菊池 日曜日の東京では、ヴィクトリアマイルが行われました。こちらの回顧をしていきましょう。

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ヴィクトリアマイルカップ回顧



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<天候・馬場について>

菊池 先週末の東京は土曜日に雨がかなり降りました。そして、日曜日に陽が出るはずという予報だったんですけれど、昼過ぎになってもずっと曇っていたんですよね。最初の芝レースは重馬場発表でしたし。

京介 そうなんだよ。土曜日の詳細は土曜重賞の回顧で触れるとして、日曜日は朝から肌寒かったなあ。薄い雲に覆われて日差しが遮られて、冷たい風が吹き込む様子。

菊池 そうそう。全然陽が出なくて、これは乾かないぞ、という気配が朝からありました。

京介 ちょっと半袖だと寒くて、一枚何か着ていた方が良かったな。やっと日が差してきたのはメインレースの返し馬になってから、ぐらいじゃないの。最終レースのパドックがやっと終わってから西日が差してきて、「遅いよそれ!」という。競馬が終わってから暖かくなった感じだよね。

菊池 芝は、ほぼ土曜日と一緒ですよね。日曜最初のレースから、かなり馬場の大外を回った馬の方が、最後伸びていました。内を突こうと試みる騎手もいたんですが、だいたい2着まで。

京介 雨が当日降っていないにしても、やっぱり日が出ないと徐々にしか乾燥しなかったね。そして最初のレースから、有力騎手はみんな大外を回す選択をしていたように、見ている騎手は最初「明らかに外有利」と考えていたはず。

菊池 土曜日からあった外回しがさらに顕著に。

京介 でも適度に風が出ていたのと、最初のレースを使った後はもうみんな4コーナーから大外ばかり回る競馬が多かったから、しばらく内は使われていなかった。そしてメインレースまでの間に、馬場を直す作業もずっとしていたから、どこで内伸びになるのかなとはずっと考えていたよ。

菊池 なるほど。

京介 そして肝心のメインレースになると、デムーロ騎手もルメール騎手も、戸崎騎手あたりも大外へは向かわず馬群の内を突いているんだから、やっぱりみんなちゃんと見ているなあ~と感心するよね。だけどもうちょっと前の時点で、そうするとの予兆を見せてくれないかなあ。


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<パドックについて>

菊池 17頭立てでしたが、なんというか、みんな本命を打つのに頭を悩ませたレースだと思うんですよね。そのあたり、パドックからはいかがでしたか?

京介 毎年そうだけれども、ディープインパクト産駒の牝馬がいつも人気の中心になるレースだし、全体にマイル重賞としては薄い・細い馬が多い。その中でギリギリまで仕上げてきたかどうか、が問われるレースだと思っている。

京介 だから基本的に、今シーズン絶好調というのは馬体に出やすいと思うよ。輸送があっても腰の支えがしっかりしていたり、張り艶と動きのキレが出ていたりするかどうかだよね。

菊池 状態が良い馬が好走しやすいレースで、マイルはちょっと、みたいな馬がガンガン凡走するレースでもあります。

京介 今回は馬場が回復している最中だけれども、そこまで速い動きは必要ないだろうと考えて、重馬場や高速馬場はあまり意識せずノーマルな目線で見ていました。

菊池  断然人気のミッキークイーンは、いかがでしたか?

京介 いつも痩せて見える体型で、四肢も管も長いけど非力さはある馬。だけど今回は、腰の支えがいつもよりだいぶ甘かったように思うんだよね。脚元に悪い所はないけれど、こんなだったかな?と。他に切れ味のいい馬がそんなにいなかったから評価はすべきだと思ったけど。

菊池 僕は結構久々にパドックで見ましたが、だいぶしっかりしたなぁ、という印象を受けました。

<レース展開について>

京介 今回もゲート入りは全く問題なし。最初に入ったのは9番のオートクレール。そこから奇数偶数ともに全く暴れる馬もおらず、スタートが切られるまで49秒ぐらいならかなり早い方だね。

菊池 スタートはほとんど横並びで決まりましたね。

京介 そうだね。ゲートが開いて一歩目はみんなほぼ差がなかった。その後のスタートダッシュが良かったのが4番ソルヴェイグ、出脚でモタついたのが13番ヒルノマテーラと15番フロンテアクイーン。

京介 ここまでスタートが全馬バシッと揃うと、外枠中団の馬は隊列の差で若干不利になりそうだね。

菊池 まず単独で抜け出した4番ソルヴェイグが楽逃げになりそうな様子でしたが、外から17番リーサルウェポンがこれに追いつきます。

京介 これは多少追っ付けての浮上だった。おそらく最初の様子を見渡して、内田博幸騎手も遅くなるだろうと見ての進出だったと思う。

菊池 最初2番手かと思われた6番アスカビレンも控えましたし、その外にスンナリ取りついた14番レッツゴードンキは折り合いに苦労しながらの様子。その内が空いた所に、2番スマートレイアーが進出しました。

京介 スタートしてからしばらく馬群は全然縦に伸びる様子がない。そして好位勢もガッチリ折り合わせる気配。これは確かに、遅くなりそうなムードがプンプンしていたね。

菊池 そしてここまで、先頭のソルヴェイグも、その後ろのスマートレイアーも内ラチを避けて進んでいました。馬群全体が外に張り出すようなルートでしたね。

京介 折り合い重点で馬場の外を回る競馬だと、お互いのマーク戦のようになるし、なおさらスローになるなあ。

菊池 内に3番ジュールポレールがいて、その外に11番ミッキークイーン。思ったより高い位置で競馬しているなぁという印象がありました。

京介 ミッキークイーンはちょっと行きたがっているかな?それでも急がずにこのポジションだから、浜中騎手の道中の捌きとしては問題ない。

菊池 その後ろの内に8番クイーンズリング。その外に10番デンコウアンジュがいました。5番アドマイヤリードは、さらにその後方で。さらにもう一列後ろに7番ルージュバックの姿がありました。

京介 ルージュバックはちょっと接触があって後退したけれども、ここら辺で待っている馬は、もう最初から馬場の外に持ち出すか、馬群の隙を突く流れに期待しての待機策。遅い流れでも全く進ませる様子がなかった。

菊池 集団が3コーナーに差し掛かっても、先頭は内を避けて走っていて、集団もラチ沿いを進みません。その中で、まず8番クイーンズリング・デムーロ騎手がラチ沿いを進んで前に接近。その真後ろから5番アドマイヤリード・ルメール騎手も前を追いかけるように、ラチ沿いを回って進出してきました。

京介 3コーナーに入ってからラップが一番落ち込んで、先頭がペースダウンしている場面だった。そこで余裕のある先頭の組との差を、距離得で一気に詰められたのは大きい。この日ずっと使われていなかったラチ沿いを、この2人はこの場面で突っ込んだわけだね。

菊池 前半600m通過は35秒6と遅めだったのに、さらに3~4コーナー通過が12秒3-12秒2と続きます。1000m通過は60秒1。例年と比べて非常に遅い流れになっています。こりゃ後方の馬は厳しいか…。

京介 しかも結局、直線では例年並みの上がりが記録されている馬場状態だったからね。だからこそ、ガッチリ抑え込んだ馬群なりについて回って一番の脚を使えた馬ではなく、「脚を使っていないようでいて、道中のレース運びで距離得をしていた」馬が有利になったわけだ、と言える。

菊池 さて、レースに戻って4コーナー。先団でずっと掛かり通しの14番レッツゴードンキはなかなか落ち着きません。岩田騎手は立ち上がりかけています。先ほどラチ沿いを進む騎手には触れましたが、後方の組は最内を突いた1番アットザシーサイドを除き、全て馬群の外から大外へ向かう動きですね。

京介 これは先団から中団の馬がそもそも外へ向かうから、さらにその外へ出さざるを得ないから、ではある。だけど、そもそも芝の色が違う内の荒れた部分を避けて競馬しよう、という作戦だったからこそというのもあるね。7番ルージュバックの戸崎騎手は、そういうルートを選んでいたように思うよ。

菊池 直線に向いてもまだ馬群はバラけきれません。逃げる4番ソルヴェイグに、内から接近した2番スマートレイアー、そして8番クイーンズリングが並びかけます。

京介 ちょうどそのタイミングで、3列目辺りの差し馬同士で玉突きがあった様子。11番ミッキークイーンが外に張った時に、10番デンコウアンジュ、16番クリノラホール、12番ウキヨノカゼが外に振られたシーンがあった。僅かだけれども嫌な影響。

菊池 4番ソルヴェイグと2番スマートレイアーは、ここまでのペースが楽だったためかかなり粘れます。その少し外ぐらいで接近していた2列目が5頭ほど、その中に大注目の11番ミッキークイーンも伸びかけています。

京介 ミッキークイーンも、ここまでのレース運びは問題ないように思うんだけどなあ。ここからなんだよね。

菊池 東京の坂を乗り越えて、ラストの200m標識を過ぎてからですね。とうとう先頭の4番ソルヴェイグが後続に捕まり、その真横を通った5番アドマイヤリードが狭い間を抜けてきます。そして外から伸びるのは、11番ミッキークイーンではなく、そのさらに外10番黄色帽、デンコウアンジュ。

京介 クイーンズリングはこの辺りで手応えが怪しく後退気味、スマートレイアーも耐えているけど伸び負けの脚色。外のデンコウアンジュに食らいつくように3番ジュールポレールが伸び返すけれども、弾けて盛り返すほどじゃあなかった。

菊池 アドマイヤリードはグッと抜け出した後も、脚色が衰えないまま1馬身離して、2着争いが4頭混戦の様相。しかし、粘るソルヴェイグとスマートレイアーよりも、外側のデンコウアンジュとジュールポレールが優勢なのは明らかと言ったゴール前でした。

京介 結局G1好走経験の多い実績馬が一息で、4歳馬が最後踏ん張りが効いたという結果になったね。

<結果を受けて…>

170513ヴィクトリアマイル結果

菊池 勝ち時計は1分33秒9。まあ遅いです。前日の雨の影響が大いに残ってしまいましたね。

京介 レース展開も、内が悪い傾向だったのを各騎手が気にしての内容だったものね。内を空けて馬群が通り、前半も慎重な入りで中盤もむしろペースダウン。そして、各馬が記録した上がり3Fだけ例年並みという形だった。馬場は回復基調にあって、悪すぎはしなかったはずなんだけど。

菊池 レース上がりが33.8秒ですし、先頭で逃げていたソルヴェイグが34.1秒でまとめています。これでは、1秒後ろから追走した馬は、どのルートを通ったからといってどうこうできる展開ではありませんでした。

京介 当たり前のことだけど、馬場が悪くて内外のどこかが明らかに良いルートがあれば、逃げ先行馬だってそのルートを通りたがる。そして重賞勝ちがあり、それなりに実績のある先行馬なら、33秒後半から34秒台で上がりをまとめてしまうからね。考えなしの後方一手では、ホントこのレースはグダグダで負けることが多いよね。

菊池 レース自体のポイントはどこにあったと思いますか?

京介 それはもちろん、あの3~4コーナー下りの過程だと思う。ハロン12秒台に落ち込んだあのコーナー途中で、馬に脚を使わせずジワッと進出し、ワンチャンスで先頭を交わせる距離に近づく工夫をしたかというのが、今回の流れでは大きかったと思うよ。

京介 3着ジュールポレールの脚色を最後まで確認しても、止まっていない様子はあるんだよ。だからアドマイヤリードとの差がどこにあったのかを考えれば、あの3~4コーナーで他馬に付き合って仕掛けを待ち過ぎた差だと思うよ。

京介 阪神牝馬Sでは早仕掛けのように言われ、今回は仕掛け遅れのような負け方なのは皮肉になるけれども…。

菊池 では、上位馬を振り返りましょう。

アドマイヤリード

菊池 今回はマイナス4キロ。結構ギリギリに近い仕上がりに見えましたね。

京介 この馬自身は非常に良かったと思うよ。ただ、422kgと小ぶりのステイゴールド産駒を重賞勝ち多数の中に入れて見比べると、どうしても馬体の幅はないよね。ミッキークイーンだって相当薄い方だけれど、それよりも薄い。また、後肢が短いのも不安になってしまう。

京介 だけど、その脚が短いということが、スピード勝負ではマイナスになるけれども、他馬が脚を取られる悪い馬場や、スタミナ勝負になれば、完歩が小さくても素早く脚を回せるために活きるという部分があるのかも。

菊池 ルメール騎手も阪神牝馬Sと似ている重たい馬場だったから、自信を持てたと。

京介 その意味でも土曜日は恵みの雨だったし、日曜日もいい曇り方だったよね。土曜日の雨というだけでは、ここまで重馬場にはならないものだけれども。自分ももうちょっと回復するものと決めつけず、典型的重馬場予想をすべきだったなあ。

菊池 ステイゴールド産駒でマイル重賞勝利は久々じゃないでしょうか?

京介 いや、一応昨年の頭に京都記念でウインプリメーラが、そして昨年2月のアーリントンCでレインボーラインが勝っているね。でもここまでステイゴールド産駒のマイル重賞挑戦は延べ100戦以上もあって8勝、そのうち6つが2~3歳の世代限定戦でのもの。古馬マイル重賞は今回が2回目でG1は当然初めて。

京介 自分はグランシルクのこともあって、「古馬のステイゴールド産駒はマイルではスピード負けする説」を唱えているけれども、今回のような特殊条件は少し違うように見た方がいいのかな、とは考えたわ。

菊池 この馬は松田博資厩舎にいたころは400kgを割るひ弱な馬でしたが、須貝厩舎に移ってもしばらくは馬体重が増えず苦労していました。それが昨年9月のローズS以降、420kg台になり、そこからレースを使っても減らなくなっての快進撃です。

京介 それが逆に今回怖かったけれどもね。関東に赴いての長距離輸送。もちろん初めての輸送ではなかったんだけど、オークスに登場した時に一度ガッツリ減ったし、今回も4kg減。細かく見れば見る程、前日時点では消す要素が多かったからなあ。それを克服できたぐらい、体質が強くなったと見るべきなんだろうね。

菊池 須貝調教師はインタビューで秋華賞に向かう、なんておとぼけも出たぐらい舞い上がっていましたが(笑)、まずは滞在調整できるクイーンS、そしてエリザベス女王杯でしょうか。距離は持つタイプだと思いますか?

京介 東京2400mと比較するなら、京都2200mは大丈夫なんじゃないかな。体型こそ違うけれども、マリアライトもそのぐらい馬体が薄い根性タイプだったし、こなすかどうかで考えればこなせると思うよ。牡馬相手じゃなくて牝馬限定戦だから大丈夫だろう、という考えもあるけど。

デンコウアンジュ

菊池 この馬の激走にはたいそう驚きましたよ。パドック的にはどのような様子でしたか。

京介 飛節の折りがかなり深い馬なんだよね。それで腰はクタクタだけれども、後肢の歩幅が広い。おそらく小回りは苦手で、東京の長い直線だといろいろ難しい所がフォローできる大味な差し馬、ということでしょう。脚を早く回せないし、時計の掛かる馬場ももちろんプラスだったと思う。

京介 2走前はたしか大幅に馬体が増えていて、前回福島牝馬Sで輸送も含めて大きく減った。そしてこのヴィクトリアマイル。本来、ローテーションはかなり厳しい方だよ。だけど阪神牝馬Sの時がかなり悪かったから、大急ぎで使い込んで立て直したという形でしょう。でもやっぱり、「評価できる」とか「理想的な」ローテーションとは言えないよ。この時点でだいぶ見切るよね。ずっとスランプ続きだった馬を良くここまで持ち直せたな、とは思うけれど…。

菊池 レース内容も、蛯名騎手がレース後に言うほどスムーズではないんですよね。

京介 そう。まずスタート後態勢同時だった時に軽く挟まれている。大きくは後退しなかったけれども、直線に向いてミッキークイーンに外に振られたこともあった。それでも馬場の大外を回って蛯名騎手の必死の叱咤で、最後まで脚が続いたという内容。クラシック重賞では何度も不利を受けていた馬だけれど、今回もそれに近い不運はあったんだよ。でも今回は伸び返した。

菊池 東京マイル重賞勝ちがある馬で、その2歳のあとずっとスランプ続き。良い条件に戻った、とは言えますけれど…。

京介 近走のどこを探してもIDMで足りないし、伸びしろも感じ取れなかった。マイル重賞ならスピードまずありきで馬を見比べるし、この馬にはさすがに追い付かなかったなあ。追い切り抜群でもないでしょう。この芝の状態で全然苦労がなかったことが、大いに強みになったと考えたい。それにしても過去の文脈を読んで馬券を当てたい人にとっては、大事故だよなあ。

ジュールポレール

菊池 京介さんが週中に特注馬としましたが、パドックでも本命推奨でしたね。

京介 まず当日、「ミッキークイーン大丈夫か…?」と思ったことが最初。その上でこの馬は、パドック周回中ずっとチャカついていたのが気になったけれども、破綻するほどじゃあなかった。

京介 そして思った通り、かなり細いタイプの造りだったんだけれど、サダムパテックと通ずるパーツがかなりあった。繋のバネが非常に良いと思ったし、「馬場が回復しているなら」勝てていいと思ったんだよね。結局レース後に見直すと、馬場は相当悪いままと考えるべき場面だったのが残念だわ。瞬発力比べならこの馬が勝てるチャンスもあったと思う。

菊池 幸騎手はソツなく乗れていましたよね。折合も問題なかったと思います。

京介 だけど3~4コーナーの下り。あそこでルメール騎手はジワッと内を進んで4コーナーで追い出し始めているのに対して、幸騎手は3列目でジックリ我慢。そして、直線入口で4列目になって若干壁っぽくなっている。アドマイヤリードとの位置取りの差はそこから変わらず詰まらずという感じだった。あれを見ちゃうと、やっぱり仕掛け遅れだったなあと思ってしまうんだよ。ルメール騎手に上手く乗られた、というのは事実だけど、デンコウアンジュに追い付かないような事故を起こすなよと。

菊池 阪神牝馬Sとこのヴィクトリアマイルで、アドマイヤリードに先着できず。しかし京介さんは十分マイル路線で通用する、勝ち負けできる資質があると見ているんですね。

京介 そう考えているよ。間違いなく、重馬場適性があっての好走じゃあないしね。ちゃんと実力があって、噛み合わなかった3着だと思うし。

京介 ただ、この過程でだいぶ厳しくカリカリに仕上げた様子があるから、秋に向けて筋肉をつけ直すようにしてほしいね。この休みがどう出るのか、と思ってはいるよ。

その他

菊池 2着と僅差の4着がスマートレイアー、5着がソルヴェイグ。この2頭は、重賞複数勝利の馬が楽な流れで先行したら、ここまで残るよな、という結果でした。事前の読みでは、スマートレイアーが流れに乗って好走するという予想の人も多かったと思います。その通りになったんですけどね。

京介 スマートレイアー自身は、やっぱり本質変わらないんだろうね。東京マイルになると、あのポジションからあと一歩が出ず、競り負けてしまう。この馬の特性を生かす競馬じゃなく、流れを支配する単騎逃げの手で行かないと、勝つチャンスはなかったのかなあ。

京介 能力はあるにしても、もうさすがにこの後使うのは年齢的に厳しいなあ。どうするんだろう。一度も結果が出ないエリザベス女王杯を目標にするのも苦しいし…。

菊池 クイーンズリングは、デムーロ騎手が見事なレース運びだったと思います。あれは仕掛け早ではないですよね。

京介 周りが遅いラップを刻んでいる時に、急かさずジワッと進出して好ポジション、そして直線は先頭と叩き合いだからね。あれで負けるのは馬が悪いよ。マイル戦も合わないという主張があるけれど、今シーズンはちょっと、ベストの馬体ベストの仕上げになれてないように思う。

京介 絶好調のシーズンがあって、海外遠征やらタフな競馬を続け過ぎた反動があるかも。牝馬は難しいなあホント。

菊池 そしてミッキークイーンは、その後ろの7着でした。デンコウアンジュに交わされ、画面から消えたと思いきや、崩れてはいません。だけど伸びませんでしたね。

京介 一応、前半から4コーナーに出るまで大きな影響を与えそうな不利はなかった。そして直線で不利を受けた側でもない。当日もパドック周回から返し馬まで、不安らしい部分は見せなかったから単勝は1倍台で留まった。それでいてあそこから伸び負けるとはね。

京介 他馬に少しこすられた様子はあったし、直線で3度手前を替えたと言う話もあるけれど、今回は全然力を引き出せていなかったなあ。パドックは確かに、ベストではなくベター程度の馬体だったけれど…。

京介 この馬自身、中間ラップの速い、ハロン11秒台を最後まで刻むタフなスピード持久力勝負で強くて、長い距離の緩い速いのメリハリが大きい展開だと良くない。今回のように、12秒台から一気に直線で10秒台にギアを上げるレース展開で、適性外のところを初めて見せたということじゃないかなと。

京介 だけど、ここまで重馬場自体も苦にしていないし、むしろ前走阪神牝馬Sと同じぐらいの決着になる馬場でもあったし、弱点らしい弱点がなさそうな過程だと思えたのにね。「ヴィクトリアマイルは前走1着馬が勝てない」ジンクスが今年も起きた、ということなのかな。それだけ、牝馬が重賞を2戦続けて勝つことが、かなり難しいというのを示す事例なんだと思う。

京介 今回負けたからと言って、決して評価は下がらないけれども、ホントにヴィクトリアマイルはこういう負け方が多いな、と思ってしまうね。牝馬は万能に走るものと過信しちゃダメだわ…。

菊池 7番ルージュバックは後方を追走するのみとなってしまいました。大竹調教師からは、だいぶ騎乗ぶりへの不満もあったようですね。

京介 スタート後に左右から挟まれ、怯んで後退した様子があったと思う。その後、馬場の荒れ目が目立つルートは避けるけど、周りもみんな大外に持ち出す動きをするから、外に向かうアドバンテージが取れない。それで仕方なく、真ん中やや内を進むまま。最後までジリジリ伸びたけど上がり3位で10着か。

京介 でも大竹調教師は今回の作戦に関与しての文句なのかなあ?戸崎騎手はちゃんと徹頭徹尾馬場の悪いルートを避けて通っているし、指示通り乗っているんじゃないの?今日見た馬の気配もそんなに良くなかったし、どうせ他の陣営と似たような指示しか出せなかったからこうなったんじゃないの。

菊池 今回は爆荒れ配当になりました。骨っぽい牡馬相手、あるいは2000m以上の距離でも活躍していた格上と見られる馬が敗れ、内を突いた穴馬が上位独占した、ということなら、ちょうど10年前の2007年、コイウタが優勝した年を思い出しますね。

京介 あの時も、前走負けた馬が上位を独占。そして、前日の大雨から馬場が回復する過程にある状況だった。断然1番人気のカワカミプリンセスを負かすために、他の馬もだいぶ工夫をしていたのも一緒だね。

京介 中距離ズレしている差し馬は、どうもこのレースに来るとピント外れになりがちというのもあるけど、今回はミッキークイーンに他馬が注目しまくって、自由にさせないうちに早めに仕掛けた馬の出し抜けが決まったという部分は共通していると思う。

<教訓まとめ>


前走1着馬が全くと言っていいほど勝てないレース。2008年のエイジアンウインズ以来優勝がなく、1~3番人気どころか、注目されるとほぼダメ。超人気薄の馬の激走があるぐらい。それだけ、牝馬が短期間で適性の違う条件にまたがって連勝するのは難しいという事だろう。

・昨年度優勝した馬のリピート好走がない年は、今シーズン絶好調の馬を選ぶべき。パドックでの気配も違うし、何かしら良いパーツが必ずある。それを活かそうと騎手が工夫すれば実りやすい条件でもある。

・ミッキークイーンは阪神牝馬Sを完勝して今回上手くいかなかったが、やはり阪神牝馬Sは非常に良い最重要ステップ。使える脚を測るように乗ったパターンも重視すべきだし、デンコウアンジュのように大急ぎで立て直したことが実る形もある。

・昨年がよっぽどのラップだっただけで、基本的に追い込み馬には不向きなレース。馬場状態が微妙に見える時ほど、内枠か、自在に立ち回れるタイプを重視したい。

<次走巻き返し警戒馬>

<京介>
・ジュールポレール
…4コーナーから直線入口にかけての捌きは、明らかにモタ付いたものだと思う。軽い芝の方が向くタイプ、まともなスピード条件なら今回の上位馬に対し逆転できる。来年この条件で改めて期待したいのはこの馬。

<菊池>
・ウキヨノカゼ
…改めて好調は確認できたが、さすがに展開が向かず。道中、トボけ気味に追走するところもあるので、クイーンSあたりが適条件かもしれない。

・フロンテアクイーン
…上がり最速が示すように、一瞬は「おっ?」という感じもあった。この馬も適性ズレが大きかったので、コーナー4つの競馬で見直したい。

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菊池 では、今回はここまでです。今週末も2重賞なので、平安ステークス・オークスともに京介さんと展望していきます、よろしくお願いします。


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