2012年08月

2012年08月23日

追い込まれる日本経済~求められる成長戦略

年初あたりは国内において、「TPPは米国の陰謀だ」などと的外れな議論が盛んにされていましたが、私のTPPに対する考え方は、『2015年までは通貨と株で資産を守れ!』(2012年3月刊行)に書いておりますので、その中の文章を一部引用します。

(以下、引用)

ご存じのとおり、中国経済は2010年にGDPで日本を抜いて世界第2位の経済規模に成長しました。2012〜2013年も、GDP成長率は8〜9%の高成長を続ける見通しにあります。このままあと10年も同程度の成長を続ければ、米国経済を脅かす存在にまで躍進する可能性も出てくるでしょう。

そうは言っても、中国では知的財産権の侵害やコピー商品の氾濫など、世界の経済ルールに反する行為が公然と行われているのも事実です。これらの行為による逸失利益は少なくはなく、米国企業からは中国政府に対して違法行為を取り締まるようくり返し要請が出されています。

 
また、製造業を中心に技術の流出を懸念する声は大きく、国益を損なうような中核の技術が流出すれば、中国企業が世界を席巻するようになるのではないかと危惧する意見も聞かれます。さらには、サイバーテロや高度な軍事技術の流出に関しても、中国の関与が取りざたされています。

 
こうしたさまざまな問題への対処方法として、オバマ政権はTPPを強く推進しているのではないでしょうか?この点では、欧州の思惑とも一致しています。EUはFTA交渉などにおいても、民主化が進んでいない中国やロシアなどの国々に対しては、一貫して受け入れ拒否の方針を示しています。

したがって米国は、中国が国際的な枠組みを遵守できるまともな国になれるまでは、EUと一致協力して、中国に圧力をかけていくのではないでしょうか?つまり将来的には、環太平洋のTPPとEUのFTAがタッグを組むことで、東西両方面からの中国包囲網を築く狙いがあるものと思われるのです。

そして最終的には、米国主導の「経済版NATO」を目指していく可能性も考えておかねばなりません。残念ながら、私たち日本人が思っているほど、米国はTPPで日本をあまり重視してはいません。TPPの本質は、躍進するアジア、とりわけ中国を自らのコントロール下に置くことで、欧米が実体経済における覇権を取り戻すことにあると考えられるのです。

(以下、終わり)

その動きが現実のものとなり始めています。7月11日付の日経新聞の朝刊では、『米・EU、包括協定を検討』という見出しで、以下のような記事が掲載されました。

(以下、引用)

米オバマ政権と欧州連合(EU)が、自由貿易協定(FTA)の締結も視野に包括的な経済連携協定を検討していることがわかった。環太平洋経済連携協定(TPP)の大西洋版ともいえる枠組みで、世界の国内総生産(GDP)の5割近くを占める巨大な自由貿易圏に発展する可能性がある。世界貿易機関(WTO)交渉の深刻な行き詰まりが背景にあり、日本などの通商政策にも影響を及ぼしそうだ。

(引用終わり)

「世界貿易機関(WTO)交渉の深刻な行き詰まりが背景」というのは、あくまで表向きの理由であって、アジア圏の成長を取り込むのと同時に、対中国包囲網を築いていくという目的で、欧米が一枚岩に固まってきたように考えられます。

もちろん、日本政府が現状を放置すれば、あと5年もしないうちに、日本は経済敗戦の憂き目に遭ってしまうでしょう。欧米がお互いの関税撤廃を進めれば、日本企業はさらなる不公平かつ過酷な競争条件にさらされるからです。

日本は一刻も早くTPPに参加表明すると同時に、成長産業をつくりだすために有効な政策を実行すべきです。有望な成長産業は「農業」「医療」「観光」などです。ところが、「農業」「医療」は規制でがんじがらめにあり、「観光」はGDP比で見た予算が東南アジア諸国と比べてあまりにも少なすぎます。

私は「過剰な建設業の雇用の受け皿となる成長産業を、政治がつくりだすべきだ」とずっと前から主張してきましたが、国が脱原発依存を進めていくのであれば、原発の雇用の受け皿としても成長産業の必要性がよりいっそう高まってきているように思われます。

実際に新しい産業が育つまでには、うまくいっても5年、普通は10年単位の時間を要します。つまり、成長産業の果実を受け取るのは5年後、10年後の政権・与党であるのです。だから、政治は成長戦略にはあまり興味を示しません。

「国土強靭化計画」などは愚策中の愚策です。成長戦略でも何でもありません。政治家の頭の中は腐っているのでしょうか。とても私には理解できません。 

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keizaiwoyomu at 15:59|この記事のURL政策提案 

2012年08月07日

8月の混乱は避けられそうだ

予想外にも、大きなニュースが入ってきました。メルケル政権のストレイター報道官が「ドラギ総裁の発言に懸念はない」として、ドイツ政府としてECBの南欧国債購入の計画を支持すると発言しました。

メルケル政権はドイツ連銀の反対を押し切る姿勢を固めた模様です。これでEFSFが南欧国債を購入できる可能性が高まりました。スペインのラホイ首相もEUに支援を依頼すると見られており、これでドラギ総裁が先日示した国債購入の前提条件が揃いそうです。

早ければ、今月中にECBとEFSFによる南欧国債の購入が始まるという観測があり、欧州の金融市場では安心感が広がって来ています。とりあえずは、8月の欧州発の混乱が避けられる見通しが立てられるようになりました。

これまでの欧州の危機対応は、市場に催促されるたびに、ドイツ政府の反対のより先送りの合意を繰り返してきましたが、ストレイター報道官の発言が信頼できるとすれば、欧州にとってはユーロ共同債の創設に向けて一歩前進したと言えるでしょう。

ただし、ドイツがユーロ共同債に難色を示し続けた場合、ギリシャはいずれユーロ圏を離脱せざるをえなくなるでしょう。3月にEUの救済策によって、民間債務の約75%を削減できたとはいえ、国債利回りが20%を超える水準では借金返済ができるわけがありません。

スペインが今まさに陥っている状況にある国債利回りが6%~7%であっても、10年間で元利金支払いが1.8倍~2倍になるのですから、いくらスペインが緊縮財政を行ったとしても、国債利回りがこのままでは焼け石に水といわざるを得ません。

欧州が当面の「時間稼ぎ」ができる環境が整った中で、ユーロ共同債の議論が深まってくれればと期待しています。

(お知らせ1)
欧州市場が落ち着く見通しが立ったため、更新の頻度を元に戻したいと思います。ご了承ください。

(お知らせ2)
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keizaiwoyomu at 10:17|この記事のURL市場分析 

2012年08月03日

次の催促相場はすぐにやってくる

ECBのドラギ総裁は2日の記者会見で、3月に停止した南欧国債の購入準備を始めると表明しました。しかし、いつ、どの程度の規模で購入を始めるのかについて、具体的な言及はありませんでした。

さらに、ECBが南欧国債を購入する前提として、財政危機国からの申請があること、EFSFも購入を始めることといった、決してハードルが低くない条件を付けてきています。

政策金利も0.75%のまま据え置かれ、国債の購入再開の方針が表明されただけでは、市場の失望売りも避けられず、スペインの国債利回りが上昇し、欧米の株価が下落するのはやむを得ないでしょう。

ただ、昨晩のスペイン国債の利回りや欧米の株式市場の結果を見てみると、思ったよりは悪くならなかったと言えそうです。

しかし、このまま何も新たな対策を打ち出さなければ、再び市場が政策を催促する相場になり、スペイン国債の利回りは8%に迫り、株式市場は大きな下げに見舞われるでしょう。

市場では「切り札」を温存したという解説も聞かれますが、前回の記事でも述べたように、ECBやEFSFによる国債購入再開は「切り札」ではなく、「時間稼ぎ」という対処療法にすぎません。

「時間稼ぎ」の対応策をするにしても、ドイツがESMを批准するための憲法裁判所の合憲判断(9月12日予定)が出るまで、市場の混乱を口先介入だけで封じたいということなのでしょうか。

市場がそんな時間を与えてくれるとは、私にはとても考えられません。

(お知らせ1)
かつて拙書でも述べていたように、スペインの国債利回りが急騰する緊急事態となったため、間隔が短くてもがんばって更新しています。事態が沈静化すれば、また間隔が空くと思いますのでご了承ください。

(お知らせ2)
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keizaiwoyomu at 12:29|この記事のURL市場予測 
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