2012年09月

2012年09月19日

QE3の注意点

先週のFOMCでの決定で市場に大きなインパクトを与えたのは、住宅ローン担保証券の購入額に限度額を設けなかった点です。ECBは南欧国債を無制限に買うことをすでに表明していますが、欧米の中央銀行の際限ないマネーの供給がひとまずは株式市場や商品市場をリスク・オンの状況に持ってきたと言えそうです。

ただし、注意しなければならないのは、「株価が下がった局面で行うQE3」と「株価が高い局面で行うQE3」では、効果が低いのは間違いなく後者のほうだということです。ですから、QE2の時のように、このまま株価が右肩上がりで上昇することは考えづらく、いつまで株価が堅調に推移するのか、どこまで株価が上昇するのかも見通しにくいと思われます。

それでも、QE3が株価などの資産価格の上昇を狙った政策であるため、労働市場はもとより株価が下向きになるようなことがあれば、FRBは住宅ローン担保証券の購入だけでなく、追加の資産購入や他の政策措置も講じることを示唆しています。米大統領選後に政治の機能不全が深刻化しない限りは、株価の暴落は回避できるというシナリオになりつつあるようです。

しかし、やや長い目で見ると、QE3の副作用には注意しなければなりません。大量のマネーが供給されると、原油や穀物などの価格が押し上げられ、悪性のインフレやバブルの温床になりかねません。ガソリンや食品の値上がりが消費の減少を招き、結局、QE3は効果がなかったということも考えられるのです。

QE2も悪い物価高を招いただけに、QE3で悪い物価高が進めば、FRBにも世論からの批判が強まるかもしれません。富裕層と庶民層の経済的格差の拡大がいっそう進み、ウォール街にとどまらず、全米でデモが起こる可能性がないとも言えません。

米国の8月の卸売物価指数は前月比で1.7%上昇、消費者物価は0.6%上昇し、ともに3年2カ月ぶりの大幅な上昇となりました。主な原因は、ガソリン価格の上昇でした。QE3による悪影響が今後の物価動向にどの程度出るのか、注意していく必要があります。

もっと長い目で見ると、金融緩和の行き過ぎが将来の出口戦略をいっそう困難にしていることも頭の片隅に入れておく必要があるでしょう。ECBは昨年12月と2月の2回に分けて、域内銀行に対して3年物の大量の資金を供給しました。先週には1年~3年物国債を無制限に購入することを決めました。FRBは雇用が持続的に安定するまで、住宅ローン担保証券を無制限に買うと決めました。これだけの資金を供給して、将来、本当に出口戦略を取ることができるのでしょうか。

できるわけがありません。これで欧州の景気が復活するとは考えにくく、あと1年以上経っても米国の雇用が思うように回復しなかった場合は、実体経済に対するマネー経済の膨張が世界にどのような激震をもたらすのか、景気が悪いのにバブルが起きた場合、その後何が起きるのか、漠然とした想像しかできません。

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keizaiwoyomu at 13:24|この記事のURL金融政策分析 
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