Ninomyの私邸

ある証券マンが読んだ本のレビューや書いたエッセイを保管するWeb上の私邸

【石田流】社会人のための棋書5冊だけで将棋ウォーズ2級に昇級する上達戦略【四間飛車】

将棋ウォーズ2級に昇級したので、戦略的に上達する方法を自分なりに整理して伝えたく思います。近頃の将棋の盤上は、パソコンのディスプレイからスマートフォンの画面上も使えるようになり、気軽に対局相手を探して手軽に楽しめる時代になりました。とはいえいきなり指そうにもどんなふうに指したらいいかわからないし、学ぼうにも選択肢は多すぎます。そこで目的としては忙しい社会人が楽しんで将棋のアプリで対局できるようになるための方法論とアクションプランを示したく思います。image
ちょっぴり近況を混ぜると、難波と秋葉原の支店で証券のリテール営業を4年半した後、社内公募制度で11月から日本株投資戦略のストラテジスト(見習い)として憧れのF戸投資情報部長のもとで働くことになりました。そこで体験を元に"戦略”的な将棋の上達を考えて記してみようと思います。したがって、「やることを絞る」「「敷居を下げる」ことを第一にします。忙しい社会人が将棋を趣味にするためには情熱に加えて、勉強を習慣に落とし込む必要があります。

―ピーター・ドラッカー―「私の観察によれば、成果をあげる者は仕事からスタートしない。時間からスタートする。計画からもスタートしない。何に時間がとられているかを明らかにすることからスタートする。次に、時間を管理すべく自らの時間を奪おうとする非生産的な要素を退ける。」「成果をあげる人に共通しているのは、自らの能力や存在を成果に結びつける上で、必要とされている習慣的な力である。企業や政府機関で働いていようと、病院の理事長や大学の学長であろうと、まったく同じである。私の知る限り、知能や勤勉さ、想像力や知識がいかに優れようと、そのような習慣的な力に欠ける人は成果をあげることができなかった。成果をあげることは一つの習慣である。習慣的な能力の蓄積である。習慣的な能力は、常に習得に努めることが必要である。習慣になるまで、いやになるほど反復しなければならない。」

と、かのドラッカーさんも言ってますので、まず覚える戦法は、「石田流三間飛車」と「ノーマル四間飛車」だけ。とことん敷居を下げるために、戦法と終盤を学ぶ棋書は以下の通り、「指しこなす本」「次の一手」形式の5冊だけに絞ります。盤に並べるとか、頭のなかで指し手を考えていくよりも、次の一手、つまり一問一答形式のほうが遥かに敷居が低いため、取り組みやすいのです。もちろん集中して盤駒を使って取り組むに越したことはないですし、基本を身に着けたら高度な定跡書で学ぶことは重要でしょう。しかし、現実論としてスキマ時間や通勤電車、夜寝る前の10分、撮りためたテレビ番組を週末に見ながらでも続けることは累積としては大きいです。高度な定跡書を1冊読み通すのはなかなか大変ですが、ちゃんと読み通したとしても、むしろ気軽に取り組める(が、それでいて振り飛車のエッセンスが詰まった)本を3回通読したほうがが頭への定着度合いが良いと感じます。
石田流を指しこなす本 急戦編 戸辺誠七段
石田流を指しこなす本 相振り飛車編 戸辺誠七段
四間飛車を指しこなす本〈1〉藤井猛九段
「3手詰ハンドブック」浦野真彦八段
寄せの手筋200 (最強将棋レクチャーブックス)

「石田流三間飛車」と「ノーマル四間飛車」だけにする理由は相居飛車の序盤よりも振り飛車の序盤のほうがわかりやすい、つまり何を最初にしたらいいか方針が分かりやすいからです。広く盤面を見渡す感覚が必要な相居飛車よりも、右辺はすばやく築城できて堅固な美濃囲いにして、左辺では飛車角銀桂をまとめて攻めの形を作る振り飛車のほうが初心者には向いていると思います。

先手番で石田流・後手番でゴキゲン中飛車というのも現代振り飛車党としては定番で私自身も好きですが、ゴキゲン中飛車は相手の動きを見ながら柔軟に指す戦法でもあるので、どちらかというと初級者よりも中級者向きでしょう。居飛車も振り飛車も相手にできる右四間飛車は便利で攻めの手筋として強力で応用も可能ですが、定跡書の充実という点では相対的に少し物足りない面もあります。石田流と四間飛車を覚えたうえで取り組んでおきましょう。何しろ右四間飛車は、石田流と四間飛車の有力な対戦相手でもあるのですから……

「石田流三間飛車」と「ノーマル四間飛車」は感覚の面で将棋の楽しみとも直結しています。石田流の駒を連携して攻める爽快感、四間飛車の囲いを作るのを妨害されない安心感とカウンターのさばきはどちらも病みつきになります。攻めと受けの感覚が身につくのです。何よりも最初に目指すべき形があって、指針に迷わないところが最初に習得する戦法として安心感があります。
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先手番の戦法、相手も振り飛車の時の戦法として、石田流三間飛車はとりわけ有効です。ただし、最初に覚えておくべきは相手が初手から二手連続で飛車先を伸ばしてきたら石田流にはできないということです。相手が飛車先を最初に伸ばしてきたなら四間飛車にしましょう。ゴキゲン中飛車もありですが、まずは序盤指しやすい四間飛車をしっかり身につけましょう。

「石田流を指しこなす本 急戦編」の著者である戸辺誠七段はアマチュアへの普及に熱心な振り飛車党の棋士です。それゆえ我々アマチュアのためになる形で戦法の本をまとめてくれている印象が伝わってきます。急戦編は石田流を指す上でやっちゃいけない形と反撃手段、多彩な攻め方をわかりやすく解説している名著です。ネット上で指すと居飛車の対抗策は、7筋に飛車を振り、石田流のトレードマークである7六飛と7五の位を目標にして攻撃してくる"袖飛車"が多く感じます。袖飛車を中心に、この本の戸辺流バッティングセンターで戸辺先生の投げる球を打ち返しまくり、急戦対策をバッチリ学びましょう。攻めの手筋も満載で戸辺攻めのエキスがたっぷり詰まっています。

石田流のカタチを身につけると、四間飛車や中飛車から持久戦模様のときに石田流に組み替えることもあるので、他の振り飛車でもとても役に立ちます。持久戦にあっても石田流本組にできれば、その破壊力ゆえに特に穴熊が怖いとは感じません。まずは急戦編を学んで、「持久戦と新しい動き」を読むのは後回しで大丈夫だと思います。石田流はカタチさえできれば、角を突撃させて相手の銀や金と交換して、左の桂馬をさばければだいたい勝勢です。とにかく石田流で大暴れすればなんとかなります(笑)この信頼感が、石田流依存症の原動力であり、攻めに自信をつけるポイントです。
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2冊めは「石田流を指しこなす本 相振り飛車編」です。この本を強くお勧めするのは、ネット将棋では特に相手も振り飛車を指したい方が多いからです。先手番でも後手番でも相手が振り飛車なら石田流三間飛車だけで幅広く対応できます。藤井猛九段の相振り飛車を指しこなす本シリーズ4冊ももちろん名著ですが、この本は1冊で相振り飛車すべての対策を薄く広く学ぶことができるというメリットがあります。最初の駒組みをどうしたら良いか迷わなくてすむ安心感は心強いです。

相振り飛車の囲いのバリエーションはある意味じゃんけんに似ていて何通りもあり、もちろん飛車を振る場所も2、3、4、5筋とあるので、相振り飛車の世界は実に広大です。つまり、方針を決めるのがなかなか大変なのです。このことは振り飛車を覚えたばかりの人にとっては心理的に困るポイントです。その理由は指したい振り飛車に対して相手も振り飛車だったらせっかく覚えた振り飛車の将棋とは別の戦いになってしまうからです。だから、この本をしっかり学ぶことで、どうしたら良いかわからないということはあまりなくなることは、とても重要です。たとえば、端歩を突かない美濃囲いにする、飛車を振るのは3筋で石田流を目指す、角交換した場合は左金は7八金で左に持っていくとおぼえておくだけでも、最初のうちは十分でしょう。

そういうわけで、相手も振り飛車の時無理して居飛車を持って戦うよりも、この本で相振り飛車を得意にしたほうがやりやすくなります。全振り飛車に対応でき、相振り飛車上等!になることで心理面で優位に立つことができる点は大きいです。副次的な効果としては採用率が高いゴキゲン中飛車対策になることもメリットです。居飛車ではなかなか勝てなかったゴキゲン中飛車に勝つことができるようになり今やお得意さんです。

さらに相振り飛車の三間飛車に磨きをかけたいなら「戸辺流相振りなんでも三間飛車 (マイコミ将棋BOOKS)」、石田流の破壊力に魅入られて石田流中毒になり後手番でも石田流を指したいという欲望に取り憑かれたら「振り飛車4→3戦法 (マイナビ将棋BOOKS)」、角交換の振り飛車にもう1歩進みたいと思ったら藤井猛九段の「角交換四間飛車を指しこなす本 (最強将棋21)に応用編として進むと良いでしょう。

3冊目は藤井猛九段の「四間飛車を指しこなす本 第1巻」です。前述の通り石田流にできない出だしのときは四間飛車にしましょう。先手後手両方で使えます。四間飛車はかの大山康晴大名人の得意戦法で、日本最古の棋譜も四間飛車VS右四間飛車の対抗型という伝統ある戦法です。プロ間では角筋を閉じるノーマル四間飛車は少なくなっても、アマチュアの世界には特に関係ありません。ネット将棋では相手も四間飛車ということも多いので、その場合は先程の石田流三間飛車で迎え撃ちましょう。石田流の9七角の端角が敵の四間飛車を射程に捉えており指しやすいです。
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右辺は美濃囲いの堅陣にして、左ではカウンターを目指すカタチにしてさばく四間飛車は振り飛車の基本です。古い本だとしても基本は不変普及です。何よりまえがきの「四間飛車のコツは?」と聞かれて「相手の力を利用して投げる―でしょうか?」と答える藤井猛九段はいかにも達人という感じでかっこよすぎます。「藤井猛九段 銀河天帝即位を祝して-私と四間飛車-」で書いたように「四間飛車を指しこなす本 第1巻」は私の将棋の原点であり、藤井猛九段の銀河戦優勝は再び将棋を指すきっかけになりました。

まずは第1巻で急戦への対抗策をしっかり身につけましょう。それに四間飛車と急戦の戦いは将棋の定跡の歴史をたどる旅でもあります。ネット上の将棋では急戦は棒銀が一番多いと感じるので、特に棒銀の章だけ繰り返しやるのが良いです。舟囲いすら作らずにまっすぐに攻めてくる原始棒銀が驚くほど多いので、棒銀のに強烈に攻め倒されないためにも対策を練る必要があります。7七角の下に飛車を振り直して三間飛車の状態にし、棒銀をさばかせないように9四歩に対し9六歩をついておく。7五歩が来たらその歩を取って相手の棒銀を進ませてはいけません。6八角あるいは8八角と引くとおぼえておけばおおざっくりにはOKです。速攻棒銀への受け方のページがとても参考になります。

穴熊や左美濃囲いについては将棋ウォーズでは遭遇することは少なく感じるので、まずは第1巻だけでまずは十分です。もし穴熊や左美濃囲いに悩まされるようになった時に、モチベーションとして藤井システムでかっこよく対抗したいという気持ちは心に秘めて、第2巻の攻め手筋を身につけましょう。6四歩で飛車角を一気に躍動させたり、銀を相手の角頭を襲撃する刺客として送り込むも良し。あるいは4筋に飛車を振って戦う方法だけでも十分に戦えます。藤井システムは四間飛車の基本と、終盤の詰将棋、寄せの手筋や端攻めを身につけるまで我慢しておきましょう。

上記3冊で序盤から中盤を優勢に乗り切り、石田流の猛攻と四間飛車のさばきの後は、敵の囲いを破壊して相手玉を打ち取る、終盤の攻城戦です。終盤の2冊としては浦野真彦八段の3手詰ハンドブック金子タカシさんの凌ぎの手筋200 (最強将棋レクチャーブックス)は必携で、ビジネスマンは必ずカバンに入れて通勤電車で少しずつ解きましょう。特に「凌ぎの手筋200/a>」は将棋界の大御所たちが揃って太鼓判を押すほどの名著で、自分もこの本に出会ってから、飛躍的に勝率が上がりました。というわけでこの2冊は必ず何度も繰り返しましょう。

攻めの手筋にスパイスを加えたい場合としては、「
将棋・ひと目の端攻め (マイコミ将棋文庫SP)」がおすすめです。盤面が飽和状態の時に端から手を作る事ができると戦いの幅が広がりますし、穴熊を上から圧殺することができるようになります。藤井システムの成功率も上がり、良いことずくめです。また、将棋ウォーズのような時間が少ない戦いへの心構えとして、前に感想を書きましたが、「ネット将棋攻略!早指しの極意」(大平 武洋)を読んでおくといいでしょう。心の迷いがなくなります。

以上、5冊をしっかり身につけて将棋ライフをエンジョイしましょう!基本を身に着けたら、その先にはさらなる振り飛車の世界が広がっています。戸辺誠七段の言葉を借りると「どの筋に飛車がいても、振り飛車は皆友達です」。三間飛車、四間飛車、中飛車、向かい飛車、(右四間飛車?←こいつも味方にしよう)をマスターしたく私も精進するつもりです。(証券アナリスト試験も頑張ります……)
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【マーケット】3月15日に気をつけよ

上場企業の2017年3月期業績が2年ぶりに最高益を更新しそうです。(2/11日経)全体は減収ながらも、円高でも採算改善しているというわけです。中には東京エレクトロンや日本電産のように、上半期が終わった時点で、1ドル=100円ながらも純利益1000億円という実力派の企業すらありました。そこに世界の景気循環、トランプ大統領の大規模減税・インフラ投資・本国還流減税の期待・将来の財政悪化の予想が加わって、米国の長期金利が急上昇。強烈な円安ドル高が企業業績の見通しを後押ししました。
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足元の株価水準をまず確認すると、2/13の日経平均は19,459.15(+80.22)円。よく2万円はバブルだと内実を見ない方もいますが、PER(株価収益率)15.74倍まで買われているに過ぎず、まったくバブルとはいえません。本当のバブルは企業の利益が株価とかけ離れた水準まで買われていることを言うのです。ほぼ出揃った第3四半期の決算の上方修正の結果、一株利益(EPS)は1,236.29円にまで切り上がりました。今年の高値(1/5) 19,520.69円 PER16.60倍、一株利益(EPS)1,175.95円とくらべてみるだけでも変化のほどが伺えます。要するに、日本企業の(上場しているような大企業)にファンダメンタルズは総じて良好と言って良い状態です。

では死角が無いのかというと、そうではありません。市場が先んじて織り込んでいるトランプ大統領の施策、特にマーケットが期待している減税とインフラ投資については、まだどのくらいやるのかが決まっていないのです。大統領令はあくまで行政府に出すものであって、国の予算を使うのは議会が法律で決めるのです。期待されている金融規制緩和についても同様で、これも新しい法律を作る必要があるわけです。

したがって、何をやるかは分かってきたんだけど、どのくらいやるかがわからない状態です。これからもトランプ大統領の発言ないしツイッターで短期筋は一喜一憂、あるいは市場の一喜一憂をネタにしてトレードをするでしょう。日米首脳会談はまずはつかみはOK!と言ったところで、軍事・安全保障については日本は一安心というところです。しかし、懸念されていた為替や通商政策については、麻生財務大臣・ペンス副大統領とテクノクラートが協議していくということで"これから"の話になりました。とはいえ、一方的に攻撃される感じにもならなさそうで、閣僚(まだ承認されていない方も多いですが)にピーター・ナヴァロやライトハイザーなど対中強硬派が目立っていることから、為替や通商政策については、まずは中国を念頭に置いているようです。先日中国の外貨準備高が3兆ドルを割れましたが、足元のドル高を容認しているのは中国からお金を吸い上げているという可能性も示唆されます。

ここからの展開ですが、しばらく高値持ち合いが続くでしょう。28日のトランプ大統領議会演説の前で一度様子見に転じるのが無難かもしれません。また、3月中頃にリスクイベントが3つあります。。「3月15日に気をつけよ(Beware the ides of March. 」は、シェイクスピアの戯曲「ジュリアス・シーザー」における預言者の有名なセリフですが、不思議なことにすべて3月15日なのです。

1つ目は、FOMC(米・連邦公開市場委員会)です。現状では3月の利上げの可能性は交代していますが、6月以降の継続利上げを前提に円ドル為替は動いています。去年の円高の一因は年4回の利上げを軸に為替相場の予想が動いていたところに結果12月になるまでアメリカが利上げができない経済情勢になってしまったことがあげられます。したがって、6月以降の利上げについて、イエレン議長の示唆にマーケットは注目しています。

2つ目は、オランダ総選挙です。反EU・反イスラムを掲げるウィルダース党首率いる極右・自由党が連立与党入り、首相になるリスクがあります。おりしも、英国がEU離脱を通告する期限も3月中ということで、実際にどうなるかは別にして、この辺の政治リスクをネタにしたトレードはありうる話でしょう。

3つ目は、いわゆるアメリカの"財政の崖"です。連邦政府債務上限(国債発行枠)引き上げの適用期間最終日です。毎度恒例ですからこれもまた議会でちゃんと仕切るのでしょうが、事前の懸念は意識されるところです。

以上、実際にどうなるかはわからないんだけど、どうなるかはわからないからこそトレードのネタになるわけで売り仕掛けをしたい短期筋の動きの蠢動や、実需筋のヘッジ売りや買いの手控えが想定されます。だとすれば逆に安いところは仕込みどきなのかもしれません。イベントを無風通過後は1/25の19,057.50円(+269.51)、1/26の19,402.39円(+344.89)や先日2/10の19,378.93円(+471.26)の強烈なショートカバー(先物の売りポジションの買い戻し)の発生もありえるからです。。

シーザーが暗殺される直前、群集の中に預言者を見つけ、「3月15日は来たぞ」(The ides of March are come.)と勝ち誇ったように言うと、預言者は「来はしたが、まだ、去ってはいない」(Ay, Caesar, but not gone.)と返しました。まだ1ヶ月ありますが、私たちは来たる3月15日までにどういう備えをしようか考えておこうではありませんか。
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感想:ジャンプ新連載 筒井大志「ぼくたちは勉強ができない」・山田詠美「僕は勉強ができない」

NARUTO、BLEACH、トリコ、黒子のバスケ、ニセコイ、こち亀の6大長期連載作品が連載を終了したジャンプにとって、次世代のエース作品養成は急務だ。news_xlarge_jump_1710新連載6連弾の切り込み隊長は筒井大志「僕たちは勉強ができない」。作者の筒井大志先生は「ニセコイ」のスピンオフ「マジカルパティシエ小咲ちゃん」全4巻をジャンプ+で描いていた方で、すでに他誌10冊以上は単行本を出している。経験豊富と言えよう。

しかし、連載時の環境情勢は厳しい。まず第一に、俗にフィギュアスケートなど採点競技は最初のほうに演技するほうが不利と言われるように、新連載6連弾の最初というのはなかなか大変だ。そのうえ、6連弾の最後には「黒子のバスケ」の藤巻忠俊先生の新連載を控えており、5連弾分は当て馬になってしまう可能性すらあるのが恐ろしいところだ。生き残りの争いは熾烈を極めることが予想される。image
また、現状の連載陣では連載1周年の「ゆらぎ荘の幽奈さん」がすでにラブコメ枠を占めている。ジャンプという雑誌でラブコメの立ち位置は誌面に彩りを添える役割を果たしており、たとえて言うならば、お弁当の中のプチトマトのようなものだ。自分はお弁当の中のプチトマトは2つ入っていてもいいんじゃないかと思っているので、今回新連載「僕たちは勉強ができない」を応援すべく、インターネットの広大な文字の海に微力ながら一筆添えたい。(以下ネタバレありで書いていくため、自身を神経質とお感じになる方はブラウザバックしてくださると嬉しい。)
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文章じみたこの作品のタイトルはいかにも当世風のラノベっぽいタイトルのように見えるが、山田詠美の「僕は勉強ができない」のオマージュと推測される。新潮文庫で随分前に読んだものだが、多様な読み方ができる秀作として知られている作品だ。「しかしね。ぼくは思うのだ。どんなに成績が良くて、りっぱなことを言えるような人物でも、その人が変な顔で女にもてなかったらずい分と虚しいような気がする。女にもてないという事実の前には、どんなごたいそうな台詞も色あせるように思うのだ。」なんて身も蓋もないことをのたまうにもかかわらず、ませて大人びた高校生、主人公の時田秀美がかっこいいのだ。
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一方で、「ぼくたちは勉強ができない」は努力型の秀才高校生・唯我成幸を主人公にしたラブコメディだ。あらすじは、実家が貧乏な成幸は、大学進学後の学費を免除される「特別VIP推薦」を取ることを目的としているが、その推薦の条件として、彼が通う高校の2人の天才少女を志望校に合格させるという難題を持ちかけられるというものだ。

「ぼくたちは勉強ができない」は言うものの、主人公は全科目で8割取れるようなバランス型の秀才、2人のヒロインはそれぞれ理系・文系に特化したタイプということで、作品の内容は明らかにタイトル通りではない。これでは昨今ベストセラーになった『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40 上げて慶應大学に現役合格した話』のように誇大なタイトルと受け取られかねない。ビリギャルは中高一貫の進学校(愛知淑徳学園と推測されている)に通っていて、合格した慶應大学SFC総合政策学部の受験科目は、英語(あるいは数学)と小論文の2科目のみということで、タイトルとは裏腹にスタートの諸条件はかなり上の方に発射台があるというわけだ。
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揚げ足取りかもしれないが、字義通りに「ぼくたちは勉強ができない」わけではないようなので、タイトルの意味は他にあるのかもしれない。2人のヒロインはあくまで「苦手・不得意なことをできるようにする勉強」ができていないだけだ。自らの得意科目は天才と呼ばれるほどである。ドラッカーは自らの強みを伸ばせと言うし、軽々しく「好きこそものの上手なれ」と言う人もいる。

しかし、日本の教育は減点方式で良くないと安易に非難するよりも、「苦手・不得意なことをできるよう」にすることはあらためて評価されてもいいのではないだろうか。なぜならば、社会に出てからは大方の場合において苦手・不得意だからといって取り組まない訳にはいかないし、あるいは苦手・不得意なことを他の人と協力して実行するか、他の人に上手くやってもらう力が求められるからである。
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加えて、自然とできてしまうことよりも、自分で努力してできるようになったことを褒められたほうがずっとずっと嬉しい。自分は社交性がないからこそあえて営業マンになったし、大学1年からの同級生で友達付き合いから数えて足掛け10年の妻に、本当に君は変わったと言われたときは嬉しかった。この作品の最も大きなキーポイントは、2人のメインヒロインがなぜ自分ができることと真逆のことをやりたいと思っているのか、この点をユニークなきっかけのエピソードで描けるかどうかだろう。

以上は勝手な自分なりの思いだが、タイトルに深い意味はじつはないのかもしれない。しかし、あえて言うならば、この作品はラブコメなので「ぼくたちは(いわゆる学校でやるような机上の勉強以外の)勉強ができない」という言外の意味が隠されており、恋愛を始めとする人付き合い全般のことを示唆していると解釈するのが妥当だろう。だが、それでいい。イケメン美女が巧みな経験と手練手管を生かしてそつなくスムーズにおしゃれに恋愛する話なんて読みたくはない。ラブコメの魅力は、現実と同様に欠陥だらけの人間たちが、すれ違いながら結ばれるまでの面白おかしい過程を味わうことにある。
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学校と言う名のひとつの社会で学べる部分も幾分あろうが、人生において恋愛は重要な体験だ。まさに10年前のこの時間の自分はきっと、初めてできた彼女の誕生日に一緒に徹夜カラオケに酔いしれていただろう。詳しくは語らないが、いま振り返ると自分の人生の転機はまさに初恋だったように思える。

さて、話を戻すと、自分だけが幸せに成るという意味の当て字を与えられてしまっている主人公は、存外にいいやつで面倒見の良さとしっかり者という美点が1話では強調されている。当初はもう高3だからと言っていきなりセンター試験を解かせて、勉めて強いる勉強をさせようとしてそっぽを向かれてしまったが、最終的には自分ができなかったときの悔しさを思い出して懇切丁寧なアドバイスノートを送る。

「……わかんねえもんに苦手意識持ったまま無理やりやったて、余計わかんなくなって辛くなるだけってこと思い出したんだ」と成幸は言う。自分自身個別指導塾の講師を6年間やっていたので、この点非常に共感したのだが、教えるに当たっては「横から目線」が肝要だ。どこからならできるかまでいちど降りた上で共に出来るようになる喜びを味わうのである。「楽しいからできる」の前に「できるから楽しい」を作らないと好循環が始まらない。
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本来の文脈とは違うが、「すべてに、丸をつけよ。とりあえずは、そこから始めるのだ。そこからやがて生まれて行く沢山のばつを、ぼくは、ゆっくりと選び取って行くのだ。」という台詞を「僕は勉強ができない」から援用して考えてみよう。まずは肯定的で前向きなになれる言葉から始めよう。作中で成幸の亡き父は4点を取った主人公にこう言うのだ。「いいじゃねえか!伸びしろがあるってこった!はじめからできちまうよりもずっといい!」そう、できない部分とは裏返せば伸びしろそのものなのだ。トランプ大統領は演説で繰り返しこう述べただろう。「ものすごいポテンシャルだ」。最初の一歩には、ロジックも根拠もいらない。

前作同様、絵は安定していて可愛らしいからひとまず安心。むしろ読み切りとしての完成度が高いため、進展性に疑問が残るのが懸念材料だ。主人公とヒロイン2人の媒介が勉強という点が、ラブコメとしてはカタチを決めすぎに思える。将棋で例えれば、初手、二手目で飛車先を伸ばしているような気分だ。勉強絡みで丁寧な描写をしていることは作品の説得力に影響をあたえるので大切である一方、主人公とヒロイン2人のラブとコメディをバッチリ描いて欲しい。
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理系科目はできるが文系に進学したい、文系科目はできるが理系に進学したいという困ったヒロイン2人の面倒を観ることになってしまった主人公。「僕は勉強ができない」のように「世の中には、この喜びに目を向けない人々が沢山いるのだ。なんと不幸なことだろう。」と述懐するような展開に、このヒロイン2人と成幸が成るのだろうか。それは先を読まねばわからない。

また、江戸の仇を長崎で討つような考えかもしれないが、作中終盤の「ニセコイ」の二の舞が最大のリスクであり向き合うべき裏のテーマもある。ジャンプのラブコメ作品という文脈として位置づけられた作品であるため、「ゆらぎ荘〜」同様比較対象は直前にジャンプラブコメ史上最長巻数の「ニセコイ」だ。

筒井先生は、「ニセコイ」のスピンオフを描いた方なので、スピンオフを描いていた時に感じていたことをぜひ自身の作品に生かして欲しい。このことは特に「ニセコイ」読者諸兄も同じ思いのはずだ。タイトルと当初のコンセプトを堅持してストンと落とせるようにまとめるか、あるいは作中のキャラクターが自然と動いた結果そうなるといった感じにするか、どちらかに絞ることが望ましい。週刊連載という大変な戦いの中で作品をきれいな形で完成させるのは難しいことだが、未知数だからこそ私は応援したいと思う。
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今まで作った動画まとめ 

ついに作った動画が60件に達したので、この機にまとめたいと思います。多岐に渡る動画を作り続けてこれたのは、ひとえに皆様の日頃のご愛顧のおかげです。これからもぜひご贔屓に。
では、新しいものから順番に掲載していきます。

 救急戦隊ゴーゴーファイブED「この星を この街を」で「この素晴らしい世界に祝福を!MAD」


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