菊池 日曜日の東京では、84回目の日本ダービーが行われました。こちらの回顧をしていきましょう。

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日本ダービー回顧



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<天候・馬場について>

菊池 まず、土曜日ですけども、金曜日が終日雨。思ったよりも降ったので、馬場に影響がありましたね。

京介 東京の芝が渋ると、中盤のアップダウンがかなり堪えるからね。それで追走で消耗してしまい、インベタに拘っていると惰性に乗れない。上がりが掛かっているから馬群の外から惰性をつける形がいいんだね。土曜日は間違いなくそういうパターンの競馬だったと思うよ。

菊池 土曜日の東京芝は全レースで8枠が1着だったことも話題になりました。

京介 そしてうってかわって日曜日。天候は気持ち、土曜日よりもさらに日差しの強さが増した印象。おそらく冷たい風が土曜日は多少吹き込んだんだけど、日曜日はそれがなくて、蒸し暑さを一気に増す真夏日のようになった。

菊池 予報より暑くなりましたね。

京介 これがもう、本当に暑かったんだよね。ちょっと日射病のようになってしまったし、パドックはホント蒸す中でのもので、風が思った以上になくて汗ダラダラ。パドック最前列は確保できたからいいにしても、朝から直射がずっと厳しくてねえ。500mlのペットボトル飲料を4本ぐらいは消費したかもしれない。来週からは濡れタオルも用意して靴も風通しの良いものに替えないといけないな。


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<パドックについて>

菊池 さて、今年の頂点を競った18頭ですが、率直にどう思われましたか?

京介 やっぱり今年は、大半の馬のお尻が小さい!そして背が低いよね。これから2400mを走るというのに、馬体のボリューム、歩幅、そしてコンパスやスケール感に乏しい馬ばかりで、今回勝ち負けを演じた馬もいくらか物足りなさを感じたほど。

菊池 レベル疑問が言われ続ける世代ですが、14年(1着ワンアンドオンリー)や08年(1着ディープスカイ)と比較すれば、平均点では今年の方が良いのかな、と思いましたが。

京介 うーん、でも皐月賞からしっかり良くなった馬が勝ち負けしたし、確かに好走する候補がいなかったとは言わないけど…。自分は、世代比較をしても、低い方の印象だと思っちゃうね。

菊池 昨年との比較で、低レベル言われ過ぎかなと。

京介 それはやっぱり、直近のイメージはどうしても強いし。レベルの高かった年にレベルを合わせたがるんだよ。レベルの高いとしても通用するなら今年なら勝ち負け、という計算を立てようとするからね。

京介 それにルメール騎手だって、何でサトノダイヤモンドだと負けて、レイデオロなら勝てるんだって話になるじゃない。良き前例があるから、比べられることや強く言われることは仕方ないと思うよ。

菊池 いや、それは良く分からないですけど…。

京介 まあ、結果を見直せば、ダービーはオークスよりも脚長が偉い!と感じる結果だったし、長い手足を広く振り回せることが強みになると改めて思った。そして、候補がいなさすぎでどうしようもない年ではなかった、とは結論付けておこう。

<レース展開について>

京介 ゲート入りは非常にスムーズだったね。7番アルアインと11番ペルシアンナイトがほぼ同時にゲートに入ったのが最初だけれど、奇数はものの15秒ぐらいだったし、最後の大外アドミラブルのみになるまで35秒掛からなかったんじゃない?慎重にアドミラブルを入れてスタートが切られるまで、46秒ぐらいか。

菊池 6番サトノアーサーが出遅れ、18番アドミラブルも出遅れ気味に後方からの競馬になります。4番スワーヴリチャードも発馬そのものは良くなかったですね。

京介 その他目立ったのは2番アメリカズカップ、微妙な遅れだったのが12番レイデオロと13番カデナといったところ。結局、翻って上位に好走した馬はみんなスタートで後手を踏んではいたんだよね。

菊池 スタートを決めて3番マイスタイルがスッとハナへ。5番クリンチャーは押しても行けず、ただし藤岡佑介騎手は、レース後のコメントほど押してないんですよね。割と早々諦めている様子でした。

京介 そうなんだよ。最初の上り坂ぐらいだよね。7番アルアインに前の進路を塞がれるように入られてからは、手綱を引っ張って行きたがる馬をなだめるのに専念していた様子。

菊池 7番アルアインがスッと前に出ますが、その外から8番トラスト。1番ダンビュライトは控えて内の4番手。外枠からは15番ダイワキャグニー、間に11番ペルシアンナイトが様子を見ながら1コーナーへ。

京介 1コーナーに進入する前、11番ペルシアンナイトは、目の前にベストアプローチ、外から17番ウインブライトに被されて包まれた。そこで頭を上げて反抗しているようだけれども、その数歩前から舌括りが解けてしまって馬が暴れているようだね。1コーナー手前のカメラだとウインブライトに隠れて良く見えないけど、ターフビジョン映像だと何かアクシデントっぽいのがあるのがわかる。

菊池 先頭から5番手あたりまでの隊列が決まるのは非常に早かったですね。1コーナー前にはすっかり先行争いに決着がついて、2コーナー。そのままの隊列で入って行くのですが、俯瞰で馬群を見ると、前の4~5頭に比べて、中団からがダンゴ状態。スローペースは明らかでしたね。

京介 この展開の進入はオークスとほぼ同じだよね。テンのダッシュ力で素晴らしい馬が皆無だから、内枠から慎重に先行する馬にみんな倣う隊列となってしまう。攻める気もないし、まずは一度落ち着いてリズムを整えてから、と思っている隙にペースが異常なほど落ちてしまうと。

菊池 3F目が12.9秒、4F目が12.8秒で、5F目は遂に13.3秒までペースが落ちました。3番手追走の7番アルアインあたりも、我慢は利いているものの行きたがり気味。

京介 2番手の8番トラストも掛かり加減だし、その後ろ固まった中団の馬も、騎手の肘にやたらと力みがあるように、だいぶ行きたがる馬が多かった。

菊池 3番人気の4番スワーヴリチャードは、5列目内。前から数えて7~8番手のラチ沿いにいました。その直後に6番サトノアーサー。その外に11番ペルシアンナイトがいました。

京介 明らかに出遅れたのに、スワーヴリチャードが追っ付けてもいないのにこの位置にいるんだから、内枠の有利はやはり大きい。ペルシアンナイトは、分割して細かく見ても、ずっと怪しい挙動を続けているね。

菊池 そして、12番レイデオロは、18番アドミラブルと差のない後方グループにいましたが、向こう正面の半ば。区間としては5F目の半ばあたりで、あまりに遅い流れを察知したC. ルメール騎手が促して一気にポジションを上げて行きました。

京介 これはもう、関係者だけじゃなく周りの騎手みんな驚いたでしょう。いくら遅い流れとは言え、ここで追っ付けたわけでもなくポジションを押し上げた胆力が凄い。藤沢和雄調教師はやめてくれよ、失神しそうになったと言っていたね。

菊池 動いたのが向こう正面、3角手前にある登り坂より手前の区間ですから、動いても坂のブレーキで上手く折り合える、といった考えもあったのかと思いました。

京介 あとから考えれば、「他の馬も動きにくく、出し抜けもしにくいタイミング」ではあるんだよね。この捲りが成功した一番の要因は、ルメール騎手はココで動き、他の騎手がそれを見てタイミング一つ二つ遅れながらでも仮に動いたとして脚を使うと、向正面やアップダウンの地形効果の関係で負担が掛かってしまうということ。

菊池 前半1000m通過は63.2秒。見ていて、だいぶ流れが遅いとは思いましたが、ダービーとしては異例の超スローペースですね。

京介 このペース自体は、自分は事前予想で完璧に読んでいたんだけども…。動けないものと思っていた馬が動いたなあ。

菊池 ルメール騎手が動いたのを見て、11番ペルシアンナイトの戸崎騎手も動いて3番手まで浮上していきました。ただし、ここが大きなポイントだと思うのですが、12番レイデオロが動いてからも、ペースは上がっていないんですよね。

京介 先ほども触れたけど、一度レイデオロが前で展開し、ペースを上げることなく流れに乗り切った部分で後ろの騎手が「まずいんじゃないか?」と感じて仕掛けたとすると、もう向正面後半の2mの坂が迫ってきてしまう。2コーナーから芝1400mスタート地点ぐらいはまだ緩い下り坂だから、「先に捲って動いたことが好判断」「相手を見て動くと無駄足を使い負荷も大きい」分水嶺だったわけだね。

京介 だから改めて見返すと、ルメール騎手はペースが遅くなりすぎた時のプランBかプランCぐらいまで、十分なほど戦略を練っていたんだということがわかる。陣営に大した相談もなく一人で。

菊池 そこからは大きな動きもないまま3コーナーへ。3番マイスタイルに手応えが残っていることが、いかにぬるいペースだったかを証明していますね。

京介 先頭の2頭-2頭-2頭の並びすらも変わらないままなのかよと。3列目ぐらいの騎手が押し上げても良かったのでは。でもやっぱり、本質的には馬の資質が低いのを実感していて、騎手には2400mの直線でバテない自信がないんだろうなあ。

菊池 4コーナーから直線入り口。4番スワーヴリチャードが無理なく外の進路を確保して、直線を待たずに前がきれいに開けていました。四位騎手おみごと、これは勝っただろう!と、正直思いました。

京介 馬群の内に拘っていたわけではないから、四位騎手は3コーナーから4コーナーに差し掛かる下りの緩い坂で、上手いこと脚を使わせずにポジションを上げているんだよね。

菊池 4番スワーヴリチャードが少し外にヨレて、7番アルアインは軽くアオリを受けてましたね。で、見直すと向こう正面の時点でもそうだったようですが、11番ペルシアンナイトは舌括りがハズレてしまっていたのでしょうか。顔のあたりでプラプラしていました。

京介 今回はペースが4コーナー通過でも遅かったから、馬群全体がスピードにあまり乗れていないし、コーナーをタイトに回ろうとする騎手の意識も強かったはず。アルアイン自身も、直線の立ち上がりで内に切れ込むように回っていたためもある。接近しすぎたために、寄られるように見えた。微妙な不利だけれども、この立ち上がりのブレで1馬身半差を付けられてしまった。

京介 ペルシアンナイトの口元から伸びていたヒモのようなものは、どうやらハミ芯や手綱などではなくて、舌括りがほどけてしまったものだということで。

菊池 手綱だったら乗っていられませんし、ハミだとしてもレースを続けられないですね。

京介 レース後過怠金もなかったし、真相はそういうことだったようだね。それでも口にくわえているものがプラプラしてしまったら、どうしたって気になってしまうけれど。で、それの根本原因があの1コーナーで立ち上がりかける場面で暴れた時のものだった、とのこと。

菊池 4番スワーヴリチャードは仕掛けて懸命に迫りますが、12番レイデオロは坂を上がるまで手綱を押して促しつつも、スパートはしていませんでした。つまり、待つ余裕があったんですね。

京介 むしろレイデオロはソエが影響して膝下があまり前に広く伸びない、省略気味の走りをするから、ロングスパート戦ではなく、直線のみ3F加速勝負になったことで脚の速さが活きたと思う。序盤に動いてからここまでおよそ600~800mほど猶予があったわけだから、序盤にポジションをリードして息を入れ直したことが、ここまで余裕を残せた勝因だと言ってもいい。

菊池 そして、坂上、12番レイデオロが仕掛けると、もうひと伸びしたかのような脚で突き放し。4番スワーヴリチャードは差を詰められなくなります。

京介 もうこの時点で、4コーナーで好位にいて追って伸びない馬がだいぶ置かれている。ハロン比較で道中12秒後半、直線10秒台の瞬発力発揮区間で勢いに乗れていない馬は圏外と見えるムード。

菊池 2頭のデッドヒートはゴールまで続きましたが、12番レイデオロが振り切ってゴール。3着争いは、内で懸命に粘った3番マイスタイルを、大外から上がりの競馬だけになった18番アドミラブルが交わして3着。

京介 アドミラブルはラスト600mでも真ん中より後ろで先頭とは4馬身ぐらい差があった。それでここまで詰めたのは馬の力だし、東京競馬場の直線の長さだね。逆にマイスタイルは完全に力を出し切った、しかも相当恵まれた末の4着だと言える。

<結果を受けて…>

170528ダービー結果

菊池 勝ち時計は2分26秒9。良馬場での開催としては、異例の遅い決着時計になりました。

京介 ちゃんとラップを見直しても、あのルメール騎手の捲りが起きてもそれほどペースが上がっていない。もし急に展開が動くほどの乱ペースになったのなら、後方で控えている馬にもチャンスはあったんだけれど…。それは他力本願が条件だった馬と、自ら動いて出る性能があった馬との差となってしまったね。

菊池 色気を持った馬もいたとは思いますが、そもそも走破力に自信が足りないから動けなかったともいえそうな。

京介 だけど、マイスタイル自身にそもそも速いラップを刻んで行ける性能がなかったことにも着目すべきじゃないかな。あの場面で交わされてしまったら現実問題仕方がない、下手につつくのはやめてくれよ…と願いながら逃げていたんじゃないの。あそこは完全に主導権がルメール騎手にあるから、やはりかわいがってくれたことでの恵まれが大きかったと見ておきたい。

菊池 同距離の8R青嵐賞で2分23秒8の好タイムが出て、しかもそのレースが前残り決着でしたから、時計そのものは出る馬場状況だったんですよね。ひとえに、ペースのせいでこうなったと。

京介 さっき菊池君が言っていたように、先導役に2400mを走り切る実力がないというのもまずあるよ。そして、この距離で結果を出した馬でも、自由自在に中盤からペースをかく乱し、自分好みの展開に持ち込めるわけではないと。今回感じたのは、東京2400mって思ったほど道中仕掛けて行けるポイントが少なく、仕掛けの制約がかなり多いコースだな、というのは感じたね。

京介 特に、クリンチャーに騎乗していた藤岡祐介騎手。果たして、あの流れでどうできたのかはさて置くとして、東京2400mではどういう仕掛けで馬を勝たすやり方があるのか、5パターン以上答えられるものなのかな?ひょっとしたら脚を溜めて直線勝負以外の答えを持っていないんじゃないか。それも思う所があるんだよ。

菊池 では、上位馬を振り返りましょう。

レイデオロ

菊池 ぶっつけ参戦の皐月賞を叩いて2走目。今回の仕上がりはいかがでしたか?

京介 前回は背中がコケてお尻も薄く、そして今回は背中や張り艶が若干マシになっていてお尻はまだ薄いまま。若干は良くなっていた。だけど、前脚にコブのように尖っているソエ固まりが気になってしょうがないし、調教でもパドックでも膝下の出が硬い。

京介 馬の仕上がりとしては上向いているんだけれど、パドックは1頭だけ最後尾で周回しているし、返し馬も先入れで歓声が少ないうちに行ったんだよね。

菊池 不安を感じさせる材料が多かったですね。

京介 返し馬先入れって、本来はダービーだとずっと消しで良いパターンなんだよ。だいたいぶっ飛ばす逃げ先行馬に多いパターンだった。気性的にも難しい、臆病っぽい部分がある馬は、やはりダービーでは評価したくないよなあ。フットワークも本領発揮とは言えなかったと思う。

菊池 パドックでもけっこううるさい面を出していましたよね。

京介 そうだね。でもダイワキャグニーのように、パドックを出ていくまでずっとうるさいまま、というわけではなかった。一応落ち着いて周回した時もあったし、適度な興奮程度ではあったよ。

菊池 レースでは思ったほど掛からず。故にルメール騎手も積極的に動けたということでしょうか。

京介 結局、パドックの大観衆の近くであっても何とか落ち着かせることに陣営が専念させて、それが良い形で実ったという事ではあるんでしょう。さらに、ルメール騎手の折り合い技術がそれを下支えできたと。

京介 それと同時に、テン乗りだった戸崎騎手がルメール騎手に食らいつこうとして、脚を上手く溜めきることができなかったし、まさか舌括りがほどけるという不運もあるとは。結構長いスパンを通して見直すと、デビューからずっと騎乗を続けていたルメール騎手だからこそ、「大一番での脚質転換」が大成功したわけだし、それを実現できる確信を持てたというのも指摘したい。

菊池 なるほど。乗り替わりだったペルシアンナイトとは、ある意味で対照的で。

京介 戸崎騎手もあの場面で動いたのは相当な度胸だよ?1コーナーで不利っぽい挙動があって、なお「あそこで動かないとまずい!」という総合判断ができて、落ち着かせられているんだから。それもテン乗りで。だけど連続騎乗している騎手じゃないと、そういうのは実らないんだなあ。

菊池 今回に関しては、馬以上に、人の勝利というか、ルメール騎手の凄まじい好騎乗だったと振り返りたいと思っています。

京介 まず、馬としてはむしろこの状態でダービーを勝てたんだから、脚元が固まって馬体の幅が見違えるほど良くなる可能性もあるし、非常にプラスに考えられる勝利だったと思うよ。ただし、適性距離は2000m以下かなあ。

京介 そして今回のルメール騎手の「良き場面での早捲り」は後年ダービー騎乗を再検証する際の立派なお手本になると思う。つまり、レースの序盤から差し馬が展開を動かしても良いと騎手が認識し始めるし、それに連れて今後ドスローのダービーは死滅する可能性もあると思う。

スワーヴリチャード

菊池 皐月賞から12キロの馬体減でした。これについては、色々な意見が出そうですね。個人的には皐月賞より大きく良化していたと思ったのですが。

京介 個人的には、皐月賞を緩めて出したぐらいの印象があって、こういう過程を経るならダービーは無理と思うぐらい気配が薄かったんだよ。だけど今回は、こちらの想像以上にバランス良く整っていたね。本当に良かった。今日は肉付きもしっかりして、緊張感があるために馬体の幅が増えて見えるような姿勢をしていた。

京介 飛節の折りが深いままなのが、どうしても気になったんだけどね。だけど滑らかにあるけていたのはいい。単純パフォーマンス自体も、皐月賞よりはるかに良いでしょう。

菊池 この馬も立ち回りは完璧でしたね。道中はインで我慢して、4角では絶好のポジションを確保。勝ったと思いました。

京介 そう。何より、他の騎手が動いていない時に進路を探しつつ仕掛け始めて、直線の坂上になっても脚が続いている。4F近くちゃんと仕掛けていたのは、この馬ぐらいだったんじゃないかと。

京介 これも騎手がデビューからずっと連続で騎乗していた強みと言えそうだね。馬の走りのピークを、そして脚を使い切った後の動きまでわかっているからこその、他よりチョイ早な仕掛け。

菊池 さて、秋ですが、やはり皐月賞からダービーに替わって一変したように、左回りが良いと。そうなってくると、神戸新聞杯・菊花賞は、いずれも広いコースなのは良いけど、天皇賞(秋)→ジャパンCというローテも出てきそうです。

京介 この馬もあんまり長い距離でパフォーマンスが上がる方じゃないしなあ…。内枠を引いた運を最大限に生かした、という評価が妥当。今回敗れた馬より、確実に上だなんて言えないよ。

アドミラブル

菊池 まずは、中3週続きというローテが心配されました。パドックで疲労やデキ落ちを感じるような面はありましたか?

京介 いや、背中の緊張感はかなりしっかりしていた。歩様が窮屈なのは毎度のことで、手先のバネはちゃんとある。ただやっぱり、パンパンの良馬場で繋が立っている馬は、脚の使い方が難しいよなあ。脚元に何か悪いものが出た、ということはなかったよ。

菊池 個人的には、僅かながら青葉賞よりも良化していると見てとれたことに驚きました。

京介 うん、そうだね。少なくとも下がるという事はなかったよ。音無厩舎もダンビュライトよりはこっちが本腰入れた仕上がりだったしなあ…。

菊池 青葉賞とは真逆の展開、3秒も遅い決着時計。フルゲートの大外枠など、かなり不利な材料が揃ってしまった中で、上がり最速を繰り出して3着を確保。世代ナンバー1はこの馬と見ていいんじゃないかと思ってしまいますが。

京介 デムーロ騎手は先週のオークスと一緒になってしまったね。一工夫あるかな、と考えはしたんだけど。流れが最後まで向かないまま、2400m向きの長く良い脚を最後に使って3着。そして不利な材料が多いと予想はされていたし、おおむねその悪い方に転んだ、納得の結果だった。

菊池 動くに動けない展開でしたね。秋は神戸新聞杯から菊花賞という王道ローテでしょう。距離延長はそこまで不安材料とならなそうですか。

京介 自分は青葉賞の反動が中期スパンで出たりしないものか、脚元が気がかりだね。しっかり休養して、回復できるよう祈っているよ。やはり出世が遅れたから、効率が良いとはいえ上位馬よりもキツキツのローテーションだったから。

その他

菊池 4着はマイスタイル。横山典弘騎手のマジック炸裂、といったペースメイクで、見事3着争いに加わるまで至りました。

京介 ただし、レースを分析し直すと、向こう正面で押し上げた際に、ルメール騎手の折り合わせる技術が確かだったから、あの押し上げた場面でペースを上げられずに済んだとは言える。

京介 横山典弘騎手の勇気と胆力があっての超スローとはなったけど、同時にその流れを覆す他の騎手の動きがほぼなかったし、ミスをして何ら力を出せない馬も大半だったからね。

菊池 アルアインは5着。松山弘平騎手からは自責のコメントが出ていますが、上がり勝負で分の悪いこの馬ですから、結果としてはもう少し積極的に仕掛けても良かったかもしれませんね。なかなか難しかったとも思いますが。

京介 でもまあ、個人的にはだいぶ腰が甘くなってないか?とは思ったんだよね。ルメール騎手の位置なら勝負になったと思うけど…。

京介 それに、松山弘平騎手が皐月賞を勝たせたわけじゃなく、松山弘平騎手は皐月賞をアルアインに勝たせてもらったということが、これでハッキリしてしまったね。自分のペースでなくなってきた際の場面で、自由自在意のままにこの馬をコントロールしていたわけではなかったから。

菊池 ペルシアンナイトは口元のアクシデントもあって、7着に敗戦といったところでしょうか。

京介 先ほども触れたけれど、あの場面でルメール騎手の捲りに即応した判断は、初騎乗だったら相当素晴らしいとほめたたえていいと思うんだよ。勇気もあり、この場所じゃダメだという危機感もあったし。

京介 だけど口元のアクシデントだけじゃなく、唐突に自分の意図しない挙動をいきなり起こすから、ダービーは初騎乗だと不利なんだな、と改めて思わせたね。まず、展開をリードすることが無理。そして、いくら馬の性能が高くても、ペースダウンさせたい場面で上手くやれない。

菊池 今回は、騎手がかなり結果を大きく左右した印象があります。横山典騎手が展開を仕切って、ルメール騎手は上手くそのペースを利用。正攻法で好騎乗を見せた四位騎手。

京介 その通りだよ。展開予想、ペース予想は1200mぐらいまでは自分の想定通りだった。その隊列予想が、ハズレ騎手と有力騎手とで大幅に変わったというだけだったんじゃないかと。

京介 おまけに、過去のレース全て追い込みの競馬しかしていないレイデオロが、全く過去に試していない騎乗をここ一番で見せて、しかも成功させるという胆力がホント素晴らしい。

菊池 普通はできませんよね。ダービーで。日本人には無理だなぁ。田原さんとかならやれたのかもしれないですけど。

京介 これって、騎手の想像力の方が、一般の展開予想のはるか上を行っているということだよね。「レイデオロはルメールだから信じられる」という予想を打つのは可能かもしれないけど、「レイデオロはルメールだから捲る」という予想はないわ…。過去に成功、実証できていないことを根拠にしないと、追い込み馬がこの遅い流れを打ち勝つという考えに至れないからねえ。

菊池 一方、然るべき位置を獲れず、自分の競馬をできないばかりかレースを動かせなかった藤岡佑介騎手。良い位置を獲ったのに、欲張ったのか?仕掛けなかった1番ダンビュライトの武豊騎手。

京介 そうそう、勝ったルメール騎手にばかり目が行くけれども、相対的に4~6頭ぐらいの馬が完全に頓死したからこそ、騎手判断のプラスが光るわけで。

京介 「本来の積極策で行けなかった」「本来の力を出しそびれ、挙句本来のスピードを発揮させる場面すらなかった」という馬が、何頭かこの遅い流れにハマってしまったのがあるから恵まれた、活かせた馬が出てくる。そして、日本人騎手の大半は、自分で攻めていくポジションにいることを良しとせず、馬のリズムを狂わすペースでも乗りこなし、克服しようとする。自分が最初に動くことでのアドバンテージを知らず、勝利に導くための手順にやたらと拘る。その過程で、自分が納得できるハードルが異様に高いから、世代1位の馬に乗った時以外は、毎度動き出しでミスを起こすんだね。

菊池 今回みたいなペースで動いて、途中でもう一回折り合わせて、って、日本の競馬では考えられない発想ですよね。藤沢調教師の「やめろ」って気持ちもよく分かる…。

京介 宮本博調教師の奥さんが藤岡祐介騎手の騎乗に思う所あって、レース後コメントをNetkeibaに見に行ったら有料だったから見に行くの諦めたというくだりはちょっと笑ってしまったわ…。

菊池 なにそれ(笑)。

<教訓まとめ>

・超スローになる要因としては、前哨戦でペースを先導した逃げ先行馬がみないなくなったことが直接的には大きい。今年のオークスと同じ。だからこそ、今年のルメール騎手が早捲りで成功したという事が、来年以降のダービーの展開を変える要因にならないかと期待している。早くに動いても大丈夫なんだと騎手に気付いてほしい。

ダービー初騎乗となる騎手は、確実に過去の履歴通りの騎乗をするしかない。そしてデビューから長く乗り続けている連続騎乗がプラスとなるのは、今回のような展開読みに悩む年だからこそ。馬のことを知り尽くしているからこそ、ここ一番での騎手の弱点克服や、過去の履歴にない奥の手を切ることができる。情報戦においては大きな強みになる。

いろいろあったが、結局推定上がり1~3位の馬がワンツースリー。東京コースで良い結果を残していることや、皐月賞で全く流れに乗れず直線だけで差を詰めているタイプは、皐月賞であまり見所がなさそうに見えたとしても評価すべきということだろう。

<次走巻き返し警戒馬>


<京介>
・クリンチャー
…腹袋どっしり見せて肉付きは一番良かった。返し馬でも全く気配に問題なし。それでも騎手の力がなさすぎて、まるで能力を発揮できなかった。ポテンシャルはあると思うので秋に注意。神戸新聞杯は注意したい。

<菊池>
・ダンビュライト
…道中、何もせずに不向きな上がり勝負で、そりゃそうだろという敗戦。何もしていないので、ダメージも軽微なはず。続戦求む(ルメール騎手でラジオNIKKEI賞)。

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菊池 では、今回はここまでです。今週末も2重賞なので、鳴尾記念・安田記念ともに京介さんと展望していきます、よろしくお願いします。


【 6月3日(土)14:00~ 】


【 6月4日(日)09:50~ 】