2012年01月28日

1.誰も知らないスラウェシ島

3 千秋公園のお堀の蓮のつぼみが薄紅色に咲いていた。ボン、ギンの散歩を半ば寝ぼけながらお堀沿いの歩道を歩いていた。犬の散歩が早朝になった。暑がりのギンちゃんが日中の散歩を嫌がりだし、マダムから禁止命令が出たからだ。マダム様ご寵愛のボン、ギンです。早速、散歩は早朝にとのご指示が下った。

 始めは億劫だったが暫くすると早朝の爽快感が気持ち良く感じるようになった。早朝の公園には意外にも汗だくになってジョギングする人、まだ死にたくないと黙々と散歩する人、のんびり体操する人、犬の散歩する人、果てはゴミ拾いする社会貢献派の人など沢山の人がやって来るのに驚いた。別世界を覗いた気分だ。毎日通えば犬も人を顔馴染みになりボン、ギンは朝から大喜びで早寝早起きの超模範的が始まった。早朝散歩のお陰で朝の英語、インドネシア語の勉強もはかどるようになった。夜は早寝のために飲み歩く事もなく、お金を散財する機会もなく二宮金次郎さんみたいになった。

2 全てギン様のお陰です。名犬ギン様、忠犬ギン様、孝行犬ギン様。銅像モノだ!30年前にギン様に出会っていたら今頃、俺も英語を自由に話せ、お金持になっていたかもと一瞬、脳裏を過った。がしかし、ギンちゃんは冬は寒がりで朝は部屋が暖かくなるまで起きないのだ。


 しばらく経ってから不思議な事に気が付いた、夜に飲み歩く事がないのに財布の中身の見ると以前と変わらない。散財しないのにお金が増えない、エネルギー保存の法則は通用しないのだ。以前と変わらず中身より革の財布の方が値打ちある、俺はお金に無縁なようだ。布を求めて世界に出掛けられるだけで結構だと諦めている。

1 今回の旅はインドネシア・スラウェシ島だ。インドネシア4番目、世界11番目の大きさを誇る島だが誰に聞いても知らないと言う。甥や姪の大学生に聞いても「インド?」、「アフリカ?」など的外れな答えが返ってくる。オランダの植民地時代はセレベス島として言われていた。島はアルファベット文字の「K」を押し潰したような形をし、高い山が連なり赤道直下に位置している。島の中部にはコーヒーで有名なトラジャがある。

 向かう場所は島の南端都市・マカッサルとトラジャ族が住むタナ・トラジャとママサの3ヵ所だ。マカッサルでは古い陶磁器をトラジャでは古渡り更紗を探しに行くが、どこにあるとも書いていないし報告も無いが、長年の経験と勘で「あるはずだ」と出掛けることにした。臭う!臭うのだ。

チケットを手配し出発の日が近づくとだんだん不安になってきた。絶対ある!多分ある、ある筈だ、無ければおかしい、もう無いかも知れない、無ければどうしようと頭の中を不安が駆け巡った。同行する三代目は仕事が忙しく、いつものごとく全くの無関心で「本当にあるの?」と言っていた。「行って見なければ分からないのだ!」と不安を抱えながら情報収集とインドネシア語に熱を入れて勉強した。

隠居人・小松正雄

(続く)

(11:39)