格安管理会社が大規模修繕工事受注を逃すと・・・・・

ご近所のマンションのお話です。

１２年くらい前にG社という「格安管理会社」に管理会社変更したマンションです。

まあ、皆さんご案内のように、「格安管理会社」（＝管理委託費が安い）というのは、通常の管理業務での利益はほとんどなく、各種工事などで利益を稼ぐシステムにしていることが多いのですが、「大規模修繕工事」というのは莫大な金額が動く工事で、利益も大きく、管理会社としては当然「うちでやりたい」と思って、営業努力しています。

そんなマンションで。
「大規模修繕工事の準備段階」で、「管理会社さんに全部おまかせしますよ」という雰囲気醸成に成功し、当然そうなるかと思われていた所・・・・

直前によそから移ってきた住民が、突然、理事長に立候補して、管理組合理事長になり、なんとなんと、「大規模修繕工事」のことだけ必死になり（※その他の居住マナーの問題とかは完全無視で、工事のことだけを考えている）、なんとなんと、「管理会社に任せるのはだめだ！」と言い出し、理事長権力を最大限発揮して、「管理会社が受注するはずだった」大規模修繕工事を他社にやらせる総会決議を可決させたのです。

住民に対しては「こっちのほうが安い」「管理会社は大規模修繕工事で不当に高い利益を得ようとしているハイエナみたいな会社だ」という、まるで「私が正しいのです。悪いのは議会です。マスコミです！」と言い張る「石丸伸二」みたいな論調で洗脳しました。

まあ、たしかに、格安管理会社というのは、「工事で儲けるために普段の管理は安い」というビジネスモデルですから、それより安く受注する別の会社はあります。そこに発注するのは悪くはないように思えます。

しかし、「これで、今までの先行投資を回収する」という思惑だった管理会社は、やる気をなくすのは当然でして・・・・

他社施工が決まってから、管理サービスの低下が続きました。

「管理人が有給休暇を取る際は代行員を派遣しない」
「管理人・清掃員の勤務時間を２割削減」（委託費は変更なしなので、実質上の管理委託費値上げ）
「毎月の理事会の運営進行は役員に任せる」（事前準備もやらない。当日、フロントは来ない。会計や事務報告の書面を役員へ事前配布するだけ。議事録作成も本来の担当役員に任せてフロントはやらない）
「車庫証明は今まで無料対応だったが、１件５０００円の手数料を取るようになった」
などなど。
という「実力行使」に出たわけです。

そして、当然ながら、大規模修繕工事の際の「管理人の協力」は一切なし。
「管理会社は大規模修繕工事には一切関わりません。住民説明会にも関与しません」と、態度表明しました。
大規模修繕工事って、例えば「部屋の玄関ドアの三方枠の金属塗装」なんてのは、住民の在宅が必須な作業で、こういうのは住民への丁寧な要請が大事だし、その住民がどういう生活をしているかも重要な情報として必要になります。しかし、そういうのを持っている管理人が関与しないのですから、「全戸完全実施」とかかなり厳しくなるわけです。

駐車場の区画線のペイント塗り直しなんていう作業では「全駐車車両を一時的に外部に移動する」というのが必要ですが、こういうのも管理人が協力しないと、なかなかにうまくいきません。

工事業者は「管理人さんの協力がなくても大丈夫です」とか最初は言いますが、民度の低い当地域では、管理員の重要性が一段と高いわけで、それをないがしろにするような業者にはまともな工事はできません。

そして、大規模修繕工事は「終わったあと」もいろいろあります。しかし、管理会社は関与しない、協力しないわけですから、「３ケ月たったら、あそこに不具合があるんだけど」と管理人に苦情を言っても、「うちは知りません。無関係なので、工事業者に直接ご連絡下さい」と言われます。


一言で言えば「安物買いの銭失い」ってことなんですが、少しの工事費用を削減するために失うものはすごく大きいのです。

特に重要視して欲しいのは、「管理会社のやる気を奪う」ってことで、儲からないマンションに労力を傾注するわけがなく、「やる気の無さ」というのは「お金の問題」以上に、悪影響を与えます。

こういう大きな視点で物事を考えず、「別会社のほうは安いから」だけで押し通すとろくなことがないです。
最悪、「施工会社が２年後に倒産。アフターサービスはゼロに」なんてことも起きる可能性もあります。

ひとつの教訓かと思います。

こういう「負の面」も跳ね返せるほどの多額の節約なら、やってもいいかもしれませんが、わずかな金額の節約なら、管理会社に任せたほうがいいのではないか？　と個人的には思います。