菊池 さぁ、GⅠ週ですよ!まずはその前に、先週のオールカマーを振り返っていきましょう。
京介 土日ともに夜半にちょろちょろっと雨が降ったのちに、日中は何とか天候が持つという流れだったね。土曜夜に関東近郊で雨が降ったのには正直驚いたけど、馬場がそんなに渋化しないでよかった。
菊池 路盤改修の効果を見せんとばかりにちょうど良く雨が降り、期待どおりに回復しますね。担当者はホクホクでしょう(笑)。
京介 そうね。昔の中山だったらそれこそグズグズの状態だったかな?晴れ間が出て日差しが見えたのは、9Rパドック途中ぐらい。だから実質、そんな乾燥してた時間帯は長くないんだ。風だって出てなかったしね。曇り空なのに徐々に乾いていくなんてねえ。
菊池 この時期なので、気温はそれなりですけども、晴れ間も風も対して無くとも乾くとは。
京介 日曜10Rで良馬場発表に変わったのを聞いて「おお~」と思ったよ。
菊池 さて、先週からはCコースに仮柵を移動しましたね。
京介 踏みこなれた部分が最内になったし、雨で緩んでいた影響もあって見た目には最内ラインが1周ちょっと荒れていた。だけど今の芝は、掘れてるように見える箇所が伸びる。土曜日は極端とも言える前残り傾向だったね。外回しが全く通用しない馬場状態だった。
菊池 ちょっと前の開催前半みたいな状態ですね。今は、これくらいのタイミングでやってくると。
京介 だけども日曜日は、騎手も分かってきたのか、最初のレースから外を回す馬の激走がチラホラ出てきた。馬場が変化してたというよりは、逃げ馬に譲ってそのままという流れを拒否しだした感じだね。
菊池 反応が遅くないかい?という感じもしますが。
京介 芙蓉Sのような少頭数でも逃げ馬を楽に行かせなかったりと向正面や3コーナー付近での動きが増えたように思う。そのために隊列が縦に伸びて、動こうと思えば差し馬も押し上げが通用するようになって、結果時おり追い込み馬も飛び込んでくると言う経緯だね。
菊池 そうなって、馬群の中で脚を溜められる差し馬が若干有利だったかという感じですね。
京介 そして今回のパドックだけれども、「がっかりするオールカマー」の時に比べれば遥かにメンバーが揃った、と感じたね。8頭ほど目移りしたわ正直に言えば。
菊池 新潟で行われた昨年もまずまず良いメンバーが揃いましたが、それ以前はメンバーが揃わないことが多かったですよね。
京介 最近はもう放牧帰りで体が緩い、なんてことが少ない時代だけど今年のパドックを見ると「夏場に使っていたアドバンテージ」なんてもう存在しないのかな~。
菊池 外厩でしっかり仕上げてから出てきますもんね。
京介 オールカマーはホントにG1級で戦える馬が出走してきたら格の差がモロに出ちゃうんだろうね。ここら辺は京成杯AHのような特殊な事情のレースとは違う所。
菊池 メンバーレベルが微妙なことが多くて忘れそうになりますが、別定GⅡですからね。
京介 特に掲示板に載った牝馬3頭。まあ上位人気に押し上げられるほどの馬なんだけど、前予想を覆したくなるぐらいに良い形だった。パドックではまだ「切れ味タイプだから…う~ん」と考えてたけどレースが終わって見直せば、あの仕上がりだったら素直になるべきだったか…と、反省するぐらいには良い造りだった。
菊池 牝馬厳しい説を提唱していただけにね…。引っ張られちゃいましたか。
京介 うーん。オールカマーは牝馬厳しいでしょ、と言う説を出したのと、中山2200mなら重たいタイプを選ばないと…と言う考えが意識をちょっと曇らせてしまった感じかな。サトノノブレスもロゴタイプも絶対に悪い形じゃないんだけどね。
菊池 このあたりは大いなる反省材料です。次に生かしましょう。
京介 そしてレース。休み明けの馬が多いレースではありがちだけれども、ゲートは結構バラバラだった。
菊池 芝2200mは1角までの距離が長いこともあり、慌てて出さないですね。
京介 最内のセキショウ、7枠レッドレイヴン、12番マイネルフロスト。ショウナンパンドラもイマイチだったし、その他こまごまと半馬身遅れの馬は多かったね。
菊池 そのスタートから、1角までに隊列を決める先行争いでしたが、すんなり隊列も決まりましたね。
京介 近走先行してた馬が多かったメンバーだけれども、実は最初の争いはアッサリしたもので、行き脚はどれも鈍かった。最初の反応が良かったのがロゴタイプ。その内から追っ付けてマイネルミラノが直線の上り坂でどうやら先頭、と言うムード。メイショウカドマツが先頭に追いついて1コーナーでは隊列が縦に伸びる。
菊池 このコースの多頭数戦らしい隊列になりました。
京介 雁行で先手争いするんじゃないか、なんて予想はこの時点で崩れていたね。マイネルミラノが積極主張で単騎になってコーナーに進入、隊列が縦に伸びるけれどもペースは実は遅い。1000m通過が60秒8なら、あれだけ先行馬が多ければ実は良く誤魔化しながらペースを落とせたな、と言う感想。
菊池 3F目から6F目までは綺麗に12.4-12.6-12.6-12.6というラップを踏んでいますね。
京介 そして1400mを通過、残り800mを通過した辺りからマイネルミラノの柴田大知騎手は2番手のメイショウカドマツを引き離し始める。この馬の新潟記念の3角スパートを考えればこんな格好だろうね。
菊池 ラップは7F目が11.9秒なので、このあたりからペースを上げていますね。ただ、前回に比べて今回はそれほど一気にリードが広がりはせず、後ろの組も意外と追いついていきました。
京介 レース後コメントで柴田大知騎手は「思った以上に楽なハナで道中もスパートも良かったのに思った以上に粘れなかった」と言ってるけど、この他馬の押し上げ方を考えると、単純に相手が強いか、コース適性が合わなかったかだろうね。
菊池 どちらもありそうですが、まずは、相手が強かったと解釈した方がしっくりきそうですね。
京介 先頭がトップスピードに乗ったまま4角を回るから、直線に向いた時点で隊列はまだ斜め。3番手で構えていたロゴタイプも案外反応が悪い。だけどもジワッとバラけた馬群の最内を岩田騎手のヌーヴォレコルトが伸びて手応え十分。
菊池 実況アナも、ヌーヴォレコルトが勝ったと思ったんでしょうね。そんな実況に聞こえました。しかし。
京介 カメラが引いたタイミングで、外からショウナンパンドラが凄まじい末脚で伸びてきた。坂を上りきってからは一騎打ちになるけれども、明らかに外の脚色が勝り、最後は1馬身半の差で優勝。
菊池 ロゴタイプが3着に粘るかというところを、 最後ゴール前でミトラに交わされてしまいました。恐らく距離の分でしょうね。
京介 勝ちタイム2分11秒9は、2年前ヴェルデグリーンとほぼ同タイム。その時は中盤競り合いになって展開が縦に伸びたけど、今回はマイネルミラノが良いペースで先導しての後半5F勝負。だけども、性能確かな追い込み馬が差し届いたと言う流れだね。
菊池 ちゃんと力の要る流れになり、1・2着馬の強さが際立ったと思います。
京介 秋華賞で勝ち負けした2頭のワンツー、芝の質としては全然重たい馬場ではなかった。ディープ産駒の性能が優秀すぎて、いろいろな過去パターンがどんどん覆されていくなあと実感したレースだった。
菊池 牝馬不利、関東馬×関東騎手も3着馬のみ。ショウナンパンドラはデキが良くても厳しいんじゃないかと考えましたが、あっさり覆され、個人的な予想としては完敗でした。
ショウナンパンドラ
京介 宝塚記念帰りだから、オールカマーとしては確かに有利なローテーションだけれども。いやー、そもそもいいデキで出てくると思ってなかったからその点も驚きはあった。
菊池 休み明けとは言え、1週前に好タイムを出していましたね。
京介 フラワーCやヴィクトリアマイルの時も比較して考えると、輸送ドヘタなんじゃないのと思っていたし。唐突に充実期に入ってきた印象だよ。若い頃に体質弱いと泣きが入ってたのは本当だったんだな、と。
菊池 弱いところが解消されて、一気に良くなったんですね。今回のレースの質を考えても、強い勝ち方でしたし。
京介 決して馬体にボリュームが出る馬ではないし、この馬は芯がしっかりしてても飛節や繋はまだグラグラする。それでもあれだけ高いレベルで弾けるのは、センスの高さもそうなんだけど、痩せた馬体だったイメージを払拭するぐらい肉付きが標準並みになってきたこと、お尻の下限に厚みが出てきたことが大きいかな。
菊池 変わったんですね。
京介 後から考えれば、あれだけ後肢の管が細いの、に良くあんなに筋肉が付くな、と言うバランスだったね。高野厩舎も良くここまで我慢したなあ。
菊池 待って待って、やっと本格化したと。
京介 レースでも勝負所のコーナーはほとんど外を回してるし、一昨年のヴェルデグリーンとは違って展開の恩恵ではない。これは素直に評価すべき内容でしょう。決して万能ではないけども、前半スローや内枠なら牡馬に勝てると思って扱った方が良いね。
菊池 昨年の秋華賞が、好タイムでスピード勝負。そこで強かっただけに、距離は長いかと思いきやこの結果でしたから、解釈が間違っていたと考えるべきですね。
京介 むしろ、戦歴のピークが2000~2200mに集中しててマイルは全然ダメだと言う所にも注意したいね。
菊池 これで、エリザベス女王杯に向けて一気に主役へ躍り出ましたね。
京介 あと最近、池添騎手のメインレース好走率の高さにも注目したい。WIN5対象レースの激走率、特別戦好走率がかなりいいんだよ。2歳新馬で良い馬が回ってこなかったり、下級条件での低迷が続くのは、エージェント制の割を食ってる騎手のように思う。
菊池 なるほど。腕はありますもんね。
京介 それもあってか、今は高額条件でのアピールが目立つかな。性能の高い馬をお手馬にした時の集中力に抜群のものがあると感じる。今年はメインレースでの成績が一番良いし、重賞で上位人気に全然乗ってないのに複勝率3割超えてるし回収率も優秀。
菊池 注目していきましょう。
ヌーヴォレコルト
京介 胴周りがスカッとして細く見える造りだけど、腰がいつも安定していて飛節に良いバネがある。今回も良い仕上がりだったな、と言う印象だね。いつも休み明けの仕上がりは良いから、条件が合うかどうかだと思ってはいたけど。
菊池 ヴィクトリアマイル・宝塚記念と続けて馬券圏内を外しましたが、常に追い切りも動くし、調子の上下がないタイプですよね。
京介 そしてこの展開でも安定して末脚を見せてくれたし、レース内容は申し分なしでしょう。正直言うと自分の想定よりももっと走ってるし、牡馬G2クラスでも格上なんだなと改めて思わされた。
菊池 今回は、勝ち馬がさらに上回る強さを見せただけと。
京介 まあ次走は相手次第で素直な評価をしましょう。変な大外枠に追いやられなければ、ってところだね。
ミトラ
京介 この馬は直飛節で腰つきパンとしてて全く脚回りに癖がなく、いつも歩様はスムーズ。歩きにスピード感があるタイプだね。
菊池 7歳ですが、今回が23戦目。まだ馬体そのものは若いんですね。
京介 それでもこの年齢でいまさら脚部不安で長期休養明け。ボケッとしてた気配があったし、腹構え甘いかな、と思わせる所はあった。
菊池 仕上がりとしては幾らか余裕があったと。
京介 道中の追走でも掛かりそうになりながら、直線前向きに反応してしっかり伸びている。本当、関東圏だとどんな距離でも安定感あるね。
菊池 中日新聞杯から斤量減でもありました。この点もよかったでしょう。
京介 この条件で一度好走していたこともあるし、この中山外回りは非常に良いリズムで走れるんでしょう。今回は適性高い強みが活きた形かな。
その他
京介 3歳牝馬クラシックの最終戦だなんて言われても、古馬と合流してからは何の役にも立たない実績なのが秋華賞のイメージだったんだけどもなあ。すぐ次のG1で勝負になる履歴じゃない限り、「秋華賞だけ」勝ってる馬の価値って低かったと思うんだよ。
菊池 今までは、そういう馬が多かったですね。古馬重賞でも、牝馬同士でしか力を出せないということも。
京介 瞬発力勝負・スピード持続力勝負が増えてから、牝馬が牡馬相手に勝てるようになってるだけではないね。皐月賞よりレベルの高い秋華賞がある、そういう時代になってきたということなのかもね。
菊池 なるほど。そうかもしれませんね。
京介 こうまで文句なしの結果を出されると、さすがに考えを改めないといけない。京都の2000mで1分57秒フラットで勝つ馬は燃え尽き大敗じゃない限り、才能がある馬だとケアしないと。
菊池 宝塚記念3着もフロックではなかったと。
京介 そうそう。自分は、宝塚記念の超スロー決着に対してもレース内容評価を甘く見ていた。トーホウジャッカルやラキシスが札幌記念で普通にコケたのも悪いんだけどね。
菊池 まぁ、そう考えたくもなりますね。
京介 宝塚記念上位好走馬はどんな展開であれ強いね。ちゃんと休んで立ち直るための準備期間があれば、なのかもしれないけれど。
菊池 牝馬56キロ・牡馬58キロの混合GⅠですし、大体がタフな流れになりますからね。
京介 サマー2000シリーズをダービーフィズが制したからあんまり強くは言えないんだけれども、その札幌記念で人気の5歳馬が総崩れしたり、ここもロゴタイプが根負けしてサトノノブレスが案外。何だか芝中距離路線で5歳世代だけが期待はずれだなあ。
菊池 大将格のキズナ・エピファネイアが引退したからじゃないでしょうか。
京介 それもあるにはあるけど、3歳馬がもう通用し始めてて今回は4歳決着、6歳馬の奮闘も春先から目立ってたというのに古馬中距離重賞で人気馬でコケるのは5歳馬ばかり。期待を下回ることが多くなってきたなあ。
菊池 そうかもしれませんね。
京介 春先まではラブリーデイ筆頭に5歳が一番頑張ってたのに、夏場に3歳馬が合流するタイミングから流れが変わってきた印象があるね。
~~~~
菊池 では、今週の回顧はここまで!今週末はスプリンターズSを展望していきましょう。
▼競馬のこととかつぶやいてます(菊池グリグリ)
@guriguritkさんをフォロー
オールカマー回顧
京介 土日ともに夜半にちょろちょろっと雨が降ったのちに、日中は何とか天候が持つという流れだったね。土曜夜に関東近郊で雨が降ったのには正直驚いたけど、馬場がそんなに渋化しないでよかった。
菊池 路盤改修の効果を見せんとばかりにちょうど良く雨が降り、期待どおりに回復しますね。担当者はホクホクでしょう(笑)。
京介 そうね。昔の中山だったらそれこそグズグズの状態だったかな?晴れ間が出て日差しが見えたのは、9Rパドック途中ぐらい。だから実質、そんな乾燥してた時間帯は長くないんだ。風だって出てなかったしね。曇り空なのに徐々に乾いていくなんてねえ。
菊池 この時期なので、気温はそれなりですけども、晴れ間も風も対して無くとも乾くとは。
京介 日曜10Rで良馬場発表に変わったのを聞いて「おお~」と思ったよ。
菊池 さて、先週からはCコースに仮柵を移動しましたね。
京介 踏みこなれた部分が最内になったし、雨で緩んでいた影響もあって見た目には最内ラインが1周ちょっと荒れていた。だけど今の芝は、掘れてるように見える箇所が伸びる。土曜日は極端とも言える前残り傾向だったね。外回しが全く通用しない馬場状態だった。
菊池 ちょっと前の開催前半みたいな状態ですね。今は、これくらいのタイミングでやってくると。
京介 だけども日曜日は、騎手も分かってきたのか、最初のレースから外を回す馬の激走がチラホラ出てきた。馬場が変化してたというよりは、逃げ馬に譲ってそのままという流れを拒否しだした感じだね。
菊池 反応が遅くないかい?という感じもしますが。
京介 芙蓉Sのような少頭数でも逃げ馬を楽に行かせなかったりと向正面や3コーナー付近での動きが増えたように思う。そのために隊列が縦に伸びて、動こうと思えば差し馬も押し上げが通用するようになって、結果時おり追い込み馬も飛び込んでくると言う経緯だね。
菊池 そうなって、馬群の中で脚を溜められる差し馬が若干有利だったかという感じですね。
京介 そして今回のパドックだけれども、「がっかりするオールカマー」の時に比べれば遥かにメンバーが揃った、と感じたね。8頭ほど目移りしたわ正直に言えば。
菊池 新潟で行われた昨年もまずまず良いメンバーが揃いましたが、それ以前はメンバーが揃わないことが多かったですよね。
京介 最近はもう放牧帰りで体が緩い、なんてことが少ない時代だけど今年のパドックを見ると「夏場に使っていたアドバンテージ」なんてもう存在しないのかな~。
菊池 外厩でしっかり仕上げてから出てきますもんね。
京介 オールカマーはホントにG1級で戦える馬が出走してきたら格の差がモロに出ちゃうんだろうね。ここら辺は京成杯AHのような特殊な事情のレースとは違う所。
菊池 メンバーレベルが微妙なことが多くて忘れそうになりますが、別定GⅡですからね。
京介 特に掲示板に載った牝馬3頭。まあ上位人気に押し上げられるほどの馬なんだけど、前予想を覆したくなるぐらいに良い形だった。パドックではまだ「切れ味タイプだから…う~ん」と考えてたけどレースが終わって見直せば、あの仕上がりだったら素直になるべきだったか…と、反省するぐらいには良い造りだった。
菊池 牝馬厳しい説を提唱していただけにね…。引っ張られちゃいましたか。
京介 うーん。オールカマーは牝馬厳しいでしょ、と言う説を出したのと、中山2200mなら重たいタイプを選ばないと…と言う考えが意識をちょっと曇らせてしまった感じかな。サトノノブレスもロゴタイプも絶対に悪い形じゃないんだけどね。
菊池 このあたりは大いなる反省材料です。次に生かしましょう。
京介 そしてレース。休み明けの馬が多いレースではありがちだけれども、ゲートは結構バラバラだった。
菊池 芝2200mは1角までの距離が長いこともあり、慌てて出さないですね。
京介 最内のセキショウ、7枠レッドレイヴン、12番マイネルフロスト。ショウナンパンドラもイマイチだったし、その他こまごまと半馬身遅れの馬は多かったね。
菊池 そのスタートから、1角までに隊列を決める先行争いでしたが、すんなり隊列も決まりましたね。
京介 近走先行してた馬が多かったメンバーだけれども、実は最初の争いはアッサリしたもので、行き脚はどれも鈍かった。最初の反応が良かったのがロゴタイプ。その内から追っ付けてマイネルミラノが直線の上り坂でどうやら先頭、と言うムード。メイショウカドマツが先頭に追いついて1コーナーでは隊列が縦に伸びる。
菊池 このコースの多頭数戦らしい隊列になりました。
京介 雁行で先手争いするんじゃないか、なんて予想はこの時点で崩れていたね。マイネルミラノが積極主張で単騎になってコーナーに進入、隊列が縦に伸びるけれどもペースは実は遅い。1000m通過が60秒8なら、あれだけ先行馬が多ければ実は良く誤魔化しながらペースを落とせたな、と言う感想。
菊池 3F目から6F目までは綺麗に12.4-12.6-12.6-12.6というラップを踏んでいますね。
京介 そして1400mを通過、残り800mを通過した辺りからマイネルミラノの柴田大知騎手は2番手のメイショウカドマツを引き離し始める。この馬の新潟記念の3角スパートを考えればこんな格好だろうね。
菊池 ラップは7F目が11.9秒なので、このあたりからペースを上げていますね。ただ、前回に比べて今回はそれほど一気にリードが広がりはせず、後ろの組も意外と追いついていきました。
京介 レース後コメントで柴田大知騎手は「思った以上に楽なハナで道中もスパートも良かったのに思った以上に粘れなかった」と言ってるけど、この他馬の押し上げ方を考えると、単純に相手が強いか、コース適性が合わなかったかだろうね。
菊池 どちらもありそうですが、まずは、相手が強かったと解釈した方がしっくりきそうですね。
京介 先頭がトップスピードに乗ったまま4角を回るから、直線に向いた時点で隊列はまだ斜め。3番手で構えていたロゴタイプも案外反応が悪い。だけどもジワッとバラけた馬群の最内を岩田騎手のヌーヴォレコルトが伸びて手応え十分。
菊池 実況アナも、ヌーヴォレコルトが勝ったと思ったんでしょうね。そんな実況に聞こえました。しかし。
京介 カメラが引いたタイミングで、外からショウナンパンドラが凄まじい末脚で伸びてきた。坂を上りきってからは一騎打ちになるけれども、明らかに外の脚色が勝り、最後は1馬身半の差で優勝。
菊池 ロゴタイプが3着に粘るかというところを、 最後ゴール前でミトラに交わされてしまいました。恐らく距離の分でしょうね。
京介 勝ちタイム2分11秒9は、2年前ヴェルデグリーンとほぼ同タイム。その時は中盤競り合いになって展開が縦に伸びたけど、今回はマイネルミラノが良いペースで先導しての後半5F勝負。だけども、性能確かな追い込み馬が差し届いたと言う流れだね。
菊池 ちゃんと力の要る流れになり、1・2着馬の強さが際立ったと思います。
京介 秋華賞で勝ち負けした2頭のワンツー、芝の質としては全然重たい馬場ではなかった。ディープ産駒の性能が優秀すぎて、いろいろな過去パターンがどんどん覆されていくなあと実感したレースだった。
菊池 牝馬不利、関東馬×関東騎手も3着馬のみ。ショウナンパンドラはデキが良くても厳しいんじゃないかと考えましたが、あっさり覆され、個人的な予想としては完敗でした。
ショウナンパンドラ
京介 宝塚記念帰りだから、オールカマーとしては確かに有利なローテーションだけれども。いやー、そもそもいいデキで出てくると思ってなかったからその点も驚きはあった。
菊池 休み明けとは言え、1週前に好タイムを出していましたね。
京介 フラワーCやヴィクトリアマイルの時も比較して考えると、輸送ドヘタなんじゃないのと思っていたし。唐突に充実期に入ってきた印象だよ。若い頃に体質弱いと泣きが入ってたのは本当だったんだな、と。
菊池 弱いところが解消されて、一気に良くなったんですね。今回のレースの質を考えても、強い勝ち方でしたし。
京介 決して馬体にボリュームが出る馬ではないし、この馬は芯がしっかりしてても飛節や繋はまだグラグラする。それでもあれだけ高いレベルで弾けるのは、センスの高さもそうなんだけど、痩せた馬体だったイメージを払拭するぐらい肉付きが標準並みになってきたこと、お尻の下限に厚みが出てきたことが大きいかな。
菊池 変わったんですね。
京介 後から考えれば、あれだけ後肢の管が細いの、に良くあんなに筋肉が付くな、と言うバランスだったね。高野厩舎も良くここまで我慢したなあ。
菊池 待って待って、やっと本格化したと。
京介 レースでも勝負所のコーナーはほとんど外を回してるし、一昨年のヴェルデグリーンとは違って展開の恩恵ではない。これは素直に評価すべき内容でしょう。決して万能ではないけども、前半スローや内枠なら牡馬に勝てると思って扱った方が良いね。
菊池 昨年の秋華賞が、好タイムでスピード勝負。そこで強かっただけに、距離は長いかと思いきやこの結果でしたから、解釈が間違っていたと考えるべきですね。
京介 むしろ、戦歴のピークが2000~2200mに集中しててマイルは全然ダメだと言う所にも注意したいね。
菊池 これで、エリザベス女王杯に向けて一気に主役へ躍り出ましたね。
京介 あと最近、池添騎手のメインレース好走率の高さにも注目したい。WIN5対象レースの激走率、特別戦好走率がかなりいいんだよ。2歳新馬で良い馬が回ってこなかったり、下級条件での低迷が続くのは、エージェント制の割を食ってる騎手のように思う。
菊池 なるほど。腕はありますもんね。
京介 それもあってか、今は高額条件でのアピールが目立つかな。性能の高い馬をお手馬にした時の集中力に抜群のものがあると感じる。今年はメインレースでの成績が一番良いし、重賞で上位人気に全然乗ってないのに複勝率3割超えてるし回収率も優秀。
菊池 注目していきましょう。
ヌーヴォレコルト
京介 胴周りがスカッとして細く見える造りだけど、腰がいつも安定していて飛節に良いバネがある。今回も良い仕上がりだったな、と言う印象だね。いつも休み明けの仕上がりは良いから、条件が合うかどうかだと思ってはいたけど。
菊池 ヴィクトリアマイル・宝塚記念と続けて馬券圏内を外しましたが、常に追い切りも動くし、調子の上下がないタイプですよね。
京介 そしてこの展開でも安定して末脚を見せてくれたし、レース内容は申し分なしでしょう。正直言うと自分の想定よりももっと走ってるし、牡馬G2クラスでも格上なんだなと改めて思わされた。
菊池 今回は、勝ち馬がさらに上回る強さを見せただけと。
京介 まあ次走は相手次第で素直な評価をしましょう。変な大外枠に追いやられなければ、ってところだね。
ミトラ
京介 この馬は直飛節で腰つきパンとしてて全く脚回りに癖がなく、いつも歩様はスムーズ。歩きにスピード感があるタイプだね。
菊池 7歳ですが、今回が23戦目。まだ馬体そのものは若いんですね。
京介 それでもこの年齢でいまさら脚部不安で長期休養明け。ボケッとしてた気配があったし、腹構え甘いかな、と思わせる所はあった。
菊池 仕上がりとしては幾らか余裕があったと。
京介 道中の追走でも掛かりそうになりながら、直線前向きに反応してしっかり伸びている。本当、関東圏だとどんな距離でも安定感あるね。
菊池 中日新聞杯から斤量減でもありました。この点もよかったでしょう。
京介 この条件で一度好走していたこともあるし、この中山外回りは非常に良いリズムで走れるんでしょう。今回は適性高い強みが活きた形かな。
その他
京介 3歳牝馬クラシックの最終戦だなんて言われても、古馬と合流してからは何の役にも立たない実績なのが秋華賞のイメージだったんだけどもなあ。すぐ次のG1で勝負になる履歴じゃない限り、「秋華賞だけ」勝ってる馬の価値って低かったと思うんだよ。
菊池 今までは、そういう馬が多かったですね。古馬重賞でも、牝馬同士でしか力を出せないということも。
京介 瞬発力勝負・スピード持続力勝負が増えてから、牝馬が牡馬相手に勝てるようになってるだけではないね。皐月賞よりレベルの高い秋華賞がある、そういう時代になってきたということなのかもね。
菊池 なるほど。そうかもしれませんね。
京介 こうまで文句なしの結果を出されると、さすがに考えを改めないといけない。京都の2000mで1分57秒フラットで勝つ馬は燃え尽き大敗じゃない限り、才能がある馬だとケアしないと。
菊池 宝塚記念3着もフロックではなかったと。
京介 そうそう。自分は、宝塚記念の超スロー決着に対してもレース内容評価を甘く見ていた。トーホウジャッカルやラキシスが札幌記念で普通にコケたのも悪いんだけどね。
菊池 まぁ、そう考えたくもなりますね。
京介 宝塚記念上位好走馬はどんな展開であれ強いね。ちゃんと休んで立ち直るための準備期間があれば、なのかもしれないけれど。
菊池 牝馬56キロ・牡馬58キロの混合GⅠですし、大体がタフな流れになりますからね。
京介 サマー2000シリーズをダービーフィズが制したからあんまり強くは言えないんだけれども、その札幌記念で人気の5歳馬が総崩れしたり、ここもロゴタイプが根負けしてサトノノブレスが案外。何だか芝中距離路線で5歳世代だけが期待はずれだなあ。
菊池 大将格のキズナ・エピファネイアが引退したからじゃないでしょうか。
京介 それもあるにはあるけど、3歳馬がもう通用し始めてて今回は4歳決着、6歳馬の奮闘も春先から目立ってたというのに古馬中距離重賞で人気馬でコケるのは5歳馬ばかり。期待を下回ることが多くなってきたなあ。
菊池 そうかもしれませんね。
京介 春先まではラブリーデイ筆頭に5歳が一番頑張ってたのに、夏場に3歳馬が合流するタイミングから流れが変わってきた印象があるね。
~~~~
菊池 では、今週の回顧はここまで!今週末はスプリンターズSを展望していきましょう。
▼競馬のこととかつぶやいてます(菊池グリグリ)
@guriguritkさんをフォロー