2012年02月

2012年02月15日

米国経済は本当に楽観できるのか(2)

前回のお話の続きです。

日本においても米国経済というと、まずNYダウ平均株価や大企業の業績ばかりに目が行ってしまいますが、米国の企業のうち約7割が中小企業で、雇用の7割は中小企業によるものです。また、その多くが大都市ではなく地方都市に存在しています。

したがって、米国経済の先行きを見るならば、注目すべきは「メイン・ストリート」経済のほうで、NYダウ平均株価や大企業の業績ではなく、中小企業や雇用の情勢、さらには住宅価格を見なければならないのです。

では、2012年の1月末の段階で、中小企業や雇用、そして住宅価格はどうなっているのでしょうか。

中小企業や雇用については、依然厳しい状態が続いていると見るべきでしょう。米国の失業率は、リーマンショック後、一貫して9%~10%前後と高い水準で推移していました。さらに企業では、正社員を減らして派遣社員を増やすという「日本化」が進行しつつあります。

2011年11月の失業率は8.6%、続く12月は8.5%、2012年1月が8.3%と改善傾向を見せ始めていますが、この数字は決して額面通りには受け取れません。長引く雇用環境の悪化から職探しを諦める人々が増えたことで、労働参加率が大幅に低下しているからです。実際に、1月の労働参加率は63.7%と1983年以来の低水準に落ちてきています。

したがって今後は、経済指標が上向いてきたことで、再び職探しを始める人々が増えてくることが予想されます。ですから、失業率がこのまま低下傾向を維持し、7%台に下がって定着するということはなかなか考えにくいのです。

一方の住宅・不動産価格についても、決して明るい見通しは立てられません。新築および中古の住宅販売件数は2011年2月~3月に過去最低を記録し、その後も本格的な回復には程遠い状況です。

もっとも、直近の2011年10月~12月の中古住宅販売件数は、3カ月連続で増加し、過去最低水準の住宅ローン金利が消費者の購入意欲を刺激しているという解説も聞かれるようになってきました。しかし、最悪期を脱したように見える住宅市場でも、ピーク時に比べるとなお半分以下にとどまる業界統計も多いのです。

また、住宅価格についても同様で、代表的な住宅関連指標であるS&Pケース・シラー住宅価格指数は、2011年3月に住宅バブル崩壊後の最低値を付けてから、その後は8月まで前月比で5カ月連続上昇しましたが、再び9月から3カ月連続の下落に転じています。まだ本格的に上向く気配は見えない状況です。

住宅価格の低迷は、家計のバランスシートの悪化に直結します。自宅を売っても住宅ローンを完済できない債務超過の家計は、全体の4分の1にも達しています。可処分所得に対する債務の比率も、2007年の130%から2010年には115%まで下がりましたが、過去の平均の75%まで下がるには、あと10年はかかるかもしれません。

このように、米国経済を動かす「本質」の部分に注目すれば、株式市場がリーマンショック後の高値を更新してきたのとは対照的に、多少の失業率の低下や住宅関連指標の改善があったとしても、米国経済の先行きが決して楽観できないことは予測できるはずです。

現在の米国株式市場の堅調さをどう見たら良いのかというと、FRBによる金融緩和の長期化が金融相場を演出し、株価を必要以上に高くしていると考えるのが正しいでしょう。

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keizaiwoyomu at 19:35|この記事のURL経済分析 

2012年02月08日

米国経済は本当に楽観できるのか(1)

米国経済の先行きについては、2012年に入り、楽観的な見方が広がりつつあります。主要な調査機関やエコノミストの予測を集計したブルーチップの調査によると、2012年のGDP成長率は2.2%と、前年の1.7%を上回る見通しです。また、NYダウ平均株価も13000ドルに迫る勢いで、世界の主要株式市場の中で、昨年初めからの上昇率はトップです。

GDPの7割を占める消費も回復基調にあります。年末のクリスマス商戦は好調に推移し、小売売上高は6カ月連続で前月実績を上回っています。あわせて、企業の景況感も改善傾向が見られるなど、米国経済は緩やかな回復基調をたどっているという見方が大半です。しかし、本当に米国の景気は底堅いと言えるのでしょうか。

実は昨年の今頃も、米国経済に対するエコノミストたちの見方は非常に楽観的でした。リーマンショック後から続いていたマイナス成長を2009年前半に脱し、2009年10-12月期以降、成長率はずっとプラスで推移してきました。NYダウ平均株価も2010年8月に10000ドルを割り込んだ後には右肩上がりで上昇し、2011年初めには12000ドルを回復するに至りました。企業業績も好調で、大手金融機関を筆頭に軒並み好決算を記録しました。

市場はこれらを明るい材料と見なし、「2011年後半には力強い回復軌道に入る」との見方が大勢でした。メディアではあたかも世界経済の危機は去ったかのように報じられましたが、当時から私は、成長率の回復や株価上昇は、戦後最大規模の財政出動や量的緩和策の効果によるもので、景気は回復にはほど遠い状況にあると訴えていました。

さらに、ギリシャ危機に端を発した財政問題で、欧州各国が財政再建に舵を切らざるを得ず、世界経済の下振れ要因になることも指摘していました。この先、景気を下支えする各国の財政政策は行き詰まるということが、目に見えていたからです。(もっとも、2011年は紹介した個別銘柄が暴落してしまったので、銘柄の選定では私もアナリストとして失格ですが…。)

ものごとの本質、経済の本質が正しく見えていれば、大きな方向性としてこうなるのは見込みが立ちました。では、なぜエコノミスト多くが、見通しを誤ったのでしょうか。

その答えは、コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授の述べた見解に端的に示されていると言えるでしょう。スティグリッツ教授は、リーマンショック後の米国景気の先行きに、一貫して厳しい見方を示してきました。市場関係者の多くが「2011年後半の回復」を予想していたのに対し、米国の景気後退リスクに警鐘を鳴らしてきました。

楽観的な見方が広がった理由として、教授は株式市場の上昇を指摘し、次のような趣旨の発言をしています。「多くのエコノミストが株価に影響を受けすぎている。株価は景気が悪くても上がることがあるが、株価が上がると景気が良くなりそうに思えてしまうからだ」と。

私の見解もこれとまったく同じです。エコノミストの多くが「ウォール・ストリート」しか見ていないことが、見通しを誤らせる最大の原因なのです。

米国経済には、「ウォール・ストリート」と「メイン・ストリート」の二つの経済が存在します。「ウォール・ストリート」経済とはまさに、ウォール街を中心とした金融中心の経済、あるいは株式市場に上場している大企業の経済を意味しています。一方、「メイン・ストリート」経済とは、米国経済の大部分を占める中小企業や地方経済を意味するものです。

続きは次回にお話したいと思います。

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keizaiwoyomu at 16:47|この記事のURL経済分析 
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