの方から「ミャンマーって危ない国じゃないですか?大丈夫?」と心配されました。アジアの国々の中でもとりわけ仏教への信仰心が厚く、国も人柄も穏やかな印象なのがミャンマーという国。そんな平和な雰囲気は変わらずにいてほしいと思いながら出発しました。

 実際、ヤンゴンの空港が新しくなっていた事と流行のファッションに身を飾った都会の若者が増えたこと以外、変わったと思うことはありませんでした。5年前も訪れたバガンは、世の流れとは無縁の悠久の時間の中で人々が暮らしているような、そんな空気を変わらずに感じさせてくれる場所でした。

 これから旅の中で出会った人々や工芸品について少しずつ書いていこうと思います。


kazukuti at 23:58|Permalink 

2010年03月04日

民族衣装と天神様

9afd21b0.jpg しばしブログの更新遅れてしまい申し訳ありません『スマトラ展』も土曜日で終了。明日から今年初の海外出張(ミャンマー)が控えているので準備や何やらで忙しく過ごしております。

 3月の企画展は『スマトラ展』に引き続き東南アジアの染織工芸を中心とした『山の民と海の民』を昨日から開催しております。今回は新たに中国南部(雲南省)からゴールデントライアングルにかけての山岳民族の衣装や工芸品も出品しました。左写真は苗族、モン族、ザオ族の衣装や装飾品をトルソーに着せてみたもの。細部に施された刺繍は必見です。

 一方「海の民」の見どころはインドネシアの主にジャワ島北岸で制作されたバティックやスマトラ展にも出品した更紗の古布など。伝統的な手工芸には土地の風土や人々の暮らしぶりが色濃く反映されておりますが、そんな山と海に暮らす民族の文化を見比べながらご覧ください。



yama2今月のもう一つの見どころは、わが家に伝わった昭和初期の天神人形とその飾りです。記憶が正しければ私が高校に入学した頃に一度店に飾ったことがありましたが、この度その時以来の封印を解きました。さすがは日本の職人芸と唸らせられる秀作です。こちらの天神様はお見せするだけの展示ですが、是非ご覧いただければ幸いです。

3月中の日曜日はお休みさせていただきます。詳しくはHPにて



kazukuti at 15:33|Permalinkイベント |