2012年06月17日
梅津と梅津天満宮の由来（2）福津市
(前回（1）からつづく)梅津天満宮（福津市渡字梅津）の前には溜池や田畑は見えるが、外海（玄界灘）は見えない。
この溜池から下方に見える田畑地帯は、勝浦（桂）潟の入海の端部で、ここに深さのある船泊まり（津・港）があったと想像している。
当初、平安時代前中期頃、中央政争に破れた菅公（菅原道真）太宰府下向時、菅公が乗った船が暗闇になかを勝浦潟の入海に迷い込んだのだろうと解釈していた。
しかし、｢梅津天満宮の由来｣を読むと、菅公の乗った船（御座船）が遭難したのは、外海（玄界灘）側の梅津沖・梅津浜（白石浜）のようである。
これでは、当時の梅津に、勝浦潟の入海があり、森山（梅津天満宮後背の山）から海ノ中道が始まることを示す話にはならないが、梅津浦の漁師集落があったことを示す話にはなる。
（ただし、菅公上陸当時の集落名が梅津浦であったら、梅津の地名は、菅公の梅に係わるものとはいえなくなる）。
ただ、「梅津天満宮の由来」とよく似た伝説が、かつて津屋崎（福津市）天神町に鎮座し天神町の地名の由来になったという「蓑笠天満宮」（「火乞天神」ともいう）にもあり、真偽のほどは今一分からない。
この「蓑笠天満宮」は、津屋崎の波折神社境内に遷宮した「天満宮」のことだというが、今も同町内に天神社があり、また渡（津屋崎潟沿い）にも天満神社があり、当地方には天神（天満）信仰が広がる何らかの事象があったのだろう。
「梅津天満宮」の拝殿外壁に掲示してあった細筆字書きの長い「梅津天満宮の由来（田中香苗氏撰）」を下記に転記する。
このぎっしりとつまった由来文を現地で読むのは、なかなか至難というほかない。（なお、一部誤字は訂正した）。
「菅公は温厚な学者ですぐれた政治家でもあったので59代宇多、60代醍醐天皇の信用が厚く右大臣に任せられた。時に藤原時平はその上位の左大臣であった。時平は道真公の異常の出世を妬み、醍醐天皇にざん言した。天皇はこの時平の言に惑わされて遂に延喜元年（901年）1月25日菅公に謀反人として太宰権帥に左遷され1月27日には領送使も発令された。
゛東風（こち）吹かば匂ひおこせよ梅の花
あるじなしとて春な忘れそ��
自邸の梅花に別離を惜しむこの歌一首を残して道真公は幼い隈麿、妹の紅姫と門弟の味酒安行だけを同行せられ、同年2月1日京の都を立たれ難波（大阪）の河内、道明寺に伯母の尼君とつきぬ名残に一夜を明かされ、ここから海路、瀬戸内海を経て早鞆瀬戸（門司）、響灘（若松芦屋）-鐘ヶ崎（宗像）-志賀島-荒津（博多）と進み、上陸して太宰府到着という航路になるのであるが、突然の航海はことに心細いものであるから海神に安全を祈られたことであろう。梅津沖の嵐、当地梅津浜の沖合で御座船は激しいみぞれにあって、かがり火は消え、暗やみになり航行不可能となっているところを漁船が漕ぎすぎようとしたのを見て領送使が「この船は右大臣菅原道真公の御座船で故あって京の都より筑紫の太宰府にお越しになるのであるが暗やみしなり難渋いたしおるので、かがり火を譲り受けたい」と所望した。その内に嵐となり船は砂丘に乗り上げ今にも転覆しそうになったので集まってきた梅津浦の漁師たちにより御船に着座のまま砂丘を乗り越え避難させ御船に着座をつないだので「天神杭」の田字として残り又砂丘を「船越」その隣接の字を「梶ヶ原」と言いいずれも舟にちなむ地名として残っている。ぬれながら下船された菅公と幼い二児は付近の漁家へ御休憩になられた。その夜にかぎって一番鶏が聲高々と鳴いた。その時は一番鶏の鳴き響きが出発の時刻であった。菅公は昨夜来の漁師達の志を感せられ身につけていた蓑と笠を浜辺で見送りする漁師の一人に与えられた。それから2年後の延喜3年（903年）2月25日配所の榎寺で持病の脚気と精神的苦悩と物質的欠乏とにさいなまされ59才にて逝去されて安楽寺（今の太宰府天満宮）に葬られた。後に無実の罪が晴れ太政大臣正一位を追捕された。この事を伝え聞いた梅津の漁師たちはその神徳を仰ぎ蓑と笠を御神体として天満宮を勧請した。世にこの社を蓑笠天神または火乞天神ともいい梅津に祭られている。宗像郡津屋崎町郷土史研究会 田中香苗撰」。
※参照｢渡（津屋崎潟沿）の天満神社｣→｢内浦の天満宮の由緒を想像(福津市渡)｣。
※つづく→「白石浜〜勝浦浜の砂浜海岸（福津市）」。
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