菊池 2015年のフィナーレを飾る有馬記念が終わりました!特注馬が1・3着!しかもゴールドシップを「見送り」とバッサリ!これはナイスでした!

京介 そこはよかったんだけど、サウンズオブアースの評価を見誤ったかな。菊池くんと奥野さんは◎本命だったようで。

菊池 そうですね、僕も相手選びに失敗したクチですが…。さて、今年もお疲れ様でした。では、今週も回顧していきましょう。
京介 いやー、当たり前だけど今年一番寒かったんじゃないか、と思うぐらいに冷え込みが厳しかったわ。今年も無事に雨が降らず、いい天気でできたのは良かったけど朝からビュービュー北風が吹いて、とにかく冷たすぎる!馬場の方ではみんな頭を屈めて歩いていたほどだし、もう途中から返し馬は屋内で見てたわ。
菊池 年の瀬に行われる有馬記念ですものね。今年は暖冬と言われていますが、先の週末から冷え込みが厳しくなりましたし、例年通りだとしてもギャップでより寒く感じたというのはあるかもしれませんね。
京介 それにしても今年は、メンバーはそんな言うほどではないのに混雑が凄かった!入場人員が相当な増加だったんだって?
菊池 どうも毎週、コアな視点を持って競馬をやっている人にはしっくりこないようですが、ゴールドシップって人気ありますからね!?(笑)
京介 そうかぁ。それもだけど、やっぱり競馬人気は少なからず戻っているのは間違いないね。こういう混雑も、メンバーじゃなくて宣伝の仕方が重要だと徐々に証明されてきた感があるね。
菊池 確かに、JRAの宣伝が良い方に向かっているのも確かでしょうね。アイドルを呼んでムダに現場を混乱させていただけの迷走時期もありましたが、ようやく競馬ファンの方を向いてくれたということで。あの失敗も無駄じゃなかった!(笑)。
京介 だけど現場はしっちゃかめっちゃかだったわ。朝一番の並びも階段でコケた人がいて大渋滞だったし、あちこちでいさかいが起こってたり、今日は人が多すぎる混雑で怪我した人を周りでよく見かけたよ。
菊池 それは嫌ですね、せっかくのお祭りの日ですから。
京介 今日はパドックに人員を回すよりも、場内の交通整理に人を割いた方が良かったんじゃないか。
菊池 確かに。その点は改善を望みたいですね。さて、馬場状況を振り返りましょうか。
京介 この日の中山の芝は、結構な外差し有利。少なからず強く吹いていた風の影響はあったと思う。馬場は見た目には十分荒れているけど、内が掘れるほどじゃない。展開次第では内を突いても問題なく、おそらく年末の堅い馬場だね。
菊池 やや内有利に寄ってきたのは、昨年と同様の推移ですね。
京介 道中追い風でペースが速くなり、直線向かい風になって圧を受けるからそれに耐えられない馬が多い下級条件は、スピードが勝った馬よりも脚を溜めて競馬できた方が良かった。
菊池 差し有利は引き続き見られましたが、馬場よりも風の影響が強かった様子、という点は覚えておきましょう。
京介 付け加えると、比較的穏やかな天候だった土曜日はどちらかというとスタミナ血統が頑張っていたんだけど、この日曜日にさらに寒くなって風が出始めると瞬発力が必要になっていたのか、ほぼサンデー一色だったね。もっと血統的にカオスで、混沌としたムードかなと思ったけど、日曜日の方がディープインパクト産駒にとっては有利だったかと思う。
菊池 サンデー一色というと、まぁ現在の競馬自体が半分くらいサンデーの色ですから(笑)。とりあえず、昨年と比べてディープインパクト産駒が好走できている、というのが12月の中山芝の傾向として、ひとつのポイントでしょう。
京介 そしてパドック。何とか最前列で見られて良かったわ。大混戦と言われたけれども、パドックも出来のいい馬が多かったと思う。
菊池 有馬記念までデキを維持するのは大変で、例年このパドックではデキが下降線に入ったとはっきり分かるような馬も見られますよね。
京介 ラブリーデイやゴールドシップのような実績上位が明らかに抜きんでていい馬体、という感じでなかったのは確か。この2頭も出来落ちという下がり方は決してしてないけど、パドックで他を威圧するほど体が抜けている、ぐらいじゃないと包囲網突破はおそらくできないだろうな、と感じるぐらいに周りが良かったと解釈してるよ。
菊池 ラブリーデイ、ラストインパクト、アドマイヤデウス、ワンアンドオンリーの4頭しか、秋のG1を3つとも走った馬がいませんでしたから。全体に仕上がりの水準が高かったというのも納得です。
京介 実際のところ、IDM通りの大混戦という様子で、全体にクラシック路線を歩んでた馬よりも、連勝してきた上がり馬の方が張り艶や身のこなしの柔らかさはあった。それとキタサンブラックとリアファルだったら、現時点での手先の強さや馬力感、蹴る威力の高さだと明らかにキタサンブラックの方が上だね。並べると確かに良くわかる感じはあった。
菊池 ほう、前評判とは若干異なりますね。
京介 菊花賞当日の仕上がりは果たしてどうだったかわからないけど、おそらく菊花賞のあとの成長伸びしろが、キタサンブラックの方があったのだろうとも思う。
菊池 リアファルが菊花賞で負ったダメージが大きかったとも考えられませんか?疲労が抜けずに苦労したとか、立て直しに少し手を焼いたとか、そういったニュアンスのコメントもありました。僕は、そっちかと思いました。
京介 それとJC帰りの馬は、やっぱり大幅上昇はあり得ない。だからこそ不本意な競馬で揉まれたり直線追ってなかったりで、余力を残しつつ流した馬の方がこの有馬記念では若干上向く可能性があるというだけだね。
菊池 そうですね。サウンズオブアース以外は状態面に疑問符が付く馬もいたようで。やっぱり有馬記念において余力は重要ですね。
京介 そしてレース。15番枠だけれども、まずゴールドシップが先にゲートに入る。その他の馬も全くごねることなく、ゴールドシップからマリアライトまで1分ちょいだから非常にスムーズだったと思うよ。
菊池 この点はよかったですね。
京介 ゲートも、有馬記念にしては珍しく、全馬ほぼ同体ぐらいで出た。1歩目出遅れた馬でも4分の1馬身ぐらいじゃない?行き脚が付かないゴールドシップだけど、今回もゲートだけは出たし、後は連闘のトーセンレーヴ、ステイヤーズSからのアルバート。
菊池 まずはゴールドアクターが絶好のスタートを決めましたね。
京介 スタート良く行き脚がいい馬が5頭ぐらい並んで最初の4コーナーに進入したんだけど、これが内からラブリーデイ・ゴールドアクター・サウンズオブアース・キタサンブラックとリアファルなんだよね。結果論だけれども、スタートで集中力を見せて高い位置を取れた馬が掲示板上位を占めていたんだね。
菊池 ペースも落ち着きましたからね。
京介 4コーナーに入る所でラブリーデイが譲って下がり、ゴールドアクターを外のキタサンブラックとリアファルが交わす。その内に、大外枠のマリアライトがジワッと押し上げた。
菊池 マリアライトはこの枠を引いてしまったので、序盤に位置を取りに行くしかなかったですね。この馬にとっては、「もしかしたら先行策もあるかも?」と思われたルージュバックが控えたのは幸運でした。
京介 結局、リアファルのハナを叩いてキタサンブラックが先導する形。その可能性は考えたけども、実際にそうなるとは。その後ろの馬も折り合い重点で、隊列を一切崩そうとしない。
菊池 スタンド前では捲りに動く馬も全然いなくて、どの部分でも3頭ほどが併走する、団子とも言いづらい少しばかりの縦長の馬群になりましたね。
京介 ちなみにこの時点でゴールドシップは最後尾。1000mを通過した時点で62秒4、それなのにこういう形だと、さすがに悪い位置だと思う。
菊池 昨年に続いて、今年もスローで流れましたね。
京介 2周目2コーナーになってから、リアファルのルメール騎手がキタサンブラックに並びかけるけれども、あまり急いているようではないね。軽いプレッシャー程度。かと言って向正面の好位勢はみな引っ張り切りだし、まだ遅いと思える。そしてカメラが最後尾までを確認した、1分38秒のところおよそ1600m通過から最後尾のゴールドシップが、ようやっと急かされて捲って上がる。
菊池 ペースが遅かった分、いくらか早めに動いてはいますかね。
京介 だけどこの時点でだとさすがにもう遅いよ。残り1000mを全て11秒前半のラップで刻まないといけなくなる。向正面で押し上げる脚は良かったけど、3コーナーカーブから右に行く場面でマリアライトに外に振られる形で往なされて、さすがに勢いが落ちたね。
菊池 ここはゴールドシップにとって大きなポイントでしたね。同時にマリアライトにとっても。蛯名騎手が前の3頭の人柱になったようなかたちでゴールドシップに大ダメージを与えています。
京介 あそこを右に切れ込みながら、一息でハナまで並べれば違ったかもだけどあそこでマリアライトに置かれるような動き出しがあると、もう流石に馬が集中力を保てない。ここから先頭の組は上がり35秒フラットで上がるわけだし…。
菊池 さすがに、今のゴールドシップにそこまでの余力が残っていなかったとも言えますね。
京介 それで道中は誰も仕掛けに動いてなかったし、実際これがレース展開の動く起点となった。マリアライトが外から動かされて仕掛ける形になり同時に3コーナーでリアファルの原因不明の急失速。
菊池 結果的にはハ行だったようですが、内面の問題かのようにも見えましたね。菊花賞のダメージが大きかったというコメントが中間にも出ていましたし。
京介 接触でもなかったから、おそらく脚元関連の原因だと思うけど…。ともかく、このポジションが一つ空いてマリアライトが番手に潜り込む。2列目でゴールドシップの内田博幸騎手は相当手が動くけど一杯に近い。むしろハコ内で脚を溜めてて絶好の手応えだったのがゴールドアクター。
菊池 直線を待たずに、完全に前3頭の競馬になりましたね。
京介 難しかったのはその後ろの組だね。リアファルはコーナーのまずい位置でズル下がりになるし、追っ付け一杯でどう動くかわからないゴールドシップがコーナーで邪魔。その真後ろ3列目は内からラブリーデイ、サウンズオブアース、ルージュバックと来てるんだけど全力でゴールドシップを追い越せない難しさがあったように思うね。
菊池 ペースが上がっている区間ですし、前・内の馬がバテるような流れじゃないから、こうなると待機勢は大いなる不利な展開でした。
京介 そして直線。最内は一杯の手応えで粘るキタサンブラックに、外からマリアライト、上手く運べた絶好のゴールドアクターが並ぶ。ゴールドアクターがまず動いたのでその真後ろスルスル通るラブリーデイ、ゴールドアクターを目標に仕掛けて追いかけてきたサウンズオブアース。4コーナーでゴールドシップの外を回った馬は、やっぱり勢いをつけにくくて単純に距離が遠そう。
菊池 ラストインパクトやルージュバックは、ほとんどゴールドシップと同じ勢いで、脚色が一杯になってしまっていました。
京介 そして最後、坂を上り切ったところで勢いがいいのはゴールドアクター。ここからサウンズオブアースが後を追うようにジワジワ伸びる。ラブリーデイはあの内を割れても良かったんだけど、マリアライトが粘ると読めず外に切り替えてワンテンポ遅れた。これは川田騎手の判断ミスがあったと思う。
菊池 うーん、この距離とは言え、今回の枠とペースなら上手く乗ればもう少しやれましたよね。こういうところだよなぁ…。
京介 外ではゴールドシップがまだ粘ってるけど盛り返しはなし。ジリジリとトーセンレーヴが迫ってるけれども、前の集団にまで追い付くには及ばなかった。
菊池 最後は、ゴールドアクターが内で粘るキタサンブラックを1馬身ほど交わし、外から迫るサウンズオブアースを抑えてゴールしています。
京介 サウンズオブアースは今シーズンで一番ちゃんと伸びたんじゃないかという脚だけども、僅かに届かず。その後の3着4着も、5着以下の争いもかなりの僅差だった。
菊池 向こう正面からの機微はあれど、端的に言ってしまえば、スローの上がり勝負になりました。
京介 そうだね、結局全体としては、キタサンブラックとリアファルが競り合わず、淡々としたスローペースという評価が正しい。ゴールドシップには展開面のお膳立てまるでなし、むしろペースアップのスイッチに使われただけだ。2分33秒0という決着も、時計の水準を評価するレベルには至らない。蓋を開けてみればリアファルが逃げてなくても前残りの決着だった。
菊池 ただ、リアファルの失速以外には、さして驚きもなかったかもしれません。ゴールドシップに続く馬がいなくて、ペースアップが半端だったようには思いますが。
京介 だけどまあ、十分想定内の決着だったかなあ、とは思う。わけのわからない、押し出された逃げ馬が変なペースを作らないとハイペース決着っていうのはもう起こらないのかな。この馬が逃げるだろう、の想定を覆されてもやっぱりスローだし。力のある馬同士での隊列勝負、という面は否定できないね。
菊池 その点については、今年は特に、G1の度に何度も話したかも…と思いますが(笑)。
京介 そして力が拮抗していたメンバーだからこそ、有馬記念を目指して仕上げた、余力ある状態で出たというのが改めて重要だと感じたパドックだったよ。年間で最高額条件となったJC、それに次ぐ有馬記念。この2つを制するような馬になるためには、やっぱり圧勝できるほど強くないとダメだわ。
菊池 三冠達成と同じで、ライバルが弱いという状況も必要になるんですよね。あと、秋4走目っていうのは本当にキツイですね。
京介 ラブリーデイは仕上げとしては問題ない・悪くないレベルだけどこのメンバー相手に少しばかり上手(うわて)というだけではやっぱりマークしきれない馬がやってきて、掠め取られちゃうね。
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ゴールドアクター
菊池 重ね重ね、この馬の高評価はお見事でした。
京介 この馬は胴がやや短いのにストロークが伸びる中長距離型。体型的に言えばもちろんスローペースOKの馬なんだけど、単純に言えば、前走よりももっと良くなっていたよ。いろんな雑誌で「アルゼンチン共和国杯イマイチでしょ」と言ってしまったから申し訳ないけれども…。
菊池 アルゼンチン共和国杯が凡戦だったことは確かですし、2・3着馬が次走で人気を裏切ったという側面もありましたから、仕方のない面もあったと思います。
京介 あの11月半ば当時は中川厩舎のランクも全然低かったんだよね。正直そんなに馬の性能を伸ばせる厩舎だとは思ってなかったわ。
菊池 今回の有馬記念ではどの馬を軸にするのかと、どこまで印を回すか、の2点が大きなポイントだったと思いますが、僕自身も最終的には厩舎力と人々のプロフィールを疑ってこの馬の評価を下げました。
京介 この3か月で9勝してる、と考えるといっぱしのA級厩舎並みには勝ってるんだよね。クリスマスローズSのマレボプールの仕上げも見事だった。覚醒したスクリーンヒーロー産駒の集中力が凄いと言っても、そこは中川厩舎を褒めないとね。実際年末で仕上げの難しい時期だったんだし。
菊池 連勝中とは言え間隔もありましたから、この間にさらに上の仕上げで出走してきたというのはお見事でした。
京介 それに吉田隼人騎手も見事な乗り方だったね。ただ、後述するけどいろいろな運もあったし、3コーナー勝負所で全く動かずに済んだのが大きい。ラブリーデイより前にいるというのも一つポイントだったね。
菊池 スタートを決めて万全の位置取り。最初の直線までに、「あ、これは馬券になるな」と思わせるほど、スタートから1回目の4角までの立ち回りがお見事でした。ペース込みですが、やはり有馬記念はここまでの位置取りが凄く大事だと、改めて思いました。
京介 中山と東京で2500mを走り切れたということで、多分遠くに宝塚記念を見据えるローテーションになると思うけど、来年春をどのように過ごすかだよね。まずは日経賞に全力か。天皇賞(春)に行くのかな?他馬のプレッシャーを受けても勝てる馬になればいいけども。
菊池 とりあえずはそのローテーションでしょうね。ステップレースを使って天皇賞(春)へ。
京介 ただ現時点では、目立って抜ける指数が出るとも思えない。スタミナ保証があって、長めの距離を好位で押し切れる強みが今のところ直線勝負ばかりのサンデー系統に対して大きい、という所。
菊池 今回もIDMはそこまで伸びませんし、負かす術はありそうですね。
京介 ただ、G1レベルでもこういうタイプがちゃんと立ちはだかるのは差し馬にとって力関係を測るいい基準になる。下手に下げたりせず、強気強気の姿勢を貫いてほしいね。
菊池 なおも連勝を伸ばしていますから、今後も活躍して欲しいところ。吉田隼人騎手もローカル周りが続いていましたが、これで多少は中央場での乗り馬に変化が見られると良いですね。何かと苦労されたと思いますが、見事な勝利でした。おめでとうございました。
サウンズオブアース
菊池 うーん、分かってはいましたが、勝てない…(笑)。
京介 この馬も背中はかなり短いよね。この日は腰もちゃんと決まっていたし、若干腰が引けて見えた部分以外は良く見せた。仕上がりは間違いなく良かったと思う。
菊池 天皇賞(秋)をパスするローテで、ジャパンCからさらに上積みに期待が持てるローテだったのは大きいですね。
京介 ただ、今年のメンバーだともっと後ろに回る馬だと思ってたよ。実際鞍上の導きで2列目にいたけど、4角勝負所で不利な位置に潜っていたし。京都コースが大得意な馬で、トップスピード持続力はいいけど加速性能だとあそこで遅れる形はしてるんだよね。
菊池 馬体構造上で、仕方がないということですか。
京介 自分の体型判断では、中山を勝てるようには思えない形。リアファルを見事に交わし、かなり追っつけているのにあの直線入口でゴールドシップの外じゃなく内を回せるのは追いながら全くブレず、同時に視野がいいデムーロ騎手ならではだね。改めてレースが終わると、有馬記念は外人騎手を評価しないといけないなあと思うわ…。今年のパドックを見て、日本人ワンツースリー行けると思ったけどねえ。
菊池 この馬についてもゴールドアクターと同様に、スタートを決めて良い位置を取れました。デムーロ騎手と言えば、スタートが苦手なイメージがありますが、この馬はデビュー以来、出遅れたことのないスタート巧者。
京介 でも、この馬は今回デムーロ騎手で結果が出たけれども、実はデムーロ騎手が未勝利からちょくちょく乗ってるのにこの馬とのコンビで勝てたことがないんだよね。相性が悪いんじゃないかと思って評価下げた所もある。
菊池 そうは言っても2勝馬ですからね、ジャパンCは不利が大きかったですし、展開も苦しく。今回は鞍上のペース判断も含めて、素晴らしい流れでした。やはりスタミナ面の保証があって、多少流れても踏ん張れるという意識から、どの流れでも前の位置が良いという判断が奏功したとも思います。
京介 この後は日経賞からなのかな?ちゃんとしたステイヤーに思えないから、正直番組選びが難しいんじゃないかと思うけど…。オープンでも何でもいいので、まずどこか一つ勝ってほしい。ここで何の可能性を言っても、出たいレースに出られない可能性の方が高いから。
菊池 有馬記念2着ですから、賞金面は大丈夫でしょう。勝ちグセを付けて欲しいという意味では賛成ですが。昨年が日経賞→天皇賞(春)でしたが、次はローテを変えてくるかもしれませんよ。京都記念、阪神大賞典。いずれも適性・地力ともに上位で、相手関係次第では1番人気になると思いますが、接戦での弱さは心配しておきたいですね。2着付けで買いましょうとは言いませんが、馬連にするとか、3連複か3連単ならマルチ軸にしましょうとか。
キタサンブラック
菊池 前日の無印から◎まで評価が上がっていたのには驚きました。
京介 やっぱり連勝してる馬はどんな変な履歴であっても、馬体にちゃんと根拠があるなと感じさせたよ。リアファルも形はまあ良い馬なんだけど、現時点での説得力は確かにこちらの方があった。腰回りが全くブレない所や、後肢の伸ばし方や捌き方も全く力を入れてないのにスムーズだったりね。
菊池 今回は、中間に既に仕上がりのピークを迎えて、むしろその維持が難しいのでは?という声まであったほど。確かに最終追い切りは馬場が悪かったにしても、この馬らしからぬ脚の上がり方でした。
京介 前予想で触れたけども、奥の手を隠し持っていたのが大きいんじゃないかなと。リアファルのハナを叩いて逃げたことで、リアファルが戸惑っただけじゃなく、後続も「どういうスパートを仕掛けていいのやら、リアファル早く動けよ!」と思ったはず。リアファルの逃げなら動き方を考えてたけど、キタサンブラックがいきなり逃げてサッと対応できる騎手はいなかったでしょ。
菊池 外めの6枠でしたが、リアファルより内の枠。内に積極策を取る馬がいなかったのも良かったですよね。
京介 だけども、あれだけペースを遅らせられて、リアファルが競ることもなかったんだから振り切って逃げきって欲しかったなあ。現時点でそこまで強くなかったってことなのかねえ。いや、でも、北村宏司騎手だったら…うーんどうだろう。
菊池 アドマイヤデウスの岩田騎手が、「結果論だが、ジャパンCのような積極的な競馬をすべきだった」という趣旨のコメントをしていました。もし、実現していたらこの馬は手を焼いたかもしれませんね。同時に、今の岩田騎手が好調時のような判断をできていない…と考えることもできますが。
京介 ただ、この馬の持ち味としては「逃げ・差し自在」というのが大きいよね。相手次第でどうにでも動けるし、全く折り合いに苦労しない。その上でいいスタミナがあるし、多少形が甘くても走ってくれる。休み明けいきなりから動ける反応の良さも評価できる。
菊池 今回に関しては、上位馬の中で決め手で見劣りしたとも言えそうですが、来春はどうでしょうね。
京介 天皇賞(春)は、抜群に弾けるタイプが全く合わない反面、案外こういう気のいいタイプの方が勝利に近いんじゃないかと思うんだよね。
菊池 平均的に脚を使う競馬が合うのと、スタート巧者で先行力もあるので、計算の立つタイプですね。枠順と隊列予想で良い所につけられるかどうか。その上で、上がりが足りるかどうか。この馬の出走するレースは、まずキタサンブラックが好走しそうかどうか、何頭に差されそうか、そんなところを起点に予想すれば良かったんだなぁと、有馬記念を終えてから思っている次第です。
マリアライト
京介 この馬まで評価しておこうかな。パドックは本当に良かったよ。馬体が減らなかったのはまず良かったけど、後肢のバネが素晴らしく、牝馬としての持ち味を十分示せた。ローテーションもエリザベス女王杯からというのは放牧に出てからも十分調教を詰めるし、間隔も適度にいいんだよね。
菊池 正直、枠順さえよければ2~3番手も考えていました。さすがに16番枠を引いてしまったのはあまりに不運でしたね。どう見ても充実期に入っていただけに。
京介 大外枠だから出脚不利、それをスタンド前でいち早く1列目に接近。おまけにゴールドシップがやってきた時も3コーナーで制したのがマリアライトなんだよね。そこからスパートを続けてキタサンブラック相手に僅差。
菊池 めちゃくちゃ濃い競馬をしていますよね。今回のレースで、最も稼働したのがマリアライトだと言えるほど。それで僅差の4着。惜しい、あまりにも惜しい。
京介 何でゴールドアクターやキタサンブラックじゃなくてゴールドシップを往なす仕事をしたのがマリアライトなのかと。これは全部大外枠を引いてしまった蛯名騎手のせいだわ(苦笑)。
菊池 それでも、4着に頑張れたのはペースが落ち着いたお陰も大きいですね。
京介 そうね。スローペースになった方が外枠の馬にはチャンスがあるんだけど、それでも細かくレースを見直すと外枠だからこその着差不利が目につくんだよね。ゴールドアクターやキタサンブラックより上の評価をしてもいいんじゃないかな。あくまで今年のスローで起こった競馬の中で、だけど。
菊池 やっぱり母父エルコンドルパサーって素晴らしいと思うんですよ。20年前の母父マルゼンスキーみたいな感じ。つくづくエルコンドルパサーの早過ぎた死は痛い。サイレンススズカと同じくらい痛い。これだけで一晩飲み明かせる(笑)。
京介 知らないけどさ(笑)。それにしてもこの馬は本当に強くなった。中山の2500mでも牡馬相手にまあまあ戦えるし、来年のエリ女までどういうローテーションで行ってくれるのか。
菊池 そこは結構イタイところですね。とりあえず上半期の大目標は宝塚記念になるんでしょう。今年のラキシスみたいにならず、あと1年ピークが続くかどうかですね。
その他
京介 久々に有馬記念で1番人気がコケたけれども、まあ…競馬に慣れている人ならしゃーないと思うよね。
菊池 1番人気が4倍台(最終的に単勝1番人気ゴールドシップが4.1倍)でしたから仕方ないですね。有馬記念の単勝1番人気がこの程度の売れ方だったのは、サクラスターオーが1番人気だった88年以来だったようです。まぁ、レアケースです。
京介 レースの後になってから栗東で内田博幸騎手の取材手応えはあまり芳しくなかった、みたいな話は出てくるし、今年はさすがに割り切って評価した人が多かった感じだけど。
菊池 ゴールドシップは、やはり応援馬券がたくさん入っていましたから、事実上は複勝1番人気だったラブリーデイが1番人気だったと考えてもいいと思います。こちらは何もかも後手後手で5着。正直、このペースなら持っただろ…と思いますけども。
京介 それでも今年は、良くこれだけのメンバーが揃った、いや「拮抗した」メンバーが揃ったと思ったよ。3分の1ぐらいから半分は、最初から考えなくていいという年が結構あると思うんだけどね。
菊池 そうですね。昨年が超豪華で、その上位人気&好走馬の殆どが引退した今年、これだけメンバーが揃ったのは、JRAも各厩舎も、競馬を盛り上げようと頑張って下さったなぁと思います。ショウナンパンドラだって、最後の最後まで出走に向けて努力してくれていました。あのジャパンCの後ですし、すぐに休養してもいいところ。オーナーも調教師も頑張ってくれたと思います。
京介 今年のポイントはまず一つに、ゴールドシップしかいない上半期があって宝塚記念がああなり、ラブリーデイしかいない下半期となってJCと有馬記念がこうなった。抜きんでた馬がいない、抜けていると評価できない1年だったよね。逆にそう見えるだけ、いい状態をキープできる仕上げ技術が上がり、A級馬が衰えず安定しだしたこと。
菊池 単純比較をすると、ゴールドシップはオグリキャップより1年長く現役生活を送っていたわけですからね。最近言わなくなりましたが、旧齢表記なら7歳の年末。そこで有馬記念の1番人気だったわけだ。2歳夏のデビューで3歳から4年連続でG1を勝利。本当に息の長い活躍を見せてくれました。これは、馬の頑張りはもちろん、現在の調整技術の進歩の証明でもありますね。
京介 そういうことだ。それと同時に、やっぱりG1を勝ったという勲章は大きいから宝塚記念ではゴールドシップに期待を背負わせ過ぎた、JCや有馬記念ではラブリーデイに背負わせ過ぎた、そのために他の陣営も対応しやすかったのもあるかな。
菊池 と、言いますと?
京介 図抜けて強いならともかく、競馬上手というのは人気を集めて勝てるほどじゃないなとこの秋には感じたよ。展開をつぶさに見ても、ゴールドシップがいるからラブリーデイのアドバンテージが大きいのは明らかだし、ラブリーデイを目標に皆が仕掛けるとやっぱりJCではそりゃ間に合うよな、という流れになってしまう。
菊池 目標にされる難しさと、ノーマークの有利ですね。
京介 人気を背負っていて、こう来るとわかっていて、それでも圧勝するようなオルフェーヴルはやっぱり強かったよ。このマークされる弱みというのは、研究してみるといろいろ面白いかもしれないね。
菊池 混戦であるほど、タレント揃いのレースであるほど、重要視しないといけませんね。割と基本的ではあるものの、重要なポイント。
京介 しかしまあ、外人騎手に通年免許を出してから、ここまでやられまくるとは…。特に力が拮抗している時の方が、外人騎手の凄みをより感じたね。若干不調だった日本人騎手から、外人騎手にスイッチした時の破壊力だったり、ハンデ戦での強さだったり、今回のサウンズオブアースのように2回乗せれば必ず結果を出してくれることだったり。
菊池 一定レベル以上であれば、「エージェントでリーディングが決まる」というのは本当ですよね。エージェント力でリーディング上位にいる騎手たちが、ホンモノである外国人騎手に面白いように撃ち落とされてしまう。ジャパンCのムーア騎手なんてその最たる例だと思いました。
京介 いい馬が回っていること以上に単純に優位があると大レースを見るたびに実感するよ。現場で見ていると明らかに日本人騎手で決まるでしょと思う場面が多々あるにも拘らず…。
菊池 僕は最終的にラストインパクトに重い印を付けたことを本当に反省します。結果がダメでも良いから内を突け…そんなシンプルなこともしてもらえず、レース後に「外に出すべきじゃなかった」みたいなコメントを読まされる。“忸怩たる”のさらに上の表現が欲しいですよ。重い印を付けた自分が情けなくなりました。涙が出そうでしたよ。
京介 それは思い入れしすぎだと思うけどね(苦笑)。
菊池 まぁ、そうですけどね。騎手のランク的には決して高くない吉田隼人が勝利を収めただけに、単純に「外国人ジョッキー買っておけば良かったんや!」なんて言えませんけども。やっぱり騎手に対しての考え方は改めないといけない。もっともっと勉強しないといけない。本当に反省しています。有馬記念の内枠有利なんて超当たり前だけど、内枠を生かせない騎手が乗ってたら意味ないから!!ということ。レース後に気付いてどうするんだ俺のバカ(涙)。
京介 馬の評価も少し変わらないといけなかったりすんだよなあ。明らかに太くても外国人騎手の騎乗ならば、筋力がある馬なら評価すべきだったり、後肢に伸びがある馬なら腰が弱く変な歩きでも評価しないとだったり。まぁ来年も、おそらく悩まない有馬記念なんてないんだろうし、外国人騎手に1年預けてみるという考え方があってもおかしくないのかな。
菊池 最後、急に普通のことを言って締めますけど、やっぱり有馬記念&皐月賞は「関西ジョッキー下げ」ですね。中山重賞は関東騎手&外国人ジョッキー。これ凄く当たり前だけど、すごく大切。マリアライトのクジ運の悪さを無駄にしないためにも、しっかりと胸に刻まないといけないと思いました。月刊誌なんかだと書きにくいんですけどね。1ヶ月の間に騎乗変更は当たり前のように起こるので。
<次走巻き返し警戒馬>
・ルージュバック
・アルバート
~~~~
菊池 では、今年の回顧はここまでです!
京介 今年も1年終わりましたか。お疲れ様でした。そして、応援してくれたみなさんありがとうございました。
菊池 本当、そうですね。僕たちもこの展望トークを続けて、もう6年くらい経つようですよ。09年頃に生まれた子が、来春から小学校に通うわけです(笑)。
京介 よくやってるねぇ(笑)。
菊池 そして、この展望トーク、フォーマットをマイナーチェンジしていることに、みなさんお気づきかもしれませんが、今後は提供方法が少し変わりそうです。そのあたりはまた年明けにでも詳しくご説明させていただけるかと思います。
京介 引き続き、ご愛顧いただければ幸いだね。より一層、内容もお役立ちできるようなものにしましょう。
菊池 はい。もっと客観的なデータを増やしつつ、我々の偏った思想も反映させつつ、オカルティックなデータも含めつつ。
京介 ここに来て、競馬チェックが静かに燃えていることを、みなさんに気付いてもらいましょう(笑)。
菊池 そういうことです。2015年も大変お世話になりました。今後共よろしくお願いします。皆様、良いお年をお迎えください。
※パドチョク生放送は金杯から!

京介 そこはよかったんだけど、サウンズオブアースの評価を見誤ったかな。菊池くんと奥野さんは◎本命だったようで。

菊池 そうですね、僕も相手選びに失敗したクチですが…。さて、今年もお疲れ様でした。では、今週も回顧していきましょう。
有馬記念回顧
京介 いやー、当たり前だけど今年一番寒かったんじゃないか、と思うぐらいに冷え込みが厳しかったわ。今年も無事に雨が降らず、いい天気でできたのは良かったけど朝からビュービュー北風が吹いて、とにかく冷たすぎる!馬場の方ではみんな頭を屈めて歩いていたほどだし、もう途中から返し馬は屋内で見てたわ。
菊池 年の瀬に行われる有馬記念ですものね。今年は暖冬と言われていますが、先の週末から冷え込みが厳しくなりましたし、例年通りだとしてもギャップでより寒く感じたというのはあるかもしれませんね。
京介 それにしても今年は、メンバーはそんな言うほどではないのに混雑が凄かった!入場人員が相当な増加だったんだって?
菊池 どうも毎週、コアな視点を持って競馬をやっている人にはしっくりこないようですが、ゴールドシップって人気ありますからね!?(笑)
京介 そうかぁ。それもだけど、やっぱり競馬人気は少なからず戻っているのは間違いないね。こういう混雑も、メンバーじゃなくて宣伝の仕方が重要だと徐々に証明されてきた感があるね。
菊池 確かに、JRAの宣伝が良い方に向かっているのも確かでしょうね。アイドルを呼んでムダに現場を混乱させていただけの迷走時期もありましたが、ようやく競馬ファンの方を向いてくれたということで。あの失敗も無駄じゃなかった!(笑)。
京介 だけど現場はしっちゃかめっちゃかだったわ。朝一番の並びも階段でコケた人がいて大渋滞だったし、あちこちでいさかいが起こってたり、今日は人が多すぎる混雑で怪我した人を周りでよく見かけたよ。
菊池 それは嫌ですね、せっかくのお祭りの日ですから。
京介 今日はパドックに人員を回すよりも、場内の交通整理に人を割いた方が良かったんじゃないか。
菊池 確かに。その点は改善を望みたいですね。さて、馬場状況を振り返りましょうか。
京介 この日の中山の芝は、結構な外差し有利。少なからず強く吹いていた風の影響はあったと思う。馬場は見た目には十分荒れているけど、内が掘れるほどじゃない。展開次第では内を突いても問題なく、おそらく年末の堅い馬場だね。
菊池 やや内有利に寄ってきたのは、昨年と同様の推移ですね。
京介 道中追い風でペースが速くなり、直線向かい風になって圧を受けるからそれに耐えられない馬が多い下級条件は、スピードが勝った馬よりも脚を溜めて競馬できた方が良かった。
菊池 差し有利は引き続き見られましたが、馬場よりも風の影響が強かった様子、という点は覚えておきましょう。
京介 付け加えると、比較的穏やかな天候だった土曜日はどちらかというとスタミナ血統が頑張っていたんだけど、この日曜日にさらに寒くなって風が出始めると瞬発力が必要になっていたのか、ほぼサンデー一色だったね。もっと血統的にカオスで、混沌としたムードかなと思ったけど、日曜日の方がディープインパクト産駒にとっては有利だったかと思う。
菊池 サンデー一色というと、まぁ現在の競馬自体が半分くらいサンデーの色ですから(笑)。とりあえず、昨年と比べてディープインパクト産駒が好走できている、というのが12月の中山芝の傾向として、ひとつのポイントでしょう。
京介 そしてパドック。何とか最前列で見られて良かったわ。大混戦と言われたけれども、パドックも出来のいい馬が多かったと思う。
菊池 有馬記念までデキを維持するのは大変で、例年このパドックではデキが下降線に入ったとはっきり分かるような馬も見られますよね。
京介 ラブリーデイやゴールドシップのような実績上位が明らかに抜きんでていい馬体、という感じでなかったのは確か。この2頭も出来落ちという下がり方は決してしてないけど、パドックで他を威圧するほど体が抜けている、ぐらいじゃないと包囲網突破はおそらくできないだろうな、と感じるぐらいに周りが良かったと解釈してるよ。
菊池 ラブリーデイ、ラストインパクト、アドマイヤデウス、ワンアンドオンリーの4頭しか、秋のG1を3つとも走った馬がいませんでしたから。全体に仕上がりの水準が高かったというのも納得です。
京介 実際のところ、IDM通りの大混戦という様子で、全体にクラシック路線を歩んでた馬よりも、連勝してきた上がり馬の方が張り艶や身のこなしの柔らかさはあった。それとキタサンブラックとリアファルだったら、現時点での手先の強さや馬力感、蹴る威力の高さだと明らかにキタサンブラックの方が上だね。並べると確かに良くわかる感じはあった。
菊池 ほう、前評判とは若干異なりますね。
京介 菊花賞当日の仕上がりは果たしてどうだったかわからないけど、おそらく菊花賞のあとの成長伸びしろが、キタサンブラックの方があったのだろうとも思う。
菊池 リアファルが菊花賞で負ったダメージが大きかったとも考えられませんか?疲労が抜けずに苦労したとか、立て直しに少し手を焼いたとか、そういったニュアンスのコメントもありました。僕は、そっちかと思いました。
京介 それとJC帰りの馬は、やっぱり大幅上昇はあり得ない。だからこそ不本意な競馬で揉まれたり直線追ってなかったりで、余力を残しつつ流した馬の方がこの有馬記念では若干上向く可能性があるというだけだね。
菊池 そうですね。サウンズオブアース以外は状態面に疑問符が付く馬もいたようで。やっぱり有馬記念において余力は重要ですね。
京介 そしてレース。15番枠だけれども、まずゴールドシップが先にゲートに入る。その他の馬も全くごねることなく、ゴールドシップからマリアライトまで1分ちょいだから非常にスムーズだったと思うよ。
菊池 この点はよかったですね。
京介 ゲートも、有馬記念にしては珍しく、全馬ほぼ同体ぐらいで出た。1歩目出遅れた馬でも4分の1馬身ぐらいじゃない?行き脚が付かないゴールドシップだけど、今回もゲートだけは出たし、後は連闘のトーセンレーヴ、ステイヤーズSからのアルバート。
菊池 まずはゴールドアクターが絶好のスタートを決めましたね。
京介 スタート良く行き脚がいい馬が5頭ぐらい並んで最初の4コーナーに進入したんだけど、これが内からラブリーデイ・ゴールドアクター・サウンズオブアース・キタサンブラックとリアファルなんだよね。結果論だけれども、スタートで集中力を見せて高い位置を取れた馬が掲示板上位を占めていたんだね。
菊池 ペースも落ち着きましたからね。
京介 4コーナーに入る所でラブリーデイが譲って下がり、ゴールドアクターを外のキタサンブラックとリアファルが交わす。その内に、大外枠のマリアライトがジワッと押し上げた。
菊池 マリアライトはこの枠を引いてしまったので、序盤に位置を取りに行くしかなかったですね。この馬にとっては、「もしかしたら先行策もあるかも?」と思われたルージュバックが控えたのは幸運でした。
京介 結局、リアファルのハナを叩いてキタサンブラックが先導する形。その可能性は考えたけども、実際にそうなるとは。その後ろの馬も折り合い重点で、隊列を一切崩そうとしない。
菊池 スタンド前では捲りに動く馬も全然いなくて、どの部分でも3頭ほどが併走する、団子とも言いづらい少しばかりの縦長の馬群になりましたね。
京介 ちなみにこの時点でゴールドシップは最後尾。1000mを通過した時点で62秒4、それなのにこういう形だと、さすがに悪い位置だと思う。
菊池 昨年に続いて、今年もスローで流れましたね。
京介 2周目2コーナーになってから、リアファルのルメール騎手がキタサンブラックに並びかけるけれども、あまり急いているようではないね。軽いプレッシャー程度。かと言って向正面の好位勢はみな引っ張り切りだし、まだ遅いと思える。そしてカメラが最後尾までを確認した、1分38秒のところおよそ1600m通過から最後尾のゴールドシップが、ようやっと急かされて捲って上がる。
菊池 ペースが遅かった分、いくらか早めに動いてはいますかね。
京介 だけどこの時点でだとさすがにもう遅いよ。残り1000mを全て11秒前半のラップで刻まないといけなくなる。向正面で押し上げる脚は良かったけど、3コーナーカーブから右に行く場面でマリアライトに外に振られる形で往なされて、さすがに勢いが落ちたね。
菊池 ここはゴールドシップにとって大きなポイントでしたね。同時にマリアライトにとっても。蛯名騎手が前の3頭の人柱になったようなかたちでゴールドシップに大ダメージを与えています。
京介 あそこを右に切れ込みながら、一息でハナまで並べれば違ったかもだけどあそこでマリアライトに置かれるような動き出しがあると、もう流石に馬が集中力を保てない。ここから先頭の組は上がり35秒フラットで上がるわけだし…。
菊池 さすがに、今のゴールドシップにそこまでの余力が残っていなかったとも言えますね。
京介 それで道中は誰も仕掛けに動いてなかったし、実際これがレース展開の動く起点となった。マリアライトが外から動かされて仕掛ける形になり同時に3コーナーでリアファルの原因不明の急失速。
菊池 結果的にはハ行だったようですが、内面の問題かのようにも見えましたね。菊花賞のダメージが大きかったというコメントが中間にも出ていましたし。
京介 接触でもなかったから、おそらく脚元関連の原因だと思うけど…。ともかく、このポジションが一つ空いてマリアライトが番手に潜り込む。2列目でゴールドシップの内田博幸騎手は相当手が動くけど一杯に近い。むしろハコ内で脚を溜めてて絶好の手応えだったのがゴールドアクター。
菊池 直線を待たずに、完全に前3頭の競馬になりましたね。
京介 難しかったのはその後ろの組だね。リアファルはコーナーのまずい位置でズル下がりになるし、追っ付け一杯でどう動くかわからないゴールドシップがコーナーで邪魔。その真後ろ3列目は内からラブリーデイ、サウンズオブアース、ルージュバックと来てるんだけど全力でゴールドシップを追い越せない難しさがあったように思うね。
菊池 ペースが上がっている区間ですし、前・内の馬がバテるような流れじゃないから、こうなると待機勢は大いなる不利な展開でした。
京介 そして直線。最内は一杯の手応えで粘るキタサンブラックに、外からマリアライト、上手く運べた絶好のゴールドアクターが並ぶ。ゴールドアクターがまず動いたのでその真後ろスルスル通るラブリーデイ、ゴールドアクターを目標に仕掛けて追いかけてきたサウンズオブアース。4コーナーでゴールドシップの外を回った馬は、やっぱり勢いをつけにくくて単純に距離が遠そう。
菊池 ラストインパクトやルージュバックは、ほとんどゴールドシップと同じ勢いで、脚色が一杯になってしまっていました。
京介 そして最後、坂を上り切ったところで勢いがいいのはゴールドアクター。ここからサウンズオブアースが後を追うようにジワジワ伸びる。ラブリーデイはあの内を割れても良かったんだけど、マリアライトが粘ると読めず外に切り替えてワンテンポ遅れた。これは川田騎手の判断ミスがあったと思う。
菊池 うーん、この距離とは言え、今回の枠とペースなら上手く乗ればもう少しやれましたよね。こういうところだよなぁ…。
京介 外ではゴールドシップがまだ粘ってるけど盛り返しはなし。ジリジリとトーセンレーヴが迫ってるけれども、前の集団にまで追い付くには及ばなかった。
菊池 最後は、ゴールドアクターが内で粘るキタサンブラックを1馬身ほど交わし、外から迫るサウンズオブアースを抑えてゴールしています。
京介 サウンズオブアースは今シーズンで一番ちゃんと伸びたんじゃないかという脚だけども、僅かに届かず。その後の3着4着も、5着以下の争いもかなりの僅差だった。
菊池 向こう正面からの機微はあれど、端的に言ってしまえば、スローの上がり勝負になりました。
京介 そうだね、結局全体としては、キタサンブラックとリアファルが競り合わず、淡々としたスローペースという評価が正しい。ゴールドシップには展開面のお膳立てまるでなし、むしろペースアップのスイッチに使われただけだ。2分33秒0という決着も、時計の水準を評価するレベルには至らない。蓋を開けてみればリアファルが逃げてなくても前残りの決着だった。
菊池 ただ、リアファルの失速以外には、さして驚きもなかったかもしれません。ゴールドシップに続く馬がいなくて、ペースアップが半端だったようには思いますが。
京介 だけどまあ、十分想定内の決着だったかなあ、とは思う。わけのわからない、押し出された逃げ馬が変なペースを作らないとハイペース決着っていうのはもう起こらないのかな。この馬が逃げるだろう、の想定を覆されてもやっぱりスローだし。力のある馬同士での隊列勝負、という面は否定できないね。
菊池 その点については、今年は特に、G1の度に何度も話したかも…と思いますが(笑)。
京介 そして力が拮抗していたメンバーだからこそ、有馬記念を目指して仕上げた、余力ある状態で出たというのが改めて重要だと感じたパドックだったよ。年間で最高額条件となったJC、それに次ぐ有馬記念。この2つを制するような馬になるためには、やっぱり圧勝できるほど強くないとダメだわ。
菊池 三冠達成と同じで、ライバルが弱いという状況も必要になるんですよね。あと、秋4走目っていうのは本当にキツイですね。
京介 ラブリーデイは仕上げとしては問題ない・悪くないレベルだけどこのメンバー相手に少しばかり上手(うわて)というだけではやっぱりマークしきれない馬がやってきて、掠め取られちゃうね。
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ゴールドアクター
菊池 重ね重ね、この馬の高評価はお見事でした。
京介 この馬は胴がやや短いのにストロークが伸びる中長距離型。体型的に言えばもちろんスローペースOKの馬なんだけど、単純に言えば、前走よりももっと良くなっていたよ。いろんな雑誌で「アルゼンチン共和国杯イマイチでしょ」と言ってしまったから申し訳ないけれども…。
菊池 アルゼンチン共和国杯が凡戦だったことは確かですし、2・3着馬が次走で人気を裏切ったという側面もありましたから、仕方のない面もあったと思います。
京介 あの11月半ば当時は中川厩舎のランクも全然低かったんだよね。正直そんなに馬の性能を伸ばせる厩舎だとは思ってなかったわ。
菊池 今回の有馬記念ではどの馬を軸にするのかと、どこまで印を回すか、の2点が大きなポイントだったと思いますが、僕自身も最終的には厩舎力と人々のプロフィールを疑ってこの馬の評価を下げました。
京介 この3か月で9勝してる、と考えるといっぱしのA級厩舎並みには勝ってるんだよね。クリスマスローズSのマレボプールの仕上げも見事だった。覚醒したスクリーンヒーロー産駒の集中力が凄いと言っても、そこは中川厩舎を褒めないとね。実際年末で仕上げの難しい時期だったんだし。
菊池 連勝中とは言え間隔もありましたから、この間にさらに上の仕上げで出走してきたというのはお見事でした。
京介 それに吉田隼人騎手も見事な乗り方だったね。ただ、後述するけどいろいろな運もあったし、3コーナー勝負所で全く動かずに済んだのが大きい。ラブリーデイより前にいるというのも一つポイントだったね。
菊池 スタートを決めて万全の位置取り。最初の直線までに、「あ、これは馬券になるな」と思わせるほど、スタートから1回目の4角までの立ち回りがお見事でした。ペース込みですが、やはり有馬記念はここまでの位置取りが凄く大事だと、改めて思いました。
京介 中山と東京で2500mを走り切れたということで、多分遠くに宝塚記念を見据えるローテーションになると思うけど、来年春をどのように過ごすかだよね。まずは日経賞に全力か。天皇賞(春)に行くのかな?他馬のプレッシャーを受けても勝てる馬になればいいけども。
菊池 とりあえずはそのローテーションでしょうね。ステップレースを使って天皇賞(春)へ。
京介 ただ現時点では、目立って抜ける指数が出るとも思えない。スタミナ保証があって、長めの距離を好位で押し切れる強みが今のところ直線勝負ばかりのサンデー系統に対して大きい、という所。
菊池 今回もIDMはそこまで伸びませんし、負かす術はありそうですね。
京介 ただ、G1レベルでもこういうタイプがちゃんと立ちはだかるのは差し馬にとって力関係を測るいい基準になる。下手に下げたりせず、強気強気の姿勢を貫いてほしいね。
菊池 なおも連勝を伸ばしていますから、今後も活躍して欲しいところ。吉田隼人騎手もローカル周りが続いていましたが、これで多少は中央場での乗り馬に変化が見られると良いですね。何かと苦労されたと思いますが、見事な勝利でした。おめでとうございました。
サウンズオブアース
菊池 うーん、分かってはいましたが、勝てない…(笑)。
京介 この馬も背中はかなり短いよね。この日は腰もちゃんと決まっていたし、若干腰が引けて見えた部分以外は良く見せた。仕上がりは間違いなく良かったと思う。
菊池 天皇賞(秋)をパスするローテで、ジャパンCからさらに上積みに期待が持てるローテだったのは大きいですね。
京介 ただ、今年のメンバーだともっと後ろに回る馬だと思ってたよ。実際鞍上の導きで2列目にいたけど、4角勝負所で不利な位置に潜っていたし。京都コースが大得意な馬で、トップスピード持続力はいいけど加速性能だとあそこで遅れる形はしてるんだよね。
菊池 馬体構造上で、仕方がないということですか。
京介 自分の体型判断では、中山を勝てるようには思えない形。リアファルを見事に交わし、かなり追っつけているのにあの直線入口でゴールドシップの外じゃなく内を回せるのは追いながら全くブレず、同時に視野がいいデムーロ騎手ならではだね。改めてレースが終わると、有馬記念は外人騎手を評価しないといけないなあと思うわ…。今年のパドックを見て、日本人ワンツースリー行けると思ったけどねえ。
菊池 この馬についてもゴールドアクターと同様に、スタートを決めて良い位置を取れました。デムーロ騎手と言えば、スタートが苦手なイメージがありますが、この馬はデビュー以来、出遅れたことのないスタート巧者。
京介 でも、この馬は今回デムーロ騎手で結果が出たけれども、実はデムーロ騎手が未勝利からちょくちょく乗ってるのにこの馬とのコンビで勝てたことがないんだよね。相性が悪いんじゃないかと思って評価下げた所もある。
菊池 そうは言っても2勝馬ですからね、ジャパンCは不利が大きかったですし、展開も苦しく。今回は鞍上のペース判断も含めて、素晴らしい流れでした。やはりスタミナ面の保証があって、多少流れても踏ん張れるという意識から、どの流れでも前の位置が良いという判断が奏功したとも思います。
京介 この後は日経賞からなのかな?ちゃんとしたステイヤーに思えないから、正直番組選びが難しいんじゃないかと思うけど…。オープンでも何でもいいので、まずどこか一つ勝ってほしい。ここで何の可能性を言っても、出たいレースに出られない可能性の方が高いから。
菊池 有馬記念2着ですから、賞金面は大丈夫でしょう。勝ちグセを付けて欲しいという意味では賛成ですが。昨年が日経賞→天皇賞(春)でしたが、次はローテを変えてくるかもしれませんよ。京都記念、阪神大賞典。いずれも適性・地力ともに上位で、相手関係次第では1番人気になると思いますが、接戦での弱さは心配しておきたいですね。2着付けで買いましょうとは言いませんが、馬連にするとか、3連複か3連単ならマルチ軸にしましょうとか。
キタサンブラック
菊池 前日の無印から◎まで評価が上がっていたのには驚きました。
京介 やっぱり連勝してる馬はどんな変な履歴であっても、馬体にちゃんと根拠があるなと感じさせたよ。リアファルも形はまあ良い馬なんだけど、現時点での説得力は確かにこちらの方があった。腰回りが全くブレない所や、後肢の伸ばし方や捌き方も全く力を入れてないのにスムーズだったりね。
菊池 今回は、中間に既に仕上がりのピークを迎えて、むしろその維持が難しいのでは?という声まであったほど。確かに最終追い切りは馬場が悪かったにしても、この馬らしからぬ脚の上がり方でした。
京介 前予想で触れたけども、奥の手を隠し持っていたのが大きいんじゃないかなと。リアファルのハナを叩いて逃げたことで、リアファルが戸惑っただけじゃなく、後続も「どういうスパートを仕掛けていいのやら、リアファル早く動けよ!」と思ったはず。リアファルの逃げなら動き方を考えてたけど、キタサンブラックがいきなり逃げてサッと対応できる騎手はいなかったでしょ。
菊池 外めの6枠でしたが、リアファルより内の枠。内に積極策を取る馬がいなかったのも良かったですよね。
京介 だけども、あれだけペースを遅らせられて、リアファルが競ることもなかったんだから振り切って逃げきって欲しかったなあ。現時点でそこまで強くなかったってことなのかねえ。いや、でも、北村宏司騎手だったら…うーんどうだろう。
菊池 アドマイヤデウスの岩田騎手が、「結果論だが、ジャパンCのような積極的な競馬をすべきだった」という趣旨のコメントをしていました。もし、実現していたらこの馬は手を焼いたかもしれませんね。同時に、今の岩田騎手が好調時のような判断をできていない…と考えることもできますが。
京介 ただ、この馬の持ち味としては「逃げ・差し自在」というのが大きいよね。相手次第でどうにでも動けるし、全く折り合いに苦労しない。その上でいいスタミナがあるし、多少形が甘くても走ってくれる。休み明けいきなりから動ける反応の良さも評価できる。
菊池 今回に関しては、上位馬の中で決め手で見劣りしたとも言えそうですが、来春はどうでしょうね。
京介 天皇賞(春)は、抜群に弾けるタイプが全く合わない反面、案外こういう気のいいタイプの方が勝利に近いんじゃないかと思うんだよね。
菊池 平均的に脚を使う競馬が合うのと、スタート巧者で先行力もあるので、計算の立つタイプですね。枠順と隊列予想で良い所につけられるかどうか。その上で、上がりが足りるかどうか。この馬の出走するレースは、まずキタサンブラックが好走しそうかどうか、何頭に差されそうか、そんなところを起点に予想すれば良かったんだなぁと、有馬記念を終えてから思っている次第です。
マリアライト
京介 この馬まで評価しておこうかな。パドックは本当に良かったよ。馬体が減らなかったのはまず良かったけど、後肢のバネが素晴らしく、牝馬としての持ち味を十分示せた。ローテーションもエリザベス女王杯からというのは放牧に出てからも十分調教を詰めるし、間隔も適度にいいんだよね。
菊池 正直、枠順さえよければ2~3番手も考えていました。さすがに16番枠を引いてしまったのはあまりに不運でしたね。どう見ても充実期に入っていただけに。
京介 大外枠だから出脚不利、それをスタンド前でいち早く1列目に接近。おまけにゴールドシップがやってきた時も3コーナーで制したのがマリアライトなんだよね。そこからスパートを続けてキタサンブラック相手に僅差。
菊池 めちゃくちゃ濃い競馬をしていますよね。今回のレースで、最も稼働したのがマリアライトだと言えるほど。それで僅差の4着。惜しい、あまりにも惜しい。
京介 何でゴールドアクターやキタサンブラックじゃなくてゴールドシップを往なす仕事をしたのがマリアライトなのかと。これは全部大外枠を引いてしまった蛯名騎手のせいだわ(苦笑)。
菊池 それでも、4着に頑張れたのはペースが落ち着いたお陰も大きいですね。
京介 そうね。スローペースになった方が外枠の馬にはチャンスがあるんだけど、それでも細かくレースを見直すと外枠だからこその着差不利が目につくんだよね。ゴールドアクターやキタサンブラックより上の評価をしてもいいんじゃないかな。あくまで今年のスローで起こった競馬の中で、だけど。
菊池 やっぱり母父エルコンドルパサーって素晴らしいと思うんですよ。20年前の母父マルゼンスキーみたいな感じ。つくづくエルコンドルパサーの早過ぎた死は痛い。サイレンススズカと同じくらい痛い。これだけで一晩飲み明かせる(笑)。
京介 知らないけどさ(笑)。それにしてもこの馬は本当に強くなった。中山の2500mでも牡馬相手にまあまあ戦えるし、来年のエリ女までどういうローテーションで行ってくれるのか。
菊池 そこは結構イタイところですね。とりあえず上半期の大目標は宝塚記念になるんでしょう。今年のラキシスみたいにならず、あと1年ピークが続くかどうかですね。
その他
京介 久々に有馬記念で1番人気がコケたけれども、まあ…競馬に慣れている人ならしゃーないと思うよね。
菊池 1番人気が4倍台(最終的に単勝1番人気ゴールドシップが4.1倍)でしたから仕方ないですね。有馬記念の単勝1番人気がこの程度の売れ方だったのは、サクラスターオーが1番人気だった88年以来だったようです。まぁ、レアケースです。
京介 レースの後になってから栗東で内田博幸騎手の取材手応えはあまり芳しくなかった、みたいな話は出てくるし、今年はさすがに割り切って評価した人が多かった感じだけど。
菊池 ゴールドシップは、やはり応援馬券がたくさん入っていましたから、事実上は複勝1番人気だったラブリーデイが1番人気だったと考えてもいいと思います。こちらは何もかも後手後手で5着。正直、このペースなら持っただろ…と思いますけども。
京介 それでも今年は、良くこれだけのメンバーが揃った、いや「拮抗した」メンバーが揃ったと思ったよ。3分の1ぐらいから半分は、最初から考えなくていいという年が結構あると思うんだけどね。
菊池 そうですね。昨年が超豪華で、その上位人気&好走馬の殆どが引退した今年、これだけメンバーが揃ったのは、JRAも各厩舎も、競馬を盛り上げようと頑張って下さったなぁと思います。ショウナンパンドラだって、最後の最後まで出走に向けて努力してくれていました。あのジャパンCの後ですし、すぐに休養してもいいところ。オーナーも調教師も頑張ってくれたと思います。
京介 今年のポイントはまず一つに、ゴールドシップしかいない上半期があって宝塚記念がああなり、ラブリーデイしかいない下半期となってJCと有馬記念がこうなった。抜きんでた馬がいない、抜けていると評価できない1年だったよね。逆にそう見えるだけ、いい状態をキープできる仕上げ技術が上がり、A級馬が衰えず安定しだしたこと。
菊池 単純比較をすると、ゴールドシップはオグリキャップより1年長く現役生活を送っていたわけですからね。最近言わなくなりましたが、旧齢表記なら7歳の年末。そこで有馬記念の1番人気だったわけだ。2歳夏のデビューで3歳から4年連続でG1を勝利。本当に息の長い活躍を見せてくれました。これは、馬の頑張りはもちろん、現在の調整技術の進歩の証明でもありますね。
京介 そういうことだ。それと同時に、やっぱりG1を勝ったという勲章は大きいから宝塚記念ではゴールドシップに期待を背負わせ過ぎた、JCや有馬記念ではラブリーデイに背負わせ過ぎた、そのために他の陣営も対応しやすかったのもあるかな。
菊池 と、言いますと?
京介 図抜けて強いならともかく、競馬上手というのは人気を集めて勝てるほどじゃないなとこの秋には感じたよ。展開をつぶさに見ても、ゴールドシップがいるからラブリーデイのアドバンテージが大きいのは明らかだし、ラブリーデイを目標に皆が仕掛けるとやっぱりJCではそりゃ間に合うよな、という流れになってしまう。
菊池 目標にされる難しさと、ノーマークの有利ですね。
京介 人気を背負っていて、こう来るとわかっていて、それでも圧勝するようなオルフェーヴルはやっぱり強かったよ。このマークされる弱みというのは、研究してみるといろいろ面白いかもしれないね。
菊池 混戦であるほど、タレント揃いのレースであるほど、重要視しないといけませんね。割と基本的ではあるものの、重要なポイント。
京介 しかしまあ、外人騎手に通年免許を出してから、ここまでやられまくるとは…。特に力が拮抗している時の方が、外人騎手の凄みをより感じたね。若干不調だった日本人騎手から、外人騎手にスイッチした時の破壊力だったり、ハンデ戦での強さだったり、今回のサウンズオブアースのように2回乗せれば必ず結果を出してくれることだったり。
菊池 一定レベル以上であれば、「エージェントでリーディングが決まる」というのは本当ですよね。エージェント力でリーディング上位にいる騎手たちが、ホンモノである外国人騎手に面白いように撃ち落とされてしまう。ジャパンCのムーア騎手なんてその最たる例だと思いました。
京介 いい馬が回っていること以上に単純に優位があると大レースを見るたびに実感するよ。現場で見ていると明らかに日本人騎手で決まるでしょと思う場面が多々あるにも拘らず…。
菊池 僕は最終的にラストインパクトに重い印を付けたことを本当に反省します。結果がダメでも良いから内を突け…そんなシンプルなこともしてもらえず、レース後に「外に出すべきじゃなかった」みたいなコメントを読まされる。“忸怩たる”のさらに上の表現が欲しいですよ。重い印を付けた自分が情けなくなりました。涙が出そうでしたよ。
京介 それは思い入れしすぎだと思うけどね(苦笑)。
菊池 まぁ、そうですけどね。騎手のランク的には決して高くない吉田隼人が勝利を収めただけに、単純に「外国人ジョッキー買っておけば良かったんや!」なんて言えませんけども。やっぱり騎手に対しての考え方は改めないといけない。もっともっと勉強しないといけない。本当に反省しています。有馬記念の内枠有利なんて超当たり前だけど、内枠を生かせない騎手が乗ってたら意味ないから!!ということ。レース後に気付いてどうするんだ俺のバカ(涙)。
京介 馬の評価も少し変わらないといけなかったりすんだよなあ。明らかに太くても外国人騎手の騎乗ならば、筋力がある馬なら評価すべきだったり、後肢に伸びがある馬なら腰が弱く変な歩きでも評価しないとだったり。まぁ来年も、おそらく悩まない有馬記念なんてないんだろうし、外国人騎手に1年預けてみるという考え方があってもおかしくないのかな。
菊池 最後、急に普通のことを言って締めますけど、やっぱり有馬記念&皐月賞は「関西ジョッキー下げ」ですね。中山重賞は関東騎手&外国人ジョッキー。これ凄く当たり前だけど、すごく大切。マリアライトのクジ運の悪さを無駄にしないためにも、しっかりと胸に刻まないといけないと思いました。月刊誌なんかだと書きにくいんですけどね。1ヶ月の間に騎乗変更は当たり前のように起こるので。
<次走巻き返し警戒馬>
・ルージュバック
・アルバート
~~~~
菊池 では、今年の回顧はここまでです!
京介 今年も1年終わりましたか。お疲れ様でした。そして、応援してくれたみなさんありがとうございました。
菊池 本当、そうですね。僕たちもこの展望トークを続けて、もう6年くらい経つようですよ。09年頃に生まれた子が、来春から小学校に通うわけです(笑)。
京介 よくやってるねぇ(笑)。
菊池 そして、この展望トーク、フォーマットをマイナーチェンジしていることに、みなさんお気づきかもしれませんが、今後は提供方法が少し変わりそうです。そのあたりはまた年明けにでも詳しくご説明させていただけるかと思います。
京介 引き続き、ご愛顧いただければ幸いだね。より一層、内容もお役立ちできるようなものにしましょう。
菊池 はい。もっと客観的なデータを増やしつつ、我々の偏った思想も反映させつつ、オカルティックなデータも含めつつ。
京介 ここに来て、競馬チェックが静かに燃えていることを、みなさんに気付いてもらいましょう(笑)。
菊池 そういうことです。2015年も大変お世話になりました。今後共よろしくお願いします。皆様、良いお年をお迎えください。
※パドチョク生放送は金杯から!