2012年06月

2012年06月20日

ドイツはスペインを絶対に助ける

拙書『2013年大暴落後の日本経済』(2011年11月刊行)の中から、「欧州の財政危機はこう解決する!」の文章をそのまま引用しますのでご覧ください。

(以下、引用)

2010年以降、金融市場の関心は欧州の財政危機に向けられてきましたが、その危機もいよいよ最終段階に近づいてきているような気がしています。なぜなら、ヘッジファンドの最終目標であるイタリアとスペインの国債利回りが、2012年中にはデッドゾーンと言われる7%~8%を超えてもおかしくない状況にあるからです。

「イタリアやスペインが破綻するのか、それとも破綻しないのか」「ヘッジファンドが勝利するのか、EUの政治が逆転で勝利するのか」それはわかりませんが、恐らく2012年のうちには、欧州の財政危機にひとつの区切りがつくだろうと考えています。

欧州金融安定基金(EFSF)の現行の規模は4400億ユーロしかありません。イタリアやスペインなどの大国の信用不安に対応するには、最低でも2兆ユーロ~2.5兆ユーロの規模が必要になります。両国が破綻をすれば、ユーロやEUの崩壊は避けられない状況です。

しかし欧州金融安定基金の規模を云々する前に、EUが本質的に問題を解決するためには、経常黒字国が経常赤字国に財政負担をする仕組みをつくるしかありません。

そもそも、経済構造も生産性も国民の勤労意欲も異なる国々が、同じ為替レートを使うということ自体がどう考えてもおかしいのです。経常黒字国と経常赤字国が同じ為替レートを使うということは、株式市場で言えば、黒字企業と赤字企業が市場で同じ評価を受け、同等の株価をつけているようなものです。まったく市場原理にそぐうものではありません。

経常黒字国であるドイツなどの国民は「経常赤字国はユーロ圏から出て行け」と言うかもしれませんが、ドイツもユーロによって多大な恩恵を受けてきたことを忘れてはいけません。ドイツほど経済が強い国であれば、本来はもっと通貨高になるはずです。

しかし、ユーロが統一通貨であるために、ドイツは常に割安な為替レートで外貨を稼ぎ続けることができました。富む国はさらに富み、貧しい国はさらに貧しくなる。そのような矛盾を抱えたままでは、統一通貨など成り立ち続けるはずがありません。

ドイツはユーロ最大の受益者であることを自覚し、近い将来には、財政危機の再発防止策として、経常黒字国が経常赤字国に財政上の補填をする仕組みをつくる責任があると思います。

ドイツがその責任を放棄すれば、イタリアやスペインの国債利回りが自力消化できない水準まで上昇し、ユーロ圏ひいてはEUが本当に崩壊してしまいます。

仮にイタリアやスペインが債務リストラに踏み切るようなことがあれば、リーマンショックを大きく上回るほどの金融クラッシュが欧州で起こり、金融機関はバタバタと破綻していくことになるでしょう。そして、この金融クラッシュは米国や日本はもちろん、世界中の金融市場を大混乱に陥れ、世界大恐慌を引き起こしてしまうでしょう。

そのようなことは、ドイツも十分にわかっているはずです。だから、イタリアやスペインがデフォルト寸前に追い込まれれば、世界経済を守るためにも欧州全体が一致協力して、経常黒字国から経常赤字国へ財政の補填を行う仕組みをつくろうと、ギリギリで決断してほしいと思います。

(引用終わり)

補足を加えると、ドイツはギリシャを切り捨てることができても、スペインとイタリアを切り捨てることは絶対にできません。メルケル首相は国民の反対を押し切ってでも、国際社会の圧力も手伝って、スペイン救済に大きな妥協をせざるをえないでしょう。

6月中にドイツは何らかの妥協をするでしょうし、今年中には財政補填を行う仕組みの前段階としての「ユーロ共同債」に合意する可能性は十分にあると思われます。


(お知らせ)これまでずっと2人分~3人分の仕事をこなしてきたせいか、過労のため、体に無理が利かなくなってきました。たいへん申し訳ないのですが、今後は更新の間隔が1カ月くらいになることもあるかもしれません。ご了承ください。

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keizaiwoyomu at 12:35|この記事のURL政治分析 

2012年06月05日

ドイツの本音~ギリシャ離脱でユーロ圏の結束は高まる

ドイツ当局では、6月17日の再選挙の結果によっては、ギリシャがユーロ圏から離脱してもいいと本気で思い始めているようです。

そもそも民間債務については、ギリシャは今年の3月にその約75%を削減することに成功しています。たとえギリシャがこれから無秩序なデフォルトをしたとしても、EUやIMFなどの国際機関は損失を被るものの、民間の金融機関が破綻するような影響はないと考えているのでしょう。

前回の記事でも申し上げましたように、ギリシャがユーロから離脱すれば、新通貨ドラクマは暴落し、ギリシャ国民の生活は今とは比べ物にならないほど苦境に追い込まれます。大企業や富裕層は国外に逃げ出し、ドラクマで支給される公務員給与や年金は実質的に半分以下の価値になってしまう可能性もあるのです。

ですから、ギリシャ国民の困窮ぶりを見たら、ポルトガルやアイルランドが後に続くという選択肢はなくなるでしょう。ドイツの主張する財政規律を守ったほうがマシだと、財政危機国や他のユーロ圏各国の国民も再認識するはずです。

ギリシャをユーロ圏から離脱させ、スケープゴートにすることによって、かえってユーロ圏の結束を固められるというシナリオを、ドイツが描き始めていても不思議ではありません。

しかしながら、ギリシャの切り捨てはアイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリアなどの債務不履行リスクを高め、これらの国々の国債利回りがさらに上昇することは避けられそうもありません。

ドイツはこのような事態を乗り切ることができると考えているのでしょうが、結局はスペインやイタリアが国債市場でぎりぎりまで追い込まれ、ドイツは重い腰を上げざるを得ないのではないでしょうか。

すなわち、ユーロ共同債の導入が現実化するということです。そうなれば、欧州の債務危機は一気に沈静化の方向に向かうでしょう。

逆に、再選挙の後に、ギリシャがEUと約束した緊縮財政策を守ることができたとしても、それは危機が先送りされたに過ぎません。近い将来、これまでと同じようにギリシャが計画を達成できないことが明らかになり、再び欧州の債務危機が深刻化することは避けられなくなるでしょう。

なお、海外の主要メディアの多くでは、ギリシャは通貨急落により輸出競争力が高まり、経済が回復するだろうという見方を示していますが、ギリシャに限っては通貨安による経済回復は当てはまらないと思われます。ギリシャでは輸出産業がGDPの約1割にとどまり、通貨安のメリットを生かし輸出を増やすのにも限界があるからです。

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keizaiwoyomu at 10:15|この記事のURL政治分析 
レポート配信履歴
7/13・7/30

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