日本企業の国際競争力の低下が議論されるようにってずいぶん経ちますが、そういう中でも粉飾決算、データねつ造、過労死、パワハラなど企業や仕事の魅力低下を感じざるを得ない報道はあいかわらず絶えませんね。

そういうわけで、当ブログでは遵法経営の価値 について継続的に 考えてみたいと思います。

遵法経営のもっとも大きな利点は、問題やトラブルは小さいうちに摘み取るという事につきるように思います。企業内のいたるところで起きる、小さな負の出来事や行為を小さなうちに方向修正をすることの繰り返しが、それを放置した時に起きる爆発的なトラブルを回避することになると考えるとわかりやすいのではないでしょうか。

世の中には、最初に軌道を外れたときはちょっとしたミスだったことが、後に引けなくなるということはよくあることです。某自動車会社の燃費計測における不正も、私自身内部にいた者ではありませんので実態は分かりませんが、ちょっとした軌道外れを長年軌道修正せずに来てしまったのではないでしょうか。気づいた段階ですぐに修正(公表と謝罪)をすることで、「信頼の置ける会社」になれるチャンスはあったのに、そのチャンスを逸したばかりか、軌道修正の先送りが会社そのものの存亡すらも危うい事態を招く不祥事になってしまったという文脈なのかもしれません。

他社との競争上の不利や目先の事業成績への影響を考えると、ここでゲロするのは避けたいという事はよくありますし、気持ちもわかります。顧客や世間が理解してくれるという保証もありませんので、社内の「対策会議」では公表しない方にほとんどの票が入ります。そして公表派のあなたは孤立するばかり、だんだん自信もなくなっていきます。

ある企業の競争力は その 企業が持つ サービスや製品の 相対的な市場競争力によって決まるものと 考えられています。これは、市場における成功が続く限りは成功が全てを覆い隠すので、小さなごまかしや利益至上主義的な行動はそれほど問題にならない側面もあるので、ある意味否定はできません。ところが、つもりに積もった小さな負の資産は、マーケットでの優位性が少なくなり競争力が拮抗して来ると、少しずつ企業を致命的な事態に近づけように働く事があります。

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「ブラックスワン」のタレブ氏は自然界は不安定なものなので、それを許容しないと壊滅的なことが起きると言っています。このことは人為的な人間社会でも言えることなのではないでしょうか。人間は失敗するものだからそれを許容して修正の機会を与えないと、隠ぺいやごまかしが始まり、それが積もることによって、その先の壊滅的な事態が待っていると。

ここまでやや比喩的な展開をしてきましたが、技術やサービスの優位性は市場における競合他社との相対的競争力ですが、遵法性はその競争力が生まれる思想を形成する絶対的競争力と言えるのではないでしょうか。その価値観は共有·伝承されるべきものであり、この能力が組織に備わることで、より堅固な競争基盤が作られるのだと考えています。遵法経営の力は、商品開発や経営上の意思決定のように結果が総てを覆い隠すことなく、価値基準とプロセスによってもたらされると言えるではないでしょうか。

市場競争に飲み込まれることによって、遵法性をはぐくむ要素の一つであるプロセスが失われることはよくあることのようです。「勝つためには止むを得ない」という、小さな軌道はずれに対して修正の力が働かなくなることと、それに気づかなくなるからではないでしょうか。 (2016.10.16 山下記)