菊池 新潟開催もラスト1週ですが、まずは先週末のオールカマーを回顧していきましょう。
オールカマー 回顧
京介 今週も晴れは晴れだったんだけども、もう新潟芝の馬場状態は雨が降らないままでも終わってるね。直線で内ラチから10番枠ぐらいまではもう色が違う。だけど最後のゴール前は内側が多少は優勢。それはずっと伝えてるけど内が有利というわけじゃなくて、馬場の外まで全面的にボロボロになってて脚を取られるからだね。
菊池 内回りは距離ロスを抑えられる分での有利とかそんな程度ということですね。
京介 無理やり馬場の大外に持ち出しても抜群に伸びるわけじゃないから、大外にまで持ち出すアドバンテージが全くないから、ということ。このままだとレース中故障馬が出てもおかしくないと感じるんだけど、日中の馬場叩きで何とか持たせていると言った所か。中山連続開催末期に行われるAJCCのような馬場状態だね。
菊池 何とか蹄跡を埋めてギリギリ使えているといったところでしょうか。
京介 そして今年のオールカマーだけど、パドックは意外なほどデキのいい馬が多かった。特に関西馬はみんな良くて目移りしたねえ。休み明けで出てきた馬はみんな激走するんじゃないの?とも感じた。新潟だからと言うことで関西陣が結構やる気あったと思うんだよね。
菊池 拮抗したメンバーで各陣営に色気があったことと、夏場に使っていた馬も多かったからでしょうね。
京介 だけどレースに行くと、やっぱりみんな馬場攻略が難しかったんだろうなと思うよ。カレンブラックヒルが先導を決めたあとのペースが上がらず、向正面で誰も攻めていかない。途中で12秒9のラップもあったね。ジョッキーがどこで仕掛ければいいのか悩ましい馬場だったんでしょう。
菊池 中山芝2200mでは道中にポイントがあるのでレースにも動きが出ますが、新潟芝2200mはまずホームストレッチが長くて、その後は横長で平坦なコースを回ってくるだけですからね。距離の割に攻防が起こりにくいコースとも言えますね。
京介 前が楽をしているのは誰しもが分かっているはずなんだけども、道中でなかなか動けずにいるうちに先団は息を入れながら進み、3コーナーから尻上がりにラップを上げる展開。カレンブラックヒルと2番手のマイネルラクリマとがお見合いして、先行馬はギリギリまで仕掛けを待てて先に中団差し・追い込み馬が脚を使いながらコーナーに進入。
菊池 この時点で前に行った組で決まる流れでしたね。
京介 レースの流れに乗って、好位から速い上がりを使えたマイネルラクリマがギリギリ押しきった。これは展開と隊列で上手く凌ぎ切ったと言える形でしょ。
菊池 荒れ馬場も問題にしないタイプですからね。
京介 1着から最下位まで1秒以内。追い込み馬が上位に結構食い込んできてるけど、実質的には全馬が全馬、脚をかなり余したレース展開と言える。毎日王冠で時々起こる超スロー展開みたいな、全然体力的な消耗のない軽い流れでしょうこれは。距離適性が少し上の方(短い距離向き)の馬が最後の一瞬脚勝負にむしろ対応しやすかった展開じゃないかな。
菊池 カレンブラックヒルも最後まで上位争いに残ったほどでしたからね。
京介 サマー2000シリーズで好走していた馬は、七夕賞・小倉記念・新潟記念みんな厳しい流れのものだったから、息が入って脚を溜める展開になったのが誤算ということかな。面食らったような感じで道中全然反応できなかった。いつもよりも位置取りを下げていい脚を見せたけど流れに乗れず、と言う馬の見直しが主題かな。
菊池 ニューダイナスティなんかは最たる例ですが、消耗戦でこそ…のタイプには残念な流れでしたね。
【 マイネルラクリマ 】
京介 確かに馬体は良かったけど、大きな上積みがあるとは思わなかったなあ。むしろ後肢の伸びやかさがなくなっているから、タフな流れやせめぎ合いになる距離だと厳しいと思ったぐらいだよ。
菊池 大きな上積みまではなくとも、この馬なりのデキで十分だったということでしょうね。格はこの中では上位だったわけですし。
京介 馬というよりはリフレッシュした上で軽い流れだったこと、この新潟開催絶好調だった戸崎圭太騎手が冴えてたこと。56kgに斤量が減ったことと距離不安が一切関係ない展開になったことでいろいろと恵まれた部分があったなと思ったね。
菊池 今回は加点材料が多かったし、それぞれ大きかったですね。荒れ馬場も苦にしないタイプ。
京介 上原厩舎は8月9月ノーホーラで相当調子悪かったんだけど、七夕賞の3着でハンデ戦は厳しいと見切って休養に充てて、サマー2000シリーズは諦めて路線を切り替えたのが大正解だね。これは厩舎の判断が凄く良かったなあ。
菊池 このあたりも含めて、今回は想定どおりに力を出し切ってくれたという印象です。個人的にはあまり振り返る要素がない…(笑)。強いて言えば、最後の最後でサトノノブレスを上位にとってしまったことを反省するくらいだな…。重要な課題です。
京介 それと本当にこの馬は悪い馬場、特殊な馬場で強いねえ。来年中山のAJCCで斤量有利になった時に改めて見直したいかな。
菊池 そうですね。この先は、どうレースを選んでいくかが難しくなると思うので、適条件だと考えられるタイミングで買うということでしょうね。個人的には馬場が悪くなったら有馬記念でも3着の穴とかで買おうと思いますが。
【 ラキシス 】
京介 この馬は盲点だったなあ。確かにヴィクトリアマイルCは全然条件が合ってないから適距離に戻れば…というところはあった。
菊池 今回は、条件そのものは良かったですからね。ただし、馬体を見ると少し引いてしまうのかも。
京介 かなり痩せて見えて見映えしないタイプし四肢の繋も立ってるから、いつもアンバランスに感じるんだけどエリザベス女王杯で好走したり今回上手く反応できたり、こういう荒れ馬場が上手い方なんだろうと思う。川田騎手も「このルートは大丈夫」と分かっていたようだし、リグヴェーダの失敗をちゃんと活かしたね。
菊池 マイルの忙しい流れよりも、中距離でゆったり運ぶ方がいいですね。進路取りも良かったですが、結果的にはもう少しスタミナを要求された方が良かったんでしょうね。
京介 こういうレース展開で好走すると先に繋がりにくいんだけども、エリザベス女王杯に向けては好発進と言えるね。
菊池 一回使うのか、ぶっつけか。これでだいぶピリっとしてくるでしょうから、個人的には直行して欲しいところです。
【 クリールカイザー 】
京介 最後の2着争い4頭の中でギリギリ3着だった馬だけれど、通ったルートが良かった。マイネルラクリマとラキシスが抜けた真後ろを通過して伸びてきたね。スプリンターズSも実はこのルートを通る3枠の馬有利なんじゃないの?
菊池 それはあるかもしれませんね。3枠ではないですが、先週のタガノグランパの進路と似ていたかもしれません。
京介 2200mを2走前に勝って休養入り、前走はブリンカーが合わなかったのかかなり脚を余した4着。ちなみに今回はチークピーシズに戻した。疲労のないローテーションだったとは言えたかも。
菊池 目一杯うまく運んで、この3着だったと思います。本質的にはこのクラスでは足りないのでは?
京介 馬体比較ではどうしても周りに比べてボリュームで見劣ったけどね。そういう要素が必要のない展開だったから。
菊池 今後も今回のような扱いで、3着なら…でしょうか。オープン特別はいつでも勝ち負け出来るでしょうけど、人気だろうから。
【 その他 】
京介 4着、5着ギリギリだったフラガラッハやアロマティコも、ちょっと特殊な馬場状態得意なタイプだし(アロマティコも昨年エリザベス女王杯好走)今回のレース展開は、どうしても能力格の順番とは言いにくい。
菊池 純粋な能力そのものは拮抗したメンバーだったとも思うのですが、その中で馬場への適性や、レースでうまくいったかどうかというところですよね。正直、マイネルラクリマ以外はここまで綺麗に上手くいくイメージを持ちづらかったです。
京介 同じ新潟コースを使ってきた馬が有利でしょ?夏場に調子を上げてきた馬が有利だよね?と事前に考えていたけど、全くせめぎ合いにならず究極に軽い脚が必要な展開になって夏場のタフなレース経験が全く役に立たず。これが今回の、休み明けワンツーを導いた一番の原因だろうね。
菊池 フルゲートだっただけに、なおさらの肩透かしですよね。
京介 そうなんだよ。フルゲートになったからこそさすがにキツイ展開でしょうと言う予想がスカされて、やっぱり今のボロボロの馬場状態だと自信を持って攻めていけないと言う不安がまさったんだね。この中途半端なレース展開は、スプリンターズSでも尾を引きそうだなあ。
菊池 それはあるかもしれない。注意しておきたいですね。
京介 こういうレース展開から見直したいのは、直線に向いてから不必要にワンクッション置いて完全に後手踏んだのに直線でちゃんと伸び脚を見せた馬だね。
菊池 要するに、流れが向いていないのに伸びてきた馬ということですね。
京介 三浦皇成騎手がクリールカイザーの進入方向を読み遅れて一度カットされたような形になったアロマティコや、直線に向いてからいちいち後方集団の後ろをくぐって大外に出し、新潟でその仕掛けは間違いすぎでしょ…な伸び脚だったアドマイヤギャラン。この2頭は次走すぐにでも見直したいね。
菊池 そのあたりはまさに。アドマイヤギャランはオープンクラスの昇級初戦が別定GⅡっていう鬼畜ローテでしたから、次走は番組次第で即見直しでしょう。同じことはトラストワンにも言えますが。
京介 先行していて本来良いポジション取りだったはずのクランモンタナとサトノノブレスは、先ほども触れたけどラスト2Fが速い決着で脚を使えなかった、つまり本質的にこうまで軽い脚を使う展開では動ききれないということ。
菊池 サトノノブレスはいっそのこと逃げられたら良かったんでしょうね。さすがに和田騎手も人気を背負っているし、次を考えたら無理なのだろうけど。
京介 だけど脚の使い方の差だけなのに、こんなに負けるのかよ…と思うのが正直な所だけどね。ラスト1Fでバタッと落ちるラップとラストまで11秒台でまとめる展開は天と地ほどの差がある、ということなんだろうね。
菊池 それにしても、流れが早くなったからと急に巻き返せるのか!?というほどの大敗。気性面で脆いのは怖いですね。密集馬群のストレスでやめちゃったということでいいのかな。今後は、隊列がバラけそうなメンバー・状況下で…っていうのを考慮しないといけませんね。
京介 ローテーションの谷間にあるG2、G3の軽いレースはこういうレース展開になることで奇妙な荒れ方になるパターンがあるけど、底力を評価されるタイプが肩透かしを食う、というのが根本にあってこういう負け方になる…と言うのを覚えておきたいね。
菊池 今回は新潟で行われたこと、フルゲートだったこと。この2つがあったからこそ、裏切られたというのもありますが。
京介 オールカマーや毎日王冠は、どうしても先を見越してる「陣営の思惑」が影響しちゃうからなあ。
菊池 中山開催のオールカマーでも、一線級がいるかいないかをハッキリ分けて考えるのは、引き続き大切なことですね。
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菊池 では回顧はここまで!今週はスプリンターズSを展望していきましょう。