ウインダム・シアターでやっているQuartermain's Terms という芝居を見た。
あのミスター・ビーンのローワン・アトキンソン主演。
1960年代のケンブリッジにあった外国人向けの英語学校の教師たちの人間模様を描いたコメディーなのだが、結構シリアスである。
英語教師の孤独を描いており、イギリス人が英語を教える職業についてどう考えているかも垣間見える。
自分も教師なので、観ていて他人事とは思えなくなり、胸が締めつけられる思いがした。
内容はあまり知らないうちに観る事を決めたのは、タイトルになっている主人公の名前Quartermainが気になったからだ。
Quartermainといえば、ライダー・ハガードのアフリカ冒険小説シリーズで主人公である象牙ハンターのアラン・クオーターメンを思い出してしまうので、何か関係があるかなと最初思ったのだが、これは全く関係なかった。
主人公のセント・ジョン・クオーターメンは独身の英語教師で、その英語学校の同僚以外に友達もおらず、教師としての腕もいまいちなのだ。
いつも同じ椅子に座ってぼーっとしていて、採用された非常勤講師のデレックには、なんでこんな無能な教師が高給をとっていて自分のように学生の面倒を一生懸命見ている教師が安い時給でこき使われるのかと面と向かってののしられても、返す言葉もないのである。
イヤー考えさせられる。
いちばん印象的だったのは、誰の台詞だったかちょっと忘れたが「外国人向けの英語教師なんて失敗者の職業だ」という言葉である。
これは1960年代に書かれた芝居なので、そういう感覚がイギリス人の間に今でもあるのかどうか定かではないが、イギリスの歴史を考えれば当然そういうのは多かれ少なかれあると思う。
今でも英語のネイティブ・スピーカーだというだけで、世界中のどこへ行っても英語教師の職にありつけるというわけで、イギリス人たちは大いに得をしているわけだが、その一方、そういう人々を自国ではろくな職につけないから外国へ行こうとする失敗者と見なす目も国内にはあるのだろう。
そういう人々を神のようにあがめて、教えを請うために群がって来る我らジャパニーズ・ステューデンツは芝居の中でも頻繁に登場する(台詞の中だけだけれども)。
この芝居の舞台となっているケンブリッジの英語学校も、ジャパニーズが大挙して辞めてしまったことで経営危機に陥るというシーンがある。ジャパニーズに頼っている事の情けなさを表現しているのかもしれない。
屈辱の情を込めて。
まあ、英語学校であるということ以前の人間模様の方が主なテーマなので、あまりほじくってもしょうがないのだけれど。
非常に考えさせられた。
もし彼らが失敗者なら、その失敗者と原住民としての生徒たちの間に存在しているノン・ネイティブ・イングリッシュ・ティーチャーって一体何者なのか、ということだ。
1987年にBBCテレビのドラマになっていたらしい。
2006年にもBBCのラジオドラマになっている。
そのときの主演はなんとあのマイケル・ペイリン(モンティ・パイソンの)だ。