2016年05月18日

日銀は日本人の価値観を理解していない

私はこれまで3年以上、黒田日銀の金融政策は間違いなく失敗するだろうと様々な媒体で申し上げてきました。その主な理由としては、以下の4点にまとめることができるでしょう。

①円安により企業収益が増えたとしても、実質賃金が下がるため国内の消費は増えない
②円安が進んだ割には、企業は輸出単価を引き下げないので、Jカーブ効果は期待できない
③中小企業の労働分配率はすでに高水準にあるので、トリクルダウンなどという現象は起きようがない
④世界経済は2005年~2007年当時と比べると、2013年の時点で欧州や新興国を中心に低迷している

そもそも「インフレ期待」の失敗の底流には、以上の理由は別にして、その理論そのものが日本人の価値観と相いれない特徴を持っているということがあります。その点については、『経済はこう動く〔2016年版〕』の204~205ページの文章を引用したうえで、補足を加えさせていただきたいと思います。

(以下、『経済はこう動く〔2016年版〕』より引用)

私から言わせれば、とりわけ日本人に「インフレ期待」を求めるのは、そもそも大きな間違いであると思われます。米欧社会の価値観では、「インフレになるのであれば、預金していると目減りしてしまう。だから株式を買おう。お金を使ってしまおう」という考え方が、100歩譲ったとして、21世紀型のインフレ経済でまったく成り立つ可能性がないとはいいません。

しかし、それはイソップ童話の「アリとキリギリス」でいうところの、キリギリス的な発想です。平均的な日本人の価値観では、決してそう考えることはありません。日本人は「インフレになるのであれば、今から節約して生活防衛を心掛けよう」と考えるからです。いわば、アリ型の国民なのです。「インフレ期待」どころか、「インフレ失望」が働きやすいお国柄なわけです。

今では、アベノミクスの実質的な失敗により、インフレ期待がまがい物だったことが一般の人々にも理解できるようになってきています。おまけに、日本社会の高齢化が進み、貯蓄を取り崩す年金生活者が増えている中、穏やかなデフレのほうが暮らしやすいと考える人々が増え続けてきています。

そんなわけで、原油安によってデフレになるのは、国民経済にとって好ましい状況であるというのは、新しい経済の捉え方として常識になっていくでしょう。「原油安が誤算だった」と説明する日銀の目指すインフレには、いったい何の意味があるのか、私にはまったく理解しようがありません。日銀の黒田総裁は意固地にならずに、いい加減に日本人の価値観を理解する必要があるのではないでしょうか。

(以上、引用終わり)

企業がグローバル化に成功するための秘訣は、進出した先での徹底した現地化にあります。徹底した現地化においては、進出先の国の歴史、宗教、哲学、文化、価値観、ライフスタイル・・・そういったものすべてをそのまま、ありのままに受け入れるということが前提となります。たとえ自分の価値観とは相いれないものがあったとしても、すべてをありのままに受け入れる努力こそが、今のグローバル競争には欠かせないわけなのです。

実体経済を動かしているビジネスの現場では、こういったことが当たり前であるのに対して、経済学の理論では、すべての国々の人々が同じように行動するはずだという幻想が未だに信じられているようです。クルーグマンは自分の誤りを認め、「金融政策ではほとんど効果が認められない」と襟を正しましたが、クルーグマンの持論を最大の根拠にしたリフレ派の学者たちは意固地になりすぎて、軌道修正をできないままでいます。

日銀の金融政策は破綻に向けて、一歩一歩近づいているといえるでしょう。マイナス金利は経済全体で見れば副作用のほうが多く、愚策以外の何物でもありません。現代の経済システムでは、金利は必ずプラスになるという前提で構築されています。マイナス金利はまったく想定されていないため、これから数々の副作用が経済を脆弱な状態へと貶めてしまうリスクが高いのではないでしょうか。

※多忙につきまして、久しぶりの更新になりました。ご理解いただければ幸いです。

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keizaiwoyomu at 09:04|この記事のURL金融政策分析 

2016年04月08日

円高と株安が止まるタイミングはいつか

当ブログの3月2日の記事では、3月下旬まで日本株が下がらない見通しについてタイトルだけで触れましたが、その内容を明かしてしまえば、要旨は次の4点に集約されると思います。

①GPIFやゆうちょが3月末までは株価を買い支える
②4月には買い支えの反動が心配される
③G20の結果、為替介入は難しくなった
④円相場はやはり105円をターゲットにして進む

4月に入れば参議院選挙を意識した公的資金の買い支えはなくなるので、その反動が来ることは十分に予測できたことであるといえるでしょう。

実際に、海外の長期投資家は円相場の水準の割には株価が買い支えにより高かったので、ここぞとばかりに現物株を大量に売っていた一方で、海外の投機筋は4月に買い支えが入らなくなるのを見越して、先物への売り仕掛けを自信を持って着々と進めていたのです。

要するに、政権による株価の買い支えは海外投資家に絶好の売り場を提供しただけでなく、円相場との関係で株価が大きく歪む原因をつくってしまったというわけです。

海外投資家がこういった株価の歪みに注目しないはずがありませんので、4月の株価下落は当然のこととして起こったといえるでしょう。

しかし私は、このまま株価が下がり続けるとは予想してはおりません。なぜなら、今のところ株価はボックス圏相場にあるからです。トレンドが転換しない限り、2016年は買うタイミングが2回~3回、売るタイミングも2回~3回あると考えられるのです。

円高と株安が止まるタイミングがいつ来るか、2月の時ほどピンポイントで判断するのは難しいですが、4月中旬(来週)~5月中旬のあいだに1回は反転するのではないかと見ております。

(関連記事)
円高はいったいどこまで進んでしまうのか(2016.2.12)
〔2016年版〕:株の安全な買い方:3つのポイント(2016.3.28)

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2016年03月28日

政治家は経済をもっと勉強したほうがいい

上場企業が史上最高益を更新しているのにGDPがなかなか増えていかないのは、GDPの6割を占める個人消費が落ち込んだままの状態にあるからです。2015年10-12月期の個人消費は年率換算で304兆円にすぎず、GDPが大幅減となった消費増税直後の2014年4-6月期の305兆円よりも少ないのです。政府は「景気の緩やかな回復基調という判断は変わっていない」といいますが、これは国民に対して日本経済の本当の状態を偽っているといえるでしょう。

国会の論戦で野党のアベノミクスに対する追求が緩いのは、野党議員が押しなべて経済の本質を捉えることができていないからであるように思われます。昨今の経済は新しいパラダイムで捉える必要があり、経済構造の変化に目を向けなければならないにもかかわらず、そういった認識を持っている野党議員は皆無であるのではないでしょうか。だからこそ、安倍首相に都合のいい数字だけを並べられると、「その数字の捉え方は、明らかに間違っている」と、明確な根拠を示して反論することができないのでしょう。

この続きは、3月27日更新の『中原圭介の未来予想図』でどうぞ。

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2016年03月18日

海外投資家が3月第2週に史上最高額を売り越せたわけ

投資部門別売買状況によれば、海外投資家は3月第2週に1兆1932億円を売り越し、統計開始以来、史上最高の売り越し額を記録しました。

日経平均株価は2月の安値14865円から3月には17000円まで戻してきていたため、海外の長期投資家から見れば、絶好のポジション調整の機会が再び訪れたと映ったことでしょう。

私も3月初めからの株価上昇の局面で、海外投資家の売り越し基調は変わっていないと見ておりました。しかし想定外だったのは、たった1週間で1兆円を超える金額を売り越していたということです。

普通に考えれば、日本株の売買代金シェアの7割を占める海外投資家がわずか1週間で1兆円超も売り越すようなことがあれば、日経平均株価は少なく見積もっても1000円超は下落しているはずです。ところが、3月第2週の日経平均株価は300円弱しか下落しませんでした。

これは一体、どうしてなのでしょうか。

この続きは、3月18日更新の『ヤフーファイナンスのコラム』でどうぞ。

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2016年03月09日

原油価格はボックス圏相場に突入

原油価格が1バレル100ドル前後で推移していた頃、私は拙書『シェール革命後の世界勢力図』(2013年6月・ダイヤモンド社)において、「原油価格は3年後には半値の50ドル割れまで進むだろう」と予測しました。

さらには、『石油とマネーの新・世界覇権図』(2015年8月・同社)においては、イランの経済制裁が解ければ、シェール革命並みの激震が走るという見通しから、「原油価格は30ドル時代に突入し、価格の長期低迷が続くだろう」と価格の予測について踏み込みました。

実際に、WTI原油価格は今年の2月に26ドルまで下落し、昨夜時点で一時は38ドルまで戻してきていました。2月中旬の安値に比べて45%も上昇していたわけですが、ここのところの価格反騰の要因はみなさんもご存知のように、産油国が増産凍結に向けて協調しようとしているからです。

ところが現実には、たとえイランを除く産油国間で増産凍結が決定できたとしても、供給過剰の状態が解消されるということはありません。イランは経済制裁の解除後、すでに50万バレルの増産を決定していますし、今年中には100万バレルの増産を目指しています。

その一方で、米エネルギー省によれば、米国の原油生産量は今年末には日量850万バレルを下回るといいます。昨年と比べて日量100万バレル程度が減少する計算になるというのです。今後も原油価格が30ドル台で推移するとすれば、米国の減産分はイランの増産分で相殺されてしまうわけです。

現時点で世界の原油市場は200万バレルの供給過剰にありますが、産油国間の増産凍結にイランが加わらなければ、原油価格に与える影響は極めて限定的にならざるをえないでしょう。そのうえ、米国の原油在庫は過去最高の水準にあり、在庫が減少するには1年~2年の時間を要すると見られているのです。

それでは、イランが増産凍結に協調すれば、原油価格はロシアやサウジアラビアが望む60ドル台に戻るのでしょうか。

事態はそんなに甘くはありません。仮にイランが増産凍結に参加して原油価格が40ドルを上回ったとしても、40ドルを上回る水準では米国のシェール企業で増産に転じるところが多くなるからです。

シェールオイルの産出量が最も多いバッケン地方では、大半の油井の生産コストが40ドルを下回っており、30ドルを下回っている油井も少なくありません。多くのシェール企業は原油価格が安い間は生産を減らし、価格が回復したら増産を再開するという機動的な生産体制を敷いています。

ですから、原油価格がある程度上向いたら、すぐにシェールオイルの増産が始まり、それが需給バランスを悪化させて、価格上昇はすぐ頭打ちになってしまうわけです。

そのように考えると、原油価格は当面、「25ドル~45ドル」あるいは「25ドル~50ドル」のボックス圏相場に入ったと考えることができるのかもしれません。

(お知らせ)
3月12日の講演を聞いて下さる方へのお願いとして、基礎的な知識として次に取り上げる記事を読んでおいていただけると助かります。1時間という短い時間でかなり駆け足気味にお話しするため、あたまの中に為替と株価の予備知識が入っていると理解力が深まるものと思われます。

やっぱり2016年は円高トレンドの1年になる(2015年12月30日)
オイルマネーが戻らないと2万円超えは困難(2016年1月7日)

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2016年03月02日

3月下旬は株価が下がらない見通しについて

「3月下旬は株価が下がらない見通しについて」ですが、海外の長期投資家は「中国の減速」が蒸し返されることを懸念していたので、2015年の8月から今年に入ってからもずっと世界各国の株式を売り続けています。とりわけ、先進国のなかでも昨年の株価上昇率が高かった日本株は、2月に入ってからも海外の長期投資家の執拗な売りを浴び続けているという状況にあります。

海外投資家の日本株の売り越し額は、今年の1月が1兆555億円、2月が第3週までで1兆5899億円となっていますが、日本株にとって何が問題であるのかというと、海外投資家のうち長期の投資家が日本株を昨年8月から一貫して売り続けているということなのです。日経平均株価の推移を見ていると、2月末になっても海外の長期投資家の戻り売り圧力が強い状況にあるといえるでしょう。

海外投資家の売りがここまで徹底している大きな一因には、「中国の減速」に加えて、「欧州の金融システム不安」という新たな悪材料が浮上してきたからに他なりません。もともと欧州の金融市場では、・・・

この続きは、2月29日配信の『経済展望レポート』でご覧になれます。

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keizaiwoyomu at 07:02|この記事のURL市場予測 

2016年02月25日

海外投資家は今の日本株をどう見ているのか

海外投資家は株式の売り買いの判断をする際に、市場の大きな流れを決定づける可能性がある「投資アイデア」を重要視しています。実のところ、欧米の海外投資家は想定される投資アイデアに基づき戦略を構築すると同時に、その戦略を発動するタイミングをあらかじめ決めている場合が多いのです。要するに、彼らの投資パターンは非常に単純なものが多いというわけです。

ですから、欧米の投資家にとって2015年初めにおける前向きな投資アイデアには、主に「ECBの量的緩和」や「日銀の追加緩和」の二つがあり、それらのアイデアがひとつずつ現実化するたびに、先進国の株式市場を買い進む動機づけになるだろうと考えられていました。とりわけ先進国のなかで2015年の日本株の上昇率が際立っていたのは、それらの投資アイデアに加え、「GPIFによる買い需要」や「成長戦略でのROE重視」、「円安による企業収益拡大への期待」など、積極的に買い進むいくつものアイデアが重なっていたためといえるでしょう。

この続きは、2月25日更新の『中原圭介の未来予想図』でどうぞ。

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2016年02月18日

2016年の株式投資戦略について

2016年の金融市場では、拙書『中原圭介の経済はこう動く〔2016年版〕』および当ブログの2015年12月10日以降の一連の記事で書いた予測がほぼすべて起こってしまいました。

私が米国の利上げ後に『経済展望レポート』等で述べた日本の株式市場の見通しは、主に次の3つの要点にまとめることができると思われます。

(1)2015年の9月以降、海外の長期投資家が減少する一方で、ヘッジファンドなどの短期筋の割合が増えたために、短期的に株価の振れ幅が大きくなり、その大きい振れが1年に何回も繰り返される可能性が高まっている。

(2)欧米の長期投資家は株式市場の先行きに明るい見通しを持っていない。中国リスクがいつ蒸し返されるか警戒しているため、むしろ2016年以降もポジションを縮小してくる可能性が高い。

(3)2016年の日経平均株価は2015年と比較すると、高値と安値を切り下げてのボックス相場に入る可能性が高い。

当初から私は、2016年の株式投資戦略を具体的に提示するのは、非常に難しいことであると考えておりました。ある程度は円高トレンドに絡めた戦略でよいのかもしれませんが、株式市場はそれだけでは推し量ることができない複雑怪奇な市場であるからです。

そこで、大雑把な予測をもとに基本的な戦略を立ててから、金融市場の動きに応じてその都度修正していくという手法を取りました。現時点までの戦略の流れは、時系列に並べると以下の通りになります。

( 1/1~1/28 の戦略)
日経平均株価の安値が17000円、16000円、15000円の3つのケースを想定して、買いを入れていく。

( 1/29~2/8 の戦略) ※1/29は日銀がマイナス金利を決定した日
17500円を超えた水準では利食いを入れる。

( 2/9~現時点 の戦略)
日経平均株価の安値が16000円、15000円、14000円の3つのケースを想定して、買いを入れていく。17000円前後(明日以降、16500円に引き下げる可能性もあり)では利食いを入れる。

3/12の投資戦略フェアEXPO2016における講演「2017年までの経済トレンド分析と投資戦略」では、実体経済や金融市場のトレンドを予測するだけでなく、なぜ以上のような戦略を立てるに至ったのか、その思考の流れなども解説したいと思っております。

なお、講演を聞いて下さる方へのお願いとして、基礎的な知識として次に取り上げる記事を読んでおいていただけると助かります。短い時間の中で駆け足気味にお話しするため、あたまの中に予備知識が入っていると理解力が深まるものと思われます。

米国の利上げで壮大な「経済実験」が始まる(2015年10月26日)
中国の本当の成長率は3%程度にすぎない(2015年10月30日)
「原油安のデフレ好感」が日本の新常識になる(2015年11月9日)
やっぱり2016年は円高トレンドの1年になる(2015年12月30日)

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2016年02月12日

円高はいったいどこまで進んでしまうのか

昨年の12月に当ブログや連載、書籍等でも予測してきましたように、米国の利上げをきっかけにして、年初からの円高傾向が鮮明になってきています。

多くの識者の方々の解説を伺っていると、円高進行の原因を「世界経済への先行きへの不安」や「地政学リスク」などと答えているようですが、そのような不安やリスクはすでに昨年の秋口から顕在化していたので、これらの解説は後付けの講釈にすぎないといえるでしょう。

端的にいえば、円高トレンドに転換した本質的な要因は、ドル円相場に大きな歪みが生じていたところに、米国の利上げが引き金となって、その歪みを修正する動きが起こるのは当然であるという話に過ぎなかったのです。すなわち、海外の投資筋の円売りにより、過剰な円安が日本経済の実力以下に進んでしまっていたというわけです。

この続きは、2月12日更新の『中原圭介の未来予想図』でどうぞ。

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2016年02月08日

ブラジルとロシアの経済はどうなるのか

ブラジルとロシアが経済的苦境に陥っています。今後の両国の経済はどうなっていくのでしょうか。これについては、拙書『新興国 中・韓・印・露・ブラジル経済総崩れ』(2013年9月出版)の20~22ページに適当な文章がありましたので、まずはその中の文章を一部引用し、少し補足を加えたいと思います。

(以下、『新興国 中・韓・印・露・ブラジル経済総崩れ』より引用)

ここにきてBRICsのなかで勝ち組と負け組がはっきりと分かれてきました。とはいっても、勝ち組となりそうなのはインドだけで、残りの3国は茨の道を歩まざるを得ません。

そのなかで資源大国であるロシアとブラジルは、アメリカのシェール革命により甚大なダメージを受けるという点で共通しています。そして両国とも、資源価格が高止まりしているのにあぐらをかいて、新たな経済の担い手となる製造業の育成を怠ってきたことでも似ています。

ロシアがブラジルと異なるのは政治体制です。いまのロシアは以前にも増してプーチン大統領の独裁色が濃くなっています。

その象徴的な出来事がプーチン大統領の辞任を求める大規模デモの中心的指導者アレクセイ・ナワルニー氏に対する有罪判決でした。司法の独立性が疑われても仕方のない同判決は、ただでさえ萎んでいた海外からのロシアへの投資をさらに冷え込ませる結果となるでしょう。

そんなロシアがこのところ経済成長率を3%未満に減速させているのと同様、ブラジルも1.9%( 13年1-3月)と市場予想を上回る減速が続いています。

ブラジル経済の現状をおおづかみに述べるならば、インフレと昨今の資源安により「借金依存経済」が回らなくなってきているということでしょうか。もともとブラジルは先進国の資源投資で潤ってきた国。資源高が続かなければ経常赤字に陥る体質なのです。今後、頼みの鉄鉱石価格が大きく下落するならば、経済運営が立ち行かなくなります。

借金依存経済だけに、バブル崩壊時に巨額の不良債権が発生するのは回避できないと思います。「ブラジル版サブプライム問題」が生じるのです。このあたりの「ブラジル危機が迫っている」ことについて、なぜか日本のメディアはあまり伝えていません。

金融政策についても、過度なインフレを抑え込むため金融引き締めに向かえばいいのか、景気を下支えするために緩和に向かえばいいのかわからず、立ち往生している状況が続いています。私自身こうした状況下では、何もしないほうがよいと考えています。

資源価格の下落ペースにブラジルの命運は握られています。2014年のサッカー・ワールドカップまではひょっとしたら凌げるかもしれません。しかし、さらに資源価格の下落が進むに違いない2016年のリオ五輪まではとてももたないのではないか。これが現時点での私の予測です。

(以上、引用終わり)

私の見立てでは、ロシアとブラジルの経済はまだ底を打っていません。エネルギー資源価格の低迷と通貨安のダブルパンチにより、両国はこれから緊縮財政を強いられることになるからです。とりわけブラジルでは、生活苦から国民の不満が鬱積しており、政治的な安定が損われ始めています。

中国の構造調整には少なくとも5年、通常では10年かかることを考えると、あるいはエネルギー資源企業の生産性が伸びていることを目の当たりにすると、両国の経済が底を打つのは2017年か2018年であったとしても、その後も長期低迷が続くのは避けられないのではないでしょうか。

ここで我が国にとっても教訓となるのは、円安にあぐらをかいて成長戦略を怠ってきたツケが早くも表れ出してきたということです。そのツケが景気後退という形になって、2016年中には顕在化してくるものと思われます。

政治が目先の選挙のことばかり考えていると、結果的に国民がそのしわ寄せを受けることになります。日本にもドイツのシュレーダー首相のような政治家が現れない限り、日本の未来にはとても楽観的になれない状況です。

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keizaiwoyomu at 13:50|この記事のURL経済分析 
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