2012年01月

2012年01月31日

2013年 大暴落後の日本経済

(ダイヤモンド社) 2011/11/11発売


昨年11月に出版された本を紹介させていただきます。

(以下「前書き」の文章より)

最近、書店に行くと、「日本は財政破綻する」といった内容の本が並んでいます。連日のように欧州の財政危機が報じられ、その内容は深刻さを増すばかりです。国民の間にも危機感が広まっているのは間違いありません。

しかし私は、日本が財政破綻することはないと考えています。その理由は本文を読んでいただくとして、日本がたとえ財政破綻を回避できたとしても、国民の生活は間違いなく苦しくなります。

この本を手に取った人のなかには、目次をパラパラと眺めて「国債の暴落なんて、自分にはあんまり関係なさそうだな」と思った人もいるでしょう。

ところが、それは大きな間違いです。国債の暴落も財政の危機も、私たちの生活に大きな影響を与えるということを、本書を読んで実感してもらいたいと思っています。

そして、その苦しみの度合いは、まさに今後数年の政治や行政の動向に握られています。私たちは、もっと政治や行政に関心を持たなくてはいけません。もし自分の給与が下がるとしたら、その要因には政治家や官僚が考える政策や、彼らがつくりだす制度が深く関わっている可能性が高いからです。

政治や行政の動きは、私たちの暮らしに直結しています。それらの影響によって、国民の生活は豊かにもなるし、貧しくもなるものです。

行政は誤った政策を行い、そのツケを国民にまわすことがよくあります。それは、行政と民間では、発想のプロセスが正反対なので仕方ありません。

民間では、先に分析と考察があり、そこから結論を導き出します。しかし、行政では多くの場合、先に結論があり、それにもっともらしい理由をつけるために、説得力のある資料やデータを集めるという作業が延々と続けられます。

だから、政策が誤るのは当たり前なのです。なぜこんなことが許されているかというと、政治に携わる人材の質が民間と比べて低すぎるばかりか、政治家の国民に対する責任感が著しく欠如しているからです。とくにこの数年は、嘆かわしいほど政治が行政をまったくコントロールできていません。

財政、経済成長、年金制度、税制、少子高齢化、雇用というそれぞれの問題は、表向きは個別の問題のように思えるかもしれませんが、実はすべての問題が裏では相互に作用し合い、密接につながっています。

現在の日本は、それぞれの問題を別々の省庁が担当する「縦割り行政」ですが、それではこの国が抱えている問題を決して解決することはできません。

本書では、「どうすれば日本の財政危機を回避できるのか」「どうすれば日本の将来を明るいものにできるのか」という視点から私の考えを語っていますが、日本を変えるためには、それぞれの問題を切り分けて考えていては限界があります。

「日本全体を豊かにするためにはどうすればよいか」という大きな視点で捉えなければ、根本的な問題の解決は難しいでしょう。財政、年金制度、税制、少子高齢化などといった問題を大きな枠組みでひとつの問題として捉え、思い切った改革を実行しなければ、この国は落ちていくだけです。

思い切った改革を断行するには、やはり強い政治の力が必要です。しかし残念ながら、今の政治は官僚の言いなりで、まったく本当の意味での政治ができていません。

私は、何の計画性もない、ただの増税には反対です。この国の疲弊したシステムを改め、国民が豊かになるための増税には賛成ですが、今の政権は何の意味も見出せない理念なき増税をしようとしています。

「日本が抱えるすべての問題はつながっている」という意識を、国民ひとりひとりに持ってもらいたいと考えています。日本が奈落の底に落ちないようにするためには、私たち自身が少しでも賢くなり、世論に働きかける必要があるからです。

本書が微力ながらもその手助けをできれば、とても嬉しく思います。


(追記) 著者にタイトルを付ける権限はございませんので、煽り調のタイトルになっておりますが、内容はいたってまともです。

  ←応援クリックお願いします!

keizaiwoyomu at 11:09|この記事のURL拙書の紹介 

2012年01月27日

南欧諸国がまともな国になるには(2)

前回の記事の続きになります。

同じように、南欧諸国も「痛み」を受け入れ、自らを厳しく律する姿勢が必要です。EUは、南欧諸国をひとつの企業として捉え、改革を迫る必要があるのではないでしょうか。

南欧諸国は企業として見た場合、人件費などのコストが割高で、これといった得意分野もありません。そんな企業を再生させるためには、融資だけではダメなことは分かっているはずです。今の南欧諸国はゾンビ企業と変わりません。結局は、稼げる体質に変えていかなければならないのです。

私の考える根本的な解決方法は三つあります。

一つめは、ドイツやフランスなどの経常黒字国がギリシャやスペインのような経常赤字国に財政的な補填をする仕組みをつくることです。これは、2010年から一貫して主張してきたことです。当然、経常黒字国の反発は必至でしょうが、ドイツなどの黒字国はユーロ圏の成立によって国際競争力が高まり、大きな恩恵を受けているという認識を持たなければなりません。

もちろん、それだけでは慢性的な経常赤字国から抜け出すことはできませんので、二つめは、EU全体で南欧諸国が自ら稼げる国家になることをサポートしていく必要があります。例えば、ドイツが自動車メーカーの工場を新興国ではなくギリシャやスペインにつくり、雇用を増やすだけでなく、外貨を稼ぐことができる産業を育成する手助けをするのです。

そして三つめは、南欧諸国の国民がモチベーションを上げてもっと働く環境を作り出すことです。そのためには汚職を取り締まり、労働組合などの既得権に対してメスを入れなければなりません。まじめに働いた者に対して、それに見合った報酬が得られる環境を作らなければ、国民の勤労意欲の向上は望めないからです。

これら三つの解決方法は、ワンセットで実行されなければなりません。このうち一つでも欠ければ、効果は半減してしまいます。しかし、ワンセットで実行することができれば、最初は財政的な補てん額が大きいかもしれませんが、南欧諸国の国民が一生懸命働き、国家に稼ぐ力が身に付くことで、その補てん額も徐々に少なくなっていくのではないでしょうか。

  ←応援クリックお願いします!

keizaiwoyomu at 12:23|この記事のURL経済分析 

2012年01月24日

南欧諸国がまともな国になるには(1)

驚くべきことに、財政危機の当事国であるギリシャにおいて、2011年の歳出は拡大しています。公務員は誰も解雇されず、議員はみな公用車を乗り回し、学生たちはいまだに全員無料で教育を受けることができています。「小さな政府」に向かうどころか、行政は肥大化したままです。

ギリシャは昔から国民の勤労意欲が低く、公務員の汚職や不正がまかり通っている国です。そもそも、ユーロに参加する資格がなかった国なのです。最初からドイツは、ギリシャをユーロ圏に迎え入れることに賛成はしていませんでした。ギリシャ人が怠け者であることをよく知っていたからです。しかしそれは、ギリシャ人に限らず、南欧諸国の国民に共通する問題です。

イタリアでも、国内の「南北問題」が深刻です。2010年のイタリアの州別の輸出額を見ると、北部の72%に対して南部は12%にとどまります。イタリア経済は、北部が南部を支えている構造にあります。

しかし問題は、イタリア経済を支えている北部ですら、企業が生産性の低さに頭を痛めていることです。自動車大手フィアットのマルキオーネCEOが当時のベルルスコーニ首相に対して、イタリアから米国に本社や工場を移したいと直訴していたことが、問題の深刻さを物語っています。生産性の低さに業を煮やし、大胆なリストラに取り組もうとしたところ、従業員が猛反発し、大規模なサボタージュに発展する事態となったのです。

イタリアに限らず南欧諸国では労働組合の力が非常に強く、過度に労働者の権利が守られているため、企業が改革に手を付けるのには大変な困難が伴います。結局このままでは、企業は最後の手段として、国内の工場を閉鎖し海外で生産をする道を選ぶしかありません。しかしこれは、南欧諸国の雇用の喪失、ひいては経済規模の縮小につながります。早急に労働法制の見直しが必要なことは明らかです。

南欧諸国に対して、同じく財政危機に見舞われたアイルランドの対応は対照的でした。企業は思い切った改革を断行し、急速に競争力を回復し経常黒字を増やしています。政府も日本の消費税にあたる付加価値税の税率を現行の21%から23%に引き上げるなど、10億ユーロ規模の増税策を実施しました。財政赤字も38億ユーロ削減する超緊縮予算を決定し、着実に実行しています。

また、英国でも財政危機を未然に防ぐために、財政再建に正面から取り組んでいます。キャメロン政権は「主要国で最大規模の歳出削減に取り組む」と宣言し、付加価値税の引き上げや社会保障予算の削減、公務員の人件費や年金改革を断行しました。さらには、聖域とされてきた教育関係予算の見直しにも着手し、大学授業料の大幅な引き上げなどを実施しました。

当然、これらの改革は、国民の激しい抵抗やデモといった抗議行動を招く結果となりましたが、それでもキャメロン政権は、妥協する姿勢は見せずに歳出削減策を推し進めています。市場はキャメロン政権の取り組みを評価しています。英国債は最高格付けからの転落が危惧されていましたが、格付会社の中でも一番評価が手厳しいS&Pは、英国債の格下げはしないと発表しています。

※次回は続きの(2)を更新いたします。

  ←応援クリックお願いします!

keizaiwoyomu at 01:33|この記事のURL経済分析 

2012年01月17日

2012年は厳しい年になる

私は2011年初めに様々なメディアで、「世界経済は2011年後半から弱含み、2012年はさらに厳しくなる」と述べてきました。その根拠は、(1)米国の雇用回復は緩慢で、住宅市場の低迷が続く、(2)欧州の財政再建や債務危機の悪影響が世界に広がる、(3)インフレにより新興国の成長が減速する、の3つの要因が顕在化してくるだろうと予想したからでした。2011年後半から2012年初めに入り、まさにその予想が現実化しつつあるようです。

では、2012年はどういう見通しにあるのかというと、「2012年はさらに厳しくなる」という2011年初めの考えと未だに変わりがありません。なぜなら、米国経済の低迷、欧州の債務危機、新興国の成長減速の3つの要因は2012年も続くからです。さらに、2012年は政治の激変期であるという不安要因も加わります。

台湾の総統選挙はすでに終わりましたが、米国、フランス、韓国、ロシアでは大統領選挙が行われます。選挙はないにしても、中国でも新しい共産党総書記が誕生します。ロシアと中国は別にして、元々、景気が悪い中での選挙では、現職の大統領も政権与党も苦戦を強いられます。これは、民主主義の国家では共通することです。景気が悪いのは政治が悪いからだと、国民は考える傾向があるからです。

特に欧州各国では財政再建を迫られており、現職の大統領や与党が極めて不利な状況にあります。PIIGS諸国では昨年2月のアイルランドの総選挙を手始めに、6月のポルトガル、11月のスペインで与党が敗北し、ギリシャとイタリアは総選挙を実施していないものの首相が退任に追い込まれました。クロアチアやスロベニアなどの中東欧でも、総選挙で与党が敗北しました。この政権交代ドミノが今後も続くようであれば、世界経済のとって大きな波乱要因になりえます。

それは、4月~5月にかけて実施されるフランスの大統領選挙が2012年の世界経済を占ううえで、重要な分岐点になると考えているからです。フランスの大統領選挙では現在、サルコジ氏、オランド氏、ルペン氏の3つどもえの状態ですが、最新の世論調査ではオランド氏が一歩抜け出しています。サルコジ大統領が敗れれば、欧州各国は債務危機の解決に向けてまとめ役を担っている人物を失うことになります。

これだけでも悪影響が懸念されるのですが、仮に財政再建論者のオランド氏ではなく、反EU・反ユーロのルペン氏が当選するようなことになれば、ユーロ圏は崩壊する可能性が高く、世界の金融市場に激震が走ることが予想されます。移民に職を奪われていると考えるフランス国民が増加しつつあり、ルペン氏が新大統領になるという可能性がまったくないわけではありません。その意味で、フランス大統領選挙は2012年の大きな山場になると言えます。

ただ、サルコジ氏が再選を果たしたとしても、世界経済のクラッシュの可能性が弱まったというだけで、世界経済の弱含みの流れに変化はないでしょう。欧州の財政再建は2015年くらいまで長引く大きなテーマです。財政再建と経済成長は両立することができません。財政再建に伴い欧州各国の景気後退が始まり、その悪影響が米国や中国、日本、ASEAN諸国やその他の新興国にも波及していくでしょう。

その結果、米国が再び大規模な量的金融緩和(QE3)を実施すれば、目先的には株価が多少戻すかもしれません。しかし中長期的には、せっかくインフレが収まりかけていた中国やインド、ブラジルなどの新興国でインフレが再燃し、新興国で稼ぐ先進国の経済に悪影響として跳ね返ってくることは避けられないでしょう。

  ←応援クリックお願いします!

keizaiwoyomu at 12:00|この記事のURL経済分析 

ブログ新設のご挨拶

このたび、【中原圭介の資産運用塾】 の兄弟ブログとして、心機一転、【中原圭介の『経済を読む』】 を新設いたしました。

以前は資産運用塾において、経済と相場の双方を分析していましたが、これからは役割の分担を明確にして、このブログで経済の分析を、資産運用塾で相場の分析をしていくつもりです。

なお、更新の頻度は、資産運用塾よりもこのブログの方を高めていきたいと思っております。

今年の経済は昨年よりも厳しくなる見通しですが、読者のみなさんが無難に今年を乗り切ることができるように、ご祈願しております。

  ←応援クリックお願いします!

keizaiwoyomu at 11:46|この記事のURLその他 
レポート配信履歴
10/14・10/25

11/13

※レポートが届いていない場合、ゴミ箱または迷惑メールBOXをご確認ください。