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企業法務に詳しい弁護士に、時事通信社がインタビューしたWeb記事に目が留まりました。一連のデータ改ざんや品質不正発覚などに関する、日本企業のガバナンスについての記事です。

なぜ、何十年もやってきたことが、ここにきて立て続けに不正行為として発覚したのかという質問にし対して、社会のコンプライアンス意識の急速な高まりを要因としてあげています。記事は、その上で以下のように述べています。JIJI.COM「社外取締役の活用を」より引用
現場は経営陣が関心を持たないところで、やりやすいように変えてしまうもの。 有効なチェック機能が効果を発揮するようにするには、コンプライアンスがしっかりしていないと利益を上げても意味がないという仕組みを社会が構築することが必要。 
経営トップは、自分の考えを示したうえで、悪い情報でも上がってくるようにするべき。 
再発防止策として、社外取締役の強化が必要である。 
経営トップは、自分に異議を唱えるような社外取締役を選任し自社の情報を提供する。 
社内情報の収集しやすい環境整備する。 
記事の中の「現場」をどのレベルでとらえれば良いのかについては、今一つわかりませんが、総論としては同意しつつも、末端の現場は、勝手に何かを変えることはないのでは?という思いも持っています。以下、コンサルタント的に考える、日本企業が検討すべきコンプライアンス対策の方向性を示します。

ちょっとした不正やミスが、組織的不正の芽として根を張る理由の一つ

現場の担当者が、一時的には「この問題を何とかごまかしたい」「ここは、不正をしてでも乗り越えたい」と思うことはあるはずです。しかし、そのような行為を、担当者の一存で、しかも「誰もが納得する形」で実行し続けるすることは、原則的にはできるものではないということが、私の考えの根本にあります。

ここで、あえて「誰もが納得する形」でとしたのは、一次的な個人的なごまかしや不正は、それをグループや組織として黙認または追随するだけのムーブメントには、簡単には、できないという意味です。つまり、何らかのグループとしての合意形成またはそう仕向けるための「納得性」が必要になると考えるからです。

ここでいう、「納得性」とは前向きな理解だけでなく、ある圧力に屈して従わざるを得ないと判断する、後ろ向きの「納得性」も含みます。

多くの場合、グループ内での協議や直属の上司へのエスカレーション(いわゆる報連相)があって、そこで何らかの合意形成をするということになります。人は、自分に降りかかるリスクには敏感なものです。多くの場合、そのようなリスクに対しては、何とかして回避しようと思う意思が働きますので、この意味でも権限のない人間が一人で不正行為を抱え込むことは、本能的にはない(きわめて少ない)と言えます。

そのエスカレーションがどこかで、止められてしまうことが現実的な問題の一つです。 止める理由はいろいろありますが、例えば責任者の保身などもあるでしょう。基本的に、「社内情報の収集しやすい環境整備」とは、この「エスカレーションの分断」を「エスカレーションの連鎖」に変えることが本質的課題です。

コンプライアンス問題の芽に気づき、早々に摘み取るには

この本質的な課題の解決策は、つまるところ経営者の聴く耳の鍛錬がすべてではないでしょうか。経営者が聴く耳を持たない態度をとっていると、その態度は社内感染につながることが多く、「聴く耳を持たない連鎖」が経営ヒエラルキー全体に広がってしまうわけです。これが、いわゆる「風通しの悪い」状態をつくる一つの原因です。

かくして、企業の現場には聞く耳を持たない中間管理職がはびこることになります。これでは、いくら社外取締役に情報を提供しようにも、提供する情報そのものが存在しないということになりかねません。

では、不正の防止に効果的な施策は何かです。 これは、すでに述べたように、エスカレーションが途中でストップしない状況を作ることです。そのためには、経営者には、是が非でも聴く耳を持っていただきたいものです。「よくぞ言ってくれた」「教えてくれてありがとう」の態度が、スムーズなエスカレーションの連鎖を作るのではないでしょうか。

経営者に忠告できるのは経営者自身の気づきしかありません。したがって、経営者自信が現場に足を運ぶことで日常的に直接耳を傾けるのが一番だと思いますが、専門家にコーチングを依頼して、そういう雰囲気を意識して作り出すことも効果的だと思います。

昨今は、中小企業の事業承継が大きな課題になっていますが、社員とのコミュニケーションの良さを、次世代を担う経営者の資質の一つとして加えることは言うまでもありません。

それほど、企業にとっての経営者の存在がは重要であるということではないでしょうか。  その上で、具体的な活動としては、当経営法務研究会が推進している、予防法務の仕組みを事業運営の要素に組み込むことも大切です。

当経営法務研究会では、人に依存しない業務システムの構築や、「罪人作らず」の仕組みづくりについてのセミナーや、経営の仕組みづくりを提案していますので、興味があればぜひお問い合わせください。(2018.10.21 山下記)