産業競争力強化法は、今月度例会テーマの予習として経産省のHPで目を通したことはありました。ただ、同法の支援対象は起業に始まり、ベンチャー支援、規制緩和による事業化検証、先端医療機器や3Dプリンターへの投資やリース活用の促進、大企業も含む事業再編まで経済活動全体をカバーしていそうで、今一つ全体像がつかみづらくそれ故理解も進んでいませんでした。

というわけで、内容理解は中村氏の発表でと決め込んでいたのですが、例会当日は局地的な豪雨で電車がストップ。会場への到着は20時を回ってしまい、中村氏の発表はすでに終わっていました(涙)。
当日の参加者の声も「この施策は理解が難しい」ということでしたので、皆さんも私と同じことを感じたのかなと思いつつ、トボトボ会場を後にした次第です。

そんなこんなの無念晴らしに、当日のレジュメとネット検索で概要把握を試みました。ここでは、その把握過程で感じたことを雑感として書きたいと思います。

産業競争力強化法の目的は?

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同法は、コトバンクによれば、「アベノミクスの成長戦略を具体化するための法律」とあります。中村先生のレジュメも日本再興戦略-Japan is BACK-として、過少投資、過剰規制、過当競争の三つの歪みを根本是正することが目的として挙げられています。

創業はとにかく創業率を高めることの一点に尽きると思います。国の施策もこの点でブレは無いように見えます。グローバルな産業競争力という意味で、ベンチャー起業の促進に寄与する大学の関与度Upやベンチャー投資の促進も視野に入っています。また、国内の過当競争がグローバル化の障害になるという見方から、事業再編によるグローバルな市場での競争強化や事業効率の向上による新たな企業価値創造への布石などが想定されています。

これらに加えて規制改革も実証的に進められようとしています。企業単位の規制緩和や現行規制への抵触有無のスピーディに判断です。これにより新しい事業への進出を加速しようという施策です。「物流に用いるアシスト力の大きいリヤカー付電動アシスト自転車の公動走行」や「電気自動車用普通充電器の設置促進」などが例として挙げられています。

もう一つの規制へのチャレンジ

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私にとっては規制へのチャレンジといえば、ヤマト運輸の宅急便事業が真っ先に思い浮かびます。

故小倉昌男氏は郵便の届くところならどこでへでも翌日届けるという、ビジネスのコンセプトをとことんまで追求したビジネス・モデルを創る一方で、旧運輸省や旧郵政省との規制緩和に立ち向かうことで現在の宅急便という新しい産業を作り上げました。 そして、その土台の上で時間帯指定配送やクール宅急便への展開が始まるのです。

これが現在のネットビジネスの隆盛につながっていることは誰もが知るところです。
小倉氏の行ったことは「規制緩和」の前に「既成概念の緩和」でもあったように思います。
商業用の運輸事業が市場や規制の基本概念だったところに、家庭への配達というビジネスヒントと、そのヒントをビジネスコンセプトとして成立するまでに磨き上げたことが「既成概念の払拭」であったといえるのではないでしょうか。

小倉氏の経営本「小倉昌男の経営哲学」日経BPに、もう一つ面白いことが書いてあります。それは同書の第一話に書いてある次の一文です。

「自分がやるしかない」と先頭にたち、経営の旗振りを続けているうちと、いつの間にか老害が忍び寄る。

この言葉は意味深いものがあります。「老害とは過去への囚われ」とも言えると思います。
次の経営者にとっては「創業者規制」ともいえるもので、精神的な「私的規制」につながるとも言えるのではないでしょうか。日本の多くの創業経営者や事業の礎を作った経営者は、無意識のうちにこの「私的規制」を次の経営者に課してしまうために、過去の否定も新たな成長の軸への着手に躊躇しているのではないかと思うのです。
加えて、このような状態が続くと、新しいことを考えること自体を忘れてしまうという悪循環です。

行政規制を「公的規制」というなら、この緩和を通して新たなビジネス・モデルを生み出すには、「私的規制」の緩和が必要なのではないかと思い立ちました。コトバンクの解説の結びで、次のような批判があることをコメントしています。

産業界の再編や成長産業の育成などは民間企業や市場原理に任せるべきで、政府がむやみに介入すべきではないとの根強い批判がある。

既成概念を緩和(払拭)することで初めて、「規制緩和」が大きなビジネスチャンスにつながるのではないでしょうか?

2016.9.3 山下記