January 15, 2019

平成301214日、自民・公明両党により平成31年度税制改正大綱が公表されました。

税制改正大綱は、あくまでも税制改正案ではありますが、政権与党(自民党・公明党)により取りまとめられたものであり、ほぼそのまま可決されることが多いものです。


主な内容は以下の通りです。
一部、意訳を交えて。


<基本的考え方>

・少子高齢化を前提とした社会保障の確立、財政健全化のために消費税率10%への引き上げを確実に行う
→過去
2度の延期はあったが、今回は必ずやります!

・一方で、平成264月に消費税率を8%に引き上げた際には駆け込み需要の反動で景気が落ち込んだため、そういったことが起こらないよう対策を行う
→過去の反省をちゃんと踏まえますよ!

・研究開発は、我が国の経済成長にとって非常に重要なものであるため、研究開発税制を見直し、より優遇する

・深刻な人手不足に直面している中小企業を支援するために、積極的な設備投資を促す措置を講ずる

・税収が大都市部に偏っていることから、それを是正するための措置を講ずる
→政権与党の地方票を意識した施策が見え隠れ

・仮想通貨取引やインターネットを通じた仕事の請負による所得についても、きちんと課税されるような措置を講ずる

 

<法人税関連>

1.研究開発税制

従来にも増して試験研究費の増加を促すため、総額型(試験研究費の総額に対する税額控除)の税額控除率が見直されます。

具体的には、試験研究費割合が0%~8%の場合には税額控除率が増加し、△25%~0%の場合は税額控除率が減少することとなります。

また、この総額型について、研究開発を行う一定のベンチャー企業(設立10年以内で、翌期繰越欠損金がある法人)の税額控除限度額が当期の法人税額の40%に引き上げられます(従来25%)。

 

オープンイノベーション型(国の研究機関、大学等との共同研究やそれらに委託して試験研究を行うもの)について、税額控除の対象となる特別試験研究費の範囲の拡充が図られます。具体的には、一定の要件を満たす企業間の委託研究に関する費用が加えられることとなります。

研究開発はどんどんやって下さい!という意味が込められています。

 

2.中小企業に関する税制優遇措置

中小企業者等について、年所得800万円以下の部分に適用される法人税の軽減税率15%(本則税率は19%)の適用が2年間延長され、2021331日までに開始する事業年度までとされます。

また、中小企業者等が設備投資を行った場合の優遇措置(一定の税額控除や特別償却が認められるもの)についても2年間延長され、2021331日までの間に事業の用に供した資産が対象となります。

なお、いわゆる「みなし大企業」の判定における大規模法人の範囲が拡大することにより、中小企業者の範囲が縮小されることになります。具体的には、大規模法人の支配下にある孫会社も中小企業特例における中小企業者から除かれることになります。

 

<所得税関連>

1.住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の特例の創設

前回の消費税率8%への引き上げの際に、様々なものの価格が一斉に上昇し、大きな需要変動が起りました。そこで、住宅については需要変動の平準化のために、2020年末までの消費税率10%が適用される住宅取得等について、住宅ローン控除の期間が3年延長され、13年間となります。

11年目から13年目については、以下のいずれか少ない金額の控除を受けることができます。

・住宅借入金等の年末残高×1

・住宅の取得価格(税抜)×2%÷3

駆け込み需要や消費税引き上げ後の消費の冷え込みを抑える目的があります。

 

2.空き家についての譲渡所得の特別控除の拡充・延長

現行では、被相続人が老人ホーム等へ入所したことにより、被相続人が住んでいた住居が相続開始直前において空き家になった場合、空き家に係る譲渡所得の3,000万円の特別控除の特例は適用できませんでした。

改正案では、被相続人が老人ホーム等に入所したときから、相続開始直前まで被相続人による一定の使用がなされていることなどの要件を満たせば、相続開始直前において被相続人が住んでいたものとして、特別控除を受けることができるようになります。

また、当該特別控除の適用期限が4年間延長され、2023年までに行う譲渡について適用が可能となります。

 

3.ストックオプション税制の拡充

ストックオプション税制(株式会社の取締役等が一定の要件の下、新株予約権等を行使して株式を取得した場合に、所得税の課税が株式の譲渡時まで繰り延べられる、いわゆる「税制適格ストックオプション」)について、その適用対象者に「特定事業者」が追加されます。

特定事業者とは、中小企業等経営強化法に規定する認定新規中小企業者等(仮称)が、同法の規定する新事業分野開拓計画(仮称)に従って活用する取締役及び使用人等以外の者(新事業分野開拓計画(仮称)の実施期間の開始の日から新株予約権の行使までの間、居住者である等一定の要件を満たす者に限る)をいいます。

 

4.ふるさと納税制度の見直し

ふるさと納税制度の健全な発展に向けて、全国各地の地域活性化に繋げるため、過度な返戻品の送付を送付し、制度の趣旨を歪めている自治体については、制度の対象外とする措置が講じられます。

寄附金の募集を適正に実施し、返礼品の返戻割合を3割以下、かつ地場産品としている場合に限り、ふるさと納税の特例控除が認められることとなります。

これは以前から議論されていたところですが、一部の自治体が返戻割合の非常に高い返礼品を送っていたり、換金価値の高い返礼品を送っていたりといった状況について、ふるさと納税の趣旨を逸脱していると批判されたことから設けられた措置です。


<相続税・贈与税関連>

1.個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度の創設

非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予制度の特例に準じて、個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度が創設されます。

これは、10年間の時限措置として認められるもので、都道府県に承認計画を提出することを要件に、特定事業用資産(先代(被相続人・贈与者)の事業(不動産貸付事業等を除く)の用に供されていた土地、建物等で青色申告書の貸借対照表に計上されているもの)の相続・贈与に係る相続税・贈与税が猶予される制度です。

 

2.特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の特例の見直し

小規模宅地等の特例についての特定事業用宅地等の範囲が見直されます。具体的には、相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等については、特例の対象から除外されることとなります。

ただし、当該宅地にて事業の用に供されている減価償却資産の価額が、当該宅地の等の価額の15%以上である場合は除かれます。

 

3.非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の要件緩和

非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度(被相続人から非上場会社の株式又は出資を相続又は遺贈により取得した場合に、一定の要件の下、当該非上場株式等に係る相続税の納税が猶予・免除される制度)について、現行では資産保有型会社等に該当した場合、直ちに納税猶予は取消されることとなっておりますが、一定のやむをえない事情により資産保有型会社等に該当し、6カ月以内に該当しなくなった場合には、納税猶予の取消事由に該当しないものとされます。

 

<その他>

1.仮想通貨関連(法人税)

法人が期末に保有する仮想通貨について、その評価方法および譲渡した場合の譲渡原価の算出方法が明確化されます。

活発な市場が存在する仮想通貨については、時価評価により評価損益を計上するものとされます。また、譲渡原価の算出方法については、移動平均法または総平均法による原価法とされ、法定算出方法は移動平均法による原価法とされます。

 

2.仮想通貨関連(所得税)

仮想通貨の取得価額の算出方法について、現行は移動平均法が相当であり、継続適用を条件に総平均法を用いても差し支えないとされておりましたが、改正後は移動平均法又は総平均法により算出するものと定められています。



keisuke_nagaikeisuke_nagai at 12:36│コメント(0)税金 | お知らせ

October 17, 2018

本日10/17「これ1冊で十分!ドクターが知っておくべき税金の知識」を出版させていただきました!

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会計事務所を立ち上げて9年、数多くのドクターの先生方とお話しさせていただきました。ドクターが税金についてどんなところに疑問を持ちやすいか、どの部分を解説すれば理解していただけるかという観点から易しく書いてみました。

本書出版のきっかけは、ドクター向けの税金の本は数多く出版されているものの
・難しいことばで書かれているものが多い
・節税ばかりが取り上げられている
・クリニックの開業を考えているドクター、開業医、病院経営者を相手にしている書籍が多く、勤務医を対象とした書籍は少ない
・著者の事務所(会計事務所など)の宣伝的要素が強い書籍が多い
・同様の理由から開業や医療法人化をやたら勧める内容の書籍がある
と感じたためです。

本書は偏りなく、易しい言葉で難解な税金のルールなどを解説することに重きを置いています。また、単に税金の説明だけでなく、租税教育的な内容とするため、租税法の基本的考え方、脱税をした場合のペナルティなど
についても触れました。さらに、開業医のみならず勤務医の先生にも役に立つ情報を盛り込みました。

ぜひ手に取っていただければと思います!

中央経済社ホームぺージ

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keisuke_nagaikeisuke_nagai at 23:25│コメント(0)お知らせ | 税金

January 18, 2018

ここ数日仮想通貨の暴落が止まりません。
要因としては中国、韓国における規制強化の懸念などが挙げられていますが、期待のみに支えられていた仮想通貨のリスクが露呈した数日でした。

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昨年中は高騰が続いたため、今回のように年明けに暴落すると納税資金が確保できない!といった方も多いかと思います。今回はそんな方へのヒントのための記事です。

先日のブログ、ビットコイン等の仮想通貨にかかる確定申告でも書きましたが仮想通貨によるもうけは、基本的には「雑所得」に分類されます。雑所得とは平たく言えば副業によるもうけをいいます。そして、雑所得は副業の種類ごとに申告するわけではなく、全て合算して申告することになります。つまり、仮想通貨による所得は他の副業の損失、例えばフリマで生じた損失と相殺(通算)することができます。
昨年一年間のご自身の活動をよく振り返ってみて下さい。なにか副業と言われるようなことはしていませんか?メルカリで転売を行った、アフィリエイトをやっていた、クラウドソーシングで少し仕事を請け負ったなど。それらで損が出ていれば、結果として仮想通貨による所得と相殺することができます。
ただし、FXや株での損失とは相殺できないので気を付けて下さい。

以上、少しでも節税のお役に立てればと思います。



keisuke_nagaikeisuke_nagai at 11:03│コメント(0)税金 | 仮想通貨

December 29, 2017

平成291214日、自民・公明両党により平成30年度税制改正大綱が公表されました。
税制改正大綱とは、確定したものではありませんが、ほぼこのまま改正されることになります。

冒頭の基本的考え方では、
・富裕層の課税をより強化すべきであること
・企業に賃上げを促すべきであること
・円滑な事業承継を促すべきであること
・国際的な脱税を取り締まるべきであること
などが記されています。

<法人税関連>

企業経営にとって重要な改正案を以下挙げます。

1.所得拡大促進税制
一定額給与を増やした企業について認められる税額控除の制度ですが、この適用要件が簡素化されます。
具体的には一人当たり平均給与について、
中小企業では1.5%以上、大企業では3%以上増加させることにより税額控除を受けることができるようになります。税額控除の金額については、給与総額の増加分の15%とされます。

2.情報連携投資等の促進に係る税制の創設
青色申告を行っており、活用計画の認定を受けることを要件として、5,000万円以上の一定のソフトウェア等を取得した場合には、特別償却または特別控除を受けることができる制度です。
5,000万円以上の資産が対象なので、大企業が中心となるかもしれません。

3.交際費、少額減価償却資産の特例の延長
交際費損金不算入制度が2年延長されます(中小企業は年間800万円まで損金算入が認められます)。
また、中小企業者が30万円未満の減価償却資産を取得した場合(年間総額300万円まで)に全額損金算入できる制度についても2年間延長されます。

4.大法人の電子申告の義務化
大法人の税務申告について、電子申告(e-Tax)が義務化されます。電子申告を行わなければ無申告とされるため、注意が必要です。

<所得税関連>

1.給与所得控除の見直し
サラリーマンなどの給与所得者に認められている給与所得控除が一律10万円引き下げられます。また、給与所得控除の上限についても、給与収入850万円超の場合に195万円が限度とされます。

2.基礎控除の見直し
基礎控除(あらゆる人に認められている所得の控除)が一律10万円引き上げられます。一方、合計所得金額が2,500万円を超える場合には、基礎控除はゼロとされます。


3.青色申告特別控除の見直し
青色申告特別控除(青色申告を行っている個人に認められる控除)が10万円引き下げられ、55万円とされます。ただし、電子申告(e-Tax)を行っているなどの要件を満たすことにより、現行と同じ65万円の控除を受けることができます。


<相続税・贈与税関連>

1.事業承継に関する相続税・贈与税の納税猶予制度
先代経営者から引き継いだ非上場株式に関する納税猶予制度が使いやすくなります。納税猶予対象となる株式が発行済株式総数の100%となり、猶予される税額も100%に引き上げられます。

2.一般社団法人に関する相続税・贈与税の見直し
一般社団法人に関する相続税・贈与税の課税が強化され、一般社団法人の役員が死亡した場合に、同族役員数が役員総数の過半数となる場合には、一般社団法人に相続税が課税されることとなります。

3.小規模宅地等の特例の見直し
いわゆる「家なき子特例」の要件が見直されます。
相続人が、
3親等以内の親族または特別の関係のある法人が所有する家屋に居住したことがあれば、特例を受けることができなくなります。



以上、税制改正大綱を簡潔にまとめました。
詳しくは是非大綱をご覧ください(自民党のホームページに全文が載っています)



keisuke_nagaikeisuke_nagai at 17:22│コメント(0)税金 | ビジネス

December 06, 2017

ビットコイン等の仮想通貨の高騰が止まりません。
年初に11万円程度だったビットコインの価格は137万円程度まで高騰しています(2017年12月6日現在)

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「仮想通貨を購入して多額の利益が出てしまった」といった方が多く、確定申告に関するご質問も多いため簡潔にまとめようと思います。

1.仮想通貨の売買による損益
(売却価格-取得価格)の金額が雑所得となります。マイナスが生じた場合、つまり損失となった場合は雑所得以外の所得と通算(相殺)できず、また翌年度以降に損失を繰り越すこともできません。この場合、雑所得はゼロとなります。
ただし、個人事業主が仮想通貨により生計を立てている場合は事業所得となり、給与所得、不動産所得等の所得と通算することができます。
なお、雑所得は20万円以下であれば申告する必要はありません。

所得の種類、通算、申告については以下同様です。
(以下、仮想通貨の売買・使用による損益を「所得」と表現します。)

2.仮想通貨で商品を購入した場合(仮想通貨の使用)
例えば50万円のものを1ビットコインで購入し、その1ビットコインを過去に40万円で購入していたとすれば、50万円-40万円=10万円が所得となります。一旦仮想通貨を売却し、その現金でもって商品を購入したという考え方です。

3.ある仮想通貨で他の仮想通貨を購入した場合
例えばビットコインでイーサリアムを購入した場合、現金化していないため所得は生じないとも思えますが、一旦ビットコインを現金化してその現金でもってイーサリアムを購入したと考えなければなりません。よって、この場合、購入したイーサリアムの時価(その時点での現金ベースでの価格)からビットコインの取得価格を控除した金額が所得となります。

4.仮想通貨を複数回に渡って購入している場合の取得価格
取得価格の算定にあたっては移動平均法または総平均法によるとされていますが、移動平均法は売却または使用の都度計算しなければならず、面倒なので、年末にまとめて計算できる総平均法がよいかと思います。

なお、総平均法の計算も面倒という方については、今年に入ってから仮想通貨の取引を始めたという場合のみですが、年末にすべて現金化してしまえば、(年末現金残高-当初投資額)でもって簡単に所得を計算できるためそのような方法がオススメです。

5.仮想通貨の分裂
ビットコインからビットコインキャッシュが分裂し、ビットコインキャッシュを取得した場合のように売買によらずに他の仮想通貨を取得した場合、その他の仮想通貨を売却または使用した場合のみ所得が生じることとなります。
その場合、他の仮想通貨は無償で取得したことになるので、取得価格はゼロです。

6.仮想通貨の証拠金取引
証拠金を積んでレバレッジを利かせた取引を行うことができる取引所が存在します。いわゆるFX(外国為替証拠金取引)に類似していることから、申告分離課税となるのでは?という考え方が存在しますが、通常の雑所得として扱われます。
よって、総合課税となり、給与所得等他の所得と合算し申告することとなります。

7.仮想通貨のマイニング(採掘)
マイニングをされた方はほとんどいないかと思われますが、マイニングにより取得した仮想通貨の時価から必要経費を引いて所得を計算します。

8.必要経費の扱い
雑所得を計算するにあたっては、必要経費を所得から控除することができます。
例えば、取引所における売買手数料、仮想通貨に関する書籍代・セミナー代などが典型例です。これらを漏れなく集計することが節税につながります。

以上、仮想通貨にかかる確定申告のまとめでした。



keisuke_nagaikeisuke_nagai at 12:36│コメント(0)税金 | 仮想通貨